日立製作所、デジタルメディア事業の利益大幅改善も赤字

-パネルの外部調達によるコストダウンが影響


5月11日発表


日立製作所 三好崇司執行役副社長
 日立製作所は11日、2009年度連結決算を発表した。売上高は前年比10%減の8兆9,685億円、営業利益は59%増の2,021億円、税引前損益は前年の2,898億円の赤字から3,534億円回復し、635億円の黒字。当期純損失は前年の7,873億円の赤字から6,803億円回復し、1,069億円の最終赤字となった。

 事業部門別では、AV機器や白物家電などを含むデジタルメディア・民生機器の売上高が16%減の9,292億円、営業損失は1,033億円改善したものの、72億円の赤字となった。

 第1四半期に赤字を計上したものの、事業構造改革の効果もあり、第2四半期からは黒字化。「デジタルメディア・民生機器は、大きく損益を改善した部門といえる」(日立製作所・三好崇司執行役副社長)とした。

 売上高では、海外における販売チャネルを大幅に絞り込んだ薄型テレビの減少が影響したのに加えて、空調機器では、設備投資の抑制や、冷夏の影響で減少。さらに携帯電話の売り上げが減少した。また、営業損益は薄型テレビ用パネルの外部調達への切り替え、人員規模の適正化などの事業構造改革の成果が影響したという。

連結損益計算書
国内・海外売上高
事業部門別売上高
事業部門別営業損益

 情報・通信システムの売上高は12%減の1兆7,055億円、営業利益は32%減の945億円、電力システムの売上高は2%増の8,821億円、営業利益は533%増の2,20億円、社会・産業システムの売上高は6%減の1兆2,502億円、営業利益は22%増の420億円、電子装置・システムの売上高は2%増の9,986億円、営業損失は309億円減少の52億円の赤字、建設機械は売上高が19%減の5,836億円、営業利益は66%減の176億円、高機能材料の売上高は20%減の1兆2,493億円、営業利益は76%増の444億円、オートモーティブシステムの売上高は6%減の6,388億円、営業損失は550億円改善したものの、54億円の赤字。コンポーネント・デバイスの売上高は23%減の7,548億円、営業利益は80%減の11億円、金融サービスの売上高は5%増の4,196億円、営業利益は28%増の85億円、その他部門の売上高は8%減の7,636億円、営業利益は21%減の194億円となった。

 なお、同社では、今回の決算発表から米国会計基準にあわせてセグメント区分を変更している。

 一方、2010年度連結業績見通しは、売上高が前年比3%増の9兆2,000億円、営業利益は68%増の3,400億円、税引前利益は4.9倍の3,150億円、当期純損益は2,368億円の回復を見込み、1,300億円の黒字転換を見込む。

 デジタルメディア・民生機器の売上高は1%減の9,200億円、営業損益は142億円改善し、70億円の黒字転換を見込む。「デジタルメディア事業の事業構造改革効果により黒字転換する計画。テレビ事業については、パネルの外部調達の増加のほか、OEMや製造委託の活用によるラインアップ強化と、コスト構造改革の両立をはかり、安定的な事業基盤確立の継続推進を行なう。また、液晶プロジェクタの市場開拓の強化により、新興国のBtoB事業の強化を図る」としたが、「エコポイント制度が終了することを想定すると、デジタルメディア・民生機器事業は、売上高で前年比99%とみざるを得ない」とした。

デジタルメディア・民生機器部門
高機能材料部門
コンポーネント・デバイス部門

2011年3月期 連結決算見通し
 また、総合空調事業のブラジルなどの新興国におけるグローバルへの事業拡大、家電事業では各国のニーズに対応した事業拡大により、黒字化維持を図るとした。

 一方で、材料費の高騰を課題としたほか、「量産品については、世界経済が一本調子で戻っているわけではないので、コンサバティブにみなくてはならない部分もある」などとした。

 なお、同社では、5月下旬に、中西宏明社長が、中期経営計画を発表する予定であることを明らかにした。

事業部門売上高の見通し事業部門営業利益の見通し

(2010年 5月 11日)

[Reported by 大河原克行]