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「河森正治EXPO」開幕、新作ドーム型映像や富野由悠季×河森“幻の企画”まで
2019年5月31日 15:40
「マクロス」シリーズや「アクエリオン」などを手がける河森正治氏の、プロデビュー40周年記念展「河森正治EXPO」が、5月31日~6月23日まで、東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリーアーモ)で開催されている。各作品に登場するメカやキャラクターフィギュア、数百点以上におよぶデザイン画、絵コンテ、アイデアノートに加え、ドーム型スクリーンに展開する新作映像も公開された。
開催時間は各日10時~20時(最終入場19時30分)。期間中毎週月曜は10時~19時(最終入場 18時30分)。一般入場券は前売り1,800円/当日2,000円。新作映像などが流れるK-40シアター付き入場券は前売2,200円/当日2,400円。
原作、監督、脚本、絵コンテ、メカデザインまでこなす“奇才”河森氏の作品を振り返るイベント。「メインパビリオン」には、マクロスやアクエリオンEVOL、エウレカセブンなどの作品に登場した巨大メカの立像、シェリル・ノームやランカ・リーなどのキャラクターフィギュア、マクロスに登場するバルキリーの変形過程を再現したフィギュアなども展示。「フラップの動きなど、細かいところまでこだわった」(河森氏)という。
ミサイルが躍動的に飛び交う“板野サーカス”を模したパネルの中で記念撮影ができるフォトスポット、サイバーフォーミュラのサーキット、マクロスの塔やバベルの塔なども展示。河森氏がデザインを生み出す過程で密接な関係にある“立体物”を通じて、河森作品を“体感”できる。
そんなメインパビリオンの中央奥には、アクエリオンの必殺技でお馴染み、無限拳(むげんぱんち)を、プラモデルの箱を組み合わせて再現したユニークな展示も「無限拳の展示をしたいと言ったら、“いくらかかると思ってるんですか”と言われてしまったので(笑)、資料をあさっていたら関わった作品の大量のプラモデルが出てきた。そこで、“この箱を使って作ればいい”と考えました。どれだけ作ってきたのか、それが無限拳になっていれば面白いなと」(河森氏)。
「クリエイティブパビリオン」は、企画・構成・デザイン・演出と多岐にわたって活躍する河森氏が生み出してきた、膨大な量の企画書、ストーリーメモ、デザイン画、絵コンテなどから未公開資料を含めた貴重な数百点を5つのゾーンで展示。順番に鑑賞すると、作品を生み出すプロセスを追体験できるようになっている。
「例えばマクロスなら、“マクロス”という名前になる前“メガロード”の頃のコンセプトメモ、イメージボードなどを展示しています。マクロスプラスになる前の“ゴーストアップル”と呼んでいた頃のスートーリーメモなど。その後、タイトルやストーリーなどいろいろ変更されていきますが、その前の姿と、そこからどう変わったのかも見ていただきたい。マクロス・フロンティアあたりでは、菅野よう子さんに向けた音楽の発注メモなども展示しています」(河森氏)。
展示は“世に出た作品”だけに留まらない。「メカのコンペティションに出して落ちたデザインとか、某カウボーイビバップのコンペで落ちたものとか(笑)。機動戦士ガンダム0083では、1号機、2号機を展示していますが、コンペで落ちた幻の3号機も、エキスポの会期後半には展示したい」という。
さらにレアな展示としては、「TVシリーズのマクロと同時進行で、心の師である富野由悠季大監督と一緒にデザインしていた企画『アステロイドワン』のデザインが、スタジオぬえから発掘されたので展示しています。自分でもこんなに描いてたっけ? と思うくらいあって。もしあの企画が通っていたら、アニメの歴史が少し変わってたかもしれません」と振り返る。
「インスピレーションパビリオン」では、河森氏が現在に至るまでどんなものにインスピレーションを受けたのか、本物に触れ続けた少年時代、後にクリエイターとして刺激を与え合う事になる仲間との出会い、そして運命的ともいえるアニメーションとの出会いなど、河森正治に影響を与えたインスピレーションの数々を紹介。
「昔、友達と海岸で沢山のロケット花火を上げていました。その時の動きが、マクロスのもとになっています。板野(一郎)さんの作画シーンを見て、クラッシャージョウの現場で出会って、ロケット花火の話で盛り上がってマクロスに誘ったという経緯もあります(笑)」。
「高校時代、(後に漫画家になる)細野不二彦君、初代マクロスのキャラクターデザインをした美樹本晴彦らと作った、合作マンガの一部も展示しています。その中に登場する可変パワードスーツがバルキリーのもとになっている。若干自慢になりますが(笑)、合作マンガは'78年に作ったので、ガンダムより先にパワードスーツ同士が戦うマンガを作っていたのです。まだプロじゃなかったので、あと数年はやく生まれていれば何かやっていたかもしれません(笑)」。
「フューチャーパビリオン」では、河森氏が現在進行形で手掛けている最新作などを紹介。「ファンの皆様と一緒に未来を作っていくきかっけとなるエリア」という。
最新作は6月14日に公開される「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」。gumiとFgGが展開する、タクティクスRPG「誰ガ為のアルケミスト」を映画化したもので、河森氏が総監督を担当している。「あまりに原作を変えすぎて今まで降ろされ続けてきたので、40年にして、初めて実現する原作ありの監督作品。かなりの自信作になっている」という。メカニカルコンセプトデザインで参加したNintendo Switch用ソフト「DAEMON X MACHINA」の展示も。さらに、エキスポの期間中に順次発表していくという、幾つかのプロジェクト展示の余白も用意されていた。
「K-40ドームシアター」で新作映像も
映像的な見どころは、会場内に儲けられた「K-40ドームシアター」。目玉の一つとして作られた全天周シアターで、直径約10m、高さ約5mの大型ドームの内側に、複数台のプロジェクターを使って映像を投写している。
「ドームシアターは30年くらい前からずっとやりたいと思っていました。2次元のスクリーンだとスクリーンサイズに限定されてしまい、どうしても“客観的に見ている感じ”になってしまう。ドームであれば、映像の世界に入り込める。また、一回では全部が観きれないところも魅力。今回はこのシアターのために新作映像を作りました。せっかくなので、今までの作品の主役キャラやメカ達が大結集して、力を合わせるような内容。何回も観ていただいて、新しい発見をしていただければ嬉しいです」と河森氏。「今後もドーム映像やVRなど、体感ライド的なものは、より大きなスケールで、臨場感あるものに挑戦したいと考えている」という。
エキスポの全体については、「プロになって40年、サテライトの佐藤社長から“記念に展示会をやらないか”と声をかけていただき、ありがたい話だと思い、実現した。ゲームやおもちゃも含め、いろいろなメディアに関わらせていただいているが、いずれも一人では作れないもの。集団創作としての展示会なので、個人展と言うより“エキスポ”として、皆の力の結晶をお見せしたいと考えている」。
「40年続けてこられたのも、ファンの皆さんが作品を見てくれて、応援してくれたおかげ。大勢のスタッフに代わってお礼が言いたいです。これからもずっと、新しいもの、新鮮なデカルチャーを届けていきたいと思っています。応援よろしくお願いいたします。ぜひ見に来てください」と、ファンへのメッセージを語った。