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Netflix×KDDIの提携は「アクセスのシンプル化」。スマホで月100時間見られる新プラン
2018年5月30日 11:46
5月29日、NetflixとKDDIは提携を発表、今夏にもNetflixの映像配信サービスと通信料金をセットにサービスを展開すると発表した(別記事参照)。発表会にあわせ来日した、Netflix・プロダクト最高責任者(CPO)のグレッグ・ピーターズ氏がグループインタビューに答えた。
「SDコンテンツを450kbpsで100時間見られる」サービスに
―KDDIとのパートナーシップの意味はなにか。
ピーターズCPO(以下敬称略):今回の提携で、Netflix会員にとって、よりコンテンツへのアクセスがシンプルになります。auユーザーであれば、加入すれば25GBのデータ通信量がセットということもあって、すぐに楽しめます。
「25GBでは足りないのでは?」、と思われるかもしれませんが、エンコーディング技術を含めた改善をしています。現在は、より少ないデータ数で動画を配信できるのです。アニメが特に顕著なのですが、150kbpsでも、本当にいい画質と感じていただけるはずです。
今回のプランを作り上げる際、どれくらいのデータ通信量が適切かを検討しました。平均的なモバイルでの動画視聴時のビットレートを「450kbps」として計算すると、25GBならば月100時間分になり、十分な時間楽しんでいただけるのではないでしょうか。画質も、450kbpsであれば、ほとんどの方には、「これで十分」と感じてもらえるはずです。
それでも「まだ不足する」という声が多いのであれば、プランに変更を加えたいと考えています。
―一般にSD画質場合、どのくらいのビットレートで利用される場合が多いのか。
ピーターズ:国によって通信品質が異なり、まちまちです。日本のように、ある程度インフラが整っている国ならば、数百kbps程度が中心でしょう。
KDDIでの契約は「よりシンプル」、夏にはさらなる発表も?
―auユーザーの場合、入会プロセスは、通常の会員登録と違うのか。
ピーターズ:通常の会員登録も簡単にしていますが、auユーザーであれば、よりシンプルです。クレジットカードの登録も必要ありません。
―今回の提携はNetflix側からKDDIへ打診したそうだが、その理由は?
ピーターズ:サインアップしやすいこと、より簡単に我々のサービスを楽しんでいただけることを考えました。KDDIとはその自然な一歩として、何か特別なことができないか考えたのです。
―ソフトバンクとの関係は、どう評価されているのか。
ピーターズ:ソフトバンクとの関係は今後も継続します。日本でのサービス開始時からご一緒していて、ソフトバンクさんを通じてNetflixを知っていただくなど、素晴らしいパートナーです。
ただ、もっと新しいことにチャレンジしたいと考えていました。KDDIでの料金とのバンドルは、使いやすさを提供できるもので、新たなパートナーシップになったのです。
―他の携帯電話事業者との提携例で、どのような成功事例があるか。
ピーターズ:実は、アメリカ以外で携帯電話会社とのバンドル契約をするのは初めてのこと。今後世界中で進めていきたいです。
―米・T-mobileとの提携を通じて、Netflixが学んだことは?
ピーターズ:ユーザーにとって何が簡単なのか、ということです。より簡単であれば、加入が進み、作品の視聴も進みます。
もう1つは、我々から携帯電話事業者をキャリアをサポートできる部分があった、ということです。T-mobileは「アンキャリア」(筆者注:通信事業者ではなく、サービス事業者である、というT-mobileの戦略キャッチフレーズ)と自ら名乗ったわけですが、我々がパートナーになることで、そのスタンスを表現できているのです。
―今回のauとの提携は、独占的なものか?
ピーターズ:米国ではT-mobileが最初のバンドルパートナー。すなわち、KDDIさんは世界で2番目のパートナーです。これがエクスクルーシブなものかどうかは、今夏のローンチの時にまたあらためてご案内したいです。
―ということは、J:COMとの関係も夏までは話せない?
ピーターズ:(笑)J:COMとは、ディスカッションさせてもらっているのは事実。でも、契約など発表できるものは特にありません。もう少しお待ちください。
機能の選択は「利用の壁を下げる」目的で検討
―モバイルからの利用比率は?
