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密閉と開放の利点が共存した49,980円の新イヤフォン「AZLA」。BA+ダイナミック同軸

 アユートは、新イヤフォンブランド「AZLA(アズラ)」の取扱を開始。ブランドと同じ名前の「AZLA」というイヤフォンを発売する。発売時期は7月末~8月上旬を予定。価格はオープンプライスで、直販価格は49,980円(税込)。カラーはMeteor Gray、Lunatic Silverの2色。独自開発となる一体型モジュールドライバー「Infinity Driver」を搭載している。

「AZLA(アズラ)」のMeteor Gray

 iriverに長年勤務していたAshully Lee氏が、様々な企業のヘッドフォン開発スタッフを招き入れ、2017年に設立したイヤフォンメーカー。社名は天空を意味する「AZURA」と、ラテン語で石を意味する「LAPIS」を組み合わせた造語で「天空のかけら」を表現。「未だ地球上に存在していない、新次元のサウンドをオーディオファンに提供する事」を理念としている。

「AZLA」のロゴマーク

 一般的に、開放型は空間表現に優れ、密閉型は低域の表現力に優れるという特徴があるが、その両方を兼ね備える、“密閉型でありながら、開放型の特徴も追求”。その具現化のために、独自開発となる一体型モジュールドライバー「Infinity Driver」を搭載した。

左からMeteor Gray、Lunatic Silver

 ドライバの構成としては11mm径のダイナミック型ユニットと、BAのフルレンジユニットを各1基採用したハイブリッド型。各ユニットの配置に特徴があり、ダイナミック型ドライバの中央を、BAのノズルが貫通しているような同軸配置とした。BAに対して、ダイナミック型を横にするなど、従来のレイアウトでは位相差や反射波が発生したり、イヤフォンのサイズが大きくなってしまうなどの問題があったが、同軸配置では解消できるという。

 このドライバはDynamic Motionが手がけているもので、「BED」と呼ばれる技術を使っている。全帯域に渡って、自然で正確な再生が可能という。

一般的なハイブリッドタイプはこのようにユニットを組み合わせているが
BEDは同軸配置になっている

 BEDの同軸ドライバは、精密切削加工したアルミの筐体に搭載。この筐体には2つの大きなポートが開いており、開放型としての空間表現を追求。さらに、このアルミ筐体を覆うように、ポリカーボネートの透明なシェルを採用。シェルで覆う事で、低域の再現性向上など、密閉型としての特徴も付加している。ただし、透明シェルは完全密閉ではなく、空気を調整するための小さな穴は設けている。この技術は「Infinity sound technology」と名付けられている。

 ユニットの「BED」と、「Infinity sound technology」を組み合わせたものが、「Infinity Driver」となる。インピーダンスは24Ω。再生周波数帯域は5Hz~40kHz。

内部のアルミ筐体が透けて見えている

 なお、内部のアルミ筐体と、外側の透明シェルは、どちらも上下2つのパーツを組み合わせた構造になっており、不要共振を防いでいる。

Infinity Driverの分解図
左上の霧のようなビジュアルは、BEDのドライバを搭載したアルミ筐体のポートから出た空気をビジュアル化したもの。この空気が、透明シェルの中に広がっているのがわかる
AZLA テクノロジー イメージ動画

 ケーブルは着脱可能で、イヤフォン側は2ピン端子を採用。ケーブルメーカー・Labkableの「Silver Galaxy Mix MKII」をベースとしながら、AZLA向けにチューニングしたという。手組みによるしなやかな取り回しの良さも特徴。素材には高純度銀合金と、6N OFCが使われている。入力端子はステレオミニの3極。

ケーブルは着脱可能
入力端子はステレオミニの3極

 Dignisが手がけた、専用キャリングケースも同梱。素材にファブリックを使い、汚れに強く、撥水効果もあるという。内部にはイヤフォンや周辺機器をスムーズに収納するため、独自の形状で分割されている。

専用キャリングケース

 交換用の2.5mm/4極バランスケーブル「AZLA Silver Galaxy Mix+ 2.5mm Balanced」の単体販売も予定。発売日は未定だが、価格は29,980円(税込)。

音を聴いてみる

 Ashully Lee氏は、AZLAの開発で目標としたサウンドについて、「リスニングして楽しいイヤフォンを追求し、開発した。アズラというブランドは今後も、まったく新しいドライバを使い、製品開発をしていきたい」という。

Ashully Lee氏

 外観は写真の通り、クリアパーツが目立つ涼しげなデザイン。装着してみると、中央のアルミ筐体が露出した部分が耳に当たり、ヒンヤリする。夏には気持ちが良い。ただ、しばらくつけていると体温で温まるので違和感は無い。

 AK380を接続して音を聴いてみる。藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生すると、1分過ぎからのアコースティックベースの低音が、非常に豊かに「ズズーン」と地鳴りのように響いてくる。驚くべきは、こんなに力強く低域が出ているのに、その響きがモワッと全帯域を覆わず、中高域は非常にクリアなままである事だ。

 「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」も、出だしからベースが「ヴオーン」とエネルギッシュに吹き出すが、あくまで低域部分のみで、中広域はヌケが良く、シャープだ。例えるなら、ニュートラルなバランスに調整したホームシアターで、サブウーファのボリュームだけをほんの少し上げ目にしたような印象。そのサブウーファも、インシュレータなどで振動対策をキッチリして、余分な振動を部屋に伝えないようにしたサウンドを彷彿とさせる。

 「坂本真綾/Million Clouds」や「宇多田ヒカル/花束を君に」を再生すると、「開放型と密閉型のいいとこどり」を狙ったサウンドの魅力がよくわかる。音場が広く、音が奥まで広がる様子がよくわかるが、ベースやボーカルの中低域部分はしっかりと前に張り出し、パワフルに吹き寄せてくる。これだけキッチリと制御された低域はなかなか珍しい。音場が広いだけのイヤフォンだと、そこにポツンと音像が定位するだけで寂しさを感じてしまうものだが、このイヤフォンの場合は、“広大さと雄大さ”が共存できている。

 いわゆる低音がドンドコと主張する“重低音イヤフォン”ではなく、ピュアなハイファイサウンドだが、低音の低い部分だけを気持ち強めにする事で、個性というか、音楽を聴いていて気持ちが良い、“乗れる”サウンドに仕上げている。確かな実力と共に、楽しさも感じるニューフェイスだ。