エイリアンと艦隊が海上で激突「バトルシップ」

原作ボードゲームを見事に活かした熱いアクション


ディスコレ(Disc Collection)は、Blu-ray/DVD/CDなどから、ジャンルを問わずに選んだ作品のショートレビューコーナーです




■ 「トランスフォーマー」などに続くハズブロ原作

Amazon.co.jp限定 バトルシップ Blu-ray DVDスチールブック仕様(デジタルコピー付)完全数量限定

 エイリアン映画の戦闘シーンといえば、場所は宇宙船内だったり大都市、ジャングルなど様々なバリエーションがある。今回紹介する「バトルシップ」は、タイトル通り戦艦とエイリアンが海上でバトルするという作品だ。

 米玩具メーカーのハズブロが、同社の人気ボードゲーム「BATTLESHIP」を原案として映画化。このゲームは、日本でも「レーダー作戦ゲーム」の商品名で約40年前にタカラ(現タカラトミー)より発売された。エイリアンと戦艦による決戦を描いたゲームの世界観を、映画で再現したという。

 優れた能力を持ちながらも、なかなか仕事に就こうとしない26歳のアレックス(テイラー・キッチュ)。海軍のエリートである兄ストーン(アレキサンダー・スカルスガルド)からとうとう愛想を尽かされ、半ば無理矢理に海軍へ入れられてしまう。世界各国の軍艦が集結し、ハワイ沖で行なわれる大規模合同演習に新人将校として加わった彼は、日本から参加した自衛艦艦長のナガタ(浅野忠信)に激しいライバル心をむき出しにする。そんな中、演習海域に正体不明の巨大な物体が出現。アレックスの乗る駆逐艦とナガタの自衛艦、そしてストーンが艦長を務めるサンプソン号の3隻が偵察に向かう。その正体は、地球に飛来したエイリアンの母船だった。母船は巨大なバリアを築き、人類はそこに閉じ込められた3隻以外に反撃の手段を失ってしまう……。

 ハズブロの玩具では、これまで「トランスフォーマー」や「G.I.ジョー」が映画化されている。この作品も、ジャケットなどを見る限り「ド派手なアクションが見どころになるだろう」と鑑賞前から予想はできる。ただ、トランスフォーマーなどのように明確なキャラクターがいる作品ではないので、「設定は昔のボードゲームからとっただけで、実際は未来の兵器などが迫力の映像と音で楽しめるような内容なのでは? 」という先入観もあった。

 宇宙船で地球にやってきたエイリアンの多くは、大都市を破壊するなどして地球を侵略しようとするのがお約束だが、「どうして人が多い街中ではなくあえて洋上で艦隊と戦うのか?」という疑問も気になりつつ再生した。なお、今回購入したのはAmazon限定のスチールブック仕様(数量限定)。Blu-ray版に加えDVD版と、デジタルコピー用ディスクの計3枚が入ったバージョンだ。このほかに、同内容のディスクが入ったBlu-ray+DVD版と、DVD単品版が用意されている。

Amazon限定スチールブック仕様のジャケットとディスク


■ まさにBlu-rayで観たい映像と音声

バトルシップ ブルーレイ+DVDセット(デジタル・コピー付)

 注目の海戦は、序盤から予想以上の迫力。エイリアンが海上基地のような母船から発生させたバリアで周囲からの立ち入りと通信を遮断したと思えば、巨大なバッタかアメンボのような戦艦が水中から浮かび上がり、高い命中性能を持つミサイルランチャーで米海軍の駆逐艦を圧倒。タイヤのような形をした金属の自動戦闘マシン“シュレッダー”でアッという間に地球側の武器なども無力化。人間に力の差を見せつける。

 エイリアンの攻撃は、今の地球に無さそうな物質や技術が使われているが、レーザーのような見るからに派手な武器ではなく、上に書いた戦闘マシンが体当たりでモノを壊しまくるというような、どこかアナクロなものが中心。残酷な描写はほとんどないが、金属が激しくぶつかりあう音や、まるでカタストロフィ映画のように崩れゆく地上の建物などの様子から、被害の大きさが伝わってくる。エイリアンの艦のデザインは実際の生物からヒントを得たとのことだが、艦や武器が生き物のようなしなやかさで動く様が、不気味さに拍車を掛けている。本音を言えばもっといろいろな武器のバリエーションも見てみたかったが、既に出ているものがかなり優秀なので、もう他を出す必要が無かったのかもしれない。

 こうした武器が周りに火花を散らし、激しくぶつかり合う音は、まさにスピーカーの高域などの再生能力の聴かせどころだ。もちろんサブウーファも爆発音などを派手に鳴らしまくる。マルチチャンネルのスピーカーを活かすサウンドデザインとなっており、遠くから飛んできた武器が間近に着弾したり、外れたミサイルが艦のすぐ近くを通過するといった音が、これでもかという生々しさで伝わってくる。スピーカーを新調した時などのデモに使うのにもよさそうだ。

