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B&W「801 D4/805 D4」に“Signature”。ユニット進化、Nautilusのような塗装

手前の左が「805 D4 Signature」カリフォルニアバール・グロス、その隣がミッドナイトブルー・メタリック、その隣は通常の805 D4。奥の左が「801 D4 Signature」ミッドナイトブルー・メタリック

Bowers & Wilkinsは、フロア型の「801 D4」とブックシェルフ「805 D4」のサウンドと外観をアップグレードした特別バージョン「801 D4 Signature」と「805 D4 Signature」を6月28日から受注受付開始。価格は801 D4 Signatureが1台3,685,000円、805 D4.Signatureが1台880,000円。どちらのモデルも仕上げはミッドナイトブルー・メタリック、カリフォルニアバール・グロスの2色から選択できる。

B&Wはこれまで、Signatureの名を冠したスピーカーを7モデル発売しているが、いずれも、まったく新しい技術を導入するのではなく、B&Wによって既に確立された技術やプロセスを最大限に活用し、最適化して投入しているのが特徴。今回の2モデルも、そうした技術を駆使している。

手前が「801 D4 Signature」ミッドナイトブルー・メタリック

ミッドナイトブルー・メタリックは、「オリジナルNautilus」と同じ厳格な基準の下で、同じ仕上げと工程で塗装。塗装とラッカー仕上げを計11回の重ね塗りする事で、深い光沢を出しており、塗装が乾いて仕上がるまで18時間ほどかかっているという。

ドライブユニット・ポッドやツイーター・ハウジングなどの金属部品は、ダークアンスラサイトとグロスブラックで仕上げている。また、Signatureモデルである事を示すプレートも備えている。

オリジナルNautilusとまったく同じ色ではないが、同じ基準で塗装されている
「801 D4 Signature」ミッドナイトブルーメタリック

カリフォルニアバール・グロスは、イタリアのALPIが手掛けた突板で、こちらも1本分の工程で24時間ほどの時間をかけているという。

手前が「805 D4 Signature」カリフォルニアバール・グロス
Signatureモデルである事を示すプレートも備えている

801 D4 Signature

801 D4 Signature

通常の801 D4は、ウーファーを搭載したエンクロージャーと、ツイーター + ミッドレンジを搭載したタービンヘッドの間の、“肩”の部分にアルミニウム製トッププレートを配置しているが、801 D4 Signatureではそのプレートに肉抜きを施すことで、“鳴き”を少なくしている。

ミッドナイトブルー・メタリックでは、肩の部分が紺色になっている
通常の801 D4のアルミニウム製トッププレート
801 D4 Signatureではそのプレートに肉抜きを施している

さらに、タービンヘッド内部や台座など、801 D4の他の部分に使用されているテックサウンド・ダンピング素材を、このトッププレートの内側に追加。「機械的なノイズがさらに低減され、キャビネット上部からの音の放射もより少なくなった」という。

ユニットも改良。25cm径のウーファーの、磁気回路のポールピースのトッププレートと、ミドルプレートに使用する鋼材を改良。インダクタンスを下げることで電流歪みを低減している。

25cm径のウーファー

また、標準モデルのバスユニットのシャーシは無塗装の金属だが、Signatureモデルのシャーシはブラックに塗装。最終の組み立てラインでこのユニットが特別仕様であることを分かりやすくするための工夫だという。

底部に備えたバスレフポートもアップグレード。樹脂製のポートを鋳造アルミニウムに変更し、剛性を高めた。最新のAerofoilコーン・バス・ドライバーと組み合わせることで、「より引き締まったレスポンスと、立ち上がりの速い正確な低音を実現」するという。

バスレフポートを鋳造アルミニウムに変更

ネットワークも改良。バイパスコンデンサーをアップグレードすると共に、使用個数を1カ所あたり2倍の4個に増加。写真で黄色く見えるパーツがそれで、「サウンドの透明感がさらに高められた」という。

