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オーテク、VMカートリッジ一新。音質や使い勝手が進化「AT-VMx」9機種。15400円から
2025年5月15日 17:00
オーディオテクニカは、VMカートリッジのラインナップを一新、型番にATとxが追加された「AT-VMx」シリーズ9モデルを5月23日に発売する。価格は15,400円~96,800円。
- AT-VM760xSL(96,800円)
ステレオ/アルミハウジング/ボロン/特殊ラインコンタクト針 - AT-VM750xSH(60,500円)
ステレオ/アルミハウジング/ボロン/シバタ針 - AT-VM750xSH/H(69,300円)
上記カートリッジにヘッドシェル「AT-LT10」が付属するモデル - AT-VM745xML(55,000円)
ステレオ/アルミハウジング/ボロン/マイクロリニア針 - AT-VM740xML(39,600円)
ステレオ/アルミハウジング/アルミテーパーパイプ/マイクロリニア針 - AT-VM740XML/H(48,400円)
上記カートリッジにヘッドシェル「AT-LT10」が付属するモデル
- AT-VM530xEN(33,000円)
ステレオ/ABS樹脂/アルミニウムパイプ/無垢楕円針 - AT-VM520xEB(17,600円)
ステレオ/ABS樹脂/アルミニウムパイプ/接合楕円針 - AT-VM520xEB/H(26,400円)
上記カートリッジにヘッドシェル「AT-LT10」が付属するモデル - AT-VM510xCB(15,400円)
ステレオ/ABS樹脂/アルミニウムパイプ/接合丸針
- AT-VM610xMONO(20,900円)
モノラル/ABS樹脂/アルミニウムパイプ/接合丸針 - AT-VM670xSP(22,000円)
モノラル/ABS樹脂/アルミニウムパイプ/接合丸針(3.0mil)※SPレコード専用
オーディオテクニカは1979年に、AT100系の最初のモデル「AT120E/G」を発売。その後、 国内では「AT150MLX」、海外では「AT440ML」などがヒットし、各国でロングセラーになった。当時は単品ごとに開発・リリースし、仕様も国ごとに異なっていたVMカーリッジだが、2016年に「VM700/600/500シリーズ」として世界共通仕様として一新した。
今回の「AT-VMx」シリーズは、リニューアルにあたり、型番にATとxを追加。音質面・仕様面で再度見直し、現代のトレンドに最適化してリニューアル。多種多様なラインナップを用意することで、選択肢の幅とカスタマイズの自由度を提供するとしている。
ターゲットは、アナログオーディオを楽しむHi-Fiユーザー、コストパフォーマンスを重視するユーザー、現行VMシリーズのユーザーに加え、往年のAT100シリーズを使っているユーザーには、ボディと交換針を提案。さらに、レコードプレーヤー「AT-LP8X」を購入したユーザーに、付属している「AT-VM95E」からのアップグレード需要も見込んでいる。
上位のVM700xシリーズは、アルミダイキャストハウジングと、ラインコンタクト針を組み合わせる事で、FMカートリッジの能力を極限まで高めたハイグレードモデル。
前モデルのVM740MLとAT-VM540MLでは、ニーズの高いマイクロリニア針を採用し、カンチレバーはアルミニウムテーパーパイプで共通。ハウジングがVM740MLがアルミニウム、AT-VM540MLがABS樹脂と、ハウジング素材で500シリーズ、および700シリーズに分けて音の違いを表現していた。
今回のリニューアルでは、同じアルミニウムハウジングを採用した700シリーズの中で、ボロンカンチレバーを使った「AT-VM745xML」と、アルミニウムパイプテーパーパイプの「AT-VM740xML」を用意。カンチレバーの違いで選べる、マイクロリニア針モデルのラインナップ展開としている。
VM500x/VM600xシリーズでは、マウンティング方式とコイル導体、ターン数を見直してブラッシュアップ。具体的には、線材を6N-OFCからPCUHDに変更し、アタック感、定位、音楽的なニュアンスの表現力を向上。コイルのターン数を少なくする事で、音の塊がほぐれ、繊細な表現力を残したまま軽快な再生を可能にした。
密度感、空間、音楽を奏でるところを重点的にリニューアル
