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富士フイルム、世界最大容量1巻580TBの磁気テープ技術
2020年12月16日 18:30
富士フイルムは、IBM Researchと共同で、1巻あたりの記録容量が従来比約50倍となる世界最大容量580TBデータカートリッジの実現を可能とする高容量化技術を開発した。580TBの容量では、DVD約12万枚分相当のデータが保存可能だという。
「ストロンチウムフェライト(SrFe)磁性体」という素材を採用した磁気テープで、実走行試験により、塗布型磁気テープにおいて世界最高の面記録密度317Gbpsiでのデータ記録・再生を実証した。
磁気テープは、大容量、低コスト、長期保存性といった特長を持ち、ネットワークから隔離したエアギャップの状態でデータ保管が可能なため、サイバーアタックなどによるデータ破損・消失のリスクも低い。
そのため、生成されてから時間が経ちアクセス頻度が低くなった「コールドデータ」や、蓄積されたデータを活用する動きが進んでいる中で増加している、蓄積データを安全安価に長期保管したいというニーズに応えられるとしている。
SrFeは、磁気特性が非常に高く、微粒子化しても安定して高い性能を維持できる磁性材料で、モーター用磁石の原料などとして広く使われるという。
今回、富士フイルム独自の技術により、塗布型磁気テープストレージメディアの磁性体として活用できる超微小な「SrFe磁性体」の開発に成功。この微粒子SrFe磁性体を新規の分散剤処方で均一に分散し配列をナノオーダーで制御することで、高い信号ノイズ比を実現したとする。
これに加え、新開発した平滑な非磁性層(下層)によってテープ表面の平滑性をより向上。磁気ヘッドと磁性層間の低スペーシング化による高い再生出力を実現した。また、独自技術により、サーボパターンを精密に配置した磁気テープと、IBM Researchが開発した「新トラックフォロー技術」や「信号処理技術」およびそれを実現する書き込み、読み出し装置を組み合わせることで、317Gbpsiという面記録密度を実証し、磁気テープの更なる大容量化につながる技術開発に成功したとしている。
富士フイルムでは、この「SrFe磁性体」を、現在磁気テープストレージメディアに採用しているバリウムフェライト(BaFe)磁性体に代わる磁性体としての実用化を目指す。また、今回の試験で用いた磁気テープは、富士フイルムの従来の塗布設備で生産しており、実用化にあたって既存設備の応用が見込めることから、量産化も視野に入れているという。