レビュー

人気ドラマ充実の見放題サービス「Paravi」。使いやすいがピンチョス配信は微妙?

 テレビ番組を見放題で配信する動画配信サービス「Paravi」が4月1日にスタートした。過去に放送されたドラマやバラエティに加え、人気作品の新作や、放送中のテレビ番組と連動した企画も実施。「ピンチョス配信」と名付けられた独自の配信スタイルも展開している。

 NetflixやHulu、Amazon Prime Video、dTVといった定額制の動画配信サービスが乱立する中で、Paraviの魅力はどこにあるのか。1日から開始したサービスを実際に利用した使用感をレポートする。

TBSやテレビ東京、WOWOWの番組が充実した配信サービス

 はじめにParaviの特徴についてまとめておこう。Paraviを運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパン(PPJ)は、TBS、日本経済新聞社、テレビ東京、WOWOW、電通、博報堂DYメディアパートナーズの6社が設立しており、配信作品もTBS、テレビ東京、WOWOWのコンテンツが中心となる。

 料金プランは月額925円の見放題で、今後は都度課金も予定されているが、4月30日まではキャンペーンとしてすべての作品を無料で視聴可能。なお、ユーザー登録にはクレジットカードが必要なため、5月以降利用しない場合は4月30日までの解約手続きが必要となる。

 Paraviの視聴環境はPCがWindows 7 SP1以降、Mac OS X 10.10以降、スマートフォン・タブレットがiOS 10.3以降、Androidが5.0以降。PC視聴はブラウザベースで、Chrome/Firefox/Safari/Microsoft Edge/Internet Explorerをサポート。さらにFire TV/TV Stickを利用したテレビ視聴にも対応し、サービス当初から視聴環境は幅広く対応されている。

会員登録の手順はシンプル。対応端末は幅広く対応

 利用の際にはPCまたはAndroidアプリでの会員登録が必要。登録に必要な情報は名前とメールアドレス、パスワード、性別とお知らせを受け取るチェックボックスに加え、クレジットカード情報の入力が必要。アンケートも任意となっており、入力に必要な情報はさほど多くない。また、TwitterやFacebookのアカウントをログインに利用することも可能だ。

会員登録画面
名前とメールアドレス、パスワード、性別とお知らせのチェックボックスを確認
会員登録完了後に任意のアンケート

 Fire TV/TV Stickでは、Paravi専用アプリが用意されており、ログイン済みのPCまたはスマートフォンからアクティベーションすることで利用可能になる。

Fire TV/TV Stick向けアプリをインストール
ログイン済みのPCまたはスマートフォンからアクティベート
テレビの大画面で視聴が可能になる

 なお、ログイン後のメニューには登録したアカウントを切り替える画面が表示されるが、別のアカウントに切り替える機能は見当たらない。おそらく今後ファミリーアカウントなどの機能が提供されるのだろう。また、レンタル機能(TVOD)も4月中に導入予定だが、4月10日時点では開始されていない。

テレビ番組が充実するもそれ以外のコンテンツは少なめ

 画面の構成は最上部に特集、次に視聴中のコンテンツが表示され、以降は新着コンテンツや人気ランキング、カテゴリなどが縦に並び、横にスクロールすることで他の動画を閲覧できる。最近の動画配信サービスとほぼ同様のシンプルなデザインだ。

PCトップページ
スマートフォントップページ

 WOWOWやテレビ局が運営しているサービスだけあって配信作品はテレビ番組や映画が充実。特に「ドラマのTBS」と名高いTBSが参画しているだけに、TBSのドラマが多くラインアップされている。「逃げるは恥だが役に立つ」「カルテット」といった最近の話題ドラマに加え、2018年1~3月期のドラマとして非常に評判の高かった「アンナチュラル」も視聴可能だ。また、TBSとWOWOWの共同製作による「ダブルフェイス」「MOZU」といった作品も視聴可能だ。

