トピック

手が届く究極デスクトップスピーカー、KEF「LSX II LT」の音とコスパが凄い

KEF「LSX II LT」

今、デスクトップオーディオが熱い。音楽・映像配信やYouTube視聴、ゲームプレイ時間の増加など、PCデスクの前にいる時間が増えたことで「デスクトップでも良い音を楽しみたい」という人が増えている。そんな中、ついに究極とも言えるデスクトップスピーカーが登場した。KEFの「LSX II LT(エルエスエックス・ツー・エルティ)」だ。

AV Watch読者なら、「あれ、このスピーカー見たことあるぞ?」と思うかもしれない。その通り、KEFの人気スピーカー「LSX II」とソックリ。なんと、LSX II LTは、LSX IIから一部機能を省いて、価格を抑えたモデルなのだ。

既存のLSX II
価格を抑えたLSX II LT

既存のLSX IIは、机に設置しやすいコンパクトなボディに、USB DACや光/同軸デジタル入力、果てはHDMI(ARC)端子まで備え、単体でAmazon Musicなどの配信サービスから音楽再生ができ、Bluetoothスピーカーにもなる多機能ぶり。ある意味最強のデスクトップスピーカーだが、価格もペア231,000円と、PC用スピーカーと考えると気軽に手が出なかった。

しかし、LSX II LTはペアでなんと137,500円と、約10万円もプライスダウン。「あの最強デスクトップスピーカーに手が届く」わけだ。これは聴かないわけにはいかない。さっそくお借りして、デスクトップに設置してみた。

LSX IIとLSX II LTは何が違うのか

興奮して、LSX IIを知っている事を前提にスタートしてしまったが、LSX IIと比べて、LSX II LTで省略・変更された主なポイントは以下の通り。詳しく見ていこう。

  • アナログ3.5mm AUXを省略
  • 左右スピーカー間のワイヤレス接続を省略
  • 左右スピーカー間がUSB-C接続のみに変更(LSX IIはEthernet接続)
  • 電源はプライマリーのみに内蔵(LSX IIは左右に内蔵)
  • 筐体仕上げに違い(LSX IIは周囲がファブリック仕上げ)
  • 手に届きやすい価格に(LSX IIペア231,000円/LSX II LT 137,500円)

そもそも、机の上に設置するアクティブスピーカーには大きく3つの種類がある。

1つは、とにかくコンパクトで数千円台からあるいわゆる“PCスピーカー”。もう1つは、DTMなど音楽制作のツールとして活用されるプロ向けの“モニタースピーカー”。最後の1つが、オーディオメーカーが、オーディオ用ブックシェルフスピーカーの派生型としてアンプを内蔵した“オーディオ用アクティブスピーカー”だ。

PCスピーカーは、リーズナブルではあるが、音質や質感、デザインなど、趣味の製品としては魅力が少ない製品も多い。モニタースピーカーは機種にもよるが、左右個別に電源ケーブルが必要だったり、音量調整ツマミが背面にあるなど、カジュアルな用途には使いにくい事もある。

そこで存在感を発揮するのが、オーディオメーカーが作ったアクティブスピーカーだ。

KEFは“ガチ”なオーディオメーカーだ。1961年、英国の公共放送BBCで電気技師をやっていたレイモンド・クック氏が、「自然な音を再現できるスピーカーを作りたい」という情熱から、Kent Engineering and Foundryという金属・鋳物工業の片隅で、スピーカー作りを開始した。

レイモンド・クック氏

その後、BBCの厳しい要求を満たすスピーカーを次々と開発し、モニタースピーカーのメーカーとして高い評価を獲得。その後、コンシューマー向けにもスピーカーを開発するようになり、1988年にはオーディオファンに大きなインパクトを与えた同軸ドライバー「Uni-Q」を開発。

ツイーターとウーファーという2つのユニットを、前後位置も含め同軸上に配置すること事で、スピーカーの理想である“点音源”を追求したUni-Qは、現在に至るまで、KEFスピーカーの“顔”と言っていい技術になっている。

