ミニレビュー

アニソンファン歓喜! 5万曲配信の「ANiUTa」。新作のOP/EDもすぐ聴ける

 スマートフォン向けの定額アニソン聴き放題サービス「ANiUTa(アニュータ)」が3月24日からスタートした。iOS/Androidアプリをインストールして、毎月600円(税込)の契約をすると、5万超の曲が聴き放題となる。

AndroidスマートフォンでのANiUTaホーム画面

 ANiUTaの配信楽曲は、アニメ・声優・特撮ソング、ゲームミュージック。アニメはここ10年ほどの作品を中心に網羅され、加えて'70年代、'80年代の懐かしいアニメと特撮の代表作が入っているようだ。

 スタート時点で5万曲以上収録されているということに惹かれて、筆者も試しにアプリをインストールし聴いてみた。すぐに、これは恐ろしいほどアニソン愛好家のツボにはまるアプリだと感じ、絶対にレビューしなければと思った。それほど、この「ANiUTa」はアニソンファンに薦めたいサービスだ。

アニソンだけで5万曲

 ANiUTaは、ポニーキャニオン、KADOKAWA、フライングドッグ、マーベラス、ランティスなどのレーベルが参加し、アニソンなどを、2017年3月のスタート時点で約5万曲配信している。なお、iOS/Android用サービスのため、パソコンなどには対応しない。

主な参加レーベル(開始時点)。アニソン、もしくゲームソングに強いブランドがメイン

 曲数は毎日、土日も関係なく増え続けているようだ。何万曲を配信する楽曲サイトは既にいくつもあるが、それとは違って、アニソンだけで5万曲。ファンにとっては興味のない曲がほぼなく、一曲一曲の持つ意味が違う。

 ちょっと聴き始めると「あ、この曲知ってる」から、「この曲も余裕があれば買いたかったんだよなぁ! 」というような曲がどんどんと流れてくる。

 例えば、筆者は「らき☆すた」が放送開始当時から好きなので曲を聴こうと思ったのだが、ANiUTaにはこの10年で販売された93曲のCD音源が全部収録されている。テレビ版オープニング(以下OP)、エンディング(以下ED)、JAM Projectの歌ったカバー版、挿入歌、OVA版、キャラソン、リミックスまで聴ける。収録曲全部聴こうと思うと6時間超、新幹線でも東京から博多に着くまで聴けるほど。好きな番組の曲がここまで入っているのは、アニメファンとして嬉しいことだ。

「らき☆すた(アニメ)」の収録曲。ゲームなどは除かれている。それでも全曲演奏6時間超

 ただ、参加していないレーベルや、レーベルがあっても収録されていない曲もある。例えば、参加レーベルにNBCユニバーサルエンタテイメントがあるが、所属アーティストであるfripSideの曲が「シュヴァルツェスマーケン」関連の曲しか収録されていないのが気になった。筆者も大好きで、代表作といえる「とある科学の超電磁砲」関連の曲が全く登録されていないのだ。

 「超電磁砲」はアニメ作品としては登録されていて、キャラソンなども登録されている。それなのに……という状況。しかもパラレルシリーズである「禁書目録」シリーズの収録は、ほぼ完全に近く揃っている状態なので、できれば超電磁砲の方も収録してほしい。ただ、現在のANiUTaは、毎日何曲も増えている状態なので、割とすぐ解決するのではないかとも期待している。

 そのほか、ソニー系のレーベルが今回は参加していないようだ。そのため同じ番組でも「人類は衰退しました」はOPテーマが収録されていて、EDがなかった。これらも参加して欲しい。

課金しなくても検索&試聴可能。強力な検索機能

 上記以外にも「自分の好きな曲はあるのだろうか」と気になる人もいるだろう。欲しい曲が無い場合もあるとは思うが、アニメファンならとりあえずANiUTaアプリをインストールしても損はないと断言できる。日々収録曲は増えているし、課金をしなくても検索は収録曲全部調べられる。さらに、30秒といった短い時間ながら曲のサビ部分または出だし部分が試聴できるからだ。

 有料契約でも無料使用でも同じアプリを使用する。AndroidスマートフォンのGoogle Play、iPhoneのApp StoreからANiUTaで検索してアプリをインストール。これで、それぞれのストアで月600円(税込)の定期購読を申し込めばアプリはフルに使える。今回はテスト用にAndroidとiPhoneそれぞれで契約した。

 注意したいのは、AndroidとiPhoneでアカウントを共用できないということ。スマホ1台につき1契約が必要なサービスで、Android同士でも同一アカウントの複数端末の同時使用はできないようになっている。Apple Musicやプライムミュージックなど、最近の音楽配信サービスは、様々な機器で使える「マルチデバイス」対応が一般的だが、ANIUTaは契約したスマホ1台のみが対象のサービスなのだ。スマホの対応機種については、ANiUTaのホームページで案内している