 これから始まる4月ドラマも、TBSやテレビ東京のドラマの多くが入る予定とのことで、ドラマの“見逃し”としては積極的に使えそうだ。ただ、まだ放送が始まっていないドラマが多いので、ドラマの網羅性の評価はもう少し先にならないと難しい。なお、ドラマWなど、WOWOWのオリジナルドラマは、2017年以降のものは入っていない。WOWOWのドラマ見逃しとしては、現状のParaviはまだ弱いといえる。

逃げるは恥だが役に立つ
アンナチュラル
MOZU

 バラエティでは、お笑い番組「あらびき団」や「ゴッドタン」「YOUは何しに日本へ?」といった人気番組がラインアップ。また、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」といったビジネス番組も視聴できるなど、冒頭の通りテレビ番組が非常に充実している。

あらびき団
ワールドビジネスサテライト

 一方で、テレビ番組以外のコンテンツは現状のところお世辞にも充実しているとは言いがたい。映画のカテゴリでは、「洋画(海外映画)」はわずかに3作品で、海外ドラマは全20タイトルのうち過半数を韓国ドラマが占めている状況だ。

「洋画(海外映画)」の配信作品
海外ドラマの配信作品

 ドラマ・バラエティは強いが、映画にはそれほど力を入れていない、というのがParaviのコンテンツの現状だ。また、TBSラジオの「マイナビLaughter Night」と「永六輔その新世界」、ラジオNIKKEIの「ラジオiNEWS」などのラジオ番組もParavi上で配信開始している。

普通に使いやすい操作画面。再生はストリーミングのみ

 視聴は番組のエピソード単位で再生でき、一時停止のほか10秒スキップ/戻し、シークバーを利用した再生位置指定といった操作が可能。Fire TV/TV Stickにはシークバーがないが、早送り/戻しボタンで10秒スキップ/戻しが可能なほか、長押しすることで早送り/早戻しできる。

PCの再生画面

 基本的な操作は端末共通だが、画質についてはPCやFire TV/TV Stickの場合が自動選択のみなのに対し、スマートフォンでは「自動」「高画質」「標準」「さくさく」から選択可能。また、iOSでの再生時のみ、動画の再生スピードを「1.0倍速」「1.3倍速」「1.5倍速」「2.0倍速」の4つから選択できるという細かな違いがある。

iOSのみ再生スピードの選択も可能

 マルチデバイスに対応しており、再生位置も記憶されるため、他の端末で視聴した番組の続きを別の端末で視聴できる。同時に視聴できるのは1端末のみで、他の端末で再生を試みると、再生できない旨が表示されるが、視聴中の端末を終了すればすぐに他の端末で再生可能になる。なお、コンテンツのダウンロードには対応しておらず、視聴はストリーミングのみとなる。

他の端末で視聴しているとエラーが表示される

 視聴した感想は良くも悪くも「普通」。Paraviならではの独自な機能があるわけではないが、視聴していて不満に感じる面もない。画面も縦にカテゴリ、横に作品というオーソドックスなUIのため戸惑うことなく視聴でき、対応端末も幅広いが、サービス面においてParaviならではという要素はあまり感じられない。

 配信コンテンツの面では、TBSやテレ東のドラマに強いが、他の配信サービスで提供されているものも多い。ポイントはやはりオリジナルコンテンツのラインアップとなるだろう。

「ピンチョス配信」は没頭型作品との相性は今ひとつ?

