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「15年度は成長するパナソニック」へ。'14年度決算発表

'中期計画前倒し達成で津賀社長「そこそこ満足」

 パナソニックは、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績を発表。その席上、パナソニックの津賀一宏社長は、「中期計画であるCV2015において掲げた3つの目標は、すべて1年前倒しで達成することができた」と述べ、「2015年度は利益優先から成長優先に舵を切ることができる。2018年度に向けて、成長のスタートを切れる年になる」とコメントした。

パナソニックの津賀一宏社長

 パナソニックでは、2015年度を最終年度とするCV2015において、営業利益率5%以上、営業利益3,500億円以上、累計キャッシュフロー6,000億円以上の3つの目標を掲げており、3月26日に発表した事業方針説明では、営業利益率5%の達成だけは2015年度になり、残りの2つの目標と達成できるとしていたが、すべての経営数値目標の達成が1年前倒しとなった。

2014年連結決算概要

 津賀社長は、「振り返ってみると赤字も多かったが、儲けることができる事業も結構あった。営業利益率5%というのは、平均値ということになる。もともと売上げを追わずに、利益を追求することを優先し、利益があがる事業は売りを伸ばし、利益があがらない事業は売りを縮小させてきた。円安の追い風もあるが、まずは売上高7兆7,000億円という時点で、営業利益率5%に着地することができた。そこそこ満足できるところまできた」と総括。「2015年度は、ついに売上げを伸ばすことになる。2014年度に営業利益率5%を達成したことは、2015年度に積み残した課題を同時にやりながら、売りを伸ばすのとは違い、全社が成長に向けて取り組むことができる点で意味がある。成長に向けて、反転攻勢をかけることができる」などと述べた。

'15年度は売上高8兆円。テレビも黒字化へ

セグメント別実績

 パナソニックが打ち出した2015年度の通期業績見通しは、売上高が前年比3.7%増の8兆円、営業利益は12.6%増の4,300億円、税引前利益は64.4%増の3,000億円、当期純利益は0.3%増の1,800億円とした。営業利益率は5.4%を目指す。また、キャッシュフローは2,000億円以上を目指し、ネット資金は5,000億円程度を見込むという。

 セグメント別の業績見通しは、アプライアンス社の売上高は製販連結で前年比1%増の2兆5,900億円、営業利益は45%増の736億円を見込む。そのうち、テレビ事業に関しては、売上高が20%減の3,609億円、営業利益は152億円増とし、3億円の黒字を見込む。これを達成すれば、テレビ事業の黒字は8年ぶりとなる。

河井英明代表取締役専務

 パナソニックの河井英明代表取締役専務は、「テレビ事業は販売減の影響があるものの、高い成長が期待されるアジア、中国で、現地完結型の経営、マーケティング活動を進め、富裕層をターゲットにしたプレミアム商品の投入や現地に適合した商品開発を進める。

 テレビ事業に関しては、2014年度までに構造改革および事業の方向付けは終えており、収益改善を見込んでいる」とした。

AVCネットワークス

 AVCネットワークスの売上高は前年比7%増の1兆2,360億円、営業利益は30%増の675億円。「映像イメージング事業では4K対応のデジタルスチルカメラやセキュリティカメラ、高輝度のプロジェクターなどのラインアップを強化し、高画質および高付加価値分野での事業拡大に取り組む一方、モビリティ分野では堅牢技術を生かしたタブレットやハンドヘルド端末のラインアップを強化。法人向け事業の拡大に取り組む」と述べた。

 エコソリューションズは、売上高が4%増の1兆7,260億円、営業利益が10%増の1,045億円。「国内は消費税の影響が一巡するほか、非住宅市場も堅調に推移するとみている。また、インド、中国、ASEANなどの戦略地域を中心に、配線器具、照明器具の売り上げを拡大していく」と語った。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が1%増の2兆8,350億円、営業利益は22%増の1,425億円を見込んでいる。

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
エコソリューションズ

 「不採算事業の縮小、撤退による売り上げ減少はあるものの、車載電池や車載エレクトロニクス、FA、蓄電池システムなどの車載、産業向けを中心とした販売増に加え、為替効果も見込まれる。一方で、車載、産業向けには、開発投資や減価償却費が増えることになる」という。

エアコンなど6つの重点事業を強化へ

 パナソニックでは、2015年度の重点事業として、エアコン、ライティング、ハウジングシステム、インフォテインメントシステム、二次電池、パナホームの6つの事業部の強化をあげる。これらの事業に共通しているのは、売上高が3,000億円以上と大規模であり、営業利益率が5%以下であるという点だ。

