レビュー

とっつきやすく、便利機能も満載。録音・配信を身近にする「Vocaster」

映像配信やインターネットラジオ、ナレーションの録音など、自宅で音声を録音・配信するためには、PCと組み合わせる専用の機材があった方がいい。昨今では、スマートフォンやタブレットでもこれらの制作が可能になり、必ずしもPCが要るわけではないが、クオリティの高い音声を録音するには、まだPCがあったほうが便利だ。編集の自由度も圧倒的に高い。

必要なのはオーディオインターフェース。PCで声を高品質に録音する機材だ。コロナ渦で急激に高まったWeb会議需要。数万円で買えるオーディオインターフェースが飛ぶように売れ、品切れが続いたアレだ。

オーディオインターフェースと聞くと「音楽作らないし!」「意味不明なツマミがいっぱいあって難しそう」と拒否感を抱く人もいるだろう。私自身、もともと機材が好きというわけではなく、声優志望キッカケで録音を始めることになったので、機材のことをゼロから理解する大変さは体験済みだ。

そんな大変さを軽減してくれる製品として注目したいのが、Focusriteの「Vocaster」シリーズだ。Vocasterは、機能を実用性のあるものに絞って、音声コンテンツ制作に特化したオーディオインターフェース。潔いまでのその徹底ぶりは、2000年代から、それこそMP3を直接ホームページにアップしてネットラジオをやっていたような時代からの音響エンジニアとしては、本当に圧巻であった。

ハードルの高さを感じさせないシンプルデザイン

左からVocaster Two、Vocaster One

Focusriteは、オーディオインターフェースを作っているブランドとして有名であるが、その歴史は、業務用のスタジオ機器に起源を持つ。1985年にジョージ・マーティン卿が伝説のレコーディングコンソール設計者ルパート・ニーブ氏に、Air Studios Montserratのコンソール用に妥協のないマイクプリとEQを作るように依頼したことから生まれたという。

スタジオのコンソール、いわゆる「卓」と呼ばれる機材の他にも、アウトボードなども開発された。要はプロの世界で確固たる地位を築いているブランドなのだ。現在は、ScarlettやClarett+といったオーディオインターフェースの他に、プロ向けのラインとしてRedシリーズも発売している。

Vocasterは、ポッドキャストをはじめ、ナレーター、配信者、オーディオブッククリエイターなど、声を届けるクリエイターのために設計された専用のハードウェアだ。声を使った表現を行なう多様な制作に対応するため、適切な機能を絞り込むとともに、独自の機能も備えている。

機種はVocaster One(オープンプライス/実売約3万円)とTwo(同約4万円)の2種類。Oneは主に一人録音向け。Twoは、二人録音まで対応しており、Bluetooth入力を使ったスマホなどとの接続も可能。両機種とも、スマートフォンとのアナログ接続による、リモートゲストにも対応する。

Vocaster One
Vocaster Two

Vocaster Oneの仕様を見ていこう。マイク入力は1つ。XLR端子で48Vのフォントム電源が供給可能。コンデンサマイクも使用OK。ヘッドフォン出力とスピーカー出力を1系統ずつ備える。スマートフォン越しのリモート出演用にAUX入力(アナログ)を装備。ユニークなのは、カメラへの音声出力(3.5mmステレオ)があること。本機にピンマイクなどを繋いで、3.5mmのラインケーブルをミラーレスカメラの外部音声入力に接続すれば、高音質な動画撮影が可能だ。

Vocaster Oneの背面端子部

マイクの録音レベルはゲインノブで調整する。後述するが、実用的なオートゲイン機能によって、専門知識は一切不要。ボタン一つ押して10秒喋れば録音レベルは最適になる。エンハンス機能は、声の加工に使用する。クリア/ウォーム/ブライト/ラジオの4種類。声やマイクに合わせて、直感で選べる。

生配信に便利な、マイクミュート機能も装備。ご覧の通り、フロントパネルはシンプルで、ボタンやツマミも音楽機材特有のハードルの高さを感じさせない、まるで作りの良いホビー製品のような風合いだ。

スペック値として、特筆すべきはマイクプリアンプのゲイン幅が70dBもあること。一般的な小型オーディオインターフェースは、50~60dB台なので、70dBというのは高い部類だ。レベルが稼ぎにくいダイナミックマイクでも適切な録音が出来るだろう。

