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18m実物大ガンダム、横浜で動く。「GUNDAM FACTORY」10月オープン

「機動戦士ガンダム 40周年プロジェクト」の一環として、神奈川県横浜市の山下ふ頭に「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」が10月1日から約1年間オープン。“18mの実物大ガンダムを動かす”取り組みなどが進められる。入場は有料で、チケット販売は7月から開始する予定。営業時間は10時から21時。期間は2021年10月3日までの予定。

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」に設置される実物大ガンダムをイメージした1/30模型が披露された
(C)創通・サンライズ

ガンダムGLOBAL CHALLENGE(GGC)と、Evolving Gの2社が、横浜市と連携してGUNDAM FACTORY YOKOHAMAプロジェクトを展開。プロジェクトの計画や進捗状況などが、バンダイナムコ未来研究所で発表された。

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」のイメージビジュアル
(C)創通・サンライズ

「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」は、横浜ふ頭に総面積9,000m2の規模で展開。動くガンダムを間近で見られる、約604m2のGUNDAM-DOCK(メンテナンスデッキ 高さ約25m)、動くガンダムの仕組みを楽しみながら知れる展示やショップ、カフェなどのGUNDAM-LAB(鉄骨2階、延べ床面積2,097m2)で構成する。

2つの施設で構成(C)創通・サンライズ

モデルはRX-78(初代ガンダム)、サイズは約18mで、質量は約25t。可動フレーム(鋼鉄)+外装(カーボン樹脂)で構成。関節自由度は全24自由度(ハンド除く)。アクチュエーターはすべて電動。「モータ+減速機」と「電動シリンダ」を併用。大トルク部は電動シリンダを使う。

安全性に配慮し、腰部を後方から支持。GUNDAM-CARRIER(支持台車)に接続する。動作時に人は搭乗せず、遠隔制御室から動作指示を行なう。屋外環境や天災(雨、塩害、地震、台風)を踏まえた設計となっている。GUNDAM-DOCKでは、動くガンダムを15~18mの高さから見ることが可能。人数限定で、入場料とは別に料金がかかる。

実物大ガンダムの概要
(C)創通・サンライズ

今回のプロジェクトでどのように“動く”のか、詳細は発表されていない。公開された紹介動画では「ガンダムが足を上げる」ところまでは見られたが“歩く”のかどうかなど、まだ謎の部分は多い。

技術概要についてGGCテクニカルディレクターの石井啓範氏が説明(C)創通・サンライズ

実現に際し、多くの企業がテクニカルパートナーとして協力。乃村工藝社は、ガンダム本体デザイン・演出、フレーム・外装パーツを担当、Asratecはモーションプログラム制御システムを、川田工業はGUNDAM-DOCKやGUNDAM-LABの建築施工、住友重機械搬送システムはGUNDAM-CARRIER、kokoroはガンダム本体ハンド、Nabtescoはガンダム本体減速機、YASKAWAはガンダム本体モータ・制御装置、制御盤 三笠はガンダム本体電気配線、前田建設は試験施設・試験技術をそれぞれ受け持った。

披露された1/30サイズの模型。これが何かのイベントなどで公開されるかは現時点では未定とのこと
(C)創通・サンライズ
実物大ガンダム実現に向け、プロジェクトに協力したテクニカルパートナー企業

さらに、オフィシャルトラベルエージェントを務める日本旅行が、オリジナルツアーを企画。夏に発売する予定。同社は横浜地区の交通機関や宿泊施設、観光施設と連携し「付加価値の高い旅行商品の造成に努める」としている。

開発者に「3Dガンダムモデル」公開。“みんなでロボットを動かす”取り組みも

ガンダムGLOBAL CHALLENGEのプロジェクトでは、ガンダムのCGデータを用いてソフトウェア/ハードウェアのオープンロボットプラットフォームを開発し、世界中から自由にロボット開発に参加できる体制の実現と、ロボティクス分野の発展を目指して“リアルガンダム”の実現に繋げることを目指す取り組みも行なわれる。

ガンダムを動かすシミュレータ
(C)創通・サンライズ

具体的には、プロジェクトのサイトからダウンロードできる3Dガンダムモデルを用いたロボットシミュレーションプロジェクトを開始。プロジェクトには誰でも参加でき、GGCの管理するGGC GitHub上で公開されるROS(Robot Operating System)対応のソースコードを使って、プログラムの開発と共有ができる。

また、各ユーザーのローカル環境において、ロボットのための3DモデルのバーチャルシミュレーションソフトであるGazeboシミュレータを構築して動作確認できる。

「GUNDAM RX-78 ロボット ROSパッケージ」は、GitHub上で公開。近日中に、Ubuntu 16.04/18.04向けのバイナリがリリースされる。利用方法や、問い合わせ窓口などの詳細は、プロジェクトのサイトに掲載されている。

東京大学大学院 情報理工学系研究科の岡田慧教授が登壇し、人型ロボット開発研究の現状や、今回の開発環境などについて解説。ロボット分野においては、この5~10年の間でオープンなソフトの利用が浸透しており、ROS(Robot Operating System)というソフトがデファクトスタンダードになっているという。

東京大学大学院 情報理工学系研究科の岡田慧教授

等身大ロボット開発に向けた基礎研究としては「シミュレーション上ではロケットエンジン4基で動作生成可能なことを確認した」とのことで、より効率の良い方法を研究していくという。

今回のプロジェクトなどを通じて、岡田教授は「カッコいい、力強い、など感情が伝わるロボットを作りたい」としており、18mのロボットを作る際の議論のプラットフォームとしての活用を目指すとしている。

今後の研究開発の例

7月からオープン前の体験イベント開催

オープン前に、特別に見学できる限定プログラム「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA スペシャルエクスペリエンス」を7月~8月の土日に実施。一足早く入場できて会場の雰囲気を味わえるほか、特別観覧デッキにも上れる。一部オリジナル商品が購入できるショップも展開予定。なお、ここでのガンダムの稼働は予定していない。入場は有料。実施の詳細はプロジェクトの公式サイトなどで案内する。

GUNDAM FACTORY YOKOHAMAのイメージ映像
(C)創通・サンライズ
7~8月に行なう「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA スペシャルエクスペリエンス」
(C)創通・サンライズ

40周年を迎えた“ガンダムの成長”

最初のテレビアニメ放送から、2019年に40周年を迎えたガンダム。これに先駆けて、2014年に、18mの実物大ガンダムを動かすためのプロジェクトが発足。5年間を経て今回の発表となった。

ガンダムGLOBAL CHALLENGEの代表理事を務める宮河恭夫氏が、プロジェクトの意義や目指す形などについて説明した。

ガンダムGLOBAL CHALLENGEの宮河恭夫代表理事

富野由悠季監督の監修を交えながら、様々な分野のエキスパートが参加したプロジェクトについて、「夢を持ち続けること」、「可能性に挑むこと」、「課題を発見し、それを克服して進化すること」という3つのテーマを掲げて紹介。

「多くの人が、夢や技術、街づくり、教育のことを、ガンダムの前で語り合ってもらえるような場になれば、大きな成果になるのでは。まだまだ皆さんの期待に応えられていない部分もたくさんあると思うが、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAは、40周年を迎えた“ガンダムの成長の段階”ととらえていただき、これからのガンダムの挑戦にご期待いただければ」と述べた。

左から、GGCテクニカルディレクターの石井啓範氏、宮河恭夫代表理事、Evolving Gの佐々木新社長