ミニレビュー

4D版「ヱヴァ:序」で使徒戦を“体感”。揺れの激しさは「想像以上」

4D版ポスター
(C)カラー

2007年、2009年、2012年と、これまで3作が公開されてきた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」。2021年1月23日にはシリーズ最新にして完結編となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開も控えている。その最新作公開に先駆け、12月4日からは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の4D上映がスタートしたので、中学時代からのエヴァ好きである筆者が、4Dでエヴァを“体感”。想像以上に激しい演出で、まさにアトラクション気分だった。

筆者が最初にエヴァンゲリオンシリーズと出会ったのは、幼稚園児のころだったが、当時は毎週のテレビ放送を観るというより、眺めるという状況だった。本格的に魅力に取りつかれたのは中学1年生のころ。連日、ビデオ/DVDをレンタルして食い入るように視聴した。そのため新劇場版シリーズは、どれも公開初日には劇場へ向かい、上映期間中は何度も足を運んできた。

今回観劇したのはMX4D版

そんなエヴァ好きにとって、より深く世界観にのめり込める4D上映を逃す手はない。今回はTOHOシネマズ新宿でMX4D版を観るべく、オンライン予約開始と同時にチケットを確保。無事、公開初日にエヴァ:序を体感することになった。

4D上映は、映画のシーンに合わせて、座席の振動や肘掛け部分から飛び出る風や水しぶき、劇場全体を包む霧や閃光など、五感を刺激する特殊効果が展開されるもので、作品世界に入り込んだような臨場感が味わえる。「エヴァンゲリオン」シリーズで、4D上映が行なわれるのは今回が初めて。

冒頭から激しい演出の連続。“4Dらしさ”は戦闘シーン以外にも

'07年公開の「ヱヴァ:序」は、新劇場版シリーズの導入として、旧作とほぼ同じシーンからスタートし、“使徒”との国家規模での戦いを描いた「ヤシマ作戦」をクライマックスとする。映画では、冒頭から戦略自衛隊と第四の使徒との戦闘シーンが描かれ、この段階から顔に対する風の噴射(エアーブラスト)や座席の振動などが始まり、映画の世界に引き込まれる。

戦闘が激しくなっていけばいくほど、各演出もダイナミックになっていき、エヴァンゲリオン初号機と使徒が戦うシーンでは、アミューズメントパークのアトラクションかのように座席が大きく揺れる。以前に一度、4D版の作品を視聴したことがあったが、その時を遥かに凌駕する揺れ具合だったので、心の中で思わず「楽しすぎる!」と、うなってしまうほど。戦闘シーンでエヴァ初号機が吹き飛ばされたり、転んだりすると、それにあわせて背中や足元にも触感があり、碇シンジとともにエントリープラグに入っているような感覚だった。

その後に描かれる第五の使徒との戦闘や、クライマックスの「ヤシマ作戦」での第六の使徒との戦闘でも、シーンに合わせて激しい演出が繰り広げられ、まるで“エヴァンゲリオンテーマパーク”にいるような気分。上映後、周囲の観客からも「想像以上に揺れたよね」といった会話が漏れ聞こえるほどだった。

【公式】MX4D/4DX 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序、:破、:Q 4D版』予告

4D版ならではの演出が行なわれるのは戦闘シーンだけではない。シンジと葛城ミサトが愛車のルノーで移動している場面や、ミサトと赤木リツコがチェアリフトで移動している場面、第3新東京市が完成する場面などでは、道を走るクルマの振動や、リフトが滑車を越える際の振動、ビルの動きやボルトが止まる衝撃などが、座席の揺れで再現され、没入感を高めてくれる。

観劇するにあたり、少し気になっていたのがマスクの影響について。4D版では、顔に風や水が当たる演出が行なわれるのだが、各劇場では新型コロナウイルス感染拡大防止のため、上映中もマスク着用を要請しており、顔の大部分が覆われている状態でも、演出を十分に感じられるかが疑問だった。

結論から言えば、風を使った演出についてはまったく問題なし。今回は生地が厚手のアンダーアーマー製マスクを着用して観劇したのだが、マスクから露出している目の周りにも風が吹き付けられるので、演出を十分に感じることができた。その一方、水しぶきを明確に感じられたのは終盤の一度だけ。上映中にどれだけ水しぶきの演出が行なわれているのかは不明だが、生地の厚い布マスクではなく、不織布マスクなどを着けていたら、より水しぶきを体感できたかもしれない。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の4D上映は12月24日(木)までの期間限定。11日(金)から2作目の「破」、18日(金)からは3作目の「Q」の上映も開始される。筆者は、劇場だけでなく、Blu-rayやテレビ放送を含め何十回と「ヱヴァ:序」を観てきたが、今回の4D版はまったく新しい映画体験だった。

より激しい戦闘が描かれる2作目の「ヱヴァンゲリオン新劇場版:破」や過去2作とは一変してシリアスな展開が続く3作目「ヱヴァ:Q」では、どんな演出が繰り出されるのか、今から楽しみでならない。

また同日程でそれぞれ通常版の上映も行なわれているので、まだ新劇場版シリーズやエヴァンゲリオンに触れたことがない人でも、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」に向けた予習として最適だろう。

酒井隆文