ミニレビュー

DTSサウンドの魅力を、JBL「BAR1000」とゼンハイザー「AMBEO Soundbar | Plus」で味わう

DTSの歩み

dts Japanは22日、手軽かつハイクオリティにDTS:Xのサウンドが楽しめるサウンドバーとして、JBLブランドの「BAR1000」と、ゼンハイザー「AMBEO Soundbar | Plus」を用意し、DTS収録の映画を再生、その魅力を伝えるメディア向けの試聴会を開催した。

JBL「BAR1000」

JBL「BAR1000」

BAR1000は、サウンドバーとワイヤレスのサブウーファーで構成しており、サウンドバー両端が分離し、ワイヤレス・リアスピーカーとして機能するのが大きな特徴。ワイヤレス・リアにはバッテリーも内蔵し、電源ケーブルの接続も不要な事から「7.1.4ch完全ワイヤレスサラウンドシステム」とアピールしている。

サウンドバー両端が分離し、ワイヤレス・リアスピーカーとして機能する

ハーマンインターナショナル マーケティング本部の濱田直樹プロダクトマーケティングマネージャーによれば、BAR1000の斬新なシステムは多くのユーザーに支持されており、「すでに7,000台ほどを出荷しており、たいへん好調」だという。GREEN FUNDINGで実施したクラウドファンディングでも、支援額は1億円を突破するなど、「ホームシアターというカテゴリ自体に光を当てるような製品になった。ホームシアターカルチャーに貢献できたと感じている」と、手応えを語った。

ハーマンインターナショナル マーケティング本部の濱田直樹プロダクトマーケティングマネージャー

ゼンハイザー「AMBEO Soundbar | Plus」

ゼンハイザー「AMBEO Soundbar | Plus」

AMBEO Soundbar | Plusは、ワンバー単体で7.1.4chを実現する世界初のサウンドバーとして開発。欧州最大の研究機関「フラウンホーファー」と共同開発した3Dサウンド技術「AMBEO」を搭載しているのが特徴だ。

すべて自社開発のドライバーを合計9基搭載するほか、ロングスローウーファーを2基備え、出力400WのD級アンプも搭載。各ドライバーの音が混ざらないよう、それぞれに専用のチェンバーを用意するなど、リッチな作りの高級機だ。

試聴ではサブウーファーの「AMBEO Sub」も活用した

さらに、内蔵マイクを使い、サウンドバー単体で高精度なキャリブレーションが行なえるのも特徴。Sonova Consumer Hearing Japanで営業を担当する加藤久幸氏は、「ゼンハイザーならではの、ビシッとした定位感に優れた音を、ホームシアターでも体験できる」と、魅力を紹介した。

Sonova Consumer Hearing Japanで営業を担当する加藤久幸氏

「サウンドバーをなめていました」

コンテンツ推薦人として招かれたのは、伊尾喜大祐氏と飯塚克味氏の2人。

伊尾喜大祐氏

伊尾喜氏は、'99年よりDVD制作事業をスタート。凝った仕様のパッケージソフトを多数制作し、映画人からの厚い信頼を得て、現在までにのべ250タイトルを超えるディスクを制作・演出。近作は「映画イチケイのカラス」「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」「キャラクター」「ラストレター(特典映像プロデュース)」「君の名は。(特典映像プロデュース)」「怒り」など。

2006年には映像制作プロダクションであるFILM有限責任事業組合(現・株式会社FILM)の発足にも参加。月刊HiVi(ステレオサウンド)やホームシアターファイルプラス(音元出版)誌上でも活躍している。

飯塚克味氏

飯塚氏は、'85年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの「最新映画情報 週刊Hollywood Express」(毎週土曜日放送)の演出を担当。

ホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。「週刊SPA!」ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は「DVD&動画配信でーた」に毎月執筆している。

DTSの魅力が味わえるシーンとして、飯塚さんは以下をセレクト。

  • 「ヒックとドラゴン」4K UHD BD(DTS:X)
     チャプター9「ヒックとトゥースの訓練飛行シーン」
  • 「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」4K UHD(DTS:X)
     チャプター9 バイクでの逃走から飛行機離陸まで
  • 「スリーピー・ホロウ」4K UHD(5.1ch DTS-HD Master Audio)
     チャプター1 首なし騎士の馬車襲撃

