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無料でも強力な動画/写真管理ソフト「Mync」。EDIUSの機能を独立、簡易編集も

 グラスバレーは、動画/写真/音楽の一元管理と動画の簡易編集ができるソフト「Mync(ミンク)」を3月1日より販売開始した。プロ向け映像編集ソフト「EDIUS 8」のコンテンツ管理機能を独立させたもので、コンシューマを含む幅広いユーザーを想定。Basic版とStandard版を用意し、6月30日までの期間限定でBasic版が無料、Standard版は4,980円となる。対応OSはWindows 7/8.1/10。

Mync

 4K動画を含む「メディアプレーヤー」と、写真/動画をメタデータで分類/整理できる「メディア管理」、直感的に操作できるUIの編集機能やYouTube/Facebook/Vimeoアップロードなどの「メディア活用」の3機能を統合したソフト。デジタルカメラ/ビデオカメラ、スマートフォン、アクションカムなどで撮影したファイルを一括して管理できる。

Myncのロゴ
メディアの再生、管理、活用の3つが軸

 放送/映像制作業界などで使われているノンリニア編集ソフト「EDIUS 8」のコンテンツ管理機能である「GV Browser」に、新たな機能を追加して販売するもので、「GV Browserのみを購入したい」という多くの要望に応えたという。なお、2月に開催された「CP+ 2017」において、キヤノンとパナソニックのブースで先行展示されていた。

 販売中の「EDIUS Pro 8」も、3月に提供開始されたVer.8.32にアップデートすると、既存のGV Browser機能がMyncに変更され、ストーリーボードのムービー作成やMP4出力といった、MyncのStandard版と同等の機能が利用可能になる。

 Myncのメディア管理機能としては、GPSや、写真のExif、ビデオカメラで撮影した動画に含まれる機種/動画フォーマット別の詳細な情報などをメタデータとして活用。例えば、パソコンやSDカードのファイルから、「キヤノンのEOS 5D Mark IVで撮った4K動画」だけに絞り込んで表示したり、自分でタグをつけて管理することもできる。

動画ファイルのみの一覧表示

 ユーザーの二ーズに合わせて、2つのバージョンを用意。 ハイアマチュアやフォトグラファーなどを対象としたStandard版は、新たなUIで操作感を向上させた「ストーリーボード」ビデオ編集機能や、XAVC/AVC Ultra/REDといったプロフェッショナルビデオフォーマットに対応したコンテンツ管理機能ができる。

ストーリーボード編集画面

 スマホユーザーや、一眼レフを始めたばかりの人などもターゲットとしたBasic版は、プレビュー機能とコンテンツの整理に特化。YouTubeやVimeo、Facebookなどへのシェア機能は、Standard版と同様に利用できる。そのほか、あらかじめ登録したFTPサーバーへのアップロードも可能。

 2つのバージョンの主な違いは、対応フォーマットの種類のほか、ストーリーボードのプレビューがBasic版は最大3本に制限される。Standard版はストーリーボードからのMP4書き出し(Intel Quick Sync Video対応)も行なえる。

アップロード先の選択画面
主な機能
BasicとStandardの違い
対応フォーマット

解像度変換で4Kも簡単再生。メタデータを元に管理/分類

 メディアプレーヤー機能としては、スマートフォンやデジタルカメラ/ビデオカメラで撮影したファイルについては、4K XAVC SやProRes、Grass Valley HQ/HQXなども含めて再生可能。静止画のRAWファイルは読み込みは可能で、Windows Imaging Componentを利用して表示もできる。Standard版は、XDCAMやRED、P2などの動画も再生できる。

 使用するPCの能力によって、4K動画が滑らかに再生できない場合は、解像度を1/2~1/16に変換して再生する「ドラフトプレビュー」機能も搭載。また、接続した外部ディスプレイのみフル解像度で表示するといった使い方もできる。また、撮影したビデオカメラのメーカー/ガンマを選んで適用することで、正しい色域でプレビューすることも可能。

色域を選んで、正しい色で表示/確認

 メディア管理は、一覧性の高いサムネイル表示や、画面の右側にプレビュー、左側にサムネイルを表示する方法も可能。

プレビュー画面
高速に動作するUIのデモ

 GPSを元に、撮影した場所を地図上に表示することも可能。GPS付きのカメラやスマートフォンで撮影した写真だけでなく、GPSを搭載しない一眼レフなどで撮影しながら、同時にスマホのトラッキングアプリなどを活用してGPXファイルを作成し、それらを同期することで、GPS付きの写真として管理できる。

