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DJI、5.2K/30p撮影対応ドローン「Inspire 2」。1型センサーで4K/60p「Phantom 4 Pro」

 DJIは、別途カメラを搭載する事で5.2K/30pや、4K/60p撮影に対応するドローン「Inspire 2」と、4K/60p撮影対応の1型カメラを標準搭載した「Phantom 4 Pro」を発表した。「Inspire 2」は2016年12月~2017年1月頃の発売を予定し、価格は361,000円(税込)、カメラは別売。「Phantom 4 Pro」は11月下旬出荷で、189,000円(税込)。送信機をセットにした「Phantom 4 Pro+」は219,000円(税込)。

「Inspire 2」

Inspire 2

 Inspire 2は、Inspire 1の機能を踏襲しながら、画像処理システムを強化。飛行機能も強化しており、時速0kmから80kmまでを4秒で加速、最大スピードは時速108kmで、「このサイズの機体としては前人未到の速度と俊敏性」を持つという。デュアルバッテリシステムを用いて、カメラの「X4S」を搭載した場合で、最長27分の飛行が可能。別売の高度飛行用プロペラを使えば、海抜5,000mまで上昇もできる。

「Inspire 2」

 映像処理システム「CineCore 2.0」を搭載。ジンバルポートに、カメラのZenmuse X4S、X5Sが取り付けられる。カメラの価格は、X4Sが71,200円(税込)、X5Sが225,600円(税込)。Inspire 2の機体、X5S、CinemaDNG、Apple ProResのライセンスキーを同梱した「Inspire 2 Combo」も741,000円(税込)で用意。2016年中に購入したユーザーには、期間限定価格として719,000円(税込)で販売する。

 Zenmuseカメラは、ジンバル、フライトコントローラーと直接通信できるように設計されている。X4Sは、2,000万画素の1型センサーを採用し、ダイナミックレンジは11.6ストップ。焦点距離(35mm換算)24mm、F値2.8~11のレンズを備え、高速で動く被写体も歪まずに撮影できるメカニカルシャッターも採用。

 X5Sは、2,080万画素のマイクロフォーサーズセンサーを搭載。ダイナミックレンジは12.8ストップ。マイクロフォサーズのマウントも採用しており、広角からズームまで8種類のレンズをラインナップしている。

X5Sを取り付けたところ

 Inspire 2は、新設計の高速SSD「CINESSD」を搭載できるため、高解像度でハイビットレートな映像撮影に対応できる。新カメラのX5Sと組み合わせる事で、5.2K(5,280×2,972)/30p、12bit 4.2Gbpsや、4K(4,096×2,160)/60p 10bit 4GbpsのCinemaDNGで撮影ができるほか、MPEG-4 AVC/H.264やH.265での4K撮影も可能で、100Mbpsでの撮影も対応。AppleのProResで5.2K(5,280×2,160)30fps(422 HQ)、4K(3,840×2,160)30fps(4444 XQ)での撮影もサポートする。静止画は2,080万画素のJPEG/DNG/JPEG+DNGで撮影できる。

 また、従来のSSDでは、PCに読み込む際に専用ソフトが必要だったが、CINESSDではFAT32/exFATに対応。通常の外付けHDDのように、気軽にPCへの転送ができるという。

カメラスペックの比較

 パイロット1人でも複雑でドラマチックな撮影ができるという「スポットライトプロ」機能を備え、飛行中にInspire 2がどの方向を向いていても、ビジュアル・トラッキング・アルゴリズムを使用して被写体をロック。ジンバルが回転制限に達しても、Inspire 2がフライトコントロールに影響をおよぼすことなく同じ方向に回転、ジンバルの動きに束縛されない撮影ができるという。

ジンバルが制限なく回転するため、ドローンが前に進みながらカメラだけ被写体を追い続けるといった撮影がしやすく、ドローンの動き自体も無理が少なく、安全に撮影できるという

 機体の前方と下向きにそれぞれ設置されたビジョン・センサー・システムで、リアルタイムで飛行ルートのマップを飛行中に作成。最大30m先までの障害物を検知できる。制御可能な姿勢角は25度、最大時速54kmで障害物の回避が可能。上部に向けても赤外線センサーを備え、上空5mまでの障害物を検知。狭いエリアでも安全に飛行できるとする。

狭いエリアでも安全に飛行できる

 動画伝送システムの信号が失われ、スマートReturn-to-Homeが有効になった場合、元の飛行ルートに沿って帰還する。信号が復帰すると、直線の動きに変更。ホームに帰還する際は、主要なカメラを使って障害物を最大200m先まで認識し、安全な飛行ルートを計画し、そのルートで帰還する。

 IMU(慣性測定装置)、コンパス、気圧計といった主要なモジュールのデュアル冗長性により、信頼性も向上したという。インテリジェント・フライト・コントロール・システムが冗長化システムを監視し、正確な飛行データを提供。新しい障害物検知システムも備え、衝突のリスクを低減している。

 さらに、デュアルバッテリを搭載しているため、どちらかのバッテリに不具合が生じても、残りのバッテリが安全な着陸が可能。寒い場所で飛ばす際は、バッテリの温度が上がらないと離陸できなかったが、新たに自己発熱技術も投入。低温環境下での飛行にも対応した。

