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Maestraudioのハイコスパイヤフォンがバランス対応に「MA910SB」
2023年3月31日 11:00
アユートは、オーツェイドのブランド・Maestraudioの第2弾製品として、4.4mmバランス接続に対応したイヤフォン「MA910SB」を4月14日に発売する。価格は13,200円。既発売の3.5mm接続「MA910S」を、4.4mmバランスプラグに変更すると共に、バランス接続用にリチューニングし、追加補正と調整を施したモデルとなる。カラーはスモークグレー、アクアブルー。
Maestraudioは、オーツェイドのintimeブランドで培った「セラミックオーディオテクノロジー」を、より高度にブラッシュアップしたイヤフォンを展開するブランド。
ユニット構成などは3.5mm接続のMA910Sと同じだが、4.4mmバランスプラグへの変更に伴い、リチューニング。「4.4mmバランス出力に対応した高音質なオーディオプレーヤーやUSB-DAC製品と組み合わせ、さらなる表現力向上を可能にした」という。なお、ケーブルの着脱はできない。
ユニットは10mm口径のグラフェンコートダイナミックドライバーをシングルで搭載。チューニングにおいては頭部伝達関数に注目し、「リスナーが臨場感を感じるために適した周波数特性の最適化を行なった」という。
さらに、圧電セラミックスによるセラミックサウンドテクノロジーを活用し、開発したパッシブ型セラミックコートツイーター「RST」(Reactive Sympathetic Tweeter)を搭載している。口径は9mm。全体のインピーダンスは16Ω、感度は102dB。
積層型圧電セラミックツイーター「VST」(Vertical Support Tweeter)では、20kHz以上の高音は非常に高い直進性を持つため、ユニットの同軸化が必要だが、MA910SシリーズではユニバーサルIEMタイプの筐体に使用するために、同軸上から外れても高音が効率的に前方に伝わるセラミックツイーターが必要となった。
そこで開発されたのが、シンバルやオルゴールなどのように分割振動を有するRST。ダイナミックドライバーからの音波をダイアフラムに照射して振動を誘発するパッシブ型で、「管楽器に多く用いられている赤銅を基材としたダイアフラムを採用し、さらに粒立ちの良い高音を得るべくその表面に独自の特殊なセラミックコートを施した」という。
また、音響補正デバイスの「HDSS」を筐体内に搭載することで、小型の樹脂筐体では実現が難しかった広いサウンドステージを獲得したとする。
シルバーコートOFCとOFCのハイブリッドケーブルを採用。音の分離感向上と優れた定位感を追求した。イヤーピースは、シリコンゴムの軟度を下げたオリジナルの「iSep01」を4サイズ(S/MS/M/L)同梱する。イヤーフック、本革コードリール、キャリングポーチも付属する。
音を聴いてみる
新機種を聴く事ができたので、ファーストインプレッションをお届けする。
前述の通り、MA910SBは、Maestraudioの第1弾モデル「MA910S」(11,000円)の“4.4mmバランス接続バージョン”と言えるモデルだが、単純にバランス化しただけでなく、新たにチューニングされているのもポイント。ベースとなるMA910Sについては、以前詳しくレビューしているので、そちらを参照して欲しい。
Maestraudioの特徴といえば、intimeで培った“価格を抑えながら高音質を実現する技術”をふんだんに盛り込みつつ、新しい技術にも果敢に挑戦している事が挙げられる。
中身も見どころが多く、Maestraudio製品専用に開発/チューニングされた10mm径グラフェンコートダイナミックドライバーに加え、9mm径のツイーター「RST」も搭載。このツイーターはアクティブではなく、ダイナミックドライバーからの音波を振動板に受けて振動するパッシブタイプなのがユニークだ。
音響補正デバイス「HDSS」も内蔵する。HDSSはもともと、米TBI Audio Systemsが中心に提唱した技術で、ハウジング内にETL(Embedded Transmission Line)と呼ばれるモジュールを内蔵。これにより、ドライバの背面で発生する音の流れを、ETLが吸収・整流して、音の乱れを抑えつつ、臨場感もアップさせるというものだ。
以前、MA910Sを聴いた時は、価格から想像できないハイクオリティなサウンドに驚いた。特に印象的なのが、HDSSが効果を発揮する広大な音場と、そこに展開するヴォーカルやギターといった音のクリアさだった。
さて、その4.4mmバランス接続バージョンとなるMA910SBを聴いてみると、MA910Sで感じた“強み”が、さらに進化しているのがわかる。AKのDAP「A&norma SR25 MKII」(実売約9万円)と接続して「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、静粛で広大な音場がさらに広く感じられると共に、そこに出現するヴォーカルやヴァイオリン、ベースなどの音像が、より立体的に、生々しく感じられる。バランス接続によって、音場の奥行きがより深く感じられるようになったからだろう。
特に顕著なのが、セラミックコートのRSTツイーターによる高音。ダイアナ・クラールの声の高音部分が繊細に描写されるが、その響きが遠くまで広がっている様子がMA910SBでは非常に良くわかる。音場が広大になった事で、開放感も高まり、イヤフォン特有の閉塞感もあまり感じないのも良いところだ。
ベース低域が沈み込む深さにも磨きがかかり、弦がブルブルと震える様子もMA910SBの方が描写が細かい。「米津玄師/KICK BACK」のような鋭い音が乱舞する激しい楽曲も秀逸。MA910SBで聴くと、空間が広く、音がクリアであるため、細かい音が散らばってもゴチャゴチャせず、1つ1つの音が明確に聴き取れる。そしてこの状況下でも、ベースラインはしっかり沈み、音楽を下から支えてくれる。再生に安定感があるのは、低域の描写力が高いからだろう。
なお、バランスへの変更に伴ってリチューニングされたこのイヤフォンだが、具体的なチューニング内容は「MA910Sそのままのサウンドをバランスにすると、広がりすぎて逆に定位がブレてしまう問題があったため、低域寄りの中域を持ち上げ、バランスらしい音場感を実現しつつ、ボーカルを際立たせるように調整した」とのこと。前述の空間の広さ、立体感などは、こうしたチューニングによる成果でもあるようだ。
ドッシリした低域、空間の広さ、そして高域の抜けの良さと、どの部分に注目しても抜かりがない完成度の高さ。このMA910SBが13,200円というのは、驚くべきコストパフォーマンスと思う。価格だけ見ると「バランス接続イヤフォンの入門」みたいに思えるが、実力的にはまったく入門ではなく、他社の中~高級機とも余裕で渡り合えるサウンドだ。