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約36年ぶり、ヤマハ究極アナログプレーヤー「GT-5000」。5000シリーズ誕生

ヤマハは26日、ピュアオーディオのフラッグシップシステムとして、アナログプレーヤー「GT-5000」、プリアンプ「C-5000」、パワーアンプ「M-5000」を発表。発売時期と価格は「GT-5000」が2019年4月で60万円、「C-5000」と「M-5000」は2018年12月上旬で各90万円。ここではアナログプレーヤー「GT-5000」の詳細と、発表会の模様をレポートする。

左からパワーアンプ「M-5000」、プリアンプ「C-5000」、アナログプレーヤー「GT-5000」

パワーアンプ「M-5000」、プリアンプ「C-5000」の詳細は、別記事で紹介する。

アナログプレーヤー「GT-5000」

アナログプレーヤーのGT-5000は、GT-2000シリーズ以来、約36年ぶりとなるターンテーブルの最上位モデル。独自の設計コンセプトである「GT(Gigantic & Tremendous=途方もなく巨大な)思想」に基づいて開発されたが、「木製、重量&厚さというGTコンセプト以外は新規に近く、最新のモダンな技術も取り入れている」(音響事業本部 事業統括部 AV事業推進部 AV商品企画グループの熊澤進主事)という。

具体的には、キャビネットやプラッター、アームベースなどの巨大重量化を徹底する一方で、電気的フィードバックを駆動系から完全に排除したクォーツ制御 AC シンクロナスモーターによるベルトドライブ方式を採用。シンプルな構造のピュアストレート・トーンアームなどを取り入れている。

キャビネットは分厚く、大きい。サイズは546×395×120mm(幅×奥行き×高さ)で、キャビネットだけで14.3kgある。高密度バーティクルボードを4層積層し、圧着したブロックを作り、パーツを配置する部分を削っていく。

キャビネットは分厚く、大きい

キャビネットが大きく、分厚い理由は、その上に搭載する大径重量級プラッターが回転する事で発生する、0.92t・cm2ものイナーシャを受け止める質量と剛性を持たせるため。木質系素材特有の均質さと、素早い音の減衰特性も、高音質に寄与。「スピーカーや楽器などを手掛けてきたヤマハには、木材についての深い知見がある。重量がありながら内部損失がある事が、物理的な針の振動に対して相性が良い」(熊澤氏)という。

このプラッターは、真鍮削り出しで直径143mm、重量2kgのインナーターンテーブルと、アルミ削り出しで直径350mm、重量5.2kgのメインターンテーブルを重ね合わせた2層構造になっている。金属自体にも固有振動が存在するが、異種材を組み合わせる事で、互いの固有振動を抑制している。真鍮とアルミの組み合わせは、実際に試作し、音を聴きながら選択したという。

大径重量級プラッター

回転させるのは、クォーツ制御によって生成される正確な正弦波を用いた24極2相AC シンクロナスモーターによるベルトドライブ方式。従来のハイエンドはダイレクトドライブだったが、ベルトドライブを選んだ理由として氏は、「当時、重いプラッターを回転させる目的は、電気的なフィードバックを無くすためだった。フィードバックをかけると、自然界にはない動きになり、どんどん音の抜けが悪くなる。フィードバックを少なくするのが目的であれば、そもそもフィードバックの無い、シンクロナスモーターでベルトドライブで回したほうが自然な回転になり、アナログらしい抜けの良い音が実現できる」(熊澤氏)と考えたためだという。回転数は33 1/3、45rpmに対応する。

ベルトドライブの利点
ショートタイプのピュアストレート・トーンアームを採用

アームは、スタイラス(針)、カンチレバー、支点が一直線に配置されるため、重量的・力学的バランスに優れる、ショートタイプのピュアストレート・トーンアームを採用。ヘッドシェルは交換可能。

アームパイプ部はテーパードカーボンパイプ(外側)と、銅メッキアルミパイプ(内側)とを組み合わせた2重構造。各素材の持ち味を活かした高剛性・低共振特性、高いノイズシールド効果も発揮する。

ストレートアームの弱点とされるトラッキングエラーについては、L/Rの位相差と、トラッキングエラー歪の2つの影響があるとされる。しかし、前者はL/Rスピーカーの距離に換算すると2.1mmと、セッティングの誤差程度、後者はレコードが元々持っているトレーシング歪や残留ノイズなどの影響が大きくマスキングされる。「そこにこだわるよりは、音の抜け、低域の表現を追求すべきだと考えた」とのこと

