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キヤノン、新“RFマウント”搭載のフルサイズミラーレス「EOS R」

 キヤノンは5日、35mmフルサイズのCMOSセンサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ「EOS R」を発表した。新たなRFマウントを採用し、ボディの価格はオープンプライスで、直販サイトでの予定価格は237,500円。10月下旬に発売する。別売のマウントアダプタを介して、従来のEFレンズやEF-Sレンズを使うこともできる。また、新しいRFマウント用レンズも多数発表した。

「EOS R」

 センサーは有効3,030万画素。AFエリアは5,655ポジションから選べる。ISO感度は100~40000で、拡張時は102400まで設定可能。シャッター速度は1/8,000~30秒。連写は最高8コマ/秒で、サーボAF利用時は最高5コマ/秒となる。

フルサイズのセンサーを搭載
5D Mark IV(右)と並べたところ

 デュアルピクセルCMOS AFを採用。RFレンズの制御と最適化し、最速約0.05秒の高速AFを実現した。RFマウントの内径は54mmで、バックフォーカスが短いのが特徴。

「EOS R」

 手ぶれ補正機能は、レンズのジャイロセンサーに加え、撮像センサーの画像情報からもブレ情報を取得し、高精度な補正を行なう「デュアルセンシングIS」を搭載。静止画撮影時の効果は最大5段。

RFマウントのレンズも発表された

 静止画はJPEG、RAW、C-RAWでの撮影に対応。RAW現像ソフトの「Digital Photo Professional」は、PQ方式でのHDR静止画表示に対応し、RAWデータが持つ豊富な情報を元に、ダイナミックレンジの広い画像の表示や編集ができる。

 4K/30p、フルHD/60p、HD/120p撮影が可能。4K動画時のビットレートは約120Mbpsだが、編集用(ALL-I)として最大約480Mbpsでの撮影も可能。ファイル形式はMP4、MPEG-4 AVC/H.264。4K撮影時、常用最高ISO感度を12800に設定できるため、暗いシーンでも感度を上げて撮影できる。

 動画撮影時の手ブレ補正効果も強化。IS搭載のRFレンズ装着時は、レンズ側のISで補正しきれていないブレ量を、カメラ側の映像情報で検出、補正効果を高める。さらにカメラ側の動画電子ISと、レンズ側のISの双方を新マウント通信によって協調制御、コンビネーションISとして強力な手ブレ補正効果を実現する。

 また、従来のIS搭載EFレンズとの組み合せでは、レンズ側の手ブレ補正と電子式手ブレ補正を組み合せた5軸補正(レンズ側:水平回転、縦回転/カメラ側:回転軸、左右、上下)が可能。IS非搭載レンズ装着時でも、カメラ内の動画電子ISがブレを補正する。

 Canon Logを標準搭載。ダイナミックレンジが広く、わずかなグレーディングを施すだけでディテール豊かな表現が可能という。Canon Logを含めた4K撮影時、ノイズリダクション処理にも対応。表現の自由度を高めている。

 さらに、4K記録時、YCbCr 4:2:2 10bitでのHDMI出力に対応。外部レコーダなどでの録画もできる。なお、カメラ内部記録時はYCbCr 4:2:0、8bit記録となる。

 撮影した4K動画から1フレームを、約830万画素(3,840×2,160)の画像としてJPEGで保存可能。写真素材や4K撮影時のピントチェックとしても活用できるという。さらに、4Kタイムラプス動画の撮影にも対応する。

 静止画と同様に、動画撮影時にも5つのAF方式が選択可能。顔+追尾優先AF、1点AF、領域拡大AF(上下左右・周囲)、ゾーンAF、ラージゾーンAF(縦・横)を用意する。被写体の動く速さや表現意図により、AF速度の設定も可能。

背面
「マルチファンクションバー」

 映像処理エンジンは最新の「DIGIC 8」を搭載。有機ELの電子ビューファインダーを搭載。背面には3.15型210万画素のタッチパネル液晶モニタを搭載する。さらに「マルチファンクションバー」と呼ばれるセンサーも備え、被写体から目を離さずに様々な設定ができる。

