ミニレビュー

バッテリ内蔵“完全ワイヤレス・リア”付きサウンドバー、JBL「BAR 1000」を聴く

充電式ワイヤレス・サラウンドスピーカーが付属。サウンドバー本体にドッキングして充電する

JBLから、“充電式ワイヤレス・サラウンドスピーカー”がセットになった、ユニークなサウンドバーとして、7.1.4ch完全ワイヤレスサラウンドシステム「BAR 1000」が登場する。日本上陸に向けたクラウドファンディングが、GREEN FUNDINGで9月15日からプロジェクトスタートした。実物に触れたので、その音質と、どのようなシステムなのかをレポートする。

なお、一般販売はまだ未定だが、その際の予定価格は143,000円。プロジェクト実施期間は2022年11月7日まで。リターンプランの一例は、「Super Early Bird」として18% OFF(先着100人限定)、「Early Bird」として17% OFF(先着150人限定)などを用意。商品の送付予定は11月より順次となる。プロジェクト期間中に、二子玉川蔦屋家電内「蔦屋家電+」で製品展示も実施しているため、実機を見てからプロジェクトに参加する事も可能だ。

BAR 1000

サラウンドスピーカーが完全ワイヤレス

BAR 1000最大の特徴は、サウンドバー本体だけでなく、バッテリーを内蔵して電源ケーブルの接続も不要にした“完全ワイヤレス”のサラウンドスピーカーがセットになっている事。

サウンドバー部分

サラウンドスピーカーは充電して使うわけだが、その充電方法もユニークで、サウンドバーの側面にサラウンドスピーカーをドッキングして充電。3.6V/3,283mAhのリチウム電池を内蔵しており、切り離した後の連続再生時間は約10時間となっている。

【訂正】記事初出時、“連続再生時間は約12時間”と記載しておりましたが、仕様が約10時間に変更されました。(9月16日19時)

ドッキングして充電
取り外したサラウンドスピーカー

なお、ワイヤレスサラウンドスピーカーにはUSB-C入力端子も備えており、ここにUSB経由で給電しながら動作させる事も可能。バッテリーが少ない状態でも、給電しながら映画などを楽しむことができる。

USB-Cで給電も可能

これに加えて、ワイヤレスのサブウーファーもセットになっている。なお、サブウーファーは充電式ではなく、電源ケーブルの接続が必要だ。

ワイヤレスのサブウーファー

ユニット構成としては、サウンドバー本体に48×90mmのレーストラック型ウーファー×5、20mm径ツイーター×3を搭載。これで、センターとフロント左右スピーカーを担う。さらに、天面には70mm径の天井反射用フルレンジ×2を搭載。天井に音を反射させる事で、ハイトスピーカーを再現する。

また、両端に搭載している20mm径ツイーター×2は、ビームフォーミングスピーカーとして機能し、音をユーザーの左右にある壁に反射させ、仮想のサラウンドスピーカーとして音を届ける。

充電式のワイヤレスサラウンドスピーカーには、こちらもビームフォーミングスピーカーとして動作する20mm径ツイーターと、70mm径天井反射用フルレンジドライバーを搭載。リアスピーカーとして、音を壁に反射させて届けると共に、天井にも音を反射させる役割がある。

ユニット構成
放出する音のイメージ

サブウーファーには、250mm径ウーファー×1を搭載。下向きに取り付けたダウンファイヤリング方式。合計で15基のユニットを採用したシステムとなる。

サブウーファーは、ユニットを下向きに取り付けたダウンファイヤリング方式

音のビームを発生させ、部屋の壁と反射を活用する技術として、JBL独自の「MultiBeam」テクノロジーを活用。「前方と後方の間の空間を埋めるように音を出しており、“包まれ感”の高いサラウンドが再生できる」とのこと。また、総合出力は880Wとハイパワーだ。

また、ワイヤレスサラウンドスピーカーは、サウンドバー本体に取り付けた状態でも動作が可能。その場合は、サウンドバーのビームフォーミングスピーカーと、サラウンドスピーカーのビームフォーミングスピーカーは、前方から壁の違う位置に音を反射させ、広がりのあるサラウンドを再生するという。

部屋の形状やスピーカーの設置場所、視聴位置に合わせて音を最適化してくれる「ルーム・キャリブレーション」機能も搭載。視聴位置はよりシビアなピンポイント設定と、複数人で楽しむためにスイートスポットを広げた設定も可能。

