レビュー

ボーズの“肩のせ”Bluetoothスピーカー。驚きの低音、長時間でも快適。ソニーとの違いは?

 ボーズが3月29日に発売する「SoundWear Companion speaker」は、“肩にのせて”使うワイヤレススピーカー。従来のイヤフォンやヘッドフォンとは一味違う製品だ。その使い心地や音質をレポートする。価格は32,000円だ。

ボーズ「SoundWear Companion speaker」

 肩にのせる“ネックスピーカー”は、これまでも幾つか製品が登場している。最近話題となったのは、ソニーが昨年に発売した「SRS-WS1」(オープンプライス/実売25,000円前後)だろう。テレビ番組などでも取り上げられ、注文が殺到。生産が追いつかず、現在注文受付を停止しているほどの人気ぶりだ。

 そんな最中に登場した「SoundWear Companion speaker」なので、当然注目も高い。価格としてはSRS-WS1よりも少し高価だが、両者をライバル機と考える人もいるかもしれない。ただ、SoundWear Companion speakerはある意味純粋なBluetoothスピーカーであるのに対し、SRS-WS1はBluetooth非対応、振動機能を備え、どちらかというと映画/テレビ鑑賞に重点を置いた製品で、両者の方向性は異なる。その部分もチェックしよう。

肩にのせるBluetoothスピーカー

 U字型の製品で、見た目の通り、肩にのせて利用する。重量は260gとそれなりにあるので、“首にかける”というよりも“肩にのせる”イメージだ。スマートフォンなどのプレーヤーとは、Bluetoothで接続する。

「SoundWear Companion speaker」

 ドライバユニットは、肩にのせた時に、耳の少し前にくるあたりに左右各1基、合計2基搭載している。ユニットは上向きに取り付けられており、耳に向かって、下から音を放射するカタチだ。

カバーを外すと現れるドライバ
ドライバは上向きに搭載されており、耳穴の位置にくる

 このユニットだけでなく、独自のWaveシステムに採用されている2つの11インチウェーブガイドも搭載。低音の再生能力を高めている。また、独自のデジタル信号処理技術も組み合わせている。

カバーを外した本体を光にかざすと、魚の骨のような細かなパーツが見える。これもWaveシステムの一部なのだろう

 耳に直接取り付けたり、ハウジングで覆ったりするわけではないので、音漏れは当然する。ただ、前述の技術を組み合わせる事で「耳に届くサウンドを最大限に高めつつ、周囲への音漏れは最小限に抑えた」とのこと。このあたりは後ほど体験してみよう。

 ただ、こうしたシステムであるため、利用シーンとしては室内が多くなるだろう。耳をふさがないため、外の音も聞くことができるので、普段の生活で音楽を楽しみながら、玄関のチャイムや電話の音にも気づける。防汗/防滴仕様でもあるので、例えば、まわりに人がいない公園で読書をしながら音楽、カフェでポッドキャストを聴く、なんて使い方もいいかもしれない。電車の中で使うのはちょっと厳しいだろう。

 独自のマイクシステムも搭載。通話の際の風切音や周辺ノイズを除去し、クリアな音声を実現するという。なお、Bluetooth接続したスマホからの着信時は、着信音や音声アラートに加えてバイブレーションによる通知も設定できる。スピーカーのボタンを操作することで、着信への応答や終話、楽曲の再生、SiriやGoogleアシスタントへのアクセスも可能だ。

 本体を手にすると、やわらかいカバーで覆われている。このカバーは着脱可能で、汚れたら取り替える事も可能だ。付属カバーはブラックだが、オプションでネイビー、プラム、グレーのアクセサリーカバーも発売予定だ。なお、チャックで外すのだが、少しチャックを開くと充電用のUSBポートが現れる。充電のたびにカバーを全部外す必要はない。

本体カバーは外せる
チャックを少しあけると充電ポートが。なので充電のたびにカバーを全部外す必要はない

 カバー内の本体もソフトシリコンで覆われており、やわらかい。さらに力を入れると、少し曲がる。直角にグイッと曲がるわけではないが、肩にのせた時に、そのカーブに沿って自然と曲がるようになっているわけだ。IPX4準拠の防汗/防滴仕様となっている。

 リチウムイオン充電池を採用し、最大12時間の再生が可能だ。バッテリが切れた場合は15分間の急速充電で約2時間動作する。

カバーを外した本体はソフトシリコンで覆われている

SoundWear Companion speakerとSRS-WS1の違いは?

 前述のように、SoundWear Companion speakerは“Bluetoothヘッドフォン or Bluetoothスピーカーの肩のせ版”のような製品だ。そのため、用途としては音楽を聴くのがメインで、その他にはスマホのradiko.jpアプリでラジオを聴く、YouTubeアプリで動画を見る……といった使い方になるだろう。

ソニーのSRS-WS1。充電台、送信機がセットになっている

 ソニーのSRS-WS1は、音に合わせて振動する機能を搭載。ネックバンドスピーカー部と送信機、充電台から構成されており、送信機には光デジタル音声入力とアナログ音声(ステレオミニ)を搭載している。

 当然、ポータブルプレーヤーと接続する事も可能だが、メインとしてはテレビと繋ぎ、映画やゲームのサウンドを再生。深夜などでテレビのスピーカーから音を出さなくても、自分の肩まわりの空間だけで、振動の迫力もプラスしながら迫力あるサウンドが楽しめる……という製品だ。

 そのため、SRS-WS1にはBluetooth受信機能は無い。姿はよく似ているが、2製品の利用シーンはやや異なる。この部分が、製品選択時のポイントになるだろう。

SoundWear Companion speakerを使ってみる

 セットアップは簡単だ。「Bose Connect」アプリをスマホにインストールし、あとはナビに沿っていけば完了する。音声アナウンス機能もあり、アナウンスの日本語設定もナビに従っていけば可能。製品ツアー機能もあるので、ボタンの位置や機能も説明してくれる。説明書を読まずに使えるだろう。