「ヒックとトゥースの訓練飛行シーン」は、岩の間を猛スピードで飛行する爽快感のあるシーン。JBL「BAR1000」で聴くと、リアルなワイヤレス・リアスピーカーが存在するため、「シュン!!」と通過した岩場が後方へと凄いスピードで飛び去っていく様子がよくわかり、サウンドバーの域を超えた移動感が楽しめる。

「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」の、恐竜からバイクから逃げるシーンでも、エンジンやドスドスという足音が縦横無尽に動き、チェイスシーンの迫力が味わえる。同時に、そんな迫力あるシーンの中でも、恐竜の足が、道路を蹴る時に爪が当たる「チャッチャ」という細かな音も聴き取れ、微細な描写も巧みだ。

「スリーピー・ホロウ」をAMBEO Soundbar | Plusで聴くと、こちらは音像や、1つ1つの音が非常にシャープで、Hi-Fiライクなサウンド。首なし騎士の馬車襲撃シーンに漂う、凛とした緊迫感が伝わってきて、高級サウンドバーならではの描写力だ。

伊尾喜さんがセレクトしたのは、以下の作品。

  • 「ルパンの娘劇場版」(5.1ch DTS-HD Master Audio)
     チャプター1 タイムトラベルするシーン
  • 「バスカヴィル家の犬」(5.1ch DTS-HD Master Audio)
     チャプター1 冒頭2分
  • 「すずめの戸締まり」(5.1ch DTS-HD Master Audio)
     チャプター4 「初めての戸締まり」9分10秒~タイトル出るまで

「ルパンの娘劇場版」のタイムトラベルでは、タイムトラベルするシーンでは、バブリーな頃のジュリアナ東京へと到着。にぎやかなダンスサウンドにサラウンドで包まれるほか、何故かタイムマシンが小さくなってしまい、虫のように叩き落されて道路へと落下。行き交う人が、巨人に見える状態になってしまうが、JBL BAR1000で聴くと、ワイヤレスサブウーファーの低音がズシンズシンと深く沈むため、近くを行き交う人間の“巨大さ”が音だけでしっかり伝わってくる。

「バスカヴィル家の犬」の冒頭は、誘拐の脅迫文を作るため、新聞などの文字をハサミで切り抜くシーンからスタートするのだが、音がクリアで微細なAMBEO Soundbar | Plusで再生すると、「シャキン、シャキン」というハサミの鋭い音がリアル過ぎて、思わず肩がすくんでしまう。

「すずめの戸締まり」チャプター4では、時緊急地震速報のアラームが鳴り、鈴芽が街の異変に気付き、“初めての戸締まり”に奮闘する。AMBERO Soundbar | Plusで聴くと、シーンの緊迫感が生々しく伝わってきて、画面に吸い寄せられる。暴走するミミズの恐ろしさも、サウンドバーであれば肉厚なサウンドとして描写できるため、テレビ内蔵スピーカーでは感じにくい“怖さ”をしっかり表現できている。

飯塚さんは、体験したサウンドについて「正直サウンドバーをなめていました。昔、サウンドバーを聴いた時は、“軽い音”という印象しかなく、“サウンドバーはそういうものだ”と思い込んでいました。しかし、(今回の2機種を聴いて)ここまでの表現ができるのかと驚いた。ここからホームシアター趣味をスタートできる今のAVファンが正直うらやましいです。最近、家を出た娘が、“家のテレビの音がイマイチ”と不満を言っているので、どちらかを使わせたいですね」と笑う。

伊尾喜さんも、「最初はサウンドバーではなく、この部屋に置いてある大きなスピーカーが鳴っているのかと勘違いしました。サウンドバーでこの音が出るなんて、今まで自分は(ホームシアターに)幾ら投入したのかを考えるとショッキングでした。リビングにこれがあるだけで本格的なシアターになるのは凄いですね」と驚いた様子。

伊尾喜さんは、拡大する映像配信については「どんどん画質は向上していますが、DTSが無いので音が細いんですよね、重心が軽く感じてしまいます」と指摘。

自身もパッケージソフトを手掛ける立場から、伊尾喜さんは「一切の制約から解き放たれた状態で、高レート・高画質で、マスターにより近い画質・音質で収録できる。それがディスクの魅力」と説明。

さらに、パッケージ特典やケース自体といった付加価値にもこだるほか、音声やチャプターを選ぶソフトのメニュー画面も、作品の世界観に沿ったものにする事で、「映画の本編だけを観るのではなく、世界観を楽しむパッケージにしたい」という想いで、現在もソフトを手掛けているそうだ。

山崎健太郎