パイオニア、制御アプリ強化のAVアンプ3機種
-DLNA/AirPlay。複数のiOSと接続するAir Jam
VSA-1021 |
パイオニアは、AVアンプの新モデルとしてエントリー~中級クラスの3機種を5月下旬に発売する。価格は7.1chの「VSA-1021」が108,000円、7.1chの「VSA-921」が84,000円、5.1chの「VSX-821」が49,800円。
上位2モデル「VSA-1021」と「VSA-921」の特徴は、DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能を備え、PCやネットワークHDDから音楽再生が可能なこと。さらに、AirPlayにも対応。PCのiTunesやiPhoneなどからワイヤレスで音楽再生できる。iPod/iPad/iPhoneとDockケーブルで接続し、デジタル再生ができるほか、業界で初めてiPadの充電(2.1A)にも対応。さらに、ネットワーク経由でAVアンプを制御するアプリも新バージョンが登場。Bluetoothを使った新提案アプリも用意される。
VSA-1021の天面を外したもの | VSA-921 | VSX-821 |
■ネットワーク関連機能
オプションの無線LANコンバーター「AS-WL300」 |
オプションのBluetoothアダプタ「AS-BT200」 |
「VSA-1021」と「VSA-921」が対応するネットワーク再生の対応フォーマットはMP3/WAV/FLAC/AAC/WMAで、VSA-1021は24bit/192kHzのWAVにも対応。VSA-921は24bit/96kHzまでとなる。インターネットラジオ(vTuner)もサポートする。本体にEthernet端子を備えるほか、オプションの無線LANコンバーター「AS-WL300」(オープン/実売10,800円前後)の追加で無線接続も可能になる。
AirPlayにも対応。iPod touch/iPhone/iPadやPC内のiTunesライブラリの音楽ファイルを、LAN経由で再生でき、楽曲のメタデータやアルバムアートも受信でき、それらの情報をAVアンプからテレビなどに出力できる。AirPlayから出力先としてAVアンプを指定すると、自動的にアンプの入力がAirPlayに切り替わり、ボリューム調整も端末やPC側から行なえる。逆に、基本的なiTunesの操作をAVアンプ側から行なう事も可能。
オプションのBluetoothアダプタ「AS-BT200」(オープン/実売9,800円前後)を使い、Bluetooth経由での楽曲再生にも対応。さらに、iPod touch/iPhone/iPad用に、新しい音楽コミュニケーションを実現するというアプリ「Air Jam」を無償で提供する。
友達が集まった時やパーティーなどでの利用を想定したもので、Bluetoothで楽曲を転送・再生するアプリ。同じアプリを起動した端末最大4台が、AVアンプに同時接続できるのが特徴で、各端末のユーザーが、端末に保存している好きな曲を選択し、ひとつのプレイリストを作成。それをAVアンプで連続再生できる。登録した楽曲情報は履歴として残るため、気に入ったものがあれば、その履歴からiTunes Storeにアクセスして購入したり、YouTubeで関連動画を検索する事も可能。新しい音楽と出会う事ができるアプリとなっている。
Air Jamを起動しているところ。写真はiPad | iPhoneで起動したところ。左が、各ユーザーが選んだ楽曲を1つのリストとして表示しているところ | 各ユーザーが送信し、再生された楽曲はログとして残っており、気に入った楽曲を後からiTunesで購入したり、YouTubeで検索する事ができる |
USB端子を備え、USBメモリなどに保存された楽曲ファイルが再生可能。さらに、iPod/iPhone/iPadと接続し、楽曲データをデジタルで取り出し、AVアンプ側でD/A変換し、高音質再生が可能。接続機器の充電も可能で、新たに業界初という、iPadの充電にも対応した。
なお、下位モデルのVSX-821もiPod/iPhone/iPadのデジタル再生や、USBメモリ内の音楽ファイル再生に対応する。ただし、16bit/48kHzまでのサポートとなる。
■制御用アプリ「iControl AV」が進化
iPod touch/iPhone/iPadからAVアンプを制御できる専用アプリ「iControl AV」が、「iControl AV2」に進化した。無償でApp Storeからダウンロードできる。従来のアプリと同様に音量調整や電源ON/OFF、重低音の調整などが可能なほか、新しい機能として、指で一筆書きのようになぞることで、グラフィカルに、自由なイコライジングカーブが描け、その筆跡に沿ったイコライジング設定になる「Finger EQ」を追加。ネットラジオの選局などもできるようになっている。
加速度センサーを使い、ゲームのようにiPhone本体を傾けてボールを転がすと、リスニングポイントが前後左右にリニアに変化する「BALANCE」機能や、自動音場補正機能「MCACC」で得られた残響特性グラフの確認機能なども備えている。
「iControl AV2」をiPadで実行したところ | 指で一筆書きのようになぞることで、グラフィカルに、自由なイコライジングカーブが描ける「Finger EQ」 | iPhoneで「iControl AV2」を実行したところ |
なお、「iControl AV2」に対応しているのは「VSA-1021/VSA-921」のみで、VSX-821や、従来の「iControl AV」に対応していたAVアンプでは利用できない。また、「iControl AV」から「VSA-1021/VSA-921」を制御する事もできず、両者に互換性は無い。
また、「iControl AV2」にはiPad専用版「iControl AV2 for iPad」を用意。iPad向けにレイアウトを最適化したもので、iPhone/iPod touch版では4つの画面に分かれていた機能を、iPadでは一度に表示・操作できる。
■接続とセットアップをソフトで支援
