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ソニー初UHD BDプレーヤー、AtmosサウンドバーとAVアンプ一挙に登場。製品化の背景を聞く

 ソニーは、「CES 2017」に、UHD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800」や、Dolby Atmosに対応したサウンドバー「HT-ST5000」とAVアンプ「STR-DN1080」を出展。4K/HDRやDolby Atmosへの対応を本格化する意欲的な製品が米国で一挙に投入されることとなった。開発や設計を手掛ける担当者に、各モデルの進化点や、製品化までの取り組みなどを聞いた。

左から、UBP-X800を担当したソニービデオ&サウンドプロダクツ 企画マーケティング部門 商品企画部 VIDEO商品企画課の若井伸一氏、V&S商品設計部門 ホーム商品設計部 植木享氏、HT-ST5000を担当したV&Sプラットフォーム開発部門 サウンドシステム開発部 簗 輝孝氏、企画マーケティング部門 商品企画部 鈴木真樹氏
上がサウンドバーの「HT-ST5000」、左下がUHD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800」、右下がAVアンプ「STR-DN1080」

初のUHD BDプレーヤーとAtmosサウンドバーはSPEと画質/音質設計で協力

 プレーヤーの「UBP-X800」は、UHD BDや、SACD、DVDオーディオを含むディスク再生に加え、DSDを含むハイレゾ音源の再生なども行なえ、クオリティの面でも“ソニー最高の画音質”を打ち出している。

UBP-X800

テレビだけでなく「ホームシアター製品においても4K/HDR製品を提供する」ことを目的に開発。UHD BD作品のタイトルがそろってきたことも背景としてある。

 既報の通り、ソニーUHD BDプレーヤーの“リファレンスモデル”としては、春に発売するES型番の「UBP-X1000ES」が存在するが、この製品はカスタムインストール向けであり、今回展示されたX800は、4K/HDRテレビを持っている、より多くの人に勧めるモデルとして、X1000ESとともに「最高の画音質」として提案する。

 ディスク再生だけでなく、ストリーミングサービスも4K対応で、Netflixの4K/HDRコンテンツもサポート。他のサービスにも対応予定としている。

 今回、HDR対応ではないSDR(スタンダードダイナミックレンジ)の4Kテレビを持つ人にも「HDRに近い画質で楽しんでもらう」ために、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)のエンジニアリングチームと協力。SDRからHDRへ変換する際の画質のチューニングを、共同で行なったという。こうした取り組みで「絵も音も最高のホームシアター体験を提供する」としている。

HDMIは2系統で、映像/音声を独立して出力することも可能
高音質を追求したパーツで構成

 サウンドバーの「HT-ST5000」は7.1.2ch構成で、フラッグシップモデルにおいて“満を持して”のDolby Atmos対応。「簡単に映画館のような体験を楽しめることを目指した」としている。同社サウンドバーは、'15年モデルの「HT-ST9」における独自波面制御技術により、広い音場で後方に音が回りこむサラウンドを実現。そこから2年をかけて、Atmosにも最適化したST5000を開発した。

サウンドバーの「HT-ST5000」。上のバー型スピーカーと、下のサブウーファで構成。中央はUBP-X800

 Atmosへの対応は、サウンドバー両端に、斜め上を向いたイネーブルドスピーカーを追加することで実現。天井に音を反射させる立体的な音響で、映像などへの没入感を高めるという取り組みを、サウンドバーとサブウーファのみの組み合わせで可能にしている。

 独自のフロントサラウンド技術「S-Force」もAtmosに合わせて最適化。フロントの7chスピーカーとサブウーファで音場を生成し、それにイネーブルドスピーカーの信号を組み合わせて音作りをしているという。

 また、Atmos音声のBDやUHD BDだけでなく、5.1chなど、イネーブルドスピーカーの信号が含まれないコンテンツにも、アップコンバート技術によって「どんな信号が来ても7.1.2chで包まれる感じを再現できる」としている。

