パナソニック、PDP生産能力半減などTV事業改革

-液晶の茂原工場休止。「なんとしても黒字化を」


大坪文雄社長

 パナソニックは31日、第2四半期決算の発表とともに、通期の業績見通しが大幅な赤字になることを発表。テレビ事業を中心とした事業構造改革に乗り出す方針を明らかにした。

 液晶テレビについては自社パネルを中心としたインチ限定の施策を見直し、海外から調達したパネルを活用するとともに、大画面化によるフルライン展開を開始すると発表。プラズマテレビについては、フルライン展開を見直し、収益性の高い高級機種に集中させる考えを示した。

 液晶テレビでは、ODMやOEMの活用を増やすと同時に、外部からのパネル調達を増やすことで、自社パネルの使用比率を現在の7割から、3割弱にまで引き下げる。また、現在は10%程度に留まっている40型以上の比率を、3割以上に引き上げる。

 プラズマテレビでは、現在、4割の50型以上の出荷比率を6割にまで引き上げるという。


液晶テレビでは、外部からのパネル調達を増やし、自社パネルの使用比率を現在の7割から、3割弱にまで引き下げる液晶パネルでは、茂原工場を休止。姫路工場の減損処理も行なう

 一方、生産拠点については、液晶パネルおよびプラズマディスプレイパネルの生産拠点をそれぞれ1カ所に集約。液晶パネルでは、千葉県茂原市の茂原工場を休止するとともに、姫路工場の減損処理を行なう計画を発表した。現在、32型換算で月産81万台となっている姫路工場で生産されたパネルの用途の見直しなどを含めて、テレビ以外の用途を全体の半分近くにまで一気に引き上げるという。

 「IPS液晶パネルには、高画質に加えて、視野角が広く、色の反転がない、開口率が高いといった特徴や、省エネ化できる、タッチパネル操作時に斑点が出ないなどの特徴がある。ハイエンドモニターや、車載モニター、医療用などの分野でも威力を発揮するパネルになる。すでにいくつかの商談も出ている」などと語った。

 さらに、プラズマディスプレイパネル(PDP)では、兵庫県尼崎市の第5工場の生産休止および減損処理、第3工場設備の海外移転を中止するとともに設備を廃棄すること、上海での生産停止を明らかにし、PDPの生産は第4工場に集約。生産台数は年間1,380万台(42型換算)から720万台規模と、約半分の規模にまで縮小する。


薄型テレビ事業における「2012年度の目指す姿」。プラズマも液晶も、非TV用を拡大させる

 PDPでは、サイネージなどのシステム用途を新たに開拓する考えを示した。

 組立工程では、宇都宮の拠点では一部機種を残して、モノづくり革新センター化するとともに、茨城はパネル技術拠点化するという。

 テレビ事業全体における事業構造改革費用は2011年度で2,650億円を見込み、2012年度の構造改革効果は810億円を見込んでいる。

 パナソニックの大坪文雄社長は、「厳しい収益環境にあるテレビ事業を抜本的に改革しなてくはならない。まずは、テレビ事業全体では、事業規模に見合った人員体制にスリム化する。一連の構造改革により、アセットライトで付加価値の高い事業へと転換し、営業赤字の解消、収益大幅改善に取り組む。テレビ事業は2012年度の黒字化を目指しており、2012年度には今までとは違う事業構造になる」などとした。

 さらに大坪社長は、「テレビ事業は単一製品としては、最大の規模を誇る事業であり、ブランドを象徴するグローバル製品でもある。しかし、この製品において、なかなか収益をあげることができなかったということを認識しており、そうした上での構造改革になる。パナソニックのテレビ事業は、2008年度から悪化し、それに対してコストダウンなどの取り組みを行なってきたが、思うような事業構造にはならなかった。ドルに対して、円高、ウォン安という状況もあり、韓国メーカーとの競合が激しくなり、製品がコモディティ化したことで、商品力、技術力が発揮できなかったという反省もある。結果として、現在保有している設備が過剰になった。ただし、テレビは引き続き、重要製品であると理解している。2011年度を区切りとして、テレビ事業の黒字化をなんとしてでも図りたい」と語った。