Vocaster Twoの背面端子部

Vocaster Twoは、Oneと共通の仕様・機能が多い。AUXがステレオで入力できることなど一部に相違はあるが、ほぼ共通だ。マイク入力が2つに増え、Bluetooth入力も備えた拡張版と捉えてもらえればよい。気が利いていると思うのは、マイク入力が2つ、つまり出演者が2人になったことでヘッドフォン出力を2系統用意している点だ。音量も個別に変更できる。Bluetooth入力(v5.0)は、スマートフォンとの接続によるリモート出演の他に、ステレオ仕様を活かしてBGMなども入力できる。

ユーティリティーソフトウェア「Vocaster hub」も見逃せない。Vocaster内蔵のミキサーを使って、レベルの設定、サウンドの調整、モバイルデバイスやPCからのオーディオのルーティングなどを行なえる。ぶっちゃけ、無くても使えるは使えるが、インストールすれば、より快適な録音と応用的な活用が可能となる。

Vocaster One/Twoともに、電源はUSBバスパワー。USBケーブル一本でPCと接続するだけ。USB-C端子なので、USB-C⇒USB-Cのケーブルか、USB-A⇒USB-Cのケーブルを使用する。Windowsは、専用のASIOドライバーがダウンロードで入手可能。Macは接続すればすぐに使用出来る。iPadにも対応するが、機種によってUSBハブによる給電が必要だ(iPad OS 14、iPad OS 15 ※USB-C接続のiPadに対応)。

Vocaster One/Twoそれぞれに、Focusriteのマイクとヘッドフォンをセットにした、studio版も用意されている。マイクは、OneにDM1、TwoにDM14v、ヘッドフォンはHP60vを同梱する。マイクケーブルはFocusriteオリジナルだ。試用では、Vocaster One/TwoとTwoのstudio版をチェックしている。

Vocaster DM14v ダイナミックマイク
Vocaster HP60v ヘッドフォン

シンプルなUIと便利なオートゲイン。機能を絞って使いやすく

さて、話を冒頭に戻してVocasterの特徴を解説していこう。音楽制作をしない人にとって、なぜオーディオインターフェースがややこしく、Vocasterはどのようにその難題を解決しているのか。Vocaster One/Twoは基本的な仕様は同じなので、本稿では主にVocaster Twoについて触れていく。機能によっては、相違のある点も存在するため、随時補足する。

まず、見た目のハードルは、操作できるツマミやボタンの多さ、そのツマミに書いてある英語の内容がよく分からないというのがあるだろう。Vocasterは、ボタンは直感で機能が想像できるようなアイコンのみで表示されており、マイク入力(ゲイン)の調整やミュート、声の加工といった操作がスッと頭に入ってくる設計になっている。マイク入力が2つあるVocaster Twoも、通常ならINPUT 1(MIC1)/INPUT 2(MIC2)と表記されるところを、実用に適したHost/Guestと表示されているのも使い手に寄り添った配慮だ。ホストというのは番組の進行役で、ゲストというのは言葉通りのゲストや相方のパーソナリティと考えればご理解いただけるかと思う。

Vocaster Two。手前に並ぶアイコンがわかりやすい

他にやっかいなハードルというと、ゲイン合わせだろう。本機では、オートゲインやマイクの入力レベル調整にあたる要素だ。マイクで録音するときは、話し手の声量、その部屋の音響特性、マイクの仕様などによって、最適なゲイン値は異なってくる。最大値付近で固定していると、笑い声などで音割れ(歪む)してしまうし、控え目にしすぎると話者によっては小さくて聴き取りにくい音声になってしまう。

Vocasterでは、マイクマークの付いた大きなノブでゲイン調整をする。手動で適切に調整するのは、ある程度専門的な知識も必要なので、初心者にはそれだけで物怖じする要因になりがちだ。Vocasterは、オートゲインで使い手の心配をゼロにする。“バリ3”みたいなマークのボタンを長押しすると、オートゲインが開始。10秒間で、本番と同じような喋りや笑い声、タイトルコールなどを吹き込むと、適切なゲインに合わせてくれるのだ。

知識と経験がある人であれば、機材と録音アプリのメーターを見ながら、手動で適切なゲインに合わせることも出来る。驚いたのは、筆者が手動で合わせた場合のゲインと、オートゲインを使ったゲインがほぼ同じか、ちょっと控えめなくらいで調整されたことだ。この手の機能は、かなり控えめに設定されてしまうこともあるので、半信半疑でやってみたが、極めて実用的な精度で合わせてくれることに感動した。演者の方は、難しいことは考えずにオートゲインに頼ってしまって問題ないと思う。

なお、ICレコーダーとかで見かける「AGC(オートマティックゲインコントロール)」でない点も嬉しいポイント。AGCは便利だが、マイクへ入ってくる音に合わせてゲインが上下するので、環境ノイズまで大きくなることもある。Vocasterのオートゲインは、一度合わせたゲインは変更しないので、ラジオやナレーションといった高品質の音声が要求される制作シーンでは適切なのだ。

些細なことながら、ややこしさを増幅しているのが対応録音フォーマットのスペックだ。録音アプリで最初の準備をするときに、何やら見慣れない数字が並ぶ。44.1kHzはCDだからまだいいとして、48kHzはDVDやBlu-ray、ゲーム機の出力サンプリングレートなのでご存じの方もいるだろう。

さらに上はちょっとやっかいだ。88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz…… ああ、もう分からない! 結局どれで録ればいいの!?