天井を使った音の反射によりAtmosに対応

 サウンドバーの開発においても、SPEと協力。Atmos音声のコンテンツを制作するエンジニアが協力し、立体的な音の配置をサウンドバーでどのように再現するかなどを確認しながら調整を行なったという。SPEとの協業は、既存モデルのHT-ST7の頃から行なっているが、オブジェクトオーディオのAtmosはSPE側にとってもまだ新しい技術であり、ハード/ソフト両方を手掛けるソニーだからこそできるアプローチと言える。

 スピーカーユニットもハイレゾ対応で、音声モードによって、出せる周波数帯域を変えているという。音楽コンテンツ用に「ミュージックモード」も搭載。これを使うとステレオ音声の入力時はフロント2chのままで出力する。

 今回の各モデルが、CESに合わせて米国での発表となったのは、BDプレーヤーやサウンドバーの大きな市場が米国であることが大きく、UHD BDタイトルの多さもあり、まずは米国で春に投入されることがアナウンスされた。日本での発売は現時点では明らかにしていない。

低価格ながらAtmosに最適化したAVアンプ

 AVアンプの「STR-DN1080」は、エントリーモデルながらDolby Atmos/DTS:Xに対応。'16年4月に発売されたSTR-DN1070(72,000円)の後継モデルと見られ、日本での発売は「検討中」としている。

STR-DN1080

 自動音場補正機能は、DN1070までは、8バンドのパラメトリックイコライザを用いた「アドバンスドD.C.A.C」だが、DN1080は上位モデルのTA-DA5800ESなどと同じく「D.C.A.C EX」を採用し、32バンドのグラフィックイコライザでキャリブレーションを行なう。

 また、測定用のマイクがステレオ化されたのもポイントで、距離を測るためのマイクが2つあることで、スピーカーの位置だけでなく角度がずれている場合も補正。理想の角度と距離に合わせるという「スピーカーリロケーション」が可能。これを使って、家具やドアなどの配置でスピーカーの置き場所が限られる場合も、仮想的にサラウンドバックスピーカーの音を定位させる機能も利用できる。

 この機能は5800ESの時にも搭載されているものだが、AVアンプの商品設計を担当したV&S商品設計部門 ホーム商品設計部の渡部忠敏氏によれば、「Dolby Atmos時代にこの機能が有効であると判断し、ファントムサラウンドバックという名前を付けた」としており、この価格帯のモデルで搭載したことが大きいという。

商品設計を担当した渡部忠敏氏

 他社製品を含め、このクラスのAVアンプは、7chアンプ搭載が多く、Atmosでは5.1.2chが最高になるが、ファントムサラウンドバックを使うと7.2.1chで信号処理が行なえ、斜め後ろの高さ方向の描写もしやすくなるという。

 この機能を説明するためのデモコンテンツも新たに作成。ブースの視聴コーナーで、前述したUHD BDプレーヤーのUBP-X800と組み合わせて体験すると、ファントムサラウンドバックの効果は想像以上だった。“斜め後方の音”といっても普段はそれほど意識しないと思うが、デモコンテンツでその位置から人の声がすると、思わず振り返ってしまいそうなリアルな音の存在感があり、その声がどれくらい高さの場所から出ているかしっかりイメージできる。Atmosによって高さ方向の音表現がしやすくなったことで、仮想スピーカーによって表せる音像の自由度も高くなったようだ。また、実際の映画で頭の上を宇宙船が通り過ぎるというシーンでも、映像と音の移動感が高精度にマッチしている。

 今回組み合わせたスピーカーは、'14年モデルのソニー製「SS-CS3」で、現在の実売価格は1万円台前半。サラウンドに使った「SS-CS5」もペアで2万円を切り、サブウーファ「SA-CS9」も2万円を下回る。特徴的な今回の新機能を、低価格なスピーカーとの組み合わせでも実現できており、今後より多くの人に、リアルな立体サラウンドが広まる可能性を持つ製品だと実感した。