大規模6事業部の売上・利益見通し

 エアコンとインフォテインメントシテスムは、2015年度見通しも、営業利益率が、それぞれ3.8%、4.7%と、5%を下回るが、ライティングの6.1%を筆頭に、残る4つの事業では5%を上回ることになる。

 6事業部合計での売上高は2兆5,212億円、営業利益は1,245億円。営業利益率は4.9%となる。

 津賀社長は、6つの重点分野における状況について説明。「エアコンは、大型空調を積極的にやろうと考えているが、これは利益率を下げる要因になる。家庭用エアコンは5%以上の利益を確保しており、これを投資の原資にすることになる。ライティングは既存光源が利益を下げているが、LEDは利益を確保している。LED光源を増やし、BtoBを伸ばし、注力できていない民生用セグメントを狙う。ハウジングシステムは、売りを追うとゼネコン相手となり、低収益分野が伸びることになる。売り先や商品構成を変えて、利益が確保しやすいリフォームの商品群を強化して、利益を伸ばす。住宅着工件数が上向いているのは追い風だが、売り上げは伸びないと考えている。インフォテインメントシステムは、かつてタイの洪水が発生した際に、商談が止まり、その影響があり、2015年度、2016年度が伸びない。また技術開発への投資が大きい。開発投資の効率化で固定費を引き下げていく。二次電池は車載や非ICT分野に展開することで成長を見込む。パナホームは、住宅着工件数が上向いていることと、リフォーム需要を取り込むことで、5%かつかつのところを目指す」などと語った。

 なお、2015年度に予定している戦略投資枠の2,000億円については、「非連続への投資も含めて、すでに決まっているが、それ以上はいえない」とするに留めた。

'14年度決算に中期計画を前倒し達成

 一方、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績は、売上高は前年比0.3%増の7兆7,150億円、営業利益は25.2%増の3,819億円、税引前利益11.5%減の1,824億円、当期純利益は49.0%増の1,794億円となった。

地域別売上高
要因別営業利益分析
IFRS適用へ

 パナソニックの河井英明代表取締役専務は、「為替を除いた実質ベースでは前年比3%の減収となったものの、リチウムイオン電池をはじめ、重点分野の車載事業は堅調に推移。また、売上高は、10月公表値には届かなかったが、利益は公表値を上回った。中期計画のCV2015で掲げた営業利益率5%の目標を達成した。これにより、3つの経営目標をすべて1年前倒しで達成した。さらに、前年に続いて着実に資金を創出でき、今後の成長投資に向けた財務体質の改善が着実に進展した」と振り返った。

地域別売上高

 地域別売上高は、円ベースにすると、国内が前年比5%減の3兆6,920億円。海外では、米州が7%増の1兆2,180億円、欧州が1%減の7,294億円、中国が4%増の1兆348億円、アジアが7%増の1兆408億円。海外全体では5%増の4兆230億円となった。

 日本では家電や住宅関連を中心に増税後の需要が減少したことが影響したが、米州では車載関連やBtoB関連、欧州では車載関連が牽引。アジアではエアコンが好調だったという。また、中国でもエアコンの販売が回復したという。

アプライアンス

 セグメント別では、アプライアンス社の売上高が前年並の1兆7,697億円、営業利益は37%増の405億円。そのうち、テレビ事業に関しては、売上高が10%減の4,494億円、営業損失は前年の152億円の赤字から若干回復し、マイナス149億円の赤字となった。

 「テレビ事業は、高付加価値商品へのシフトを進めていたものの、第3四半期には急激な価格下落に加えて、為替のマイナス影響もあり、赤字幅はほぼ前年並になった」と述べた。

 AVCネットワークスの売上高は、前年並の1兆1,543億円、営業利益は45%増の518億円。

 エコソリューションズは、売上高が1%減の1兆6,660億円、営業利益が3%増の953億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が2%増の2兆7,825億円、営業利益は53%増の1,057億円。そのうち、液晶パネル事業については、売上高が前年比21%増の811億円、営業利益は前年の153億円の赤字から、36億円の赤字となり、赤字幅が縮小した。

 「液晶パネル事業は医療用やテレビ向けが伸張し、大幅な増収。また、大幅に赤字が縮小した。第3四半期に続いて、第4四半期も黒字になった」とした。その他事業では、売上高が14%減の7,645億円、営業利益は40%減の146億円となった。その他事業では、ヘルスケア事業の譲渡がマイナスに影響したという。

(大河原 克行)