 記録メディアはSD/SDHC/SDXC。外形寸法は135.8×84.4×98.3mm(幅×奥行き×高さ)、重さは本体のみで580g。

「EOS R」

RFレンズもラインナップ。「RF28-70mm F2 L USM」など

 RFマウント用のRFレンズは「RF24-105mm F4 L IS USM」(155,000円)、「RF50mm F1.2 L USM」(325,000円)、「RF28-70mm F2 L USM」(420,000円)、「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」(75,000円)を発表した。レンズのロードマップも公表している。

 いずれもレンズ設計の自由度を高める大きなマウント径とショートバックフォーカス、レンズとカメラボディー間の新マウント通信システムという特長を活用、さらなる高画質化と利便性の向上を実現したという。

「RF28-70mm F2 L USM」
RFレンズのロードマップ

 RFマウントのカメラで、EFレンズを使うためのマウントアダプター4種が10月下旬から順次発売される。なお、EFレンズの中でも、EF-Mレンズ、CN-Eレンズ(EFシネマレンズ)は利用できない。

マウントアダプタは4モデル

 マウントアダプタのスタンダードモデル「EF-EOS R」は15,000円、コントロールリング搭載モデル「EF-EOS R」は3万円。

 さらに、ドロップインフィルタに対応した2機種も用意。価格は円偏光フィルタ A付の「EF-EOS R」が45,000円、NDフィルタ A付が6万円。

 いずれも防塵・防滴に配慮した設計を採用。コントロールリング付きモデルは、リングを使ってシャッター速度や絞り値、ISO感度、露出補正を操作できる。

 フィルタ対応の2機種は、超広角から超望遠、マクロやフィッシュアイなど、レンズの前にフィルタを取り付けにくいレンズにも利用できるという利点がある。

「今まで作れなかったレンズを」

 代表取締役社長 COOの真栄田雅也氏は、「キヤノンのデジタルカメラが、次のステージに踏み出す記念すべき発表」として、「EOS R」や「RFレンズ」を紹介。キヤノンがこれまで開発してきたカメラの歴史を振り返りながら、「快速」、「快適」、「高画質」を基本思想としている事、そして、ユーザーの“撮影領域”を拡大させる事に専念してきたと語る。

EOSシリーズの歩み
EOS Rを紹介する代表取締役社長 COOの真栄田雅也氏

 その“撮影領域の拡大”の流れとして、EOS Rシステムを紹介。新RFマウントのフルサイズミラーレスを開発する事で、「今まで作れなかったレンズが作れる事」をアピール。その好例として、ズーム全域でF2という明るさを実現した「RF28-70mm F2 L USM」(420,000円)を紹介。「以前の(一眼レフの)バックフォーカスでこのレンズを作るとなると、とてつもない大きさになってしまう」という。

「RF28-70mm F2 L USM」

 動画撮影機能については、「ミラーレスは動画と相性の良いシステム。映像表現領域を広げるレンズを、動画撮影にも投入できる。CINEMA EOSに近いスペックを、EOS Rの中に盛り込んでいる」と、動画撮影機能についても自信を見せた。

 EOS Rカメラのターゲット層としては、一眼レフからの買い替えに加え、EOSのフルサイズユーザーの2倍いるという、APSサイズカメラユーザーのステップアップも想定しているという。

 一方で、既存の一眼レフや、ミラーレスのEOS Mシリーズについては、EOS Rを共に「フルラインナップ戦略としてこれからも継続する。お客様のチョイスの幅を狭めないよう、プロダクトを揃えていきたい」とした。

左がイメージコミュニケーション事業本部 ICB製品開発センターの海原昇二所長

 新しいRFマウントについて、イメージコミュニケーション事業本部 ICB製品開発センターの海原昇二所長は「RFマウントを設計するにあたっては、これから将来何が考えられるのだろうかを議論を白熱させながら作った。ミラーの制約が無くなると、どんなレンズが作れるのか。例えば大三元レンズを小型化できる、F2固定のズームができるという提案も沢山あった。しかしボディ側からすると、マウント径を大きくしすぎるとカメラ自体を小型化できず、先行する他社に対して不利ではないかなど、何度も議論しながら決めていった。最終的には、レンズにあまり足かせをしない方向で、レンズとボディ、お互いにどれだけ魅力を出せるかという考え方で決定した」という。