ミニレビュー

予想外に新鮮なテレビ体験! ガチャガチャダイヤルのレトロ風液晶TVを試す

 ドウシシャが'16年11月、“懐かしい”液晶テレビが発売された。ブラウン管をモチーフにしたドウシシャの20型テレビ「VT203-BR」だ。写真を見ればわかると思うが、特徴は「デザイン」。1970年代のブラウン管テレビをデザインモチーフとしており、筐体には木素材を採用。さらに、チャンネル切換や音量調整をダイヤル方式にするなど、「昭和のテレビ」風に仕上げた液晶テレビなのだ。実売価格は79,800円前後。

ドウシシャ「VT203-BR」

 画質・音質や機能ではなく、デザインで勝負する新たな(?)テレビ。実際の使い勝手などはどうだろうか? 早速試してみた。

ある意味“新しい”20型液晶テレビ。

 「VT203-BR」は20型テレビだが、梱包箱はかなり大きい。本体に加えて、4本の“脚”が用意されており、これを装着して自立する。現代の“20型テレビ”であれば、女性一人でも楽々設置できるが、VT203-BRの外形寸法は520×350×789mm(幅×奥行き×高さ)、重量は12.1kgと、なかなかのボリューム感だ。

 20型/1,366×768ドットの液晶パネルを採用。“液晶テレビ“だが、“薄型テレビ”ではなく、奥行きは350mmとやや長い。ラックに載せることは想定しておらず、本体脚部で自立するスタイルだ。

画面

 設置してみると、「昔はこんな分厚いテレビ見ていたのだなぁ」という感慨を抱かずにはいられない。20年前にはこのサイズに違和感無かったはずなのだが、背景の壁に対して「出っ張ってる感」が気になってしまう。しばらく番組を見ていれば慣れるのだが……。現代の薄型テレビに“慣らされている”ことを実感する。

“薄型テレビ”とは言い難い奥行き

 ただし、この奥行きは無駄ではなく、天面が開いて収納スペースとして利用でき、BD/DVDディスクなどを入れられる。なお、プレーヤー/レコーダなどは、画面下のラック部に収納したほうが良さそうだ。画面下のチャンネル、ボリュームダイヤルなどを備えたパネル部を開くと、収納部が現れる。

天板を開けると収納スペースが
ラック下にプレーヤーなどを収納できる

 画面右下のダイヤルでチャンネル変更が行なえるほか、ボリューム、入力切替のダイヤルも装備。かつてのブラウン管テレビ風に“ガチャガチャ”音を立て、ダイヤルを回してチャンネルを切り替えられるのも、本機の魅力の一つ。なお、付属のリモコンでもチャンネルやボリューム操作は行なえる。

チャンネル変更用のダイヤル
ヘッドフォン出力や電源、ボリュームなど

 チューナは、地上/BS/110度CSデジタル対応で、別売のUSB HDDを追加することで、番組録画にも対応。独自開発した和紙素材を使用したW-RPMスピーカーを搭載するなど、音質にもこだわっているという。HDMI入力を2系統装備。出力端子は光デジタル×1とヘッドフォン×1。

背面にHDMI入力など

懐かしのチャンネルダイヤルが新鮮

 画面の左下には電源ボタンスイッチ、HDMIなどの入力切替、放送波切替の各スイッチを装備。画面右下には大型のチャンネルダイヤルを備えている。テレビ放送の設定などは、地域設定と放送波スキャンによるチャンネル設定で、ごく一般的なものだ。

 画質も一般的なデジタルテレビで、画質モードはあざやか、標準、ライブ、映画の4モードから選択できる。基本的には標準でいいだろう。国内メーカー製のLSIにより、SD画質信号を精細に表現する超解像技術「美・彩・細エンジン」も搭載している。音質もなかなか良く、聞きやすい。

画質モードは4種類

 映像表示における注意点は、デザイン上、画面の端の表示が一部見づらいことだ。というのも、映像を表示する液晶パネル自体はフラットなのだが、かつてのブラウン管テレビのように、湾曲したフレーム部が四隅が若干欠けるようにデザインされているのだ。

湾曲したフレームが画面端を若干隠してしまう

 といっても、テレビを楽しむ分には問題ないし、この製品ならではの特徴といえる部分でもある。むしろ薄型テレビに慣れていると、ディスプレイ表示部の壁から離れているため、画面が飛び出しているように見えて、最初は違和感があるかもしれない。デザインから来るのか、いつものテレビより、ちょっと離れた場所から見たくなるのだ。

40型の液晶テレビと比較

 機能面の注目点は、チャンネルダイヤルだろう。操作レスポンスについては動画も見てほしいが、チャンネル切替の時間は2秒弱で、今日の液晶テレビとしては一般的。ただ、この“ダイヤルを廻す”感覚はやはり懐かしい。といっても、35歳未満の人にとっては未知の体験なのかもしれないが……。

 欲を言えば、もう少しダイヤルの重量感やカチッとした制動感がほしいと感じたが、この懐かしさを味わえるだけでも十分。遠い昔に開発されたものだが、このダイヤルを廻すチャンネル切替インターフェイスって、「なかなか使いやすいんだな」と実感する。

 ボリューム操作や入力切替なども前面スイッチから行なえる。リモコンを使えば“普通の液晶テレビ”として使えてしまうのだが、なんとなくもったいないというか、味気ない。

 ただ、初期設定や画質設定などにはリモコンが必要。番組表の表示や別売USB HDDへの録画予約などの機能を使う場合も、リモコンで操作を行なう。リモコンを使えば、現代の一般的な液晶テレビとして、きっちりとした機能を持っている。

リモコン
番組表
別売USB HDDへの録画にも対応

“いつもと違う”テレビ体験

 使ってみた実感として、思ってた以上に新鮮なテレビ体験が味わえた。機能としては、別段新しいものではない。むしろ古いユーザーインターフェイスとデザインを、あえて採用しているのだが、“いつもと違う”操作性と視聴体験という意味では、いまだからこそ新しいテレビに感じる。

 今回は数時間試しただけなので、一週間も使っていれば飽きてしまうかもしれないが、単に懐かしいだけでなく、こういうテレビもあっていいよな、と感じさせてくれるのだ。液晶裏に収納スペースを作るという発想も面白いし、テレビとほかの家具との複合機もあっても良さそうだ。「テレビとはこういうもの」という先入観をリフレッシュしてくれた。個人的には、素材や質感にこだわった、本格的な作りの“家具調テレビ”なんてものも見てみたい。

 HDRや4Kといったテレビの画質面の進化、あるいはネットワーク対応などの機能面の進化はいまなお続いている。一方、空間にどのようにディスプレイを配置するか、という方向でもまだまだ進化の余地はありそうだ。基本機能で言えば、どのテレビでもある程度満足のいく機能、品質があたりまえになった今こそ、テレビにも“遊び”が必要なのかもしれない。

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「VT203-BR」

臼田勤哉