手掛けたホームリスニング開発課の森田彩氏は、「形や基本設計はあえて変えていない。形や構造を変えると、従来のボディやカートリッジが使えなくなってしまうため、それは避けたかった。その代わりに、音など、中身を進化させている」と説明。
オーディオテクニカのカートリッジの中で、販売実績の高いマイクロリニア針採用モデルの「AT-VM740xML」をベースに、ハイグレードモデルとスタンダードモデルの音作りを展開していったという。
現行のVM700シリーズは誇張のない正確な再現性が特徴だったが、AT-VM700xシリーズはそうした設計思想を継承しつつ、より繊細なディテール表現や情感豊かな音楽性を追求。さらに、カンチレバーをアルミからボロンヘ変更することで(AT-VM740xMLを除く)、高級ラインにふさわしい情報量と臨場感のある音質になったという。
AT-VM500xシリーズは、AT-VM700xシリーズと同様、 音楽的な抑揚のある音質傾向を目標に設計。結果的に楕円針や丸針もPCUHDコイルとの相性が良く、メリハリのある軽決で明瞭な再生を得意としながら、特にAT-VM530xENは振動系設計を大きく見直し、針先形状の同じ、接続楕円針のVM520xEBとは大きく差のある情緒的な表現ができるようになった。
AT-VM600xシリーズは、チップ形状などの設計変更を検討したが、ステレオ同様にモノラル再生もコイルの設計変更が良い影響を及ぼし、安定した再生能力を持ちつつ、明るく体幹の良い再生を可能にした。
森田氏は、リニューアルした新VMカートリッジ全体の特徴として、「VMの各針先形状で実現できる最大限の高音質を狙って開発した。その一方で、解像度を求めすぎないことにも注意した。現行のVM700/600/500シリーズは、20代の私が開発したが、今の私が聴くと、もう少し深みが欲しいと感じる。MCカートリッジの設計で培ったノウハウも投入し、音の密度感、空間、音楽を奏でるところを重点的にリニューアルした」と説明。
さらに、「ベイシーの菅原さん(岩手県一関市の著名なジャズ喫茶、そのマスター菅原正二氏)が、映画の中で、『カートリッジはオーディオシステムにおける、“楽器のリード”だ』と仰っていた。私はマウスピースだと思って設計していたので、ずっとその言葉が引っかかっていた。それを意識しながら注ぎ込んだ音作りになっています」とのこと。
なお、使い勝手の面もリニューアルされており、従来は取り付け穴が貫通タイプだったが、新も出るではボディにねじ切り仕様のカートリッジ取り付け穴を実装している。
また、針をレコードに落とす時に、針先が見えないという問題を解消するため、型番が入っているプロテクターの中央にV字カットの印を追加。従来よりも、針先がどこにあるかわかりやすいデザインになっている。
音を聴いてみる
丸針のAT-VM51OxCBは、中低域が気持ちよく張り出し、厚みのあるサウンド。それだけに留まらず、細やかな描写、キレの良さもしっかりと聴かせてくれる。ロックやジャズを、メリハリをつけて楽しみたい時にマッチしそうだ。
楕円針のAT-VM520xEBは、上記よりも少し解像度重視のサウンドで、表現力がアップ。それでいて、か細くはならず、張り出しの強さ、勢いは維持されている。メリハリと情報量の両方を楽しみたい時に選ぶと良いだろう。
AT-VM530xENは、ダイナミックレンジが広く、低重心なサウンドが特徴。中低域の押し出しが強く、ボリューム感もある。
マイクロリニア針のAT-VM740xMLは、大編成のクラシックやジャズにもマッチする解像度の高さが持ち味。アルミ筐体の効果か、音の輪郭もシャープで、ラインコンタクト針の繊細な描写が活きている。その一方で、“アルミ臭い音”にはなっていない。
AT-VM745xMLは、同じマイクロリニア針だが、ボロンカンチレバーを採用したモデル。音に情緒的なニュアンスが出て、空気感、声の重なりなどがより見えやすくなる。
シバタ針のAT-VM750xSHに変えると、解像感やキレ味がさらにアップ。鋭く、トランジェントの良いサウンドになる。低域の量感はしっかり出しつつ、輪郭がボワボワと膨らむこともなく、タイトな低域も特徴。
特殊ラインコンタクト針のAT-VM760xSLは、ダイナミックレンジがさらに広大になり、色付けの少ない精密なサウンド。その一方で、高解像度なだけではない、VMカートリッジらしい熱気のようなものは維持されている。