ネットワーク部分
黄色く見えるパーツがアップグレードしたものだ

ツイーター自体に変更はないが、グリルメッシュが新しいデザインになった。FEA finite element analysis(有限要素解析)構造解析によって最適化された新デザインで、開口率と剛性のバランスの最適化をさらに突き詰めたという。これにより、これまで以上に開放的で、解像度と空間表現の両方を改善したとする。グリルのメッシュ角度は、25回を超える試行錯誤を繰り返して最適化されている。

左が従来のグリル、右がSignatureのグリル

805 D4 Signature

805 D4 Signature

ユニットや構成など、基本的な仕様は805 D4と同じ。ダイヤモンドドームツイーターと、ContinuumコーンFSTミッドレンジを搭載する。

165mm径のウーファーに手が加えられ、磁気回路に備えている空気抜き用の穴を5.5mmから8mmへと拡大。これにより歪みを改善して、中域をよりクリーンに、低域をより伸びやかに再生できるという。

D&Mのシニアサウンドマスター澤田龍一氏によれば、「コーンが動いた時に排気が楽になるだけでなく、磁気回路の真ん中にある、穴が開いているポールがボイスコイルの内側に入っていますが、磁石の磁束がポールを通る時の断面積が、穴が大きくなった分だけ減る。すると、マグネットが作っている固定磁極の磁束の密度が上がる(体積が減るので)。これにより飽和領域に近いくらい狭くなりますが、そうなると、ボイスコイルを流れる音声電流で発生する音声電流磁界によって、メイン磁界が変調される余地が少なくなる(ほぼ飽和しているので)。これは昔から知られた技術ですが、あまり顕著に違いが現れなかったのであまり使われてこなかった技術。しかし、800 D4シリーズは低域の歪が非常に低いので、この違いが見えてきた」という。

D&Mのシニアサウンドマスター澤田龍一氏が違いを解説

ツイーター自体に変更はないが、801 D4 Signatureと同様に、FEA finite element analysis構造解析によって最適化された新デザインのグリルを採用している。

新デザインのグリルを採用

“肩”の部分にアルミニウム製トッププレートは、肉抜きはしていないが、プレートをエンクロージャーに固定する箇所を2点増やす事で、より強固に結合させている。

801 D4 Signatureと同様にネットワークも進化。バイパスコンデンサーをアップグレードしているほか、使用個数も増加させ、サウンドの透明感をさらに高めた。

スピーカーターミナル部分

通常モデルと聴き比べてみる

通常のD4と、D4 Signatureを聴き比べた。

左が「805 D4 Signature」ミッドナイトブルーメタリック、右が805 D4

通常モデルとD4 Signatureで、どちらも音色はナチュラルで、限りなく無色に近い。ブックシェルフのサイズを活かした広大な音場や、ハイスピードなサウンドは共通している。

左が「801 D4 Signature」ミッドナイトブルーメタリック、右が805 D4

大きく違うのは低域。この違いは801 D4 Signatureと805 D4 Signatureでよく似ている。どちらも低い音がより深く沈み込んだように聴こえ、コントラストも強くなったと感じる。また、中高域のクリアさ、シャープさもわずかではあるが向上しているのがわかる。

低域の“聴こえ方”にも特徴があり、801 D4 Signatureと805 D4 Signatureのどちらも、前に低音がグッと出てくるというよりも、スピーカー背後の空間にグワッと低音が広がり、それがこちらに押し寄せるような聴こえ方になる。

そのため、通常のD4と聴き比べると、よりドラマチックなサウンドに聴こえる。そうした部分ではD4 Signatureに魅力を感じる。801 D4 Signatureと805 D4 Signatureで聴き比べると、805 D4 Signatureの方がより、進化した低域の恩恵を強く感じられるだろう。

逆に、低域にタイトさ、カッチリした見通しの良さを求める人には、通常のD4の方が魅力的に聴こえるかもしれない。805と801、どちらのモデルであっても、通常モデルとSignatureを聴き比べて、好みに合わせて選びたい。