パナソニック、2010年度上期は747億円の黒字に回復

-三洋は'12年目標にパナソニックブランドへ統合


大坪文雄社長

 パナソニックは29日、2010年度上期(4~9月)連結決算を発表した。

 売上高は前年比31%増の4兆3,679億円、営業利益は486%増の1,690億円、税引前利益は前年同期の265億円の赤字から1,446億円の黒字展開。当期純利益は前年同期の469億円の赤字から747億円の黒字となった。

 三洋電機を除いたパナソニックグループの業績では、売上高は7%増の3兆5,537億円、営業利益は1,340億円増の1,629億円、税引前利益は1,804億円増の1,539億円、当期純利益は1,219億円増の750億円の黒字となった。


上期の連結決算概要上期連結決算の内訳第2四半期の連結決算

 上野山実常務取締役は、「売上高は2桁成長を続ける新興国が牽引し、全地域で増収。損益分岐点の引き下げにより、全ての利益で前年および公表値を上回った。また、全セグメントで増収増益を達成した」とした。

 2010年度上期業績における地域別の売上高は、日本が前年比4%増の2兆1,895億円、米州が3%増の5,534億円、欧州が1%増の4,276億円、中国が19%増の6,269億円、アジアが10%増の5,705億円となった。

 「新興国での増販があり、中国では縦型洗濯機、壁掛けエアコンが好調。またインドネシアの省エネ型冷蔵庫、インドの液晶テレビも好調だ。生活研究を十分に行ない、機能を限定した現地仕様の製品が受けており、その結果、新興国では124%という実績になっている。ここはまだいくらでも展開の余地があると考えている。また、国内家電販売は、エコポイント制度、猛暑の影響もあり、過去最高の売り上げとなった」(大坪社長)とした。


上野山実常務取締役グローバルの地域別販売概況新興国における販売状況


■ プラズマ/液晶とも目標を上回る出荷数。プラズマ売上額は減少

 セグメント別では、デジタルAVCネットワークの売上高が前年同期比3%増の1兆6,578億円、営業利益は381%増の613億円となった。

 2010年度上期のプラズマテレビの出荷実績は前年同期比27%増の410万台、液晶テレビは40%増の554万台。薄型テレビ全体で34%増の965万台となった。

 「プラズマテレビは年間770万台、液晶テレビは年間1,330万台を目標にしているが、いずれも目標ラインを少し上回るペースで進んでいる。尼崎のプラズマパネル生産のP5が今年1月にスタート、液晶テレビ生産の姫路工場は4月からスタートしたが、いずれも目論見通りにパネル生産を行なっており、パネルの過剰感もない」(大坪社長)とした。

 テレビの販売金額は、前年比5%増の4,910億円。そのうち、プラズマテレビが4%減の2,484億円、液晶テレビが20%増の2,065億円となった。デジタルカメラは、6%減の981億円。BD/DVDレコーダは前年並みの619億円、そのうち、BDレコーダおよびBDプレーヤーは15%増の511億円。ビデオ/ムービーは4%減の313億円となった。

 プラズマテレビの販売金額の減少は、「国内では販売の主力が32型以下になったことなどが影響している」(上野山常務取締役)とした。

 3Dテレビに関しては、「調査会社では、2010年度は全世界で200万台の3Dテレビが出荷されると予想されていたが、それを上回るのではないかとみている。グローバルでの話題性は思惑通りであり、十分とはいえない部分もあるが認識も上がっている。2011年度の市場規模はさらに大きくなるだろう」とした。

 アプライアンスの売上高は7%増の6,367億円、営業利益が84%増の491億円。デバイスの売上高は5%増の4,809億円、営業利益が602%増の255億円。電工・パナホームは売上高が8%増の8,340億円、営業利益が639%増の308億円。三洋電機の売上高が8,297億円、営業利益が61億円。その他事業の売上高は26%増の5,604億円、営業利益は978%増の230億円となった。

デジタルAVCネットワークAVCとPMCの概況アプライアンス
電工・パナホームデバイスその他


■ 三洋AV事業はパナソニックAVC社に統合。グローバルマーケティングを強化

三洋電機の業績

 決算会見の席上、大坪文雄社長は、三洋電機およびパナソニック電工の完全子会社化後の体制について方針を明らかにした。

 大坪社長は、「30万人規模の株主を対象にした大規模なTOBが10月6日に完了した。TOBへの応募が約6割、株式交換が約4割。株式と現金を利用したバランスのとれたものになっているが、株式交換が多かったことはパナソニックの成長戦略、方向性、事業再編への取り組みに対する期待の表れとみている」とした。

 また、事業再編については、「Transformationプロジェクト」を推進すると発表した。

 これまでの5セグメント、3本社、2ブランドの体制から、コンシューマー、デバイス、ソリューションの3事業分野に再編。1グループ本社、1ブランド体制とする。従来の技術プラットフォーム別体制から、ビジネスモデル別の体制へと移行させるのも大きな特徴だ。

