シャープ、「GALAPAGOS」端末2モデルは12月10日発売

メディアタブレット「GALAPAGOS」の5.5型(右)/10.8型(左)端末

　シャープは29日、メディアタブレット「GALAPAGOS(ガラパゴス)」向けの電子書籍配信サービスについての発表会を開催した。5.5型/10.8型端末は12月3日より購入受付を開始し、12月10日に発売する。また、TSUTAYAと共同で展開する新聞/書籍/雑誌配信サービスも同じく10日より開始する。

　なお、端末の購入には専用サイト「シャープメディアタブレットストア」または郵送での申し込みが必要。本体とACアダプタに加え、8GBのmicroSDHCカードも付属する。なお、コンテンツ購入などには無線LAN接続環境が必須となる。

　12月10日に発売される端末は、“モバイルモデル”の5.5型「EB-W51GJ」と“ホームモデル”10.8型「EB-WX1GJ」の2モデル。価格は5.5型が39,800円、10.8型が54,800円。カラーは5.5型がレッド系(R)とシルバー系(S)を、10.8型はブラック系(B)を用意する。

　ディスプレイは5.5型が1,024×600ドット、10.8型が1,366×800ドット液晶で、いずれもマルチタッチ対応。バックライトはLED。OSは、これまでの説明会では「Android搭載」としていたが、Androidマーケットからのアプリダウンロードに対応しないなど一部機能が異なることから、今回の正式発表では「Linuxベース」という表現に留めている。通信機能はIEEE 802.11b/gの無線LANで、3Gには非対応。

10.8型「EB-WX1GJ」	5.5型「EB-W51GJ」のレッド系	5.5型「EB-W51GJ」のシルバー系

　「TSUTAYA GALAPAGOS」で配信されるXMDFファイルの閲覧が可能で、書籍コンテンツなどに埋め込まれた動画や音声の再生にも対応。コンテンツ表示画面は縦/横表示両対応で、マルチタッチによるピンチイン/アウトや、ダブルタップでの表示拡大などが可能。5.5型モデルにはトラックボールも備えている。

　Webブラウザも搭載し、Flash Lite 4もサポート。なお、YouTube再生には対応しない。そのほか、ゲーム集アプリ「Game Pack」や、mixiアプリ「mixi for SH」、Twitterアプリ「twit SH」もプリインストールしている。モノラルスピーカーと、ステレオミニのヘッドフォン出力を装備。キーボードはソフトウェアでテンキーやQWERTYキー、手書きパッドなどを実装。なお、フリック入力には対応しない。

配信サービスのTSUTAYA GALAPAGOS	購入した書籍の表示	ページをめくる感覚で閲覧できる

コンテンツによっては写真とテキストを組み合わせたデザインも採用されている	XMDFに含まれた動画コンテンツも再生可能。写真は、ダイビング雑誌に埋め込まれた海の生物の動画

　microSD/SDHCカードスロットを備え、配信コンテンツの保存やバックアップなどが可能。複数のmicroSD/SDHCカードを利用して書籍を管理できる。なお、microSDカードに収めた音楽や動画を再生する機能は備えていない。コンテンツの管理はパソコン用ソフト「GALAPAGOS Station」で行なうことも可能。このソフトは、読み終えた本に評価を付ける機能や、パソコン内のデータをXMDF形式に変換する機能なども搭載。12月に開設する専用サイトでダウンロード配布予定で、対応OSはWindows XP/Vista/7。

　バッテリ駆動時間は、10.8型が10.5時間、5.5型が約約7時間。ACアダプタ入力兼用のミニUSB端子を備える。外形寸法と重量は10.8型が約286×177×14.7mm(縦×横×厚さ)、約765g、5.5型が約167×92×12.9mm(同)、約220g。

10.8型の天面。薄さは14.7㎜	5.5型の天面。薄さ12.9㎜	エレコムから、専用の保護フィルムやケースも発売される

■ Androidスマートフォンは来春に「TSUTAYA GALAPAGOS」対応予定

　10日より開始される配信サービス「TSUTAYA GALAPAGOS」では、新聞や雑誌、書籍などのコンテンツを約3万冊提供する予定。雑誌などの「定期購読」により1冊あたりの価格を割り引くサービスも用意する。開始時点の主な書籍コンテンツは後述する。

　2011年春をめどに、映像や音楽、ゲームなどの配信サービスも開始予定。XMDF形式以外の書籍フォーマットにも対応予定で、TSUTAYAが持つ動画/音楽コンテンツなどを端末で購入/再生できる機能を追加していくことなどが検討されている。一般的なメディアプレーヤーのように手持ちのファイルを再生するのではなく、配信サービスの充実に合わせて対応フォーマットなどの機能が拡張されることから、「サービスとともに進化する端末」としている。

　また、サービス開始当初は今回発表の2機種のみで利用可能だが、同じく'11年春には、ソフトバンクの「GALAPAGOS」端末などAndroid搭載スマートフォンでも順次利用可能となる見込み。将来的には、「GALAPAGOS」ブランドやシャープ製端末に限るのではなく、各キャリアの機種で利用可能にする予定だという。

平野啓一郎氏

　発表会には、今回のTSUTAYA GALAPAGOSで新刊「かたちだけの愛」(中央公論新社)を出版する芥川賞作家の平野啓一郎氏がゲストとして登場。電子書籍に対する平野氏の考えなどをコメントした。

　「かたちだけの愛」は、12月10日に紙の書籍と電子書籍の両方で発売。価格は紙の書籍が1,785円、電子書籍版が1,470円。著者初の長編恋愛小説となっており、新聞に連載されたものを大幅に加筆修正している。電子書籍版はXMDFフォーマットで配信される。

　平野氏は電子書籍化について「パソコンやインターネットが普及したなかで、本が電子化されるのは自然な流れ。気合を入れて、というよりは、当然のことのように出したかった」との考えを表した。また、「目が疲れる、というイメージも持たれているが、明るさの調整などで、心地よさが発見できれば、“紙でしか読みたくない”と思っていた人も違和感なく使えるのでは」とした。

　今回の電子書籍版はシンプルな文字のみで構成したもので、音楽などを付加したコンテンツではない。平野氏は「いろいろやることはできるが、写真や音楽を付けると、写真家や音楽家が加わることで、その分価格が高くなる。それを読者が求めているかはわからない。(リッチなコンテンツは)小説とは別の形で発展する可能性はある」と述べた。

　今後の新刊も紙と電子書籍両方で出版し、過去の作品についても順次電子化することを予告した平野氏は、電子書籍の今後について「紙と同じく、人間の日常に溶け込むようになってほしい。フォークを持つように、テレビのリモコンを持つように、GALAPAGOSを持つ、というものになればいいと思う」と話した。

「かたちだけの愛」は、事故で片足を失ってしまった女性のために、主人公のデザイナーが美しい義足を作る、というストーリー。平野氏の「愛について、深いところからもういちど考えてみたい」という思いから執筆されたという

　サービス開始当初の「TSUTAYA GALAPAGOS」の主な新聞/書籍/雑誌コンテンツは下表の通り。