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NHKの放送同時/見逃し配信は利用率20%。データ通信量に懸念も

 NHKは、テレビ放送の番組をインターネットで同時または見逃し配信する「試験的提供B」の実施結果を発表。2017年10月30日~11月26日に行なわれたもので、各日の利用率は20%前後。10代、20代も40%弱~50%が利用し、満足度は約90%だったため「視聴機会の拡大の可能性がある」としている。なお、今回の同時配信は、昨年度までとは異なりNHK受信契約者に限定せず募集している。

サービス全体の利用率

 '17年の試験的提供Bは、総合テレビとEテレにおいて同時配信と、見逃し配信(同時配信後から1週間視聴可能)、早戻し配信(同時配信中の番組を最初から視聴)を行なった。午前5時~翌午前1時までの1日20時間以内(見逃し配信は24時間)に渡り、東京、神奈川、埼玉、千葉で放送している番組が配信された。なお、地域向け調査では、地域放送番組について、大阪局と静岡局の番組を各地域限定で配信した。調査人数は8,007人で、テレビ非保有者を含む。このうち、若者調査として107人の15歳~25歳男女(関東)に利用を依頼している。

 アプリの仕様は、昨年度はログイン後に利用者が同時配信または見逃し配信を選択するようになっていたが、今回はログイン直後に総合テレビの同時配信が始まるようにした。このため、サービス全体の利用率と同時配信の利用率がほぼ一致する結果となっている。

アプリの仕様変更

 サービス全体の日別の利用率は平均で約20%。最後の1週間の利用率は平均約16%となった。一般向け調査の累計利用率は59.5%(同時配信59%、見逃し配信53.9%)。地域向け調査では近畿が58.2%、静岡が57.4%。

 普段のテレビやネットの利用状況として、主にネットを利用する層や、ネットのみ利用する層の利用率は、全体の傾向と変わらない結果となった。この“ネット中心層”を年代別に見ると、30代では6割以上が利用し、10代も約4割、20代も約5割が利用した。

「ネット中心層」の利用率

 同時配信や見逃し配信の時間帯別の平均利用率をグラフで見ると、同時配信は8時、12時、17時以降に視聴の山があり、見逃し配信は17時以降が山になっている。これは、テレビ視聴と近い結果になっている。

時間帯別の視聴数

 時間帯/場所別では、「夜、自宅」が最も多く、自宅での利用率が高い一方で、移動中や外出先でも利用された。インタビュー調査では、「外出時にデータ通信量が気になって視聴しなかった」という回答もあった。

 同時配信や、見逃し配信の満足度は、「満足」と「やや満足」の合計がいずれも全体の約9割。年代別やメディア利用状況別、テレビ保有の有無別で比べても大きな違いはなかった。また、災害や緊急時の同時配信は、年代に関わらず利用意向は約9割だった。

 ネット配信の利用者による、テレビ番組の視聴時間は、実験前から実験期間中に掛けて変わらなかった。アンケートでは「テレビがついている時間は変わらなかった。NHKはお風呂用と考えていて、その分だけ視聴時間は増えた」や、「YouTubeを見る時間が多少減った」との意見もあった。

テレビ番組の視聴時間の変化

 同時配信が常時実施された場合の利用意向は6割強、見逃し配信は9割弱が利用意向を示した。いずれも年代による大きな違いはなかった。「どのようになれば今後利用したいか」という質問への回答では「民放の番組が見られること(28.3%)」や「データ通信料を気にせず利用できること(28.3%)」などが挙げられた。

 テレビで放送されてから、アプリやWebで配信されるまでの遅延は、東京での実測値で約27~52秒。ログイン認証の負荷は、実験中のピークは1分あたり150同時アクセスで、「問題なく安定稼働できた」という。なお、画質はデフォルトでモバイル通信が「低」、Wi-FiとLANが「自動」(環境に合わせてビットレート選択)となる。配信ビットレートは、放送同時/早戻しが最大1.5Mbps、見逃しが最大1.2Mbpsで、解像度はいずれも950×540ドット。最低画質は192kbps、448×252ドット。

放送とネット配信の遅延

 一般向け調査の同時配信において視聴人数が多かった番組ジャンルはスポーツや報道・解説など。1位は10月30日「鶴瓶の家族に乾杯 東京2020SP メダリスト三宅宏実とぶっつけ本番旅」で同時配信数は308人(UU)、2位は11月11日の「2017 NHK杯フィギュア 女子シングル・フリー」、3位は10月30日の「ニュースウォッチ9」。

 見逃し配信の1位は、10月30日の「5分でわかる『おんな城主 直虎』第43回『恩賞の彼方に』」で1,345人(UU)。2位は10月30日「鶴瓶に乾杯」、3位は10月25日「ニュース7」。