GPSデータを使って地図上に撮影場所を表示

 タイムラプス撮影した静止画は、動画のように再生可能。ユニークな機能として、4Kタイムラプスなど高解像度かつ大量の静止画を連続再生する場合に、JPEGファイルに含まれるHDのサムネイルを活用することで、スムーズにプレビューできるというもので、ニコン製のカメラ(一部を除く)で動作確認済みとしている。

 SDカードなどからの取り込みは、クローンコピーして取り込む形となっており、取り込んだ日時などが分かる履歴も表示でき、履歴からの検索も行なえる。また、カメラの機種名や解像度などで絞り込んだファイルを「スマートカタログ」として登録/管理できる。

 バックアップなどで重複したファイルを絞り込んで表示することも可能で、不要なファイルを削除できる。ファイル名やサイズなどの一致のほか、バイナリを比較する完全一致検索にも対応。

重複クリップ検索

一覧性の高い「ストーリーボード編集」。アップデートでHEVC対応も

 「ストーリーボード」は、従来のビデオ編集ソフトのように横長のタイムラインを使うのではなく、複数のクリップを縦に並べて、クリップごとにイン/アウト点を指定。それを上から順に再生する形を採用しており、従来のタイムラインに比べて一覧性が向上。各クリップの順番もドラッグ&ドロップで簡単に並び替えられる。タッチディスプレイでの操作にも対応する。なお、音声ファイルの管理は可能だが、動画にBGMを加えるといったオーディオトラックの編集には対応しない。

ストーリーボード編集では、複数のクリップを縦に並べ、自由に入れ替えられる

 今後のアップデート予定として、ストーリーボードビデオ編集したファイルとEDIUS 8の連携にも対応。これにより、別のPCのMyncで素材の選定やトリミングなど簡易編集をした後に、EDIUS 8で本格的な編集をするといったことも可能になる。ファイルのやり取りはFCP XMLを使用する。

今後のアップデート予定

 また、H.265/HEVCのデコードにも対応予定で、パナソニックの「DC-GH5」で撮影した6K PHOTOをサポート。6K PHOTOから高解像度の静止画として書き出すことも可能になる。

 その他にも、今後の機能強化として、顔認識機能を使って同じ人物の写真をグループ化して探しやすくすることなども検討しているという。

従来のWindows Explorerのフォルダ管理やタイムライン編集の考え方を排除

 同社の編集ソフトEDIUSシリーズは登場から14年が経ち、現在は国内外の放送局を含む映像制作の現場において広く使われている。その一方で、「デジタルカメラや携帯電話で撮影する人などにとっては、操作が複雑でとっつきにくい印象を持たれることもある。そこで、気軽に動画編集を楽しんでもらうため、独立したソフトとしてMyncを発売する。これを機会に、動画編集をしていなかった方にも楽しんでもらえれば」とグラスバレーの北山二郎代表取締役はMync製品化の目的を説明した。

グラスバレーの北山二郎代表取締役
EDIUSシリーズは14年

 Myncはプロ向けのEDIUSを手掛ける神戸のエンジニアが開発。同社ストラテジックマーケティング バイスプレジデント&ジェネラルマネジャーの竹内克志氏は、「これまで『何月何日に撮影した』という以外のデータは活用されていなかったため、もっと活用できたら管理が楽になるのではと考えた。カメラメーカーとも相談し、どういったメタデータを入れれば管理しやすいかを考え、その一部を実現した。YouTubeなどにも簡単にアップロードできる」と説明した。

竹内克志氏
従来のフォルダ管理やタイムライン編集の考え方を排除
幅広いユーザーを想定

 開発にあたり、「Windows Explorerのフォルダで整理するという考え方を排除した」としており、例えば「SDカードからPCにコピーをとったかどうか忘れてしまい、結局のところ何枚もSDカードを買い足してしまう」といったことにならないように、目的のビデオを探しやすくして効率化することを追求。ビデオ、オーディオ、写真を別ソフトではなく一元管理できることも特徴として挙げた。

 また、動画編集については、「タイムラインにファイルを置いて編集するのが標準で、放送局ではその形式でないといけないが、“普通の人”には難しい」として、新しいUIを紹介。

 Myncはデジカメ/スマホユーザー以外に「テレビ局のワークフローも改善する」としており、EDIUSを使う編集者以外にも、制作/進行の担当者などが素材管理などに活用することなども見込んでいるという。