 Paraviの独自コンテンツとしては、人気ドラマ「SPEC」シリーズの続編となる「SICK'S 恕乃抄」を「ピンチョス配信」という独自の形式で配信。これは小さなパンにさまざまな料理を乗せて1口で食べられるスペイン料理のピンチョスになぞらえたもの。1~2分程度で完結するエピソードを毎日配信し、1カ月で1話が完結。月末には1話の完全パッケージが配信されるほか、1週間単位でのまとめ配信も行なわれている。

SICK'S 恕乃抄

 また、テレビ東京との連動コンテンツとして、毎週平日17時30分から放送される「青春高校3年C組」をParaviでも同時に配信するほか、Paravi限定でライブ配信後の「放課後トーク」が用意されている。さらにお笑い番組「あらびき団」の最新作として全13回に渡る「パラビき!パラビき!あらびき団 ?四天王編?」も配信開始された。

 実際にピンチョス配信された「SICK'S 恕乃抄」を連続で視聴。冒頭から謎で始まるエピソード、SPECホルダーと呼ばれる超能力者の対決シーンはシリーズのファンには非常に興味深い一方で、1~2分で終わる1エピソードはやはり短すぎる。エピソードの冒頭が、前エピソードの紹介を含むため、連続だと同じシーンを何度も見ることになるだけでなく、連続再生のたびにエピソードの紹介画面と毎回Paraviのロゴが挿入されるため、作品に入り込めず気がそがれてしまう。

 おそらくピンチョス配信は連続ではなく毎日1エピソードずつ見て欲しい、という狙いなのだろうが、1エピソードごと見たとしてもストーリーが細切れになってしまってはなかなか話が頭に残らない。配信の仕組み自体はとても面白いのだが、超常的な世界観に没入するSPECシリーズの視聴スタイルとしてはあまり適していないように感じた。あらびき団新作を、1芸人ごと毎日配信するほうが相性がいいのではないだろうか。

 なお、Netflixには連続再生の場合、エピソードの最後と最初をカットして連続再生するという機能が提供されている。オープニングやエンディングを楽しみにしている場合には興ざめしかねない機能だが、ピンチョス配信時は連続再生時のみロゴを非表示にするなどの機能があれば、もう少し集中してみられるかもしれない。

テレビ番組好きにはお勧めのサービス。完全新作の充実にも期待

 テレビ局が主導するサービスということで、過去の事例から使い勝手に課題がありそうという先入観があったが、Paraviはユーザー登録から実際の視聴まで、しっかりサービス構築されており、大きな不満はない。「普通に見られる」サービスだ。やや古めのOSやブラウザも幅広くサポートしており、視聴に対してのハードルも低い。

 ただし、サービスの使い勝手という点では、群雄割拠とも言える映像配信サービスのラインアップにおいてスタート地点に立ったに過ぎない。差別化要因と言えるコンテンツについてはいまのところ「SICK'S 恕乃抄」と「あらびき団」新作程度だが、どちらもドラマやバラエティでは絶大な人気を誇る作品だけに注目は高い。こうした作品を今後も提供し続けられるかが鍵となりそうだ。

 また、他のサービスで同じコンテンツが配信されていたとしても、自分の見たい作品が1カ所に集まっているのであれば加入する意義は大きい。国内ドラマは他のサービスでは1話単位での課金となる場合もあるため、月額で見放題というプランは、国内ドラマ好きにとっても嬉しい価格設定だろう。

 先行する定額制映像配信サービスも次々にオリジナル作品を手がけているが、国内のテレビ番組が好きな筆者としては、良質なドラマやバラエティを作り出せるテレビ局のオリジナル作品がParaviから発信されることを期待したい。

 なお、Paraviはクレジットカードの登録は必要になるものの、4月いっぱいであれば全作品を無料で視聴できる。前述の通り、先月最終回を迎えた人気ドラマ「アンナチュラル」も全話が配信されているため、いまのところParaviのキラーコンテンツは「アンナチュラルを全話無料で視聴できる」ことかもしれない。蛇足ながら筆者もアンナチュラルは非常にオススメできるドラマ。未視聴の人はもちろん、すでに見たという人も、第1話で張られた伏線を改めて堪能するためのParavi視聴を試してほしい。

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、動画配信サービスやスマートスピーカーなどが興味分野。ライター以外にも家電ベンチャー「Shiftall」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝」)