ミニレビュー

軽い付け心地でANC/外音取り込み対応「Google Pixel Buds Pro」

Pixel Buds Pro(左)とPixel 6a(右)

Googleの完全ワイヤレスイヤフォン「Google Pixel Buds Pro」が登場した。アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能と外音取り込み機能を備え、Googleストアの価格は23,800円。実機に触れたのでファーストインプレッションをお届けする。

Googleのスマートフォン「Pixel 6a」と同時発売となったPixel Buds Pro。立ち位置としては既発売の「Pixel Buds A-Series」(11,900円)の上位機種となり、上記のANC、外音取り込みに加え、ワイヤレス充電への対応、マルチポイント接続、イヤフォン本体の再生時間が延びたこと(ANC ONで7時間)が大きな違いとなっている。

カラーはコーラル

デザイン面では丸い形状を継承しつつ固定用のフックは非搭載。Pixel 6シリーズに合わせたコーラル、レモングラス、フォグ、チャコールの4色のカラーリングはカバー部の丸い部分にだけ施し、他の部分はブラックで統一。上位機種らしい高級感をイメージしているようだ。

カラーバリエーション。左からコーラル、レモングラス、フォグ、チャコール

Androidで使用する場合はFast Pairでスムーズにペアリングできるほか、専用アプリも用意。アプリでは「デバイスを探す」やタップ操作の設定、ANC/OFF/外音取り込みの切り替え、マルチポイント接続設定や、イヤーピースのフィット感の確認も行なえる。

固定用のフックはなくなったが、装着してみると、耳にすっと収まり、装着感が軽いにもかかわらず、本体も耳の窪みにすっぽりとハマっていて激しく動いても脱落しない安心感がある。

装着イメージ
丸いカバー部が耳から見えるのがデザインのポイントだという

さっそく両方ともMサイズのイヤーピースを付けた状態でフィット感の確認をしてみると、20秒ほど音声が再生された後に、左側を大きいサイズにするよう表示された。指示の通り、左側をLサイズに変えて再度確認してみると、次は両方適切なサイズになっていると表示された。

イヤーピースを適切なサイズに調整できたところでANCを試してみると、圧迫感が少なく、自然に周囲の音が少し遠くなる印象。一部の音域が強くキャンセルされているという感じではなく、全体的に音が遠くなっているという聞え方で、人や車が多い環境で音楽を再生していても周囲の人や物の気配はなんとなく感じられる。

室内では、エアコンの「ゴー」という音が微かな「サー」くらいの音になり、PCの動作音などは聞えなくなる。このレベルの強度の場合、筆者が設定している音量では、音楽の邪魔にならない音はある程度聴こえる状態になるので、電車移動中にどこの駅に辿り着いたかなどはすぐに確認できて、使い勝手の良いANCだと感じた。

一方で、ANCをONにして外を歩くと気になるのが風の音。風がマイクに当たっている音とそれをキャンセルする音が微妙にずれているような印象。後述の外音取り込みの状態では風の音が気にならないので、おそらくANCの処理の問題のようだ。アップデートでの改善に期待したい。

外音取り込み機能は、聴こえ方が自然に感じられる。もともと耳の中を減圧してこもりにくくする機能があるのだが、外音取り込み機能をオンにすると装着感もさらに軽くなり、まさに散歩やランニングのお供にするのがバッチリ合いそうな印象。外音と音楽との分離感が良く、音楽とは別に外の音が入ってくるように感じられるのも良いなと思ったポイントだ。

音質についてはまず残念に感じた点から上げておこう。Pixel Buds ProはBluetooth 5.0準拠で対応コーデックはSBC、AACのみとなっている。ワイヤレスでハイレゾ相当の音質は楽しめない仕様だ。

Pixel 6/6 Pro、同日発売のPixel 6aはハイレゾ相当で伝送できるaptX HD、LDACにも対応している。カラーやデザインを合わせ、Googleストアではセット購入を勧めていることから、対応してくるのではないかと思っていたのだが、Pixel Buds Proでは残念ながら非対応とのことだ。

それを踏まえつつ、特徴としては、音の色付けは少なく、自然なサウンド。低域から高域までバランス良く聴こえる中で、中低域が若干強めに感じる。低域はボワッと拡がらずに動きの見える解像感があるため、ベースラインもしっかり楽しめて、そんな中でボーカルの声の輪郭がハッキリしているといった感じ。しっとりしたバラード系から激しいHIPHOP系までオールマイティにこなしてくれる。

Android端末との組み合わせ場合は、アプリのボリュームEQをオンにすることで、低音と高音を強調することもできるので、「ちょっと物足りないんだよな」といった際に使える。オンオフを切り替えながら聴き比べてみると少しの差なのだが、激し目なEDM調の曲などは雰囲気がガラッと変わる。

ちなみに、アプリの機能の説明部には「音量が小さなときに」となっているが、Pixel 6aの音量バーの半分くらいまでは効果が出ていたので、ANCを使うことも考えれば、単純にドンシャリ系にシフトさせる機能と思って良さそうだ。

センサーでの操作は、音楽の再生/停止や通話の応答/拒否、曲送り/曲戻しが設定されている。ほかにも、Googleアシスタントの起動とANC/外音取り込みが割り振られている長押し操作のみ、アプリから設定可能。右をGoogleアシスタント、左をANC/外音取り込みの切り替えといったカスタマイズができる。またスワイプ操作での音量調整にも対応。快適な使用感という点で重要なイヤフォンの着脱での音楽の再生/一時停止も備えている。

ケースの形状は楕円形で手のひらに収まるサイズ感。厚さ25mmで、ちょうどズボンのポケットにスルッと入り、ひっかかりも少ないので取り出しやすい。

ソニー「WF-1000XM4」のケース(右)と並べたところ
見た目は微妙な差だが、形状と薄さでポケットへの入れやすさはPixel Buds Proに軍配が上がる
ケース背面にはテザリングボタンを装備。ここを長押しすればテザリングモードになって2台目以降も簡単に接続できる

一方で、イヤフォンの取り出しについては少し難があり、前後からしっかり掴んで取り出さないと本体も丸いので滑ってしまう。そして、その点に気をつけつつ歩きながらイヤフォンを取り出してつけようとすると、次はふたが指に当たってスムーズに取り出せないので、もう少し大きく開いてくれればな、というのが素直な感想だ。

後ろ側につまむためのツペースがあるのだが……
咄嗟に取ろうとするとふたが干渉してくる

本体が小さく、装着感も軽く、バランスの良い音に加えてANC/外音取り込みを備えたモデルで、没入して楽しむというよりも、ながら聴きに適したモデルのように感じられる。今回はイヤフォンのIPX4相当に加えてケースもIPX2相当の防滴仕様になってランニング中に汗で濡れてもある程度心配がなかったりと、持ち出しやすさの点では使いやすい完全ワイヤレスだ。

今後のアップデートで空間オーディオにも対応するという話が5月時点で出ていて、同じような機能で比較すれば、iOSの定番であるAirPods Proよりも1万円以上安いということもあり、手に取りやすいモデルでもある。今後登場するPixelシリーズとの連携も気になるところだ。

野澤佳悟