「Bose Connect」アプリ

 ボタンは左右の先端、下側にある。位置としては“鎖骨の上”だ。右側には3つのボタンがあり、真ん中のボタンを1回押すと音楽の再生/停止、ダブルクリックでスキップ、トリプルで前の曲に戻る。長押しでSiriなどのコントロール機能呼び出しだ。

右側のボタン。カバーを外した状態の写真だが、カバーをかけていても突起でボタンは判別できる
カバーをかけたところ

 左右のボタンで音量の増減となる。カバーをかぶせた状態でも、ボタンの突起は指の感触でハッキリわかるので、押し間違いは少ないだろう。

アプリではボタンの説明もしてくれる

 左側には2つのボタンがあり、先端に近いボタンが電源、遠いボタンはBluetoothのペアリングボタンだ。インジケーターも備えており、青い点滅でペアリング準備完了、白い点滅で接続中といった具合。

 電源ボタンの近くにも5つのインジケーターを備えており、これがバッテリ残量を示している。インジケーターが1つだけになったら要充電だ。

カバーをかけていてもインジケーターの光はわかる
カバーを外したところ。USBポートも左側にある
カバーをかけたところ

音を聴いてみる

 肩にのせると、少し重さは感じるが、手で持っていた時ほど重量感はない。両肩で分散させているからだろう。適度に重さがあるので、“しっかり乗っている”感はあり、小走りした程度ではズレない。掃除機かけていたらポロポロ落ちる、といった事はないだろう。

 音を出すとまず驚くのが、低音の量感だ。耳を覆っていないのに、ズシンという量感のある低い音が感じられる。「藤田恵美//Best OF My Love」のアコースティックベースが、頭蓋骨を貫通して、頭の芯にズーンと響いてくる。

 もちろん、大型ヘッドフォンを使った時のような地鳴りのような低音ではないが、かなり迫力のある音だ。見た目では「音がまわりに抜け放題でスカスカしたサウンドじゃないの?」と心配になるが、装着すると、180度違う印象でインパクトがある。この驚きはボーズらしいポイントだ。

 低音だけでなく、中高域もバランスよく耳に入ってくる。ネックバンド型でこれだけバランスの良い音を再生するのは技術的に困難だと思うが、かなり完成度が高い。

 一方で、普通のヘッドフォン/イヤフォンと違う部分も感じる。一番は中央の音像だ。ヘッドフォン/イヤフォンでも、頭の中に音像が定位する「頭内定位」は発生するものだが、SoundWear Companion speakerにもそれがある。ただ、重低音は肩周りを中心に、ズズンと外に広がっていくイメージなのに対し、女性ボーカルなどの中高域は頭の中心に定位する。普通のヘッドフォンでは、これらがまとまっているのに対し、SoundWear Companion speakerでは低域だけ外に広がっていくように感じられて、少し違和感を感じる。例えるのが難しいが、チューリップみたいな感じで、肩の部分で広げた葉っぱが低音、赤い花の部分が頭の中にあるというイメージだ。

 肩にのせたSoundWear Companion speakerを少し動かすと、このイメージがガラッとかわる。上向きのドライバが、耳にジャストな位置だと、前述のような音像になるのだが、その位置をほんの少し後ろにすると、中高域のフォーカスが良い意味でふわっと甘くなり、中高域と低域の分離感が薄まる。BGM的に聴きたいのであれば、この方がいいかもしれない。ただ、radikoでラジオのトーク番組を聞く時は、フォーカスがジャストな位置の方が、少音量でも声が聞き取りやすい。ほんの数ミリでも聴こえ方が変化するので、この調整で“気持ちのいい聴こえ方”をその都度探すといいだろう。

 なお、アプリでは低音の量を減らしたり、自動電源OFF設定なども可能になっている。

アプリから自動オフタイマーも設定できる

 ソニーSRS-WS1との比較だが、純粋な低音の量感という面では、SoundWear Companion speakerの方が良く出ている。SRS-WS1はその代わり、製品自体が振動する演出で補っている感じだ。やはり、音楽向けにはSoundWear Companion speaker、振動の迫力と共に映画やゲームを楽しむならSRS-WS1と、目的が異なる製品と言えるだろう。

どんな利用シーンにマッチするか

 ヘッドフォンを聴いている気分で、少し音量を上げ目に設定。静かなオフィスで使ってみると、当然音漏れがする。隣の席の人には確実に聴こえてしまう。試しに、隣の人が「かすかに音楽がなっているかな?」程度に感じるまで音量を下げると、SoundWear Companion speakerを着けている自分も、音楽はかなり聴き取りにくくなる。ボーカルなど一部の音は聞き取れ、中低音はあまり感じられない。

 だが、ラジオのトーク番組では、この程度の音量でも会話内容が聴き取れる。静かなオフィスで使うタイプの製品ではないかもしれないが、ラジオ程度であれば使うことも可能だろう。

 基本的には、自宅でくつろいだり、家事をしている時、在宅の仕事などで、長時間、音楽やラジオを快適に楽しむための製品と言えそうだ。これらか気温も上がるが、一日中イヤフォンやヘッドフォンを装着しているのは、熱いし、耳が痛くなるなど負担もある。そうした問題から解き放たれ、なおかつ、来客や電話にも気付ける。利用シーンがマッチする人にとっては、無くてはならない“日々の相棒”になるかもしれない。

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ボーズ
SoundWear Companion speaker

山崎健太郎