■半導体事業も構造改革。全社で3つのビジネスモデル別体制に

 一方、半導体事業においては、システムLSIに関して、生産委託への切り替え、一部先端工場の減損処理を実施。開発においてはグループ内での一体化、全体としてのスリム化を図り、本社関連研究所との統合や、リソースの一部を他の事業へシフト。センサーやパワー半導体といった「伸ばす事業」への集中を図るという。

 半導体事業における2011年度の構造改革費用は590億円を計上。2012年度以降、年間150億円の構造改革効果を見込み、2012年度の営業黒字化を目指す。

 そのほか、三洋電機では、モータ事業の日本電産への売却、白物家電事業のハイアールへの売却により、約1万1,000人が他社へ異動することになったことにも言及。また、三洋電機の各部門における人員体制のスリム化を前倒しで推進していること、パナソニックでも、エナジー社、ライティング社、HA(ホームアプライアンス)社などで人員体制のスリム化を図ることを示した。

半導体事業では、システムLSIの生産委託への切り替え、一部先端工場の減損処理を実施三洋電機のモータ事業を日本電産へ売却、白物家電事業はハイアールへ売却。三洋電機の各部門における人員体制のスリム化も前倒しで推進しているという
構造改革費用は全体で5,140億円を予定。2012年度の効果は年間1,460億円を見込んでいる

 大坪社長は、「2012年1月からの新体制スタートに向けて、構造改革を、積み残しなくやりきる。当初は2012年度末を予定していた35万人以下の体制を、1年前倒しとなる2011年度中に実現する。構造改革費用は全体で5,140億円を予定しており、2012年度の効果は年間1,460億円を見込んでいる」などとした。

 一方、大坪社長は、2012年1月から始まる事業再編の方向性についても言及した。


新グループ体制の枠組み

 コンシューマー、デバイス、ソリューションの3つのビジネスモデル別体制とするこれまでの方向性を踏襲。「お客様接点の強化による価値創出の最大化」、「スピーディーで筋肉質な経営の実現」、「大胆なリソースシフトによる成長事業の加速」に取り組み、「3つの事業分野がそれぞれ3兆円規模で拮抗するような体制を目指す」と語った。

 グローバル本社を設置し、全社戦略機能を統合、強化。「本社の人員は、三洋電機、パナソニック電工を加えても、現在のパナソニックの本社よりも少ない人数になる」とした。

 テレビなどを担当するコンシューマー事業分野のAVCネットワークス社は、1兆9,000億円、3万3,000人の人員でスタートすることになり、民生用AVC機器、業務用AVC機器、AVC機器用デバイスが含まれる。

 また、コンシューマー事業分野では、グローバルコンシューマーマーケティング部門を設置。海外へのリソースシフトや海外における生活研究の強化、流通コストの合理化などに取り組むという。


グローバル本社を設置し、全社戦略機能を統合、強化AVCネットワークス社は、1兆9,000億円、3万3,000人の人員でスタートデバイス事業分野の体制

 新興国攻略も成長戦略における重要な鍵にあげ、インド、ブラジルの大増販プロジェクトの展開、中国における内陸部の都市攻略などを、成長の牽引役に位置づける。

 一方で、ソリューション事業領域においては、まるごと事業を推進。「ひとつひとつの製品が強いことを前提に、これらをつなげることでのまるごと提案、さらにメンテナンスやサービスによって長い間おつきあいを続ける提案によって、3度稼ぐモデル、あるいは繰り返し収益を得るモデルを確立する。まるごと事業では100本の矢として、100案件の早期獲得を目指す。藤沢サスティナブルスマートタウンをはじめ、すでに30案件の姿が見えている」などと語った。

ソリューション事業分野の2012年度に向けた収益構造の変化


(2011年 10月 31日)

[Reported by 大河原 克行]