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ソニー、秒20コマ無音連写で4K動画対応“歴史を変える”ミラーレス「α9」。約50万円

 ソニーは、Eマウントを採用したフルサイズのミラーレスカメラ「α9」(ILCE-9)を国内で発表した。発売日は5月26日で、価格はオープンプライス、店頭予想価格はボディのみで50万円前後。

「α9」(ILCE-9)

 コンパクトカメラやスマートフォン向けセンサーで採用されていた、積層型CMOSセンサー「Exmor RS」。世界初となる、その35mmフルサイズ版を搭載。積層型CMOSは、裏面照射型CMOSの支持基板の代わりに、信号処理回路が形成されたチップを使い、その上に裏面照射型画素が形成された画素部分を重ねあわせたもの。今回のセンサーでは従来比20倍以上、読み出しスピードが高速化している。

フルサイズの積層型CMOSセンサー「Exmor RS」を搭載
センサーの背面

 スポーツや報道のプロフェッショナルによる使用を想定。有効画素数は約2,420万。進化した画像処理エンジン「BIONZ X」と組み合わせる事で、秒間20コマの連写が可能。撮影中のブラックアウトが無い「ブラックアウトフリー連続撮影」が可能。AF/AE追従は最大秒間60回。大容量バッファの搭載により、UHS-IIカード使用時にはJPEGで362枚、RAWで連続241枚まで撮影可能。これにより、被写体を常に確認しながらの連写ができるという。

積層型CMOSセンサー「Exmor RS」の構造。高速な読み出しが可能になっている

 画面内の93%をカバーする、693点の像面位相差AFに対応。コントラストAFと組み合わせた「ファストハイブリッドAF」の合焦スピードは、α7R IIより25%高速化している。

 ISO感度は静止画撮影時でISO 100~51200で、拡張でISO 50~204800相当もサポートする。14bit RAWでの記録も可能。

 画像処理の「BIONZ X」プロセッサも強化され、高感度でのノイズを低減。画質をより高めたという。

画像処理の「BIONZ X」プロセッサも強化された
「α9」(ILCE-9)

 高速読み出しでローリングシャッター歪みを低減。最高1/32,000秒まで、シャッター音を出さない無音撮影も可能。

 電子シャッターを採用しており、「サイレント撮影」に対応。緊張が高まるスポーツシーンや野生動物の撮影など、シャッター音を伴う撮影がはばかられるような場面でも撮影でき、無振動のため解像感への影響がなく高画質に撮影できるという。

 実際にさわってみると、サイレント撮影では完全に無音かつ、シャッターの振動も無い。フレームの外枠が点滅し、SDカードへ記録している赤いランプが光ることで、ようやく撮影されているとわかるレベルだ。

 そのため、“シャッターを切った”という感覚がほとんど無い。感覚を得たい場合は、設定でスピーカーから電子シャッター音を出す事も可能。また、メカシャッターを動作させる事もできるので、従来のミラーレスと同じような気分で撮影する事もできる。ただし、メカシャッター撮影時は秒間5コマの連写となる。

α9 シャッター音の違い

4K動画撮影も可能

 4K(3,840×2,160ドット)/30p/100Mbpsの動画撮影も可能。フルサイズ領域での画素加算のない全画素読み出しにより、6K相当のデータを撮影し、それを凝縮して4Kで記録するため、オーバーサンプリング効果で高精細な4K動画が撮影できるという。動画撮影時もファストハイブリッドAFが利用可能。

側面

 1080pでの録画では、最高1080/120fpsの高速撮影も可能。その際は100Mbpsでの記録が可能で、フルHDで4倍、もしくは5倍のスローモーションビデオが撮影可能。撮影時にはAFも追従する。

 4K動画から約800万画素、フルHD動画から約200万画素の静止画を切り出す事も可能。HDMI端子から、アイコン表示などの無いクリアな映像出力も可能。

 センサーシフト式の5軸手ブレ補正も搭載。効果は最大シャッタースピード5段分。

 有機ELで、約369万ドットのファインダーを搭載。光学設計にもこだわり、ファインダー倍率は0.78倍。コーナーも鮮明に見えるという。ツァイスのT *コーティングも施されている。輝度はα7R IIの2倍。フレームレートは60fpsか120fpsを選択可能。

有機ELで、約369万ドットのファインダーを搭載

 プロ向けの機能として、Ethernet端子を装備。撮影したデータを、FTPサーバーへ高速伝送できる。SDメモリーカードスロットはデュアルスロットで、片方はUHS-II対応、もう片方はUHS-I対応SDとメモリースティックDuoをサポートする。

