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“自然界に近い音場感”という富士フイルム新スピーカー「φ」を聞く

 東京 有楽町で6月16日、17日に開催されるオーディオ関連展示会「OTOTEN 2018」。これまで“オーディオ”との関わりがそれほど強くなかった富士フイルムが出展している。出展内容は、生演奏に近いクリアでキレのある音質と自然な音場感を生み出すというスピーカー技術「φ(ファイ)」の試聴デモとなっており、独自の電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」を使ったスピーカーを紹介し、来場者やオーディオ関係者に訴求している。

富士フイルムのφスピーカーシステム。独自の柱状スピーカーとサブウーファの2.2ch構成

 スピーカー技術「φ」は、磁石やコイルなしに電気信号で直接振動する富士フイルム独自の電気音響変換フィルム「B.E.A.T.」をスピーカーの振動板として採用。独自のユニット構造とあわせて、クリアでキレのある音質と、「点音源・全指向」に近い特性による自然な音場感を生み出すというもの。

 OTOTEN会場では、ECLIPSEのサブウーファ「TD725sw」と組みわせた2.1chシステムを構成し、B.E.A.T.とφの特性の良さを紹介。試聴にも長い行列ができていた。

 B.E.A.T.は、圧電セラミックスの微粒子と粘弾性ポリマーを複合化。電気信号で直接振動するため、立ち上がり速度の高速化を実現できるほか、一般的なスピーカーのコーン紙の約3倍の内部損失を有するため、立ち下がり速度の高速化と低ノイズ化にも成功している。そして、B.E.A.T.を吸音材で圧着した薄型スピーカーユニットを開発。このスピーカーユニットを4個用いて、柱状の多面体構造とすることで、水平面内において360度全方向に音を放射し、幅広い音域で均一な音の広がりを可能とする。

富士フイルムのφスピーカーシステム。独自の柱状スピーカーとサブウーファの2.2ch構成
B.E.A.T.

 試聴してみたが、アコースティックギターのアタック感やピアノの音の消え際のレスポンスの良さが印象的。音場の広がりも自然だ。一方、ボーカルのセンター定位が、一般的なスピーカーとは違うように感じられた。ビル・エヴァンス「Waltz for Debby」は、シンバルの微かな音がくっきりするだけでなく、会場のざわつきやノイズまでも鮮明にわかってしまい、ライブ感がぐっと高まる。富士フイルムが主張するような音の傾向は実感できた。

 今回のシステムでは、柱状のφスピーカーは200Hz~20kHz以上を、200Hz以下をサブウーファに割り当てて再生した。φスピーカーの駆動には、高電圧が必要なため、パワーアンプは一般的なものではなく、専用のアンプを開発する必要がある。この点は製品化時の課題となりそうだ。

 今回は自社開発のパワーアンプを利用しているが、オーディオメーカーと協力して開発したり、あるいはB.E.A.T.デバイスのみを外販するなどの展開を含めて、「様々な可能性を探っている」とのこと。ハイエンドオーディオ機器や業務用音響機器への応用展開を有望と考え、今回のOTOTENで来場者やオーディオメーカーに訴求していくという。