すべての音声配線には、銅導体のPC-Triple Cを採用。全帯域にわたる情報量の豊かさと低域の力感を実現したという。別記事で紹介するパワーアンプ「M-5000」、プリアンプ「C-5000」、そして5000シリーズのスピーカー「NS-5000」にもPC-Triple Cは使われている。

5000シリーズのスピーカー「NS-5000」
XLRバランス出力も搭載

出力端子は、RCAアンバランスに加え、カートリッジの出力をバランス音声のまま取り出せるXLRバランスも搭載。フォノイコライザー回路を含む全段のバランス伝送を実現しているプリアンプ C-5000、パワーアンプ M-5000と組み合わせる事で、フォノカートリッジからスピーカー出力までの完全バランス伝送が可能になる。

キャビネットは樺天然木黒色塗装仕上げ。プラッター外周のストロボスコープをなくし、電源オン/オフと回転/停止、回転数切り替えの3個の真円ボタンを天面に埋め込んだ、GTシリーズ直系のシンプルなデザインを採用。

メインプラッターの右手前側に食い込むように配置された円柱状の突起は、ディスクに針を下ろす際に掌がプラッター外周に触れてしまうことを防ぐフィンガーレスト。±1.5%の範囲で回転数を微調整できるピッチコントロールノブがビルトインされている。裏面の専用端子に接続して使用する、ストロボライトとストロボシートが付属。演奏前に回転数の確認・調整が行なえる。

アームのオーバーハングは-17mm。適用カートリッジ質量はヘッドシェルを含め、13.5~36g(25~36gのサブウエイトが必要)。付属ヘッドシェルの重さは14g(ネジ、ナット、ワイヤー含む)。消費電力は15W。外形寸法は、546×411×221mm(幅×奥行き×高さ)。重量は26.5kg

インシュレーターは、Wind Bellの特許機器が手掛けた、新型特製レッグ。低音域の有害振動をカットしながら、高音域の有益な振動は活かす」とのこと。業界初となる、特殊三次元バネ構造を採用している。

Wind Bellの特許機器が手掛けた、新型特製レッグ

「コンポーネントオーディオの醍醐味である、音楽的な低域にこだわった」

熊澤氏は、ヤマハのHi-Fi製品の目的として、「総合楽器メーカーとして音楽性表現を追求しており、音が生まれる瞬間を知っている、全体の流れを知っているメーカー。だからこそ、その価値をお客様に提供し、音楽の深い感動を伝えていきたい。入り口から出口まで一貫して、トータルHi-Fiブランドとして確立していきたい」と語る。

音響事業本部 事業統括部 AV事業推進部 AV商品企画グループの熊澤進主事

音楽性表現の具体的なポイントとしては、「どんなに小さな音でも、それが広いコンサートホールの中で、遠くまで届く音は存在する。抜けの良い音の“開放感”、そして音楽の“エモーショナルさ”、さらに演奏者の“タイム感、グルーヴ感”」の3点を挙げる。

今回の5000シリーズでは、フラッグシップ製品としてこれらに加え、「空間で生まれるハーモニー、響きを表現する“音場感”、そして音楽的な低域に支えられた“音像感”も追求した。特に、コンポーネントオーディオの醍醐味である、音楽的な低域の表現にもこだわった」という。

GT-5000開発プロジェクトリーダーで、音響事業本部 開発統括部 AV開発部 機構・音響グループの阿部紀之主幹も登壇した
パワーアンプ「M-5000」
プリアンプ「C-5000」

音を聴いてみる

アナログプレーヤー「GT-5000」、プリアンプ「C-5000」、パワーアンプ「M-5000」、スピーカー「NS-5000」、5000シリーズを組み合わせたサウンドを発表会場でチェックした。

「ダイアナ・クラール/ターン・アップ・ザ・クワイエット」のレコードを聴くと、チャンネルセパレーションが良好で、立体的かつクリアで、非常に鮮度の高いサウンドに驚かされる。

それでいて、音像の輪郭が強調されたり、音の粒がシャープでキツ過ぎる、といった事が一切ない。アナログらしい、なめらかで自然、それでいて味わい深音になっている。

「キャノンボール・アダレイ/サムシン・エルス」でも、マイルスのトランペットが生々しく吹き出す一方で、音場は奥深く広がり、立体的なサウンドステージが展開。ベースは肉厚かつ重厚感があり、アナログらしい迫力が味わえる。それでいて低音はくっついてカタマリにならず、ほぐれて情報量は多い。アナログらしい安心感、ナチュラルさと、鮮烈な現代的なサウンドが同居した世界だ。

開発メンバーも一堂に会した