スカパー! HDの3D対応はライブイベントを重視

-サイドバイサイド方式で、チューナは継続利用可


1月27日発表


 スカパーJSATは27日、2010年夏にCSデジタル放送「スカパー! HD」において3D放送を開始すると発表。報道向けの説明会も同日に開催した。

 124/128度CSデジタル放送の「スカパー! HD」において、国内の大手家電メーカーの3D対応テレビ発売が見込まれる2010年夏に3D放送の開始を予定。「『夏』、といってもワールドカップ(6月11日~7月11日)もあるので、その後になる(スカパーJSAT仁藤副社長)」とする。

 チャンネルは、自主チャンネルのスカチャンHDに3D専門チャンネルを開設。ここで月に2~3本程度の番組放送を見込んでいる。提供形態は有料、無料含めて検討中としている。番組については検討中だが、スポーツやライブイベントを重視しているという。

スカパー! HDにおける3D放送の概要スカパー!が3D放送を行なう意義3D放送検討状況
サイドバイサイド方式を採用。3D対応テレビと組み合わせて3D視聴を可能にする

 3D方式にはサイドバイサイドを採用する。サイドバイサイドは、左右目用の映像を横に並べた形(サイドバイサイド)で送出する方式で、現在BS11の3D放送においても採用されているほか、海外の3D放送でも多数の採用事例がある。

 1枚の画面を左目用、右目用に分割するため、横解像度は半分になり、例えば1,920×1,080ドットの元映像の場合は左右各960×1,080ドットの映像を送出し、チューナで受信。チューナからテレビにHDMIで出力し、テレビ側で左右それぞれの映像を画面に引き延ばして表示する。

 年内に発売が見込まれる国内メーカーの3D対応テレビでは、主にBlu-ray 3Dへの対応を進めてきた。Blu-ray 3Dは、左右の目にそれぞれ1,920×1,080ドットのフルHD映像などを制御信号とともに伝送し、アクティブシャッターメガネで視聴するフレームシーケンシャル方式を採用している。

 これらの3Dテレビにおいて、BD向けのフレームシーケンシャル方式だけでなく、放送向けのサイドバイサイド方式もサポートする方向で協議をしており、ほぼ全ての3Dテレビでスカパー!HDの3Dがサポートされる見込みという。各方式にあわせた処理をテレビ側に持たせることで、サイドバイサイドの放送も3D表示でき、メガネもBlu-ray 3Dと3D放送で同一のものが利用できる。既存のBS11の3D放送対応のテレビにおいても、HDMIで映像入力し、テレビにあわせたメガネを利用することで、問題なく3D視聴が行なえるという。

 また、スカパー! HDチューナにも変更はいらず、既存のチューナがそのまま利用可能。ソフトウェアのアップグレードなども必要ない。つまり3D対応テレビとスカパー! HDの受信環境さえあれば、3D放送を視聴可能になる。なお、テレビとチューナ間をアナログ接続した場合は3D視聴はできず、HDMIなどのデジタルインターフェイスの利用が必須となる。

スカパー! HD 3D放送受信に必要なものソニーのスカパー! HDチューナ「DST-HD1」スカパー!ブランドのチューナもそのまま3D対応

 


■ 3Dは「技術者から映像クリエーターのステージに」

 今回、ビクターの業務用3D液晶ディスプレイ「GD-463D10」を利用し、スカパー! HDチューナで10分程度の試験放送を受信する形でデモが行なわれた。GD-463D10は、Xpol偏光フィルターを採用し、偏光メガネを使って視聴する3D立体視ディスプレイで、スカパー! HDチューナとHDMI接続し、3D伝送を行なっていた。

 発表会の冒頭にスカパー! JSATの秋山政徳社長のビデオメッセージが3Dで流され、「2010年は3D元年となる。しかし、コンテンツはBlu-rayもゲームもまだまだ足りない。そこで放送、『スカパー! HD』が重要になる」と述べ、スカパー! HDではチューナなどの大きな変更もなく、3Dを楽しめる点を強調した。

秋山社長が3Dビデオメッセージで登場ビクターの3Dディスプレイと偏光メガネでデモ
スカパーJSAT 仁藤副社長

 スカパー! HDにおける3D対応を担当するスカパーJSATの仁藤雅夫 執行役員 副社長は、3D映画の「アバター」、「カール爺さんの空飛ぶ家」のヒットや、3D対応スクリーンの増加により、「3Dが『お金を払っても見たいもの』、として広がりだした。これは大きな変化だ」と言及。さらに、家庭用3Dテレビの発売や、米国のDirecTV、英国のBskyB、韓国スカイライフなどの3D放送の拡大などから「2010年は家庭用3D機器元年になる」と語り、スカパー! HDにおける3D対応の重要性を訴えた。

 スカパー! HDの広帯域/多チャンネルと、コンテンツ制作能力などを強みとし、3Dを推進。用意するコンテンツについては、「ライブイベントが重要」とし、スポーツやコンサートなどに特に力を入れていく方針。「3Dの映画を流すだけであれば、VODでもできる。スポーツやコンサートなどのイベントを、いかに3Dならではの視点で送れるかということが重要で、他サービスとの差別化が図れるポイント」という。なお、伝送方式はH.264だが、映像ビットレートなどの詳細はまだ決まっていない。3D対応における追加投資においては、「送出側、受信側の設備投資は少ない。ただ番組制作においては3D化のためのプラスの費用がかかっていく」という。

 これまでも2009年8月以降に、「センター・オブ・ジ・アース 3D」など、アナグリフ方式(赤青メガネ)による3D番組を放送。さらに、2009年10月以降は、サッカー(Jリーグ千葉 vs 大分)や格闘技(戦極 ~第11陣~)、グラビア(愛川ゆず季)などのコンテンツを3D撮影し、撮影ノウハウなどを集めている。今回のデモでもサッカー、格闘技、グラビア、風景などの3D収録映像が披露された。

 なお、3D放送のコンテンツは新規に3D撮影したものを中心にする考えという。仁藤副社長は、「過去のものを3D化するというのは、今のところあまり本質的ではないと考えている。3Dならではの撮り方などがある。“3Dならでは”を追求したい」と説明。田中晃執行役員専務は、「いままでの3Dは、技術サイドががんばって実現した。だが、これからは映像クリエーターのステージに入っていくと思う。HDとは比べられないぐらい大きな、カラー化以上の変化が起きるのではないか。例えば、キー局のスポーツディレクターが3Dチャンネルを使って表現する。フジのドラマのディレクターが3D用の演出をする、サザンのライブを3Dで実現する場として利用する。そういう世界に入っていくのではないか」と予想する。

 一方で、「目が疲れやすい」など3D化による生理的な問題、弊害への対応について、仁藤副社長は、「製作時のガイドラインを整備していく。例えば急なパンやシーンチェンジを控えるなどの対応は必要。これから本放送に向けて検証を進めながら、現場のガイドラインを作っていく」と説明。また、こうした問題への対応についても、「視聴者との合意のもとに放送するという点では、ペイテレビ(有料放送)のほうがやりやすい点はある」とした。


(2010年 1月 27日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]