パイオニア、カーAV/ナビを中核とする中期経営計画

-三菱電機と共同開発。ホームAVはAVアンプに注力


小谷進社長

4月28日発表


 パイオニア株式会社は28日、中期経営計画を発表した。

構造改革施策

 カーエレクトロニクス事業を中核事業に位置付け、経営資源を集中。新たに三菱電機とカーナビゲーションシステムとカーAV製品における共同開発で合意したことを発表したほか、中国におけるインテリジェント交通情報サービスシステム開発/販売や、カーAV、カーナビ合弁会社設立で中国の上海汽車工業と基本合意した。

 プラズマテレビから撤退したホームエレクトロニクスについては、AVアンプを中核とする「ホームAV」と「DJ機器」、「CATV」を集中的に展開する。光ディスク事業についてはシャープと10月1日までに合弁会社を設立することで基本合意している。

 これにあわせて、構造改革も発表。グループ全社の事業体制スリム化を掲げ、国内外の生産会社30社の統廃合を行ない、9社を閉鎖、6社を規模縮小する。国内の5拠点は川崎、川越の2拠点に集約。人員については、2008年12月に対し、正社員を約5,800名、派遣請負社員約4,000名を削減する(国内4,600名、海外5,200名)。構造改革費用は、雇用調整を中心に、2009年度に470億円を見込む。

 また、本田技研工業株式会社への第三者割当新株式発行により、25億円の増資を決定。さらに、中期経営計画期間中に400億円の資金調達が必要となるため、資本増強による資金をまかなうべく、関係各位と協議を続けていくという。


構造改革で事業ポートフォリオを再編成事業体制もスリム化財務体質の改善

 2008年度の通期業績予測も2月発表時から若干修正。売上高は20億円減の5,580億円、営業損失は140億円改善の550億円、純損失は10億円改善の1,290億円となる。

 2009年度の通期連結業績予測は、売上高が前年比1,380億円減の4,200億円、営業利益が220億円改善で330億円の赤字、純利益は460億円改善で830億円の赤字を見込んでいる。カーエレクトロニクス、ホームエレクトロニクス両事業の損益改善を図り、2011年度の目標は売上高4,600億円、営業利益220億円、純利益160億円。


構造改革の費用と効果中期事業計画。連結業績見通し

 



■ AVアンプやDJ機器を核に家庭向け製品に取り組む

ホームエレクトロニクスはAVアンプなどを中核に

 ホームエレクトロニクス事業については、ホームAV、DJ、CATVの3つの事業領域に集中。2009年度はプラズマテレビ撤退に伴い、売上高は大幅減少の1,200億円、営業損失220億円を見込む(2008年度は売上高2,090億円、営業損失390億円)。

 ホームAV事業は、オーディオ製品を強化。特に充実した製品ラインを有するAVアンプを中核に社内リソースを集中し、売り上げ拡大を図るという。「AVレシーバは今後も一定の市場規模が期待できる。トップシェアを獲得し、安定した収益を得ていく。また、新しいコンセプトの製品で市場創造を目指す(小谷社長)」と意気込みを語った。

 また、住宅関連企業とのコラボレーションにより、住宅向けオーディオを展開していく。「パイオニアの原点であるオーディオ事業の強化、固定費削減により、黒字化を目指す」とした。

 DJ機器については、「圧倒的なデファクトスタンダード。強い商品企画力、プロDJやクラブなどの信頼をベースにユーザーマインドを満たす製品をつくり、収益を拡大する」とアピール。さらに映像機器の拡充や音響設備機器市場への参入などで、事業拡大を図る。

 CATVについては「STBの国内シェアは30%と高い。採用局数は今期で140局に達する計画。長年の信用と現在のシェアを活かして、今後も安定した収益を上げていく」とする。

DJ機器の強化策安定した収益が見込めるCATV事業

 プラズマテレビ事業撤退は順調で、「プラズマの値崩れを懸念して引当を多く積んでいたが、実際には価格をキープしながら販売できた(岡安秀喜CFO)」としており、2008年度の通期業績予測での営業利益改善の大きな要因になったという。

 


■ カーエレはOEM強化などで収益改善

カーエレクトロニクスの中期事業計画

 2009年度のカーエレクトロニクス事業は、前年比で減収を予測。売上高は410億円減の2,500億円、営業損失90億円を見込む。2011年度には売上高3,110億円、営業利益150億円を計画している。特に自動車メーカーとの協力関係強化を打ち出しており、2011年度のOEM比率は約45%まで拡大するという。

 徹底した構造改革により、筋肉質な体制構築を図る。長期的にはエンターテインメントだけでなく、環境や安全、安心といった分野に事業拡大し、カーエレクトロニクスのトップメーカーを目指す。

 市販事業については、普及価格帯モデルを強化し、海外向けAV/ナビの事業拡大を図るほか、BRICs、VISTA地域での事業拡大、国内テレマティクス事業の拡大などを予定。OEMについてはトヨタ、ホンダとの関係強化やナビを中心とした事業拡大を図るとする。

カーエレクトロニクスの取り組みカーエレクトロニクスの成長シナリオ

 三菱電機との開発協力については、「年々ソフトウェアの開発コストは増えている。2002年度からナビの開発で協力してきたが、それをAVにも拡大していく。大きなメリットがある(小谷社長)」と説明。ホンダとの資本提携については、ホンダが手掛ける双方向情報サービス「インターナビ」とパイオニアの「スマートナビ」との融合なども検討。地図会社への出資関係もあり、今後さまざまな連携強化を予定しているという。

 成長事業としては、省電力化や小型/軽量化に加え、Blu-ray Discへの対応なども進める。さらに、自動車と車載情報端末の融合も進め、カーナビ/AV製品を「情報ゲートウェイ」と位置付けて、ナビの高度化に取り組む。サービス領域では運航管理などの業務サービス、情報/コンテンツについてはプローブをはじめとするリアルタイムコンテンツ提供に取り組むとする。

 小谷社長は、「昨年度は、創業以来最大の赤字を計上し、大幅な株価下落、大幅な格付けダウンなど、ステークホルダの皆様に大変申し訳なく思っている。構造改革は大きな痛みを伴うが、不退転の覚悟でやっていく。財務パートナーを早期に探し、来季からは黒字化を達成し、早期の復配などを目指し全力をあげる。お客様に感動を届けられるようなパイオニアらしい製品をつくっていきたい」と構造改革の完遂と、早期の収益回復を訴えた。

 なお、中期経営計画期間中に必要となる資金調達については、「産活法(産業活力再生特別措置法)の準備はしているが、決まってはいない。そこを当てにしているわけではない。しかし、2年先の600億円の償却と開発投資など400億円ほど必要になる。あらゆる可能性を考えていく(小谷社長)」とした。なお、他社との経営統合については「一切考えていない」としている。


(2009年 4月 28日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]