ニュース
オーテク、世界初ダイナミック型を対向配置したイヤフォン「ATH-CKR-9/10」
(2014/3/31 10:30)
オーディオテクニカは、2基のダイナミック型ユニットを向かい合わせに配置した、世界初の“DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS”を搭載したイヤフォン「ATH-CKR9」と「ATH-CKR10」の2機種を4月25日に発売する。価格はCKR9が32,400円、CKR10が43,200円。
どちらのモデルもDUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERSという新しい機構を採用しているのが特徴。13mm径のダイナミック型ドライバを、向かい合わせに配置したもので、2つの振動板は同時に動く。同じ動作をするのではなく、片方のドライバには逆位相の信号を入力する事で、互いに逆の動き方をする。
例えば、振動板Aが前方へ動くと、向かい側の振動板Bは後方へ引く。ユニットが振幅する際、前に動く時よりも、後方へ引く動作の方が鈍い事がある。新機構では向かい側のユニットからの音圧が、後ろに引くユニットを後押しする役割を果たし、理想的なリニアドライブ(前後直進運動)が実現できるとする。ハウジング内圧に対し、通常のイヤフォンの倍の駆動力が得られ、なおかつその動きのスピードに差がない事が特徴だという。
これにより、「相互変調の無い、広帯域に渡って高い音の再現性を確保。高い音圧でイヤフォンらしからぬ“次元の高い再生音”を実現する」としている。
この機構は2機種で共通。低域特性を最適に調整するベース・アコースティックレジスターも搭載する。
モデルごとの主な違いは、CKR10はハウジングに高剛性のチタンを、CKR9は切削アルミニウムを採用している事。また、CKR10はユニットの土台となるヨークに純鉄を使い、効率良く磁気を伝達。解像度の高い再生を実現するという。
出力音圧レベルと再生周波数帯域は、CKR10が110dB/mW、5Hz~40kHz。CKR9が109dB/mW、5Hz~35kHz。インピーダンスはどちらも12Ω。
ケーブルは2機種とも着脱できない。Y型で、長さは1.2m。CKR10のケーブルには、スタッカード撚り線と不要振動を抑えるアルミニウムスリーブプラグが使われている。入力プラグはどちらのモデルも金メッキ仕上げのステレオミニでL型。イヤーピースはXS/S/M/Lの4サイズを同梱する。重さはCKR9が12g、CKR10が16g。
ファーストインプレッション
短時間ではあるが、新機構の音を聴いてみた。プレーヤーは、ハイレゾ対応のAK240を使っている。
注目は「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」の効果。オーディオテクニカでは2013年に、筒の中に2基のダイナミック型ドライバを“同じ向き”で配置した「デュアル・シンフォニックドライバ」を採用した「ATH-IM70」と「ATH-IM50」を発売しているが、CKR9/10は向かい合わせに配置しているのが特徴だ。
「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生し、1分過ぎのアコースティックベースを聴くと、この機構の利点がハッキリわかる。
13mm径と大型のユニットを搭載しているので、「ズーン」と量感のある、ダイナミック型らしいパワフルな低音が響くのだが、その低音がキリッとタイトで、余分な膨らみが無く、音の輪郭がシャープだ。
同時に、ヴォーカルやギターなどの中高域の音が、「ズーン」という低音に覆われずに、クリアさを維持している。迫力と高解像度サウンドの“イイトコどり”ができている。
バランスド・アーマチュア(BA)は高解像度ではあるが、マルチウェイ化などの工夫をしないと低音の音圧などを出すのは難しい。一方、大口径のダイナミック型イヤフォンでは、量感は出せるものの低音以外の音までボワッと膨らんでしまいがちになる。そうした方式のイヤフォンとは明らかに違う、“新しいタイプのイヤフォン”を感じさせる音だ。
最近ではBAとダイナミック型を組み合わせたハイブリッド型のイヤフォンも登場しているが、「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」はダイナミック型ユニットのみで構成されているため、全帯域で音のキャラクターが揃っており、音色の繋がりを気にしなくて良いのもポイントと言えるだろう。
CKR10とCKR9の比較だが、全体のバランスはCKR10がワイドレンジでモニターライク。CKR9もワイドレンジだが、若干低域がパワフルなバランスになっている。
高域にも違いがあり、チタンハウジングのCKR10は高い音の響きがやや硬質で、爽やかさを感じる。CKR9はナチュラルで色づけが少ない。価格を見ると上位、下位モデルと分けて考えたくなるが、グレードではなく、音の好みで選べる2機種と言えそうだ。