ミニレビュー

iPhone直結で96kHz/24bitハイレゾ対応。進化した「Sound Blaster E5」を試す

 クリエイティブメディアのポータブルヘッドフォンアンプ「Sound Blaster E5」が、5月のアップデートで、iPhone接続時の96kHz/24bitハイレゾ再生に対応した。

iPhone直結でハイレゾ対応した「Sound Blaster E5」

 Sound Blaster E5は仕様上192kHz/24bitまでのハイレゾ再生に対応しているが、192kHz/24bitで再生できるのはPC/MacとUSB接続し、DACとして使った場合のみ。これまで、iPhoneと接続して再生した場合は48kHz/24bitでの再生に制限されていた。それがiPhoneでも96kHz/24bitでのハイレゾ再生が可能になったわけだ。

 また、新たにE5側のmicroUSBを使った「非充電モード」が追加された。

 このように、携帯端末と接続した際の音質と電源周りの挙動が改善されており、今回はこのアップデート内容を中心に紹介していく。なお、本機の全体的な使用感については前回のレビューを参照されたい。

Sound Blaster E5。直販価格は22,800円

アップデートで強化されたポタアンとしての実力

 Sound Blaster E5は、前面に2つのヘッドフォン出力とボリュームダイヤルを装備。背面にiPhoneやAndroid接続用のUSB Host(A端子)、PCやMac接続用のmicroUSB、ライン/光デジタル/マイク入力(共有)とライン/光デジタル出力(共有)となっている。

前面に大きなボリューム用ツマミと、2つのヘッドフォン出力を備える
背面にはライン/光/マイク入出力とUSB HostとUSB micro端子を備えている
ハイレゾ再生のためにSound Blaster Centralでハイレゾ再生を[有効]にする

 さっそく、iPhone 6とE5を接続して96kHz/24bit再生を試してみた。PCにiPhoneを接続し、iTunesでハイレゾ音源対応アプリの「ONKYO HF Player」を立ち上げ、ハイレゾ音源を転送/同期を行なう。なお、HF Playerでハイレゾ機能を使うためには1,000円のアプリ内課金が必要となる。

 あとは、LightningケーブルでE5のUSBホストコネクタとiPhoneを接続し、[ハイレゾモード]設定を行なえば準備完了だ。ハイレゾモードとは、E5でハイレゾ出力する場合に必要な設定で、iOSの「Sound Blaster Central」アプリで、ハイレゾモードをONにしておく必要がある。

E5とiPhoneを繋いだところ。LightningコネクタからUSBホストに直接繋いでいる
iOS版HF Playerの再生画面。96kHz/24bit音源がそのまま再生できた

 実際にハイレゾ音源を選んで再生したところ、問題なく96kHz/24bitで再生できた。今回は試聴音源としてManhattan Jazz Quintetの「Moanin'」(96kHz/24bit)を用意。ピアノ、トランペット、サックス、ベース、ドラムの各パートの音がしっかり別の楽器として個々に主張しつつも豊かな音の拡がりが感じられ、音源の魅力をフルに満喫できた。試聴にはゼンハイザーのHD650を使用したのだが、インピーダンスの高い(300Ω)機種にもかかわらず、きっちり鳴らしきってくれた。これは端末に直接ヘッドフォンを挿して聴いた時とは明確に差のある、ポタアンならではの体験といえるだろう。

 前回の記事にも記述している通り、従来は48kHz/24bitまでの対応にとどまっていて、物足りなさがあったのは確かだ。E5は2014年11月発売なので発売から半年以上経過しているが、ここにきてハイレゾ対応にアップデートが入ったのは嬉しい。その魅力は間違いなく高まったといえる。

 持ち運びするサイズとしてはやや大きめだが、iPhone 6と組み合わせるとそれほど大きさは感じない。実売価格は、DACとしても使えるハイレゾ対応ポータブルアンプとしては比較的安価な2万円前後。外出先でもこのクオリティでオーディオを楽しめるのは素晴らしい。

持ち運ぶ時はE5付属のシリコンバンドを使ってもいい

Lightning - USBカメラアダプタで192kHz/24bit再生する裏技

Lightning-USBカメラアダプタ

 なお、iPhone直結で96kHz/24bit対応は嬉しいが、192kHz/24bitの楽曲は96kHz/24bitにダウンコンバートして出力された。これでも充分にハイレゾは楽しめるとはいえ、192kHz/24bitで出力する方法はないだろうか?

