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オーテク、世界初のダイナミック+パッシブラジエータ+BAイヤフォン「ATH-IEX1」

オーディオテクニカは、世界初という、ダイナミック型ドライバーとパッシブラジエーター、バランスド・アーマチュア(BA)ユニットの3種類を搭載した、イヤフォン「ATH-IEX1」を10月11日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は14万円前後。

「ATH-IEX1」

9.8mm径のフルレンジ・ダイナミック型ドライバー、低域の量感を高めるための8.8mm径パッシブラジエーター、さらに超高音域用のBA×2基を組み合わせたマルチドライバー構造「PAT.P」を採用している。

「ATH-IEX1」

同社は、サイズの異なるユニットを対向配置して駆動させる「デュアルフェーズ・プッシュプルドライバ」という技術を持っているが、今回のパッシブラジエーターは、このデュアルフェーズ・プッシュプルドライバの内、小さな8.8mm振動板から、電気的な回路を取り除いてパッシブラジエーター化したものとなる。

パッシブラジエーター化する事で、低域から中域への繋がりが良く、より自然なサウンドになるという。また、スーパーツイーターとして搭載しているBA×2基は、ダイナミック型ユニット、パッシブラジエーターと同軸上に設置。音の繋がりをさらに良くしているのも特徴。

再生周波数帯域は5Hz~50kHz。出力音圧レベルは102dB/mW。最大入力は3mW。インピーダンスは5Ω。

中央の銀色のパーツがダイナミック型ユニット。その左にあるのがBAユニット
金色のスタビライザーの右にあるのがパッシブラジエーター

理想的な音と優れたフィット感を両立するという、鍛造+切削フルチタニウムボディにドライバーを搭載。

イヤピースの装着時には、2段階の装着位置調整が可能で、イヤーピース自体もシリコン製のものとコンプライフォームタイプの2種類付属。フィット感をカスタムできる。

ケーブルは着脱式で、A2DCコネクターを採用。イヤハンガースタイルで装着できる。ケーブルは1.2mでステレオミニ入力のタイプと、4.4mm 5極で1.2mのバランスケーブルも同梱。アンバランスケーブルは、L/Rchを独立したスターカッド撚り線ケーブルとし、ノイズの少ないクリアな信号伝送ができるという。ケーブルを省いた重量は約19g。

音を聴いてみる

9.8mm径のフルレンジ・ダイナミック型ドライバー、8.8mm径パッシブラジエーター、超高音域用のBA×2基という、ユニークなユニットを組み合わせたイヤフォンだが、実際に聴いてみると、非常にバランスが良く、低域から超高域まで素直に聴けるモニターライクなイヤフォンに仕上がっている。

「ATH-IEX1」

ダイナミック型ユニットとBAを組み合わせたハイブリッドでは、各ユニットの特性を活かそうと、ダイナミック型ユニットの低音が豊富すぎる製品も存在するが、ATH-IEX1は低音が深く沈むものの、よけいな膨張はせず、低域から中域まで、クリアで見通しの良い、分解能の高い低音を実現。

トランジェントも良く、BAの超広域との音色やスピード感の面での統一感がある。ハイブリッド構成だと感じさせない自然さが特徴の、実力派イヤフォンだ。

発表会も開催

19日に開催した発表会には、松下和雄社長が登壇。同社初のヘッドフォンを発売してから45周年を迎えた事を踏まえながら、「視聴環境、ユーザーニーズも変化する中、数百種類に及ぶヘッドフォンを作ってきた。今後も製品を進化させると共に、生産設備にも注力する」とし、2018年に台湾に新工場を建設した事、2020年の夏には、中国の上海と杭州の間あたりに位置するハイニンにも、工場機能を持ち、流通拠点としても活用していく事などを説明。

松下和雄社長
台湾の新工場
中国のハイニンにも新工場を建設予定

シンガポールの複合施設にもショールームをオープン。アジア圏における、オーディオテクニカブランドの体験・浸透の場にしていくという。さらに、Webサイトのデザインリニューアルも発表。SNSの活用なども踏まえ、有益で魅力的なコンテンツを発信していくと予告した。

ヘッドフォン市場においては、販売金額ベースでワイヤレスモデルの比率が、昨年よりもさらに伸長。2019年6月~8月では、ワイヤレスが74%、ワイヤードは26%になっており、「勢いは留まらず、比率を伸ばしている。ヘッドフォン市場は様変わりした」と説明。

中でも完全ワイヤレスイヤフォンが人気となっており、同社も昨年に初の完全ワイヤレスを投入。「改めて沢山のユーザーが私達の製品を求めていると実感した。同時に、課題も見えてきた。電波環境、電池の持ち、軽量化、装着感、これまで以上にクリアしなければならない課題が多いと感じた」と振り返る。それらを踏まえて、今年の夏に発売した「ATH-CKS55TW」は、バッテリの持ちなどを改良し「他社とは一線を画した製品として好評」だという。

一方で、完全ワイヤレスイヤフォンに参入するメーカーは増加。ネットの通販などでは非常に安価な完全ワイヤレスイヤフォンも多く、「(それらを購入して)品質に不満を持っている人が多い事を認識している。そこで、価格の敷居を低くし、より多くの人に使っていただけるモデルとして開発した」とし、新製品の「ATH-CK3TW」を紹介。実売13,000円前後というモデルながら、Qualcomm TrueWireless Stereo Plusに対応。音質にもこだわり、「我々だからできるモデルだと思っている」という。

一方で、有線接続モデルも重要な市場と位置づけ 有線全体では市場は縮小傾向にあるものの、「10万円以上のHi-Fiインナーイヤーは前年比120%で延びている。有線では、高音質なハイエンド志向が強いと感じている」とし、ウッドハウジングのヘッドフォンや、ダイナミック+パッシブラジエータ+BAのハイブリッドイヤフォン「ATH-IEX1」なども紹介した。

発表会には、シーナ・アンド・ロケッツの鮎川誠さん、チャラン・ポ・ランタンの2人もゲストとして登壇。子供の頃からレコードファンだったという鮎川さんは、'70年代、レコードからCDへと時代が移り変わる中でも、アナログカートリッジを作り続けていたオーディオテクニカを「救世主だった」と振り返る。

チャラン・ポ・ランタンのアコーディオン担当、小春さんは、いつもアコーディオンにクリップタイプのオーディオテクニカ製マイクを取り付けて演奏しており、「アコーディオンは左右のマイクを近づけながら演奏しますが、その時でもハウリングが起こりにくく、低音をキレイに拾ってくれる。音が悪い製品はころころ変えてしまう性分なんですが、オーディオテクニカさんのマイクはずっと使い続けていてお世話になっています。蛇腹仲間(アコーディオン仲間)の間でも、このマイクは話題になっていて、見せると“どこのマイク!?”といつも話題になる」と、体験談を交えてオーディオテクニカ製品の魅力を語った。

ボーカル担当のももさんも、完全ワイヤレスイヤフォンや、ウッドハウジングヘッドフォン、さらにヘッドフォンスタンドなど、様々な製品の特徴やデザインに惹かれた様子。どれを手に入れようかと悩んでいた。チャラン・ポ・ランタンは最後に、ライブも披露。大きな拍手を浴びていた。

シーナ・アンド・ロケッツの鮎川誠さん
アコーディオン担当、小春さん
ボーカル担当のももさん
チャラン・ポ・ランタンは最後に、ライブも披露