同軸ドライバー「Uni-Q」

その証拠に、KEFのHi-Fi用ハイエンドモデルで、なんとペアで2,310万円もする「MUON」という超弩級スピーカーの真ん中にもUni-Qドライバーが搭載されている。

ペアで2,310万円もする「MUON」
「MUON」の真ん中にもUni-Qドライバーが

そんな、ガチなオーディオメーカーのKEFが、オーディオマニアだけでなく、幅広い人達に、気軽に良い音を楽しんで欲しいと作ったのがLSX II。それをさらに身近にするのが、LSX II LTというわけだ。

気になるLSX IIとLSX II LTの違いだが、実はスピーカーとしての仕様はほぼ変わらない。本体のサイズ感や形状はもちろんだが、どちらもフロントバッフルの中央に「11世代Uni-Qドライバー」を搭載している。

LSX II LT。中央にあるのが11世代Uni-Qドライバー

一見すると1つのユニットに見えるが、よく見ると中央の光沢のある部分と、その周りのグレーっぽい部分で分割されているのがわかる。中央の光沢のあるパーツは、放出された音の指向性を制御するためのタンジェリン・ウェーブガイドと呼ばれるパーツで、その奥に丸いドーム型のユニットが見える。これが19mmアルミニウムドームツイーターだ。

中心部分にあるのがタンジェリン・ウェーブガイドで、その奥に19mmアルミニウムドームツイーターがある

そして、中央部の周囲にある、放射状に突起が設けられたリング状の振動板が、115mmマグネシウム/アルミニウム合金製ウーファー。ツイーターとウーファーが、ほぼ切れ目なく、カッチリと組み合わさっている。これが同軸2ウェイユニットの特徴。スピーカーの理想とされる“点音源”(1点から音が放出する)を、実際にカタチにしたユニットというわけだ。

外周の白い部分が115mmマグネシウム/アルミニウム合金製ウーファー
黒い部分は、回折効果を抑制し整流効果を高める独自技術“Z-Flexエッジ”だ

エンクロージャーのサイズはほぼ同じなのだが、仕上げが異なる。LSX IIは側面や天面など、フロントバッフルと背面以外がデンマーク Kvadrad製テキスタイルに覆われていたが、LSX II LTはフロント・背面と同じ仕上げになっている。

LSX IIはフロントバッフルと背面以外がデンマークKvadrad製テキスタイルに覆われていた
LSX II LTはフロント・背面と同じ仕上げ

優しい雰囲気のデザインなのは、どちらのモデルも同じだが、Kvadrad製テキスタイルの分だけLSX IIの方が、よりソフトな印象だ。

そしてデスクトップスピーカーとして一番大事なのが、サイズの小ささ。外形寸法が155×180×240mm(幅×奥行き×高さ)で、特に素晴らしいのが180mmという“奥行きの短さ”。海外のブックシェルフスピーカーは「ブックシェルフと言いつ本棚から飛び出ちゃうでしょ」とツッコミたくなるサイズのものが多いが、LSX II LTであれば「机の上にあまりスペースが無い」「机に奥行きが無いの置けない」という人も置ける確率が高い。

機能面の違いは、プライマリスピーカーの背面を見ると良くわかる。以下に、背面写真と、そこにある端子を書き出してみる。

LSX IIの背面
LSX II LTの背面
  • LSX II:光デジタル入力、USB-C入力(USB-DAC)、アナログAUX入力、サブウーファー出力、HDMI(ARC)、セカンダリー接続用RJ45端子、LAN端子
  • LSX II LT:光デジタル入力、USB-C入力(USB-DAC)、サブウーファー出力、HDMI(ARC)、LAN端子、セカンダリー接続用USB-C、LAN端子

