ミニレビュー
ビデオ書き出し対応で全部入りになった「torne mobile」。nasne用アプリ決定版?
2017年10月27日 08:15
10月3日、SIEのHDDレコーダ/NAS「nasne」用の録画・視聴アプリ「torne mobile」がアップデートし、「ビデオ書き出し」機能が追加された。
torne mobileのリリースは、2015年3月とほぼ2年半前。当初から番組表による録画予約や録画番組の視聴、遠隔地からのリモート視聴などの主要機能を搭載していた。しかし、nasneの番組をアプリにダウンロードしてオフライン視聴するための「ビデオ書き出し」機能が足りなかった。
わかりにくいのだが、nasne自体はモバイル端末向けの番組を録画時に作成しており、torne mobileのリリース前からビデオ書き出しに対応したスマートフォンアプリは存在していた。そのためビデオを持ち出したいユーザーは、torneとは別に対応アプリを書き出し用アプリとして使う、もしくはtorne mobileを使わずに別のアプリでnasne利用を完結する必要があった。
こうしたアプリの棲み分けが定着していた感のあるnasneの利用環境において、突如としてビデオ書き出し機能を搭載してきたtorne mobile。今回は書き出し機能のレビューを中心に、今回のアップデートで「全部入り」となったtorne mobileを改めて評価してみたい。
ビデオ書き出しは追加840円。torneシリーズ共通の操作感
torne mobileのビデオ書き出し機能は、有料機能を追加できる「STORE」から追加が可能。決済は利用OSのプラットフォームに準じるが、価格は共通の840円。iOSとAndroidそれぞれで追加する場合は合計1,680円が必要になる。
「VIDEO」から録画番組一覧を表示し、長押しで表示されるメニューから「ビデオの書き出し」で書き出しが可能。PS4やPS Vitaのtorneと同じ操作のため、他プラットフォームでtorneを使っているユーザーにはわかりやすい。
一覧表示された番組にチェックを入れてから長押し操作することで複数番組を同時に書き出すことも可能。書き出し中は別のアプリに切り替えてもバックグラウンドでダウンロードが継続されるが、torne mobile自体は書き出しが終わるまで他の機能は利用できない。
書き出し時間は番組の画質設定によって異なる。3倍モードで録画した30分番組をiPhone 7 Plusでダウンロードしたところ、「速度優先」の場合は容量が0.34GBで書き出し時間が約2分、「画質優先」が1.36GBの約5分に対し、DRモードでは速度優先、画質優先ともに0.34GBの書き出し時間が約2分だった。
nasneでは録画画質をDRモードと3倍モードから選択できるが、実際の録画時にはこのモードとは別にモバイル用として「720x480/30p」の録画ファイルも作成されている。おそらくDRモードの場合は書き出しの際に選択できるのがモバイル用のみなのに対し、3倍モードではモバイル用と3倍モードの両方がダウンロードできるため、3倍モードのほうが画質がよいという逆転現象が起きているのだろう。
実際に視聴してみると、3倍モードの速度優先では字幕の文字が若干崩れていたり、動きが速いシーンではブロックノイズが発生するなど明らかに画質の違いはわかる。とはいえモバイル環境で見る分には十分な画質で、よほどのこだわりがなければ、画質の違いはそこまで気にならないだろう。
リモート視聴未設定もしくはネットワークに接続していないときは、書き出した番組のみが表示される。リモート視聴やネットワーク接続時には書き出していない番組も表示されるが、画面上部の「すべてのビデオ」を左にフリックして「内部ストレージ」へ切り替えることで、書き出した番組のみを表示できる。
再生機能はストリーミング時と変わらず、30秒スキップ/15秒戻しやチャプタスキップ、15秒から5分までの間隔でシーンサーチを設定できる。ストリーミングと異なり、ネットワークを必要とせず視聴できるため、移動中や無線LANのない環境などでビデオを視聴したいユーザーには嬉しい機能だ。
ビデオ書き出しの定番アプリ「TV SideView」と機能を比較
前述の通り、nasneのビデオ書き出し機能はすでに他のアプリで対応した。ビデオ書き出しに加え、番組予約や番組視聴、リモート視聴といった機能を網羅した「全部入り」アプリが、ソニーの「Video & TV SideView」(TV SideView)だ。500円という低価格に加え、そもそもtorne mobileよりも前からnasne対応アプリとして提供されていたこともあって、nasneのスマホ利用をTV SideViewのみで完結していたユーザーも多いだろう。
ビデオ書き出し機能の追加によって、torne mobileも「全部入り」アプリとなった今、改めてTV SideViewと比較した。
これまで大きな違いだったビデオ書き出し機能だが、TV SideViewの書き出し機能はtorne mobileと大きな違いはなく、録画番組の一覧から書き出したい番組を選ぶという流れ。任意の番組を1つ選んで詳細画面から転送するか、メニューから「おでかけ転送」を選択することで、複数の番組をまとめて書き出すことができる。
最大の違いはビデオの画質。前述の通りtorne mobileは3倍モードであれば2種類の画質を選択できたが、TV SideViewの場合、リモート視聴の画質は2種類から選択できるものの、ビデオ書き出しの場合は画質が1種類のみに固定されている。torne mobileでテストした番組と同じものをビデオ書き出ししてみたところ、ファイル容量は329.1MBと表示された。torneの表示容量と異なるものの、こちらもモバイル用の録画ファイルを書き出しているのだろう。