 そこで、USB DACとiOSデバイスを接続するときによく使われるLightning-USBカメラアダプタ(カメラアダプタ)での接続を試してみた。カメラアダプタやCamera Connection Kitを使うことで、iOS側がUSBのホストとして動作し、ハイレゾの出力が可能となるというものだが、クリエイティブとしてはサポート外の接続になるので注意して欲しい。ただし結論からいえば、カメラアダプタ接続で問題なく192kHz/24bit出力できた。

 カメラアダプタ接続時に注意したいのは2点。接続方法と非充電モードの利用だ。

 接続方法は、Lightning接続の時とは異なり、E5のmicroUSB端子を使って、カメラアダプタ経由でiPhoneに接続する。これにより、iPhoneからE5に192kHz/24bitで出力可能になる。

カメラアダプタ経由でE5と接続したところ

 もう一つは非充電モード。カメラアダプタを経由してE5のUSBに接続すると、iPhone側で消費電力が[大きすぎる]と警告されてオーディオ出力できない。しかし、非充電モードに切替てから接続すれば、問題なく再生できるようになる。

 非充電モードへの切り替え方は、側面の電源ボタンを2回短く押すだけ。電源ボタンが点滅し始めれば切り替え成功だ。モード切り替えは、iPhoneへ接続してからだとうまく認識しないことがあるので、iPhoneへの接続前に行なっておく方が無難だ。

側面には電源ボタンとSBXボタンを配置。非充電モードは電源ボタン2回押しで有効になる

 iPhoneとUSBケーブルの間にカメラアダプタをかませるため、Lightningケーブル直結よりは接続も煩雑になるし、カメラアダプタ分のコスト(3,500円)はかかる。ただ、裏技的な面白さもあり、ハードウェア自体は仕様として192kHz/24bitに対応しているので、問題なく鳴っている。192kHz/24bitの音源を多く持っている人は、試してみる価値はある。ただし、前述の通りカメラアダプタ経由での192kHz/24bit音源再生は保証外の動作となる点は充分に留意して欲しい。

カメラアダプタをかませた途端、認識が不安定に。なので、カメラアダプタ接続前に[非充電モード]に切り替えておきたい
192kHz/24bitのソースをそのまま再生できた

 非充電モードは単にiPhoneからE5を認識させるだけでなく、バッテリ寿命という意味でも重要な役割がある。今回の新ファームウェアで、カメラアダプタを使用した場合、非充電モードで接続しないと、iPhone側に[接続したデバイスは消費電力が大きすぎます]というアラートが表示され、iPhoneに接続してもE5経由では再生できない。仮に問題なく認識できたとしても、この接続方法の場合、iPhoneからE5に電力供給を行なうため、バッテリ駆動時間が大幅に短くなってしまう。こうした問題を防ぐのがE5で新設された非充電モードというわけだ。このテクニックは、iPhone以外のデバイスでも有効だ。

 なお、E5の非充電モードはLightningケーブルがiPhoneから抜けてしまうと解除されて設定し直しになる。使用する際には注意したい。

Android端末では96kHz/24bit再生できないの?

Neuxs 5とSound Blaster E5をUSB接続したが、ハイレゾを示す表示は現れず

 Sound Blaster E5の新ファームの特徴は、iPhoneへのLightning直結での96kHz/24bit対応で、Androidデバイスとの接続時はAOA2対応機サポートとなるため、44.1kHz/16bitとなる。実際、普通にUSB接続してみても44.1kHz/16bitで出力される。また、アップデートのニュースリリースでも「iPhone/iPodで96kHz/24bitのハイレゾ再生対応」と明言されており、Androidでは機能追加という記述に留めている。では本当にAndroid端末では96kHz/24bit再生の恩恵は受けられないのだろうか?