見比べると、LSX II LTではアナログAUX入力が省かれている。ただ、パソコンとはUSB接続すれば良いので、それほどのマイナスではないだろう。

注目点は、もう片方のセカンダリースピーカーと有線接続する時の端子が、LSX IIはRJ45端子で、LSX II LTはUSB-Cになっていること。

オーディオに詳しい人ならピンと来るだろう。LSX IIは、プライマリとセカンダリの両方のスピーカーに電源が入っているのだが、LSX II LTはプライマリ側にだけ電源が入っており、プライマリからセカンダリへと、USB-Cケーブルを使って、音楽信号だけでなく、電源も供給しているわけだ。なお、アンプはLSX IIとLSX II LTのどちらもプライマリ、セカンダリの両方に搭載している。

電源がプライマリ側にしかないのはコストダウンではあるが、利便性から見ると良いこともある。セカンダリ側のスピーカーに、電源ケーブルを接続しなくて済むのだ。配線を増やしたくない人には魅力だろう。

LSX II LTセカンダリの背面。USB-C入力しかなく、電源コネクタすらない

ただ、LSX IIには“左右スピーカーの両方に電源を搭載している利点”もある。LSX IIは、左右スピーカー間の接続が、ワイヤレスでも可能なのだ。背面には左右のワイヤレス接続用のボタンも搭載している。つまり、LSX IIでは左右のスピーカーに電源ケーブル接続は必要だが、左右間の接続ケーブルは不要になるわけだ。

左右間をワイヤレスで接続できる利点は、デスクトップ設置以外で活きる。例えば、大画面テレビの左右にLSX IIを設置した際に、長いケーブルで左右を接続しなくて済む。広いリビングの、好きなところに左右スピーカーを離して設置し、ケーブルの存在を意識させず、部屋全体を満たすように再生したい……なんて時は、LSX IIの方が便利だ。

逆に言えば、デスクトップ設置くらいの間隔であれば、LSX II LTで問題はない。デスクトップに向いた機能を残し、より手に届きやすい価格にした……という意味で、LSX II LTは究極のデスクトップスピーカーと言っていいかもしれない。

なお、標準で付属する左右間の接続ケーブル「C-Linkスピーカー間ケーブル」は3mだが、2月末には8mのモデルもオプションとして8,800円で発売される。デスクトップだけでなく、広い部屋でLSX II LTを離して設置したいという場合は、このケーブルを買うと良いだろう。

PCスピーカーとして使ってみる

パソコンと組み合わせたところ

前置きが長くなったが、音を聴いてみよう。

まずはPCスピーカーとして使ってみる。Windows PCとUSB-C接続し、Amazon Music HDのアプリを使い、排他モードでハイレゾ楽曲を中心に再生する。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、目の前のディスプレイのちょっと奥に、ダイアナ・クラールの顔がポッカリと浮かび、その口が動いて歌い出す。左右に置いてあるスピーカーから音が出ているはずだが、そうは聴こえず、まるで机の上にステージが出現し、そこに歌手が浮かび上がっているようだ。この豊かな音場は、いわゆる“PCスピーカー”のクオリティではなく、完全にピュアオーディオの世界だ。

ディスプレイのすぐ裏に壁があるにも関わらず、音場はその壁よりも奥に広がって聴こえる事。まるで壁が遠くなったような、机の上が広くなったような感覚だ。

広いだけでなく、そこに定位する歌手や楽器の音像もリアルだ。「そこにダイアナ・クラールがいる」という間隔を超えて、「口が動いている」という気配のようなものまで感じて、その生々しさにドキッとする。この実在感が、音楽をより魅力的に聴かせてくれる。

こうした音場の広さ、音像定位のシャープさは、コンパクトなブックシェルフスピーカーならではの利点だが、LSX II LTの場合はさらにUni-Qの点音源なので、その利点が強化されている印象だ。

エンクロージャーの形状にも秘密がある。前述のように、フロントバッフルが外側に向かって“反った”ような形状になっているほか、角もなだらかにラウンド加工されている。ユニットから放出した音が、バッフルなどのエンクロージャ自身に反射し、音を濁す回折を抑えるための工夫だ。