リモコンが付属するほか、新アプリ「JBL ONE」を使い、スマホから設定や音楽再生などを一元管理する事もできる。

リモコンが付属する

HDMIの入力を3系統と、eARCに対応したHDMI出力端子を装備。最新のWi-Fi 6にも対応したデュアルバンドWi-Fiも内蔵。 AppleのAirPlay 2や、GoogleのChromecast built-in、AmazonのAlexa Multi-Room Musicなどを通して、スマートフォンやタブレットからシームレスに音楽をストリーミング再生できる。Bluetooth受信も可能で、光デジタル音声入力も備えている。

背面端子部

外形寸法(幅×奥行き×高さ)は、サラウンドスピーカー装着時で1,194×125×56mm、サウンドバー本体のみでは884×125×56mm。サラウンドスピーカーは155×125×56mm、サブウーファーは305×305×440mm。重量は、サウンドバー本体が約3.7kg、サラウンドスピーカーが約1.4kg、サブウーファーが約10kg。

音を聴いてみる

最も気になるのはワイヤレスサラウンドスピーカーだが、サイズとしては、お弁当箱を少し小さくしたような印象。厚みも少なく、ちょっとしたスペースに設置できそうだ。重量もそこまで重くないので、女性も気軽に設置できるだろう。

ワイヤレスサラウンドスピーカーとサラウンドスピーカーのどちらにも、接続して充電するための端子があるが、それを隠して見えないようにするカバーも付属している。カバーはマグネット接続で、近づけるだけでカチャッと取り付けできる。

充電端子を隠すカバー付き

さっそく、分離したワイヤレスサラウンドスピーカーを背後に設置し、「竜とそばかすの姫」の歌唱シーンや、「アポロ13」の離陸シーンなどを鑑賞してみた。

サウンドバーでは、様々な技術を使って前方に設置したスピーカーを使い、“後方からの音”を再現するかに各社が挑んでいるが、BAR 1000の場合は、リアルなサラウンドスピーカーが存在するので、当然ではあるが、非常にリアルで自然な“後方からの音”が楽しめる。

「竜とそばかすの姫」の空間を埋め尽くす合唱の声や、アポロ13が離陸する際の轟音が前後左右から体を包む感覚は、リアルなサラウンドスピーカーならではの“しっかりとした包まれ感”があり、不自然さは無い。天井反射も機能しているため、周囲だけでなく、上からの音でも空間の広さがわかる。

また、上からのカメラアングルで、アポロ13がカメラをかすめて上昇し、視聴者の後方へと飛び去るシーンでは、アポロ13の音像が、前から近づいてきて、右後ろへと抜けていく“音像の移動”が明瞭に描写される。この移動感のクリアさは、なかなかサウンドバーだけでは再現できない。リアルなサラウンドスピーカーが存在してこそのものだろう。

アポロ13のエンジンが奏でる爆音も、ワイヤレスサブウーファーから迫力満点に再現してくれる。こちらも、サブウーファーがセットになっている、大きな利点だ。

このように、ワイヤレスサラウンドスピーカーがセットになっているのは、サウンド的には大きな利点と感じる。一方で、取り付けて充電したものを、映画の鑑賞前には取り外して、背後に設置するという“作業”が必要になる。毎日これをするのは億劫に感じるようになるかもしれない。

ただ、BAR 1000の場合は、サラウンドスピーカーをサウンドバーに取り付けた状態でも、ビームフォーミング技術を使って、ある程度広がりのあるサラウンド再生が可能になっている。例えば、平日はサラウンドスピーカーを取り付けた状態で、テレビ番組などを楽しみ、週末だけサラウンドスピーカーを取り外して、じっくり映画を観る……なんて使い方が、一番快適かもしれない。

サラウンドスピーカーをサウンドバーに取り付けた状態でも、ある程度広がりのあるサラウンド再生が可能

なお、ハーマンインターナショナルの濱田直樹氏は、この製品の日本導入が、同社としては初となるGREEN FUNDINGでのクラウドファンディングになった理由として、「従来の、大きなメインストリームに我々が語りかけ、製品を提供していくという状況から、マーケットが変化。マイクロトレンドが増加し、個人個人が自己判断で、自分に合った解を見出し、自己判断で選択するスタイルが増えてきている」とし、クラウドファンディングという新たな手法を選択した理由を説明。

ハーマンインターナショナルの濱田直樹氏

また、7.1.4ch完全ワイヤレスサラウンドシステムという今までにない製品に対して「どのくらいのニーズがあるのか、この製品がドンズバに刺さる人も多くいるのではないか、そういった方にリーチするためにもクラウドファンディングを試みる事にした」と狙いを語った。なお、クラウドファンディングの反響も踏まえながら、一般販売についても検討するという。

山崎健太郎