 新グループ本社は、グループ成長戦略の立案および推進のほか、グループのコンピタンス構築や展開、ドメインで完結できない機能を提供。戦略機能、R&D機能、ブランド機能を統合するとともに、地域統括会社を統括し、地域特有の事業創出を支援していくことになる。

 同社では、Transformationプロジェクトを推進するための成長戦略ワーキンググループを設置。パナソニックと、パナソニック電工、三洋電機の各事業責任者から第一線の担当者までが参加して、それぞれに成長戦略を策定している段階にあるという。

 「お客様起点の最適なビジネスモデルの構築、グローバルに自主責任経営を徹底、ドメイン連携強化し、まるごと戦略の加速を推進する体制を目指す」(大坪社長)とした。

 これにより、現在の16ドメインを、3事業分野9ドメインに再編。3事業分野のひとつであるコンシューマー事業分野では、AVCネットワークスと、冷熱アプライアンスの2つのドメインとし(いずれも仮称)、AVCネットワークにはパナソニックのAVC社、三洋電機のAV事業部門を統合することになる。また、携帯電話に関しては、ソリューション事業分野のセキュリティ&コミュニケーションソリューションズに含まれることになる。

 「コンシューマー事業分野では、強いマーケティング力によって各地域のニーズを商品につなげること、各地域に最適な商品を最速、最低コストで供給することを目指していく。さらにコンシューマーマーケティング機能をこれまでの国内、海外といった体制から、日本もひとつの国として捉えて、グローバルに一元化する。グローバルといいながらも、国内事業の規模が半分となっている。反省として濃密なコミュニケーションが取れる日本市場で確かめてから、グローバルに展開するという姿があった。世界すべてを大きく包んで見ることができる体制への再編が必要であり、それをベースにした製品づくりへとつなげたい。この組織には、世界の生活研究を行なうグローバル・コンシューマーリサーチセンターも含む。強い意志をもってグローバルマーケティングの体制に一本化していく考えだ」などとした。

成長戦略/事業再編の推進スケジュール事業再編の方向性各ドメインの再編内容


■ 2012年4月を目標に「SANYO」ブランドを「Panasonic」へ一本化

 大坪社長は、コンシューマー事業分野を、「ライバルとの消耗戦が激しい分野」と位置づけ、韓国サムスンとの競合を強く意識する。

 「2009年度以降、パナソニックの経営は立ち直ってきているが、サムスンは我々の遙か先を行っている。そして、世界各国で、為替のハンディキャップはありながらも、猛烈な戦いを繰り広げている段階にある。ただし新興国においては、パソナニック独自の生活研究をベースに、機能を割り切った製品を市場に投入し、これが売れはじめてきた。これは、この上期の最大の成果ともいえる。韓国メーカーと徹底的に戦える自信がついた。また、丸ごと提案を行なえる企業は、グローバルに見ても当社だけであり、ここにも戦っていける余地がある」などと語った。

 新たなAVCネットワークスでは、次世代AVC商品群で新規事業を創出、拡大することを目指し、「ネットワークとつながり、双方向で楽しめる商品への進化」、「共通の要素技術と事業コンセプトで統一感のある展開」、「商品とサービス、コンテンツの両面で収益を生む」といった方向性を打ち出す。

 コンシューマー事業分野においては、2009年度に2兆9,000億円だった売上高を、2012年度には3兆5,000億円に拡大させる考えだ。

 さらに、ブランドに関しては、2012年4月を目標に、「Panasonic」に一本化する予定であり、2011年度には、SANYOブランドの製品の生産を縮小し、順次、Panasonicブランドの商品ラインナップを拡大していく考えを示した。また、三洋電機の系列店である「スマイるNo.1ショップ」を、「パナソニックショップ」に移行していくことも明らかにした。

新体制の枠組みコンシューマ事業分野の目指す姿AVCネットワークスなど、各ドメインの方向性
コンシューマ分野のマーケティング機能を集約コンシューマブランドの統一スケジュール新グループ本社構想
三洋・パナソニック電工の完全子会社化によるシナジーの目標は600億円を見込む

 そのほか、デバイス事業分野では、2009年度には2兆6,000億円の売上高を2012年度には3兆4,000億円へ、ソリューション事業分野では、2009年度には2兆6,000億円の売上高を2012年度には3兆1,000億円に、それぞれ拡大する計画を掲げた。

 また、完全子会社化によるシナジー効果として、2012年度に600億円の創出を見込むとし、内訳は増販で200億円、コスト削減で200億円、構造改革で200億円とした。

 なお、パソナニックでは、2011年4月1日付けで三洋電機、パナソニック電工の完全子会社化を完了して以降、上期中には新事業体制および戦略を発表。2012年1月1日付けで新事業体制を発足することになる。



(2010年 10月 29日)

[Reported by 大河原 克行]