無料試聴状態のANiUTa。再生バーを見るとどの曲も30秒のみとなっている

 なお、曲があるかどうかは、索引をひくか、文字列検索で候補のリストを表示できる。まずは一度索引を順に見てみてほしい。「あの番組が入ってる」、「この曲あるじゃん」と記憶にあったがすぐには出てこなかったような番組、曲が入っているのを楽しめるからだ。筆者も、それで「らき☆すた」にひっかかったわけだ。

 検索機能で曲を探したい、ということであれば、アプリのホーム画面最上部、あるいは「虫めがね」マークをタップすれば、番組名やアーティスト名、曲名などでピックアップできる。

 この検索機能は、かなりよくばった仕様でおもしろい。簡単に言うと全文検索とインクリメンタルサーチを合わせた感じになっている。例えば、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」という番組に関係する曲を聴きたいとき、「機動戦士」と途中まで入れてみると、番組名が「機動戦士ガンダム」シリーズのタイトルがずらっと並ぶ、インクリメンタルサーチになっている。

検索画面

 全文検索的な調べ方もできる。例えば、アーティスト名に「福原香織」を入れて検索結果画面まで進むと、「ぷらぐ(C.V.福原香織)」や、「かと*ふく(加藤英美里&福原香織)」といった結果を調べられる。

 ただし、こちらの全文検索の方は、網羅性が完全ではないようだ。筆者が気付いたところでは福原香織の場合、らき☆すたの「柊つかさ」としてエンディングで歌った「バレンタイン・キッス」が検索結果としてヒットしない。どうも、曲のデータの方に歌手名が柊つかさと入っていて、福原香織という声優名が入っていない、ということがあるようだ。

新番組を見たら、もうテーマ曲が配信されている!

 曲を聴くためには、ユーザーが探すだけでなく、ANiUTaがオススメ曲を並べた「特集」というプレイリストを聴いてみることもできる。この特集でラインナップされた曲を聴くと「アニメファンをよくわかっているなあ」と感心した。ANiUTaアプリをインストールしたら是非見てほしい。

 一番嬉しいのは、既に「2017年春アニメ主題歌」特集があることだ。原稿を書いた4月16日時点で、この4月から始まったアニメの主題歌のリストがANiUTaで配信されている。これは凄いことだと思うのだが、番組が放送されたその日、あるいはその翌日くらいには(TV放送サイズだが)OP・EDテーマ曲が聴けるようになっていた。

ANiUTaの更新情報。新番組が放送された日や翌日にOP/EDが登録されていた

 例えば「ゼロから始める魔法の書」という深夜アニメの放送が、4月10日にAT-Xの23時30分を皮切りにUHF局とインターネット配信などで始まった。最初のAT-Xの放送が終わった1時間後、ANiUTaでED曲「はじまりのしるし」(Chima)の配信が始まっている。なお、OP曲は今週流れておらず、次回放送時に合わせて配信されるようだ。

 4月16日時点で、このリストには「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? 」、「進撃の巨人 Season2」、「アリスと蔵六」、「月がきれい」といった注目作のOP/ED曲が続々と収録されている。しかも、放送され次第、毎日このリストに増えていくという。

 従来、楽曲配信サイトを利用していたアニソン好きには大きな不満が2つあった。ひとつは、放送が始まってから楽曲データの配信まで間隔が空いていたこと。配信が始まるのは、一部を除き、早くても開始から1~2カ月くらい後。これがTVサイズ320kbpsでも、1話目から(人によっては番組を見る前から)聴ける。もちろん、気に入った曲であれば2カ月後でもフルサイズ・ハイレゾで購入することにはなるのだが。

 もうひとつ、これまで不満だったのは楽曲配信サイトで買った曲は、音量レベルがそれぞれ違っていたこと。特にAndroidスマートフォンを使っていると気になることがあった。こちらもANiUTaでは解決されている。

 おそらく音量正規化をサーバ側で配信時にしているのだろうが、曲によって極端に音量が違うということがANiUTaの音楽再生にはなかった。おかげで通勤時やドライブ時に連続して数十曲などかけ続けても、作業用BGMとしても違和感なく聴いていられるのが嬉しい。

アニメファンを“わかってる”特集

 他の特集としては、2017年4月現在、「2017年冬アニメ主題歌特集」があり、こちらはほとんどフルの長さで曲が配信されている。そのほかにも、例えば下記のような特集がラインナップされている。

・「大石昌良」作曲セレクション
・坂本真綾セレクション
・アニサマ2016セレクション
・アニサマ2015セレクション
・アニサマ2014セレクション

 大石昌良といえば、2017年冬アニメで注目された「けものフレンズ」のOPテーマ「ようこそジャパリパークへ」の作曲者という、今一番旬の作曲者だ。ニコニコ動画で「ぼくは歌が歌えるフレンズ、オーオシマサヨシお兄さんだよー!」と本人が弾き語り動画を公開し、記録的な閲覧数になったりもしている。アニソンファンにとっては話題の人、興味をそそりそうなセレクション。

アニサマ2017には上坂すみれ、内田真礼などが出演。次の特集のセレクションはこの辺りだろうか?