さらに、エンクロージャの剛性の高さも効いている。側面を指で叩くと「コツコツ」と小さな硬い音がするだけで、「ボコボコ」というような筐体内で反響している音や、筐体自体が振動して鳴ってしまう付帯音が感じられない。Uni-Qから出力された音に、色付けをせず、そのままユーザーに届けようという思想が伝わる作りだ。

横から見るとわかるが、フロントバッフルは中央部分が前に出ていて、上下は引っ込んでいる
角はラウンド加工されている

このような工夫のおかげで、「手嶌葵/明日への手紙」のような、女性ボーカルとピアノ伴奏をメインとしたシンプルな楽曲を再生すると、歌声やピアノの響きが、奥の空間へ波紋のように広がっていく様子が見えるだけでなく、上空にも高音がスーッと立ち昇っていく。聴いていてうっとりしてしまう。

聴いた感想をパソコンでメモりながら聴いているのだが、気持ち良すぎて椅子に深く背中を預け、音楽に没頭してしまい、パソコン作業が手につかなくなる。

そこでふと、気がつく事がある。

背もたれを倒してリクライニング姿勢で聴く、背筋をピンと伸ばして聴く、前のめりでキーボードを叩きながら聴く……という姿勢変化を繰り返しても、“耳に入る音のバランスがほとんど変わらない”のだ。

同軸ではない2ウェイブックシェルフスピーカーを机に設置すると、一般的にはツイーターが上、ウーファーが下についているので、前のめりで聴くとツイーターの音が過多になったり、逆に、あまりにリクライニングしすぎるとウーファーの音が多く耳に入ったりと、バランスの変化を感じる事があった。

しかし、同軸2ウェイのLSX II LTであれば、そうした変化は無い。Uni-Qドライバーと、デスクトップ設置の相性の良さを再確認した。

魅力は音場と定位、ヌケの良さだけではない。低音も迫力がある。

「米津玄師/KICK BACK」を再生すると、広い音場にエレキギターが乱舞するのだが、その下からグオッとベースが肉厚に張り出してくる。単に膨らんだ低域ではなく、タイトな締まりの良さも兼ね備えているため、ベースラインがクッキリと聴き取れて気持ちが良い。低域の量感にも、しっかりと“重さ”があり、肺や胃を圧迫されるような音圧の豊かさもある。

この本格的な低域は、安価なPCスピーカーではなかなか味わえない世界。本格的なオーディオスピーカーを手に入れた喜びを実感する瞬間だ。

普通、このくらいパワフルな低音を出すと、スピーカーを設置している机にも振動が伝わり、机が鳴ってしまうものだが、机に手を置いても振動が伝わっていない。LSX II LTをひっくり返すと、振動対策のゴム足がしっかり取り付けられていた。

なお、底面の中央にはネジ穴もあり、スタンドへの固定も可能だ。LSX II LT用に「P1 Desk Pad」(ペア16,500円)というデスクスタンドも用意されており、これを使うと、LSX II LTを少し上向きで固定できる。デスクトップメインで使う場合は、こうしたスタンドと組み合わせるのもアリだ。

底面の中央にはネジ穴もある
「P1 Desk Pad」
P1 Desk Padに設置したところ

他にも別売アクセサリーとして、「S1スタンド」でフロア置きができるほか、左右のスピーカー間をより広く設置するための「USB Type-Cリンクケーブル 8m」も用意している。

S1スタンドに設置したところ

EQでさらに高みを目指す

これだけ本格的な音が出るので、PCで映像配信を楽しむ時も活躍する。Netflixで「トップガン マーヴェリック」から、ダークスターでマッハ10を狙うシーンを再生すると、重厚なBGMをしっかりと重い低音で再生してくれるので、離陸に向けて高揚感が高まる。

そしてダークスターのエンジンが轟音を出すと、お腹にビリビリと低音が響き「おお! これが映画だよ!」とテンションが上がる。ショボい音だと、映画を観ても「ストーリーを把握する作業」のようになってしまうものだが、LSX II LTで再生すると、2chでも広い音場に包まれ、体で低音を浴びる事で「映画の中に自分も入っている」ような没入感が得られ、映画そのものがグッと面白くなる。