 まず、Nexus 5をE5のUSB Host端子に接続して再生してみると、もちろん問題なく音は出力される。ただ、HF Player上のハイレゾを示す表示は現れず。おそらく44.1kHz/16bitで出力されていると思われる。

 だが、最近のAndroidスマートフォンでは、OTG(On The Go)ケーブルを使用してUSBオーディオ対応のUSB DACなどにハイレゾ出力できるものも増えている。要するに、上記のiPhone 6のカメラアダプタ接続と同じように、USB Audio対応の外部機器へのデジタル接続が可能になるわけだ。

 そこで、Nexus 5からUSB OTGケーブルを経由してE5のmicroUSBに接続した。Onkyo HF Player for Androidで有償プラグイン(1,000円)を追加し再生したところ、96kHz/24bitで出力された。

USB OTGケーブル経由でNexus 5をSound Blaster E5を接続
プラグインを購入
HF PlayerにUSBデバイスへのアクセスを許可
設定画面
96kHz/24bitで出力された。なお、192kHz/24bitファイルは96kHzにダウンコンバートされた

 HF Player側の設定は、USBデバイスへのアクセス許可を行ない、出力デバイスとしてSound Blaster E5を選択するだけ。実際に楽曲を再生すると96kHz/24bitのFLAC/WAV楽曲は、96kHz/24bit PCMとして出力されているのが確認できた。ハイレゾ対応のAndroidスマートフォンはあまり多くないが、こうしたスマホであれば、Androidでもハイレゾ出力が可能だ。192kHz楽曲については96KHzで出力された。

 注意点はiPhoneのカメラアダプタ接続と同様に、スマホ接続前に電源ボタンを2度押しして非充電モードにおくこと。非充電モードにしないと、E5側にNexus 5が電源供給してしまい、みるみるNexus 5のバッテリが消耗してしまう。必ず非充電モードにしてから接続したい。

 もっともOTGケーブル接続自体も、メーカーサポート外の使い方ではあるが、Androidでハイレゾ再生のテクニックとして覚えておいて損はないはず。ただ、どの端末でハイレゾ出力しているかがわからなかったり、今回のテストでもUSBケーブルによってはE5を認識してくれないなど、なかなか難しい点もあった。

FPSで特に有効な「Scout Mode」を追加

 ハイレゾ関連以外のアップデートにも触れておきたい。設定用アプリの「Sound Blaster Central」には新たにゲーム向けの「Scout Mode」が追加された。これはゲーム中の環境音を強調して出力するもので、敵の足音や鳴き声を聴いて位置を把握することが重要なFPSなどのジャンルで効果を発揮する。

PCの設定画面
Scout Modeを即座に切り替えるホットキーも設定できる

 実際に一人称視点のホラーゲーム「Outlast」(PC版)で試してみた。Outlastではプレイヤーが武器を持っておらず、いかにうまく敵から逃げるかが攻略のポイントになるため、敵の足音や声を聴くのは非常に重要な要素となる。また、効果音とBGMの音量設定が分離していないので、ゲーム内で環境音を強調することができない。

 そこでScout Modeを試してみた結果、確かに通常よりも足音が聞こえやすくなっており、敵がより遠くにいる段階で存在を察知して身を隠すことができるようになった。プレイし慣れたゲームだが、いつもより音がよく聞こえることで、心なしか緊張感が増した気がした。

 ちなみにこの機能はiOS/AndroidアプリのSound Blaster Centralにも搭載しているが、個人的にはPC用ゲームの方が強く効果を感じられた。このあたりは、老舗のPC向けオーディオデバイスメーカーだけあって、かゆいところに手が届く、こなれたアップデートだと思う。

iOSアプリの設定画面
アプリでは有効/無効だけが設定できるようだ

 また、ファームウェアとアプリのSound Blaster Centralを最新版に更新することで、ミキサー設定にも対応する。これにより、スマホから、Bluetooth入力やマイク入力などのE5の各入力ソースの音量調整や、ミュートのON/OFFなどを個別に設定可能になる。

iPhoneでのポータブルライフをアップグレード

 今回のアップデートの目玉は、やはりハイレゾ対応。特にiPhone直結の96kHz/24bitへの対応だろう。要するに、はっきりと「高音質化した」と言っているわけで、特にiPhone人気の高い日本においては重要なアップデートといえる。

 また、後からソフトウェアのアップデートによって高音質対応ができるというのは、すでにE5を購入しているユーザーにとっても嬉しい。電源周りの挙動に関しても、実際に使って不便に思う点が改善されており、満足度は高まった。

 DACとしてもポタアンとしても使えるだけでなく、ムービーやゲームにも対応できる全部入りの機能性がE5の魅力だったわけだが、今回のアップデートでその長所がより伸長された。手軽にオーディオ環境を強化したい人にとって、Sound Blaster E5の魅力はさらに高まったのは間違いない。

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(協力:クリエイティブメディア)

関根慎一