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Netflix、月額790円の新プラン「広告つきベーシック」11月開始

Netflixは10月13日(アメリカ太平洋時間)、広告視聴による低価格プラン「広告つきベーシック」を発表した。月額料金はベーシックの990円よりも低価格な790円。 日本では11月4日(金)午前1時より提供を開始する。

新しいプラン一覧。表は筆者作成。オレンジ色の文字の部分が新しい

アメリカ・イギリス・オーストラリア・ブラジル・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・日本・韓国・メキシコ・ スペインの12カ国で順次提供を開始する。

「広告つきベーシック」は、現時点でもっとも安価なプランである「ベーシック」の内容を基本にしたもの。1時間に平均4~5分の広告を表示した上で、番組の再生ができる。テレビ・スマホなど、視聴できるデバイスにも変更はない。また今回より、ベーシック・広告つきベーシックともに再生可能な映像は「720pから」となり、画質は向上する。

ただし、ライセンス上の理由により一部の映画や番組を再生できない場合があり、番組のダウンロード機能は利用できない。詳細な違いは表を参照のこと。

CMイメージ

利用には、提供開始日以降にNetflixのサイトから、メールアドレス・生年月日・性別を登録する必要がある。

広告は当面、15秒と30秒のものが作品の再生前と再生中に流れる予定で、広告内容はターゲット層に合わせ、国・作品ジャンルごとに内容が定められるという。

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アメリカでは6.99ドル。番組途中にもCMが

Netflixは発表に際し、同社COO(最高執行責任者)兼CPO(最高製品責任者)のグレッグ・ピーターズ氏と、広告事業担当プレジデントのジェレミー・ゴーマン氏によるプレス向け説明会を開いた。以下、そこから気になるトピックを抜粋していく。

「広告つきベーシックを、発表からちょうど6カ月で提供でき、うれしく思います」とピーターズ氏は話す。

「基本的にはベーシックプランと同じものが提供されます。既存のベーシック・スタンダード・プレミアムプランを補完するもので、いずれも広告なしを継続しています。既存の会員の皆様は、乗り換えを選択されない限り、現在のプランのまま同じ料金でご利用いただけますので、影響はありません。もちろん、いつでもプランの変更やキャンセルをすることができます。また、広告付きベーシックと既存のベーシックプランの両方で、ビデオの解像度を480pから720p/HDに変更しました。つまり、基本的にNetflixのサービス全体がHDからUltra HDの領域となります」(ピーターズCOO)。

価格はアメリカの場合6.99ドル。国によって若干の差がある。これは各国での競合状況などを加味したもので、単純なドル円換算ではない。だが、円安の今、日本は「ちょっと有利」な価格づけになっている。

各国の価格帯

ただ、他のサービスを止めることなく短期間で開発したこともあり、様子を見て、11月1日から、提供予定国を3つのグループに分け、順次提供を開始するという。日本はグループ2になる。

コンテンツについてはほぼ全てのものが視聴可能であるが、「過去のコンテンツ調達時に広告による配信を想定していなかった」(ピーターズCOO)関係もあり、広告での配信をNGとするコンテンツもごく一部あり、それらは「広告つきベーシック」での再生対象外になる。

広告は番組開始時と番組再生中に流れ、再生中の場合でも、一旦番組がフェードアウトして15秒から30秒のCMが「AD」マーク付きで流れ、そのあとに番組再生が再開される。広告をスキップすることはできない。

広告は主に、国とコンテンツジャンル別に出稿され、スタート時は「アクションドラマ、ロマンス、SFなどから選べる」(ゴーマン氏)という。また、「トップ10に入った作品に広告を出す」といった選択肢もある。広告枠の販売は広告ごとに単価を設定した「固定料金制」でスタートし、後日「オークション制」への移行を検討しているが、時期は未定だという。

広告主には「視聴率データ」のようなものが提供できるよう準備も進められている。

なお、コンテンツ提供側の判断により、特定の広告が出ないようにすることもありうるという。

初期は「ターゲティング」せず。広告モデルを使わない人のデータも利用せず

気になるのはプライバシー面だ。広告でどのようなデータが使われるのか、ゴーマン氏は以下のように説明する。

「生年月日と性別をサインアップ時に収集し、より関連性の高い広告が出るようにする予定です。しかし、発売当初はこのデータを広告のターゲティングには使用しません。一方、マイクロソフトのようなパートナーは、Netflixの広告をサポートするためにのみ、この情報を使用することができます。一方、広告プランのために集めたデータは、他のサービスでは使用されません」。

すなわち、「広告プラン加入時に登録した生年月日や性別」は使われ、さらにそれに、「どのコンテンツに広告主が広告を出したいか」が連動することになるが、最初はユーザーの個人情報は広告表示に使われない、ということになる。また、広告プランに加入していない人には、広告関連の情報は一切関係ない。ここでマイクロソフトの名前が出てくるのは、彼らが広告プランの構築に協力したからであり、いわゆる「サービス改善のため」に使われる形で利用されるものと推察できる。

広告プランの開発パートナーはマイクロソフト

ただし、彼らが長期的に「ユーザーターゲット型の広告」を求めているのも事実ではあるようだ。それが現状のネット広告で求められるものであり、さらに時間をかけて開発し、ターゲティング広告が導入されていくことになるだろう。

なお、広告には禁止カテゴリーも設けられる。

「政治的/政策的な広告・違法な広告は掲載しません。もちろん、法律に違反するもの・詐欺的なもの・差別的なものや、銃や爆発物、喫煙関連の広告、一攫千金を狙うようなものなど、皆さんが想定しそうなものは表示されません」(ピーターズCOO)ということなので、テレビCMなどに準ずるイメージになりそうだ。