書き出したファイルの再生時は、チャプタスキップや15秒送り/10秒戻しといったトリックプレイが利用可能。torne mobileよりも送り/戻しの時間が細かく操作できるが、torneは30秒から5分単位のサムネイル付きでスキップできるシーンサーチ機能があるため、再生時の機能としてはtorne mobileが上。また、ニコニコアカウントを取得することで、番組にニコニコ実況のテキストを合わせて表示できるのもtorne mobileならではの特徴だ。
ビデオ書き出し機能以外の機能も簡単に比較してみよう。まず価格面だが、これは圧倒的にTV SideViewのパフォーマンスが高い。ビデオ書き出しまで500円で利用できるTV SideViewに対し、torne mobileの場合、録画番組の視聴や転送が500円、ビデオ書き出しが追加で840円の合計1,340円と約2.6倍に跳ね上がる。
使いやすさは、個人的にはtorne mobileに軍配があがる。TV SideViewは時間帯の区分がAndroidの場合は3種類のモノトーン、iOSの場合は色分け表示がないのに対し、torne mobileは24時間が8種類の色で分類されており、番組の時間表示も時間に合わせて色が異なるため時間帯が把握しやすい。
また、TV SideViewは拡大してもフォントサイズは変わらず、番組の表示エリアが増えるだけだが、torneは画面の拡大に合わせてフォントサイズも大きくでき、1画面に表示できる放送局数もtorneの方が大きい。
番組ジャンル設定も細かな違いで、TV SideViewは最大で4種類に対してnasne mobileは最大5種類を色分けできる。また、録画済みの番組はTV SideViewの場合番組名の前のアイコンのみが変わるが、nasne mobileは番組の背景色がすべて変わるため、同じ時間帯に重複した録画番組を確認するのにも便利だ。
個人的に最も大きな違いと感じているのがストレージ容量の表示。起動時に必ず容量が表示されるtorne mobileに対し、TV SideViewは機器設定までアクセスしないと確認できない。録画頻度の高いユーザーほど残り容量は気になるもので、気づいたら容量がいっぱいで録画できない、という事態を避けるためにも、常に容量が表示されているtorne mobileは地味にありがたい。
番組との連携機能はどちらのアプリにも特色がある。torne mobileの場合はニコニコ実況を番組と同時に表示できる機能で、他の視聴者の感想を見ながら番組を楽しめる。また、録画情報に基づいた人気ランキング、オリジナルキャラクター「トルネフ」による番組のレコメンドやアンケート企画などが用意されている。
また、PS4をアプリで操作できるリモコン機能もtorne mobileには内包されている。PS4のスマートフォン操作は「PlayStation App」というアプリでも可能だが、このアプリではtorneの起動やホーム画面の呼び出しはできるものの、torneアプリそのものは操作できない。このリモコン機能は無料で利用できるため、PS4でnasneを視聴しているユーザーはぜひ入れておきたい。
一方、TV SideViewは番組の関連情報との連携が充実。番組表の番組情報には出演者の情報が一覧表示され、出演者のTwitterアカウントや他の出演番組、番組に関するTwitterのツイート情報を確認できる。
話題のTVニュース、niconicoやYouTubeの人気動画などのネットサービスとも連携。さらに自宅のNASに保存されたコンテンツを再生するホームネットワーク機能も備えている。torne mobileがあくまでnasneを中心とするのに対し、TV SideViewは動画コンテンツを幅広く対象としているが大きな違いだ。
nasneユーザーにはうれしい強化。価格には抵抗あり
2年半の沈黙を破りビデオ書き出し機能を追加したtorne mobile。機能自体はシンプルながらも使いやすく、これまでtorneシリーズのアプリを利用していたユーザーであれば違和感なく使えるだろう。
最大の課題はその価格。ビデオ書き出し機能を搭載したアプリをすでに有料で購入しているユーザーにとって、合計で1,340円という価格は導入のハードルが高い。torne mobileを使っていたとしても「ビデオ書き出しは別アプリ」となっていた現状において、TV SideViewとの価格差840円の価値をtorne mobileに見いだせるかどうかが分かれ目だろう。
自宅内の録画環境をほぼnasneに依存している筆者にとっては、使いやすいUIで動作も快適であり、1つのアプリに集約できるtorne mobileのアップデートは非常に嬉しい。とはいえ、アプリの追加開発費用という点は理解できるものの、他のアプリで実現していた機能を利用するのに倍以上の追加費用、というのは、積極的に人にオススメしにくいものがある。
もう少し手に取りやすい価格にしてほしいと思うが、価格にさえ納得できれば、機能自体は非常に便利で使いやすい。久しぶりのtorne mobileバージョンアップを歓迎したいが、そろそろnasne本体側のバージョンアップにも期待したい。
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