 「アニサマ」は、アニメロサマーライブ(Animelo Summer Live)のこと。日本最大のアニメソングのライブイベント。例年8月に行なわれ、昨年は8万人のファンを集めた。収録曲はライブ音源ではないのだが、アニサマで歌われた曲を聴いて、昨年や1昨年のイベントの余韻に浸るということもできるわけだ。

チケット先行抽選などの特典。外出先でもアニソン三昧

 無料で使う場合と、月額600円の有料契約の違いは、曲の長さ以外にもある。それが、「アニサマ先行申し込み特典」の有無と、音質だ。

 さまざまなアニソン関連アーティストのライブなどを先行予約などが可能になる。先ほどセレクションリストで説明した「アニメロサマーライブ」が、今年も8月25日~27日に開催される予定なのだが、そのチケットの先行抽選もANiUTaユーザーは参加することができるのだ。

 アニサマの場合は残念ながら、全員チケットが買えるというわけではなく抽選だが、7月の一般販売よりかなり早い5月には買える可能性が出る。

ライブのチケット先行予約などの特典。アニュータライブ「あにゅパ!!」も開催

 ANiUTaの音質は、128kbpsまたは、320kbpsから設定できるようになっている。初期設定では128kbpsなのだが、これが320kbpsの高音質にできる。さすがにハイレゾで買ったデータには劣るものの、無料でも聴ける128kbpsと320kbpsの楽曲データははっきり違う。自宅での作業用のBGMにも、電車や自動車での移動中にも、ANiUTaの音質なら問題なく使える。

 なお、ANiUTaはダウンロード機能はない。ライブラリ、プレイリストを作って曲を聴くと、順次曲データを読み込んできて再生するという仕組みになっている。1曲をキャッシュした後に再生しているようで、ネット環境が良くなくても曲の途中で途切れるようなことはない。

 筆者は、好きで、いつも聴きたい曲をライブラリ化したが、それだけでも100曲ほどになった。ライブラリに登録できるのは最大1,000曲。濃いアニメファンに向けて、できればもう少し増やしてほしい。

ライブラリ画面。ここからさらに複数のプレイリストを作れる

 移動中にモバイルデータ通信を使った環境でも再生は良好。実際、筆者は320kbps設定で、ドコモ契約回線のiPhone 6と、格安SIMの「LINEモバイル」回線のHuawei honor 8を使ってこの2週間ほどANiUTaを楽しんでいるが、ほぼ問題は起きていない。

 一度だけ、朝の通勤ラッシュ時、電波の届きにくい場所にとどまっていたらプレイリストから一曲スキップされたことがあったが、それ以外は電車や自動車を使った移動中でもトラブルはなかった。

ドライブ時にも楽しめた

 格安SIMの中には極端にデータ通信が遅いものもあったり、あるいはそもそもLTE対応していない端末(iPhone 4sなど。iPhoneの場合iOS 9以降、Androidの場合は5以降と意外と古い環境もANiUTaが対応している)もあることを考えると、誰でも大丈夫とはいえないが、筆者のようなそれなりに速いLTE回線やキャリアアグリゲーション可能なスマートフォンを持つなどして実効Mbps単位の通信速度が確保できれば、モバイルでもほぼ問題なく、外出先で音楽を楽しめると思う。

 そんなわけで、筆者のアニソン環境はかなりエキサイティングになり、いつでも様々な曲が聴けて、充実したものとなった。アニソン好きな人なら、まずはアプリを入れて好きな曲を探して、サビだけでも聴いてみてほしい。きっとこのANiUTaを気に入るだろう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身のライター。88年、パソコン誌「Oh!X」(日本ソフトバンク)にて執筆開始。PCやスマートフォン、モバイル関係のQ&A、用語解説、プログラミング解説などを書く。代表作は「ケータイ用語の基礎知識」(インプレス・ケータイWatch) Oh!X誌上では「オタッキー(で)」とも呼ばれた、その筋人。最終学歴は東海大学漫画研究会。ホームページはhttp://ochada.net(イラスト : 高橋哲史)