このダークスター離陸シーンでは、地上を離れる瞬間に膨大な砂を巻き上げ、それが周囲に散らばる「サァーッ」という細かな音まで収録されている。LSX II LTでもその音は確認できるが、ちょっとパワフルな中低域に押されて、聞き取りにくくなっている。

そこで、タブレットに制御用アプリ「KEF Connect」をインストール。このアプリを使うと、リモコンとしてKEF Connectを操作したり、音楽配信サービスからの再生を制御することなどが可能だが、イコライザーも備えているのだ。

KEF Connect

アプリの「EQ」アイコンをタップすると、デフォルト設定になっていたので、「デスクトップ」に変更。「デスクモード」、「ウォールモード」、「トレブル調整」を少しいじると、中低域の主張が少し弱まり、高域が聴き取りやすくなった。

EQ設定

LSX II LTのように背面にバスレフポートがあるスピーカーの場合、背後の壁に近づけると、低域が増強され、離すと逆に減る。こうしたセッティングで音を調整する方法もあるが、設置場所が限られるデスクトップでは、スピーカーを前に出したくても出せない事がある。そうした時には、このイコライザーを積極的に利用すると良いだろう。

LSX II LT背面のバスレフポート

調整してからダークスター離陸シーンを再生すると、BGMやエンジン音の迫力は維持したまま、見事に砂が「サァーッ」っと周囲に舞い散る細かな音まで聴き取れるようになった。

狙った通りの音が出ると気持ちが良いし、アプリで音が細かく調整できるのは純粋に面白い。それでは、スピーカーの間隔を離したり、角度を変えてみたら音はさらに変わるのか? など、やりたい事も増えてくる。オーディオが楽しくなる瞬間だ。

使い勝手も良好。リモコンが付属しているので、ボリューム調整やソースの切り替えなどが直感的にできる。後述するスマホ/タブレットアプリでも操作はできるのだが、やはり、専用リモコンの方が利便性は高い。ソースを切り替えると、前面の丸いインジケーターが、Bluetoothであれば青、USB DACであればピンクといった具合に変化するので、音が出ない時も「ソース選択が間違っているんだな」など、状態が把握しやすい。

付属のリモコン
インジケーターの光でソース選択がわかる

HDMI(ARC)でテレビスピーカー。音楽配信でよりピュアなオーディオ世界へ

PCデスクだけでは飽き足らず、壁寄せスタンドに設置している大画面テレビとも組み合わせてみた。スタンドの棚はそれほどスペースは広くないが、LSX II LTであれば設置可能だ。LSX II LTは前述の通り、HDMI ARCに対応しているので、テレビ側のHDMI ARC端子と、HDMIケーブル1本で接続するだけだ。

テレビと組み合わせてみた
テレビからはHDMI(ARC)デバイスと認識されている

テレビ番組の音も激変する。例えば、芸能人がクイズに答えるバラエティ番組を、テレビ内蔵スピーカーで鑑賞していると、音やBGMはまったく意識に入らない。しかし、LSX II LTで再生すると、出題時の「ジャジャン!」という効果音や、正解した時の「ピポピポーン!」、拍手のSEなどが、メチャクチャ高解像度に、パワフルに再生されるので、ちょっとドキッとして画面に注目してしまう。

登山の楽しみを紹介する番組では、空撮が使われていたのだが、BGMが雄大に、テレビ画面を超えた広さで展開。映像と融合して、自分も空を飛んでいるかのように気持ちが良い。今までテレビ番組のBGMなど、気にした事はなかったのに、「これ、なんていう曲だろう?」と、興味が出てスマホで調べてしまった。

ゲームでもこのサウンドは活きる。Nintendo Switchで「スプラトゥーン3」をプレイしてみたが、インクの中をイカになって移動する時の「スゥー」という小さな音が、ハッキリとクリアに耳に入って来て驚く。

