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透明なガラス指紋センサーやVR/電子ペーパーなど、JDIが新規事業を加速

 ジャパンディスプレイ(JDI)は23日、VRやPC、ウェアラブルなどの分野を担う同社ディスプレイソリューションズカンパニーの事業説明会を開催した。同カンパニーの湯田克久社長とJDI執行役員CMOの伊藤嘉明氏が登壇し、新製品の指紋認証センサーや高精細電子ペーパーなどを披露。今後の同社ビジネスの方向性などを示した。

静電容量式ガラス指紋センサーのパッケージ品
JDI執行役員 ディスプレイソリューションズカンパニーの湯田克久社長(左)とJDI執行役員 CMOの伊藤嘉明氏(右)

 今回披露されたのは、23日に開発発表された静電容量式のガラス指紋センサー。2018年中の量産出荷を予定している。スマートフォンやデジタルカメラ向け液晶で展開している「Pixel Eyes」に搭載されているタッチ入力技術の原理を応用した透明な指紋センサーで、サイズ拡大も容易に行なえ、様々な場所へ搭載可能としている。将来はフレキシブル化により、デザインの自由度向上も見込んでいる。

 一般的に使われているシリコン製の指紋センサーとの違いとして、ガラスの高い透明性などの特徴を活かし、バックライトやディスプレイなどと組み合わせた利用が可能。映像を表示した上からでも指紋を認識でき、新たな指紋センサーの用途拡大を見込んでいる。有効センサーサイズは8×8mm(0.45型)。階調数は256、解像度は160×160ドット。精細度は508dpi。

 シリコンに比べて曲げに強い点を活かし、決済や出入室記録などの個人認証付きスマートカードも実現可能としている。現在スマートフォンやノートPC向けで使われているシリコン製指紋センサーからの置き換えも想定している。

ガラス指紋センサーのパッケージ品
透明品
720×600mm大判ガラスでの生産も
静電容量式ガラス指紋センサーの特徴
指紋センサーの組み合わせ例

 15日に発表した、E Inkを用いた30cm-wide高精細電子ペーパーも披露した。スーパーマーケットなどの電子棚札向けで、LTPSの狭額縁により、棚幅をフル活用した表示が可能。画素密度は198ppiで、漢字表記にも対応。色数は3色(白、黒、赤)。解像度は2,242×335ドット。反射率はTyp.40%、コントラスト比はTyp.15:1。高精細化については、既に600ppiも開発済みだという。

30cm幅の高精細電子ペーパー
狭額縁などを活かした表示が可能

 また、'17年12月に開発を発表した、画素密度803ppiのVR用ディスプレイも展示。高速応答を特徴とするVR専用に開発されたIPSモードを採用。1,000ppi超のディスプレイについても、2018年上期に開発を完了予定としている。

803ppiのVR用ディスプレイ
VR用ディスプレイの特徴

2020年の売上1,000億円へ、ディスプレイを売る以外のビジネスも

 ディスプレイソリューションズカンパニーの目標として、2020年度には現在の約2倍となる売上1,000億円規模を掲げており、それに向けてディスプレイには固執せず、センサー事業やソリューションビジネスなどの新規分野を展開。カンパニー制のメリットである素早い判断や小さいオペレーションを活かし、新規事業を迅速に立ち上げることを目指している。JDI全体の事業として現在展開しているスマートフォン、車載に続く第3の柱の構築を担うのが同カンパニー。

ディスプレイソリューションズカンパニーの目指す姿
'18年以降のキーワードとなる分野と同カンパニーの関わり

 現在はハイエンドデジタルカメラの液晶モニターが売上の中心となっており、現在成長しているというスマートウォッチなどのウェアラブル向け反射型液晶は、'17年度に1,000万台の出荷を見込んでいる。これらに続く事業として、VRやハイエンドノートPC、指紋センサー、反射ディスプレイ(E Ink、液晶)の計6分野で、2020年度の目標である売上1,000億円規模を目指す。湯田氏は、売上の内訳について6分野が同等規模になることをイメージしているという。

湯田克久社長
既存事業と新規事業
ウェアラブルの現行製品に採用されている反射型液晶。成長事業と位置付けられている
超低消費電力の反射型液晶
電子宅配システムへの応用例。宅配便などの伝票のように液晶を貼り付ける
宛先だけでなく、手書きメッセージなども添えられる
4K2KなどのノートPC用ディスプレイ
狭額縁の3K2Kディスプレイも

 ディスプレイやセンサーなどハードウェアを中心とした既存/新規マーケットを湯田氏が担う一方で、ディスプレイなどの技術を応用した新規ソリューション開拓については、かつてハイアールアジアグループやアクアで社長兼CEOを務め、'17年10月にJDIのCMOに就任した伊藤嘉明氏が行なう。

伊藤嘉明CMO

 伊藤氏は「ディスプレイがディスプレイとして機能する時代は終わり、一つのインターフェイスとして位置付けられている」とし、フレキシブルや超高精細などの同社技術を活かした“インタラクティブデバイス”としてのディスプレイを提案。活用事例としては、「観光AR」、「スマートカード」などのほか、センサーなどを活かした「シンクライアントテーブル」や「ヘルスモニタリングミラー」、「ヘルスモニタリングミラー」、「自動運転アシスト」、1,000ppiを超える高精細な「エクストリームVR」などを挙げた。

 伊藤氏はビジネスのイメージとして、「モノに対価を払う売り切りビジネスは、競合との価格競争に巻き込まれ、利益が出ないのが課題。“モノ作りだけではないコトづくり”によって、一回で利益を上げるのではなく、サービスを通じて利益を上げる課金ビジネスを考えている。ディスプレイを売るのではなく、異業種と組んで新しいサービスを提供する。相手は大企業である必要はなく、ベンチャー、政府、教育機関なども考えられる」とした。

JDIの描く未来