VSA-1021/921には、PC用ソフト「AVナビゲーター」が収録されたCD-ROMが付属。画面に表示されるQ&Aに答えていくだけで、最適な接続方法をイラストを交えて案内するもので、接続から設定、マイクを使った自動音場補正(MCACC)までナビゲートしてくれる。わからないAV用語を解説する機能も備えている。
また、LAN接続したPC上で取り扱い説明書を表示し、機能を選択すると、同じLANに接続したAVアンプの該当機能が連動して立ち上がる機能も備えている。
対話形式で回答していくことで、最適な接続などが指示される | 接続ナビの利用を含めた全体のフロー。MCACCの開始までをサポートしてくれる |
■ハードウェア面も強化
VSA-1021の内部 |
ハードウェア面ではダイレクトエナジーデザイン思想に基づいたという、新たな筐体デザインを採用。VSA-1021/921はアナログ回路とデジタル回路の独立電源を搭載しており、スタンバイ時の省電力化も実現している。
また、パワーアンプ分の伝送経路の短縮化とクリーングランド化を徹底。筐体の横幅が420mmから435mmに拡大し、ハイパワーと高剛性構造による制振性向上を両立したという。
HDMI V.1.4端子はDeep color、x.v.Colorに対応。オーディオリターンチャンネル(ARC)もサポートする。「VSA-1021」と「VSA-921」は、同社対応BDプレーヤーとのHDMI接続時に、HDMI伝送のジッタを最小化する、独自の「PQLS(Precision Quartz Lock System)」に対応。新たに、BD映画のマルチチャンネル音声の伝送も可能な「PQLSビットストリーム」になっている。
VSA-921の付属リモコン | VSX-821の付属リモコン |
また、上位モデルの「VSA-1021」には、高精度PLL「ジッターリダクション回路」をDAC前段に配置。全てのデジタル入力に対して、ジッタと位相ノイズを低減できる。
全機種が「ドルビープロロジックIIz」に対応。7.1chの「VSA-1021」と「VSA-921」では、フロントワイドスピーカーを使った「ワイドサラウンド」にも対応。フロントの動き感をアップさせるという「ワイドサラウンドMovie」と、フロントの広がり感をアップさせる「ワイドサラウンドMusic」を用意。5.1chスピーカー環境で、フロントハイト、サラウンドバックスピーカーを使っていなくても、仮想的に前方上方のスピーカーや、後方スピーカーがあるような再生を行なう「バーチャルハイト」、「バーチャルサラウンドバック」機能も備えている。
独自の自動音場補正機能の「MCACC」も全機種に搭載。上位2モデルは、より細かな補正が行なえる「Advanced MCACC」で、PCや「iControl AV2」から残響特性グラフを確認することもできる。
上位2機種ではビデオアップスケーリング、ビデオコンバーター機能も搭載。HDMI接続されたDVDなどのSD映像を、1080pまで変換可能。さらに、色調やコントラスト、ディテール感など、接続機器に合わせた画質設定のプリセットを持つ「アドバンスド ビデオ アジャスト」機能も強化。自動音場補正のAdvanced MCACCで取得した視聴位置の距離データを使い、例えば視聴位置が遠いと映像のシャープネスをアップさせたり、近いと、目立ちやすいノイズを抑える処理を強くするなどして、環境により合った画質を自動で提供する。
上位2機種では、音の位相のズレを補正する独自の「フェイズコントロール」機能を進化させた、「フェイズコントロールプラス」も搭載。音を聴きながら、従来のAVアンプ/スピーカーで起こる低音ズレだけでなく、手動で微調整することで(初期設定は6ms)、ソースであるディスク製作時のLFEフィルタによる低音のズレにまでさかのぼった補正を可能にするという。
圧縮音楽ファイルの失われた音楽情報を補完する「サウンドレトリバー」も「アドバンスド・サウンドレトリバー」に進化。従来は128kbpsの音楽ファイルをメインとして補正値を設定しており、それよりも低いレートの音源には効果が薄かったが、新バージョンでは自動的にレートとフォーマットを解析し、最適な補正を行なうようになっている。この機能も上位2機種が搭載している。
なお、下位モデルのVSX-821のみ、AM/FMチューナを内蔵する。
VSA-1021の背面 | VSA-921の背面 | VSX-821の背面 |
モデル名 | VSA-1021 | VSA-921 | VSX-821 |
パワーアンプ チャンネル数 | 7 | 7 | 5 |
定格出力(8Ω時) | 100W/ch | 100W/ch | 95W/ch |
最大出力(6Ω時) | 180W/ch | 180W/ch | 160W/ch |
HDMI | 6入力 1出力 | 4入力 1出力 | 4入力 1出力 |
コンポーネント | 2入力 1出力 | 2入力 1出力 | 2入力 1出力 |
コンポジット | 5入力 1出力 | 5入力 1出力 | 5入力 1出力 |
アナログ音声 | 4入力 2出力 | 5入力 2出力 | 5入力 2出力 |
デジタル音声入力 | 光×2、同軸×2 | 光×2、同軸×1 | 光×2、同軸×1 |
オーディオプリアウト | サブウーファ | サブウーファ | サブウーファ サラウンドバック フロントハイト |
LAN端子 | ◯ | ◯ | - |
DLNA/AirPlay対応 | ◯ | ◯ | - |
マルチゾーン対応 | ゾーン2 (音声/映像) | ゾーン2 (音声) | - |
ビデオコンバータ | ◯ | ◯ | - |
ビデオスケーラ | ◯ | ◯ | - |
MCACC | アドバンスド | アドバンスド | オート |
消費電力 | 550W | 550W | 415W |
待機時消費電力 | 0.2W | 0.2W | 0.4W |
外形寸法 | 435×362.5×168mm | 435×362.5×168mm | 435×362.5×168mm |
重量 | 10kg | 9.9kg | 9.2kg |
(2011年 4月 26日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]