敵もインクの中に潜んでいるゲームなのだが、コポコポという潜伏音も細かく描写しているため、「あ、近くに敵が潜んでいるぞ!」というのが事前に把握できす。このサウンドならば、ゲームを有利に進められそうだ。

Bluetooth接続でスマホから音楽を再生

ここまではPCやテレビと接続して使ってみたが、LSX II LTは単体でも音楽配信サービスから再生ができたり、Bluetooth/AirPlay 2、Google Chromecast対応スピーカーとしても使える。やり方は簡単で、アプリ「KEF Connect」の画面から、配信サービスにログインし、プレイリストや検索などから目的の音楽を選ぶだけ。すると、LSX II LTから音楽が流れ出す。UPnP対応のNASなどに保存したハイレゾファイルなども再生可能だ。

サービスは現時点で、Amazon Music、Deezer、Spotify、TIDAL(日本未サービス)、Qobuz(日本未サービス)に対応。もちろん、AirPlay2を使用してApple Musicや各種対応アプリも再生可能。インターネットラジオやポッドキャストも再生できる。

アプリ「KEF Connect」
対応音楽配信サービス

PCを使わず、LSX II LT単体でAmazon Musicから音楽を聴いていると、よりピュアオーディオを楽しんでいる気分になる。

大きな理由は、PCを起動していないため、PCのファンノイズやHDDのカリカリ音などが耳に入らず、本当に静かな環境で、じっくりと音楽と向き合えるためだ。空間が静かだと、その無音の中から、スッと音楽がスタートする瞬間や、音場の広さなどが、よりハッキリ知覚できる。

また、精神的にもPCという邪魔が入らないので、「今から1時間は、音楽だけをじっくり聴くオーディオの時間だぞ」という気持ちになる。こういうのは趣味の時間っぽくて、ちょっとワクワクする。

左からGraphite Grey、Stone White

デザインも良い。

カラーはGraphite Grey、Stone White、Sage Greenの3色あり、今回はGraphite GreyとStone Whiteをお借りした。設置する前は「パソコンまわりだからGraphite Greyがマッチするのでは?」と思っていた。確かに、キーボードやマウスは黒いので、Graphite Greyがマッチするし、もっとゲーミング系ギアを揃えた部屋の場合は、Graphite Greyがピッタリだろう。

カラーはGraphite Grey、Stone White、Sage Greenの3色

しかし、Stone Whiteを設置すると、これもまた良いのだ。壁が白いからというのもあるが、スピーカーの存在感が適度に薄れて、馴染みが良い。ではまったく目立たないかというとそうではなく、Uni-Qドライバーの存在感によって、「いい感じのスピーカーが置いてある」という主張はできている。この控えめに主張する感じが、大人っぽい。雰囲気のあるデスクトップまわりにしたい人には、Stone Whiteもオススメ。音質だけでなく、デザイン面からも興味を惹かれる人は多いだろう。

Sage Greenで個性を出すのもアリだ

デスクトップオーディオでは、音の良さはもちろんだが、操作性や省スペースであること、さらには“手の届く価格であること”も1つの性能として評価するべきだ。そう考えると、ペア137,500円で、このサウンドと機能を実現したLSX II LTは、究極のデスクトップスピーカーと言っても過言ではない。

「PCスピーカーとしてはまだ高い」と感じる人もいると思う。確かにそうなのだが、数十万円が当たり前のガチなオーディオメーカーのブックシェルフスピーカーに、アンプと、ネットワークプレーヤーと、HDMI(ARC)まで詰め込んでいると考えると、印象も変わってくるはずだ。

そもそも、「オーディオ趣味を始めたい」と、単品でスピーカー、アンプ、ネットワークプレーヤーを買おうとしたら、とてもじゃないが137,500円では収まらない。しかもLSX II LTであれば、大きなアンプやネットワークプレーヤーを置かず、シンプルかつミニマムなスピーカーだけで本格的なサウンドが楽しめる。気軽かつディープにオーディオ趣味をスタートできる、非常に強力な製品と言えるだろう。

山崎健太郎