答えは、48kHzだ。これは放送や映像の世界において業界標準だからだ。音楽の世界でも48kHzまたはその倍数で録ることがほとんどである。Vocasterは、オーディオインターフェースでは当たり前のように対応している高サンプリングレートをあえて捨てて、48kHzの録音と再生に絞っている点も評価したい。ちなみに一緒に設定するビット深度は、音がいいので16bitじゃなくて24bitで録音すればいいと覚えよう。本稿ではサンプリングレートやビット深度について詳しく触れない。とりあえず、48kHz/24bitを選んでおけばOKなので、番組の中身や表現方法に集中して欲しい。

セッション作成時、48kHzしか選べない簡単仕様

そして最後は、最大にして最強のハードル、I/O設定(入出力設定)の取り扱いだ。意味不明だと思うので、トラブルの概要から説明しよう。オーディオインターフェースを買ってまず始めに躓くのは、「音が録れない(マイクの音がアプリで聞こえない)」「音が聞こえない(アプリで再生した音がヘッドフォンから聞こえない)」だろう。かくいう私も初めて業界標準のPro Tools LE 7とM-BOX2を入手したとき、オーディオインターフェースはアプリから認識したが、まったく録音が出来なかった。原因は、I/O設定とその正しい理解が出来てなかったことなのだが、これは正直難解な世界だ。本稿ではここだけ抑えておけばとりあえずOK! という要素に絞って説明しよう。

初回立ち上げ時のI/O設定

Vocaster Twoの取扱説明書には、以下のような表がある。

筆者が録音アプリとして使っているのはPro Toolsだ。筆者が実機で確認したVocasterの入力と実際の対応は以下の表にまとめた。

他の録音アプリだと若干表記が異なる可能性はあるが、ほぼ同じ理解で問題ないと思われる。録音アプリで、目的の音を録りたいときは、録音したいトラックの入力に目的の入力名をアサインしてあげると、その入力に入ってきた音声が録音できる。また、動画生配信用の無料アプリOBSでは、Video Call L/RにVocaster上でミックスされた音声が立ち上がることが確認できた。

Vocasterは、機能を絞りつつ使いやすくすることで、音楽制作をしたことがない人も、録音機材に触れたことがない人も、入門しやすくなっている。機材の難しいことは抜きにして、クリエイティブな要素だけに向き合いたいという人にはぴったりのハードウェアだ。

音声コンテンツ制作に便利な機能も

……とは言いつつも、音声コンテンツ制作に便利な機能も搭載している。仕様面のおさらいも兼ねて、具体的に見ていこう。

ミュート機能は、とっさの咳払いやOPでゲストが沈黙している時間とか、一時的にマイク入力を無しにしたい時に使おう。ゲインをいちいち下げなくても、一瞬で無音か通常かを切替えられる。ミキサーさながらの機能でオーディオインターフェースに備わっているのは珍しい。ただし、録音アプリ側で録音が止まるわけではない。そこだけ波形が動かなくなる(完全無音)のみだ。

エンハンス機能は、ダイナミックマイクを繋いでいるシーンで有用だと感じた。コンデンサマイクに使うと、演出過多というか、わざとらしい音になってしまったので、使わない方が自然かもしれない。ダイナミックマイクは、エンハンスを使って音を演出した方が聞きやすくなったり、雰囲気が出たりする。軽くコンプレッサーが掛かったような効果も得られるので、聞きやすい声をリスナーに届けることにも寄与する。

studio版のマイクDM14vでエンハンスを使ったときの印象は、適度に個性が強まる感じ。

クリーンは、清涼感をプラスする。ダイナミックマイクの重苦しい、ともすると抜けの悪い音をスッキリとさせる。男性同士の会話に使うといいかもしれない。ウォームは、中域をわずかにブーストさせ、滑らかな質感もプラスされる。無機質な音を優しい聴き疲れのし難い音にする効果がありそうだ。ブライトは、テカテカというか艶っぽい派手な声に変わる。やや癖が強めなので、意図的に使うとき以外は避けるのが無難かも。ラジオは、軽くコンプが掛かