パイオニア、Class Dの中級AVアンプ2機種

-MHL/4K「SC-LX56」、12万円を切る「SC-2022」


新規追加カテゴリの製品となる「SC-2022」

 パイオニアは、AVアンプの新製品として、新規追加カテゴリの製品となる「SC-2022」と、中級モデル「SC-LX56」を7月中旬に発売する。価格は7.1chの「SC-2022」が118,000円、9.1chの「SC-LX56」が175,000円。

 どちらのモデルもClass Dの「ダイレクト エナジーHDアンプ」を搭載。上位機種のLX85やLX75と多くの部品を共用しながら、価格を抑えたのが特徴。パワーアンプ部には、LX56/2022のどちらも、リード線などを排除したパワー素子「Direct Power FET」を採用し、ローパスフィルタ用コイル、コンデンサなどの出力段素子を、LX85と同じものを投入している。


9.1chの「SC-LX56」2モデルを並べたところ右がLX56。黄色い枠で囲まれた部分が、部品を共有しているところ

 ハイパワー多チャンネル同時出力が可能。全チャンネル同時出力の合計は、2022が7chで630W、LX56が9chで720Wとなる。新たに4Ωスピーカーにも対応。Class Dアンプの高効率特性を活かし、複雑な設定をせずに、4Ωスピーカーが駆動できるという。

 デジタルアンプを採用する事で、シャーシ放熱孔を削減。各ブロック間の干渉を抑制し、動作特性を向上させる事で、繊細な音のニュアンスも正確に表現できるという。また、メインシャーシ部とパワーアンプ専用シャーシ部に、絶縁二重構造「インシュレーテッド・デュアルシャーシ」を採用。電気的に完全に分離することで、音質を高めている。


LX56の内部Direct Power FETなどを採用したパワーアンプ部



■ネットワークオーディオ機能

 ネットワークプレーヤー機能も装備。AirPlayとDLNA 1.5に準拠し、Windows 7認証も取得している。AirPlayに対応することで、PCのiTunesライブラリや、iPhone/iPod touch/iPad内の楽曲をワイヤレスで再生可能。オプションのBluetoothアダプタ「AS-BT200」(オープン/実売9,800円前後)を使い、Bluetooth経由での楽曲再生にも対応できる。Bluetooth用には、iPod touch/iPhone/iPad向けに、音楽コミュニケーションを実現するというアプリ「Air Jam」も無償で提供する。なお、Android版もGoogle Play(旧Androidマーケット)から無償ダウンロード可能。

 DLNAの対応フォーマットはMP3/WAV/FLAC/AAC/WMAで、24bit/192kHzのFLAC/WAVにも対応。インターネットラジオの「vTuner」にも対応する。Ethernet端子を備えるほか、オプションの無線LANコンバーター「AS-WL300」(オープン/実売10,800円前後)も用意する。

 なお、前面のUSB端子にiPod/iPhone/iPadを接続し、デジタル再生する事も可能。iPhone内の楽曲をAVアンプのDACやアンプを使い、高音質に再生できる。iPadの充電もUSB経由で可能。USBメモリなどに保存したFLAC/WAVの24bit/192kHzファイルを再生する事もできる。

 LX56には、bit拡張処理機能「Hi-bit32 Audio Processing」を搭載。CDやFLAC、WAVなどのデータや、BDなどのロスレス音声を、32bitに拡張してからDACで処理することで、元のアナログ信号に近い音が出力できるとする。入力信号は32bit/96kHzのマルチチャンネル素材まで対応。

 2022のbit拡張処理機能は「Hi-bit24 Audio Processing」となり、24bitまで拡張して処理。入力ソースは24bit/48kHzのマルチチャンネルまで対応する。



■スマホやタブレットで制御

 iPhone/iPad/iPod touchやAndroid端末から、AVアンプの制御をする機能も用意。「iControlAV 2012」に対応しており、iOS用/Android用のどちらも、無償でダウンロード可能。イコライザのカーブを指で直接描けるなど、直感的な操作を導入してきたアプリだが、「iControlAV 2012」では「Sound Explorer」という機能を搭載。

 AVアンプの様々な設定を行なうメニューだが、機能のアイコンが画面の上側から落ちてきて、iPadの画面に“積もる”ような動きをする。iPadを傾けると、アイコンもその向きに寄るなど、ユニークな動きも楽しめる。

 操作したいアイコンにタッチすると、それ以外のアイコンが避けるように広がり、アイコンに指を触れたまま、ダイヤルを回すように動かすと、その機能のON/OFFや段階操作をする事ができる。なお、アイコンを綺麗に整列させたり、アイコンではなく、リストで機能を表示するモードも用意している。

 また、アンプの接続設定や取扱説明を表示するソフトも用意。Windows用の「AVナビゲーター2012」と、iPad用の「AVNavigator for iPad」が用意される。



■MHLや4K映像に対応。シンプルオーバーレイも

 LX56のみの機能として、HDMIにおける4K映像のパススルー出力に対応。4K対応プレーヤーから4K対応ディスプレイへ、映像をそのまま伝送できる。

 さらに、Android端末と連携するために、MHLにも対応。フロントパネルのHDMI入力(HDMI 5/MHL)端子に、付属のMHL-HDMI変換ケーブル(1m)を用いて、対応Android端末を接続。ケーブル1本で、1080p/7.1ch音声のコンテンツまでが伝送できる。また、一部の端末は、AVアンプのリモコンからAndroidを操作できるという。AVアンプの電源がONであれば、Android端末の充電もできる。

付属のMHL-HDMI変換ケーブル(1m)フロントパネルに接続したところ
画面の右に表示されている白い文字がシンプルオーバーレイ。FLの表示と同じものが画面に表示される

 LX56のみ、シンプルオーバーレイ表示に対応。本体のFL表示と同じ、最大2行のメッセージを、映像に重ねて出力する機能で、テレビやプロジェクタを見ながら、ボリュームの値や、リスニングモードの名前、パイオニア独自機能のON/OFF、入力切替の結果、音声/映像パラメーターの調整といった、フロントFL表示と同じ情報が表示される。

 文字は字幕を避けた位置に表示されるほか、この機能自体をON/OFFでき、一切表示しない事も可能。出力されるのはHDMI出力1のみ。AVアンプを見なくても、各種操作ができるため、ラックなどにAVアンプを収納しているユーザーに便利だという。




■低域遅延を自動補正

 2機種とも、低域の遅延を抑えた再生を行なうための「オートフェイズコントロールプラス」機能を搭載。BDなど、コンテンツに収録されている低域効果音(LFE)のズレをAVアンプ側で補正する事で、キレのある低域や、クリアな中高域を実現する機能。従来はユーザーが音を聴きながら設定するものだったが、「オートフェイズコントロールプラス」では、AVアンプがリアリタイムにソース内の遅延を判別し、補正してくれるようになった。

 これにより、ソースを変更しても再調整せずに利用できるようになり、細かな設定が難しいという人でも利用できるようになった。音楽のライブBDなどで効果的な機能だが、製作時に低域を後付けしている事で、LFEとメインの低音に相関が無いケース(映画に多い)では、あえてこの機能を働かせないという。

 また、遅延だけでなく、LFEの極性が、メインチャンネルに対して反転しているケースにも対応でき、その場合はLFEの極性反転補正をして再生してくれる。

 バーチャルスピーカー機能も強化。同社AVアンプでは、2009年モデルでサラウンドバックをバーチャル化、2010年はフロントハイトスピーカーをバーチャル化しているが、今回の2機種ではフロントワイドスピーカーもバーチャル化して再生できるようになった。

 従来のバーチャルハイト、バーチャルサラウンドバックと組み合わせ、同時に利用できるため、5.2chスピーカーを接続した状態で、仮想的に、最大11.2chの再生ができる。

 また、対応するBDプレーヤーなどと接続した場合に使用できる、ジッタ低減技術PQLSに対応。音楽CD、DVD/BDのマルチチャンネル音声をビットストリーム出力した場合のジッタも低減する「PQLS ビットストリーム」機能となっている。

 MP3などの圧縮音楽や、デジタル放送、ネットラジオなど、圧縮された音楽データに対し、最適な音質補正をかけて再生する「オートサウンドレトリバー」も備えている。「LX56」のオートサウンドレトリバーは、ARCからの入力による地上・BS・CSデジタル放送のマルチチャンネル音声の高音質化も可能。映像面では、プラズマテレビや液晶テレビ、プロジェクタなど、機器に合わせた画質をプリセットした「アドバンスド ビデオアジャスト」も利用可能。

 自動音場補正機能は、付属のマイクを使って計測する「Advanced MCACC」を採用。測定された視聴距離のデータは、前述の「アドバンスド ビデオアジャスト」でも活用され、距離に合わせた映像に微調整される。

 HDMI端子は、2022が7入力、1出力。LX56が8入力、2出力。どちらのモデルも「HDMIスタンバイスイッチング」機能に対応し、AVアンプの電源が入っていなくても、入力切替ができる。

「SC-2022」付属のリモコン「SC-LX56」付属のリモコン
「SC-2022」の背面「SC-LX56」の背面

 その他の主な仕様は下表の通り。

モデル名SC-LX56SC-2022
定格出力
(マルチチャンネル同軸同時)
合計720W(8Ω)合計630W(8Ω)
最大出力310W/ch
ライン入力SN比103dB
HDMI入力×8
出力×2
(フロントHDMI入力5は
MHL対応)
入力×7
出力×1
音声入力アナログ(オーディオ)×1
アナログ(AV)×4
光デジタル×2
同軸デジタル×2
映像入力コンポジット×4、コンポーネント×2
音声出力アナログ9.2chプリアウト×1
光デジタル×1、
アナログ(AV)×2
マルチゾーン用×2
マルチゾーン用
サブウーファ出力×1
アナログ7.2chプリアウト×1
光デジタル×1、
アナログ(AV)×2
マルチゾーン用×2
マルチゾーン用
サブウーファ出力×1
映像出力コンポーネント×1
コンポジット×1
マルチゾーン用
映像出力
Zone 2用コンポーネント&コンポジット
Zone 3用コンポジット
Zone 2用コンポジット
Zone 3用コンポジット
その他の端子USB×2、Ethernet、12Vトリガー、
RS232C、IR入力×2、IR出力×1など
消費電力330W
(待機時消費電力0.1W)
290W
(待機時消費電力0.1W)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
435×441×185mm
重量15.4kg14.8kg

(2012年 6月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]