SDメモリーカードスロットはデュアルスロット

 バッテリも改良。従来のWバッテリに比べて2.2倍に容量が増えたZバッテリ「NP-FZ100」となっている。USBからの充電は引き続き対応している。また、別売の縦位置グリップ「VG-C3EM」(35,000円)を取り付けると、バッテリを2個装着でき、1つ目のバッテリが無くなると自動的にバッテリを切り替えて連続撮影できる。最大4個を使った長時間撮影を可能にする別売のマルチバッテリーアダプタキット「NPA-MQZ1K」(42,000円)も利用可能。

2.2倍に容量が増えたZバッテリ「NP-FZ100」
別売の縦位置グリップ「VG-C3EM」を装着したところ

 操作面も改良。AFエリア選択に使えるマルチセレクタージョイスティックを備えるほか、ドライブモードダイヤルとフォーカスモードダイヤルをカメラ上部に独立して搭載している。

背面
上部

 背面のモニタは3型、144万画素。タッチパネル式で、タッチAFも可能。Wi-Fi/NFC/Bluetoothも搭載し、スマートフォンとも連携可能。

背面のモニタは3型、144万画素。タッチパネル式で、タッチAFも可能

 外形寸法は約126.9×95.6×63mm(幅×奥行き×高さ)で、重量はバッテリと記録メディアを含めて約673g。ボディはトップカバー、フロントカバー、内部フレーム、リアカバー全てにマグネシウム合金を採用。グリップをフロントカバーと一体化させている。防塵防滴にも配慮した設計になっているという。

マグネシウム合金を採用

「歴史を変える、ブレイクスルーとなる製品」

 ソニーマーケティングの河野弘社長は、サポート面も含めて、これまでのαシリーズをコンシューマだけでなく、プロユーザーにも訴求してきた経緯を説明。その上で、今回のα9を「プロにアピールできる商品に仕上がっていると考えている。この性能を活かしていただくことで、撮影の表現の可能性はさらに広がっていく」と期待を込めた。

ソニーマーケティング河野弘社長

 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ デジタルイメージング本部 マーケティング部門の坂本裕司部門長は、昨年の熊本地震により、ソニーのイメージセンサーの工場が影響を受け、そこから復旧した経緯を説明した上で、「復旧だけでなく、“開発中のイメージセンサーのプロジェクトを止めない”というのも大事なミッションだった。被害を乗り越え、なんとしてもこのセンサーを搭載したカメラを商品化するのが大きなプロジェクトになっていた。表現の無限の可能性を解放する、カメラの性能限界を突破する夢のイメージセンサー」とα9に搭載されたフルサイズ積層型CMOSへの想いを語った。

ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ デジタルイメージング本部 マーケティング部門の坂本裕司部門長

 その上で、α9というカメラについて、「20年前にデジタルカメラが登場した。しかし、デジタルになっても、スピード性能の面では一眼レフが頂点だった。それゆえ、メカデバイスがカメラのサイズと重量を規定していた。しかし、電子がメカの性能を追い越し、置き換えたらどうなるか。より高速に、より小型軽量になる。(α9の登場により)真のデジタル時代が始まると考えている。歴史を変える、ブレイクスルーとなる製品」と、α9の革新性をアピールした。

 さらに発表会では、名だたる海外のカメラマン達が、実際にα9を使ってみての感想もビデオで上映。「大型の一眼レフカメラが時代の中心でしたが、その時代は終わりです」、「カメラはどうあるべきかを考えさせられる斬新なカメラ」、「動物たちに影響を与えるシャッター音が無く撮影できるので動物撮影にピッタリ」といった称賛の声を紹介した。

カメラマン達が実際にα9を使って撮影した感想も上映された

「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」も登場

 α9と共に、35mmフルサイズ対応のEマウントレンズとして初めて、焦点距離400mmまでをカバーするGマスターの超望遠ズームレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」も発表された。発売は7月の予定で、価格は32万円。

 プレミアムレンズシリーズのGマスターとして、高い描写性能で広い望遠域をカバーするレンズで、スポーツや野生動物の撮影などに対応できるという。色収差を低減するED(特殊低分散)ガラス2枚と、スーパーEDガラス1枚、フレアやゴーストを抑制する独自のコーティング技術「ナノARコーティング」を採用した最新の光学設計を採用した。

 ダイレクトドライブSSMとダブルリニアモーターによるフローティングフォーカス機構と、最適化されたAFアルゴリズムによる高速性・追従性に優れたAF駆動も実現。最短撮影距離は0.98m、最大撮影倍率0.35倍の近接撮影も可能。着脱式の三脚座を除いた重量は1,395g。

α9に「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」を取り付けたところ