 洋上に浮かんだ敵艦へ主人公が近づこうとするシーンなど、実際の海で撮った映像も多用しているが、やはりこの映画に迫力を持たせている中心はCG。特殊効果はスター・ウォーズシリーズなど数々の作品に参加し、トランスフォーマーでも制作に加わったILMが担当。敵艦船からの水しぶきや、一人一人違いがあるエイリアンの造形や動きなどにこだわりが見え、制作者も「オタク心が燃える」と話すほど限界に挑んだことがよくわかる。観る人を物語の世界に引き込む「CGならではリアルさ」で、作品の世界に説得力を持たせている。



■ なぜ「戦艦」なのか

 これまで説明した最新の技術が駆使されているだけでなく、この映画が「BATTLESHIP」である理由が海戦シーンにも出てくる。敵は駆逐艦が装備するレーダーに映らず、目視するしかないという状況。エイリアンが高精度な武器を持っていることを考えると地球側が圧倒的に不利だ。しかし、ここで主人公たちはある作戦に出る。この作戦が元のボードゲームを知っている人なら「こう来たか!」と思わず膝を打ってしまうような方法なのだ。

 ちなみに、元のゲームは2人で対戦するもので、それぞれのプレーヤーが自分のボードにある縦横のマス目に相手から見えないように空母や戦艦などを並べる。それから、相手の艦の位置を予測して、攻撃するマス目を宣告。相手に当たって全ての艦を撃沈させれば勝ちという内容だ。自分の艦を移動させたときは相手に移動したマス目の数を伝え、そうした情報を元に互いの手を読み合うのがこのゲームの面白さだ。これがどう映画に活かされているか、詳細はここでは触れないが、相手の位置が分からない状況でどうやって敵艦に狙いを定めるのか、思わず息をのむシーンとなっている。

 エイリアンが海上に張ったバリアの中に残されたのは、主人公らが乗った駆逐艦3隻。しかし、ここでも一つ疑問が出てくる。ここまで戦っているのはDESTROYER(駆逐艦)ばかりで、タイトルのBATTLESHIP(戦艦)ではないのだ。「戦艦も駆逐艦も同じ艦船だからあまり気にしない」という人もいるかもしれないが、物語のなかで「今は駆逐艦などの近代的な艦隊が、戦艦に取って代わった」とはっきり説明するシーンもある。実はそこが重要なポイントで、最後のクライマックスへとつながるカギになっている。それが分かると、なぜこのハワイ・真珠湾が舞台になったのかもわかってくるのだ。

 もう一つ、見どころは作品内でも重要な存在である浅野忠信演じる「ナガタ艦長」。ここぞというときに的確な判断力で部下を導く、まさに本物のエリートでありリーダーなのだが、お茶目な一面があって、主人公に何かとちょっかいを出したりする。また、普段は流暢な英語なのに、緊迫したシーンだとつい日本語で本音が出てしまうなど、どこか親しみが持てて、作品の中でもいいアクセントになっている。終盤に向けて、主人公といいコンビになっていく過程にも注目。日米の歴史上、浅からぬ因縁の地である真珠湾で、時代を経て若者が手を取り合うという姿は感慨深いものがある。

 こうした映画につきものの「アメリカ最強! 、アメリカ万歳!」という主張がにじみ出ているのは否定しないが、それだけではない面白さと謎もある。例えば、エイリアンの艦隊への攻撃は一旦始まると容赦ないのだが、一方で攻撃すべきものとそうでないものを判別して、攻撃の意思がない相手はわざと見逃すというシーンが何度もある。彼らの目的は明かされていない部分も多く「ひょっとしてエイリアンはこう考えていたのでは?」と観終わった後で想像できるような余地も残されているのだ。多少都合がいい展開も無くはないが、「●●を想う力が奇跡を生んだ」みたいなありふれた理由づけや唐突さは無く、最後まで冷静かつガムシャラに戦い、一つの結末にたどり着く。ディテールの描写もおろそかにしていないことから、結果的に「ありそうなラスト」と思わせる力がこの作品にはあった。

「バトルシップ」の評価ポイント(5段階)
GG & 音の迫力★★★★★
原作ゲームへの忠実度★★★★
視聴後も気になる謎★★★

 

バトルシップ
価格:4,192円(Amazon限定版/掲載時点)
発売日:9月5日発売
品番:GNXT-1009
片面2層
収録時間:本編約131分
映像フォーマット:MPEG-4 AVC
画面サイズ:シネスコ
音声:英語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch)
発売元・販売元:ジェネオン・ユニバーサル

 

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(2012年 10月 2日)

[Reported by 中林暁]