ピーターズ:会員の大多数が、モバイルでもテレビでも作品を観ています。ただ、デバイスによって見方は違います。Netflixとしては、どういうタイミングでどういう視聴スタイルになるのか、掘り下げていきたいです。
とはいえ、モバイル向けコンテンツは制作しません。しかし、10分・20分と短い時間がある時、どういう形であれば一番コンテンツを観やすくなるのか、それは考えていきたいです。
―Netflixには3つの料金プランがあるが、それぞれの利用率は?
ピーターズ:具体的な数値はお伝えできませんが、3つのプランは、同じくらいの割合で利用されています。KDDIの場合には、T-mobileさんと同じようにベーシックプランをバンドルすることになり、もっと高いプランは少額の追加で選べるようにしています。今後は、自然と分散していくでしょう。
――Netflix自身の調査で、時間が経つにつれてモバイルよりもテレビのほうの視聴になるという話がある。日本でも同じ形になるのか。携帯電話会社であるKDDIとの提携で、モバイルからテレビに広がると期待しているか。
ピーターズ:個人的には、日本も似たような推移になるとではないかと思っています。市場によって特色があり、日本はモバイル環境で楽しむ人が多いであろうエリアです。今回のプランでは、データ通信量での心配がないので、テレビでの利用もあるでしょうが、モバイルでも利用されると思います。
――日本以外の国で、モバイルの利用が多い国は?
ピーターズ:韓国やフィリピン、北欧ですね。ただ、国によりますし、徐々に変化していくと思います。
――Netflixのアプリをいかに起動させるのか、どうコンテンツを選びやすくするのか、そのあたりでの工夫は?
ピーターズ:利用をさまたげる壁は低くしたいと思っていますので、アプリを迅速に起動できるという点などは追求していきます。アプリを立ち上げるときに、何か報われるような感覚、興味をそそられる感覚を提供したいです。
―最近、スマホアプリ版のリニューアルにより、「作品のプレビュー機能」が導入されたその効果は?
ピーターズ:プレビュー機能は、まさに利用を促進するモチベーションとなる機能です。映画やテレビの作品では予告編がありますよね。そういう仕掛けをアプリに盛り込もうとしました。プレビューを楽しんだ結果、今時間があるから観ようか、あるいは今夜観てみようか、という行動につながります。
―ドコモテレビターミナルなど、Android TVの一部でNetflixが利用できないようだが、対応の考えは?
ピーターズ:そこは2つの側面があります。
Android TVについては、ジェネリックなプラットフォームとして、Googleとも協力の上、アプリを開発しています。ただし、Android TVのプラットフォームをメーカーが採用する中で、Netflixのアプリが利用できないケースもあります。ドコモの件については、ドコモ側からアプローチをまだ受けていません。我々としてはぜひお話はしたいです。
―テレビのリモコンにNetflixボタンが搭載されたときには驚いた。あらためてその経緯と成果を教えてほしい。
ピーターズ:それも、会員が簡単にNetflixを使えるようにする、という流れです。ご存じのようにソニー・東芝・シャープ・パナソニック・LGなど、多くのメーカーと同じように取り組ませていただいています。「これはユーザーにとって便利なものだ」と説得できたからこそ実現できたのだと思います。
競合は気にしない。「KDDI独占コンテンツ」は作らない
―Netflixには複数の映像配信のライバルがいるが、競合をどう見ているか?
ピーターズ:携帯電話業界での競争は「ゼロサムゲーム」です。たとえばKDDIが顧客を増やす時には、他事業者から顧客を奪わねばならない。
一方映像配信はそうではありません。ユーザーが楽しみたいときに、食事やテレビ鑑賞など、様々な選択肢のひとつとして、映像配信が選ばれるからです。
そこでNetflixでは、競合他社にあえて焦点を当てていません。我々が一番大切にしなければいけないのは、会員にバリューのあるものを届けられているかどうか。視聴しやすいか、観るに値する質の高いコンテンツかあるかどうかです。「Netflixだけを使ってほしい」ということはまったく考えていません。
―Netflixが、auユーザー向けに、先行してコンテンツを公開したり、独自コンテンツを制作したりする可能性は?
ピーターズ:我々は、グローバルな顧客に満足してもらえるよう、幅広く考えています。独占的なことをするよりも、幅広い方々に満足してもらえることのほうがより良いと考えています。
―KDDIと作品を共同制作し、日本から世界へ作品を届ける可能性は?
ピーターズ:現在、そうした話はしていません。ただ、KDDIさんもさまざまな作品の製作委員会に参加しています。製作サイド同士として、そうした展開は考えられます。その場合には、グローバルに展開するコンテンツを作ることになるでしょう。