 重量は、カメラとジンバルを省き、2つのバッテリを搭載した状態で3.29kg。

 送信機による最大伝送距離は4km。HDMI端子や拡張ポートを備えている。ディスプレイの「DJI Crystalsky」を別途購入して組み合わせる事もでき、サイズは5.5型と7.85型を用意。輝度はそれぞれ1,000cd/m2、2,000cd/m2で、屋外でも視認しやすいという。

送信機

 ディスプレイにデュアルSDカードスロットも装備。撮影した4K映像を、再生し、確認する事もできる。

Phantom 4 Pro

 Phantom 4 Proは、カメラを標準で備えているドローンの新モデル。カメラは1型、2,000万画素で、約12ストップのダイナミックレンジを実現。焦点距離は35mm換算で24mm。絞りはF2.8~F11まで調節可能。メカニカルシャッターを備え、高速で動く被写体も自然に撮影可能。MPEG-4 AVC/H.264の4K/60p/100Mbpsでの撮影をサポートする。H.265で、4K/30p撮影も可能。

「Phantom 4 Pro」

 安全性を高める障害物検知・回避機能も用意。Flight Autonomy(フライトオートノミー)が拡張され、従来の前方にあるセンサーに加え、高解像度のステレオ・ビジョン・センサーを後方にも搭載。左右には赤外線センサーを装備。これらを組み合わせる事で、合計5方向の障害物検知と4方向の障害物回避が可能。飛行時間は約30分。

狭い場所も飛行でき、後ろを向いたまま離陸するといった動きも可能に

 送信機のディスプレイ上に線を描くだけで、高度を固定したまま、線の方向に飛行する「Draw」や、被写体の前後を追尾し、動きに合わせて旋回する「トレース」、被写体と併走する「プロフィール」、機体がどこを飛行していても、カメラを被写体に向け続ける「スポットライト」モードなども利用可能。

送信機のスペック

 送信機を使わず、ジェスチャーする事で自撮りをする機能も用意。周囲の状況に応じて、自動的に最適経路を選択して帰還させるRTH(Return-to-Home)機能も利用できる。

 専用ディスプレイ付き送信機は、強化されたLightbridge HDビデオ伝送システムを統合し、伝送距離を4kmまで延長。送信機のシャッターボタンを半押しすることで、カメラのピントを合わせられる。5.5型のディスプレイは、1,000cd/m2で、屋外での視認性を向上。「DJI GO」アプリは、ディスプレイに組み込まれている。HDMI出力、microSDカードスロット、マイク、スピーカーなども備えている。

 バッテリやプロペラを含めた重量は1.3kg。

送信機

現場の声を取り入れた改良

 InterBEEの会場で行なわれた発表会には、ドローンを使った撮影を多く手がける映像ディレクターの村上はじめ氏と、ドローンパイロットであるスタジオアマナの小林宗氏、映像専門Webマガジン・PRONEWSの編集長でドローン専用Webマガジン・DRONEの編集長でもある猪川トム氏らが登壇。新製品についてのトークショーを行なった。

左から猪川トム氏、村上はじめ氏、小林宗氏

 よくタッグを組んで、走る自動車の空撮を行なっているという村上氏と小林氏は、最高速度時速108kmというInspire 2の性能について「今まで、60kmくらいで走るクルマに、一瞬追いつくかな程度だったけれど、それが変わる。まずこのスピードに驚いた」(小林氏)、「スペック的にはInspire 1で満足していましたが、2のハイスペックさにただただ驚き」(村上氏)という。

 2人が注目するポイントは、バッテリが2個搭載になり、飛行時間が増えた事。「クルマが一周サーキットを回ってきて、特定のポイントだけで撮影するような場合、クルマがその場所に来るまでホバリングしながら待っている時に頼りになる」(小林氏)という。ただし、従来のバッテリとの互換性は無いと聞き、小林氏はちょっとガッカリした様子。

 「寒冷地で飛ばす際も、バッテリの温度が上がらないと離陸できず、また、飛んでいてもクルマが来る前に低温のアラートが出て、着陸させるといった事もあったので嬉しい」(小林氏)とのこと。

 送信機と組み合わせるディスプレイが高輝度な点も評価が高く、「日差しを遮るフードを取り付けていると、パイロットが覗き込むと、ディレクターの僕が映像を確認できない事がある(笑)」(村上氏)という。村上氏はProResに対応した事も、ワークフロー改善に大きな恩恵があると語った。

 また、SSDが専用ソフト不要でPCから読み込める事も両氏が歓迎。「撮影後にSSDを渡すような時に便利」(小林氏)、「転送にも時間がかかっていたので、これで眠れます(笑)」(村上氏)と笑いを誘った。

 村上氏は、ドローンの進化について「ものの数年前は、ドローンのサイズも大きく、本格的な撮影をするにはそこに大きなカメラがぶら下がっていた。そのため、大きなイベントを撮影するような、撮影自体大変な作業でした。しかし、Inspire 2のようなドローンの場合、これだけあればクオリティの高い映像が撮れてします。しかも、こんなにカッコイイ。気づいたらこんなになっていたというか、進化のスピードにとにかく驚いています」と語った。

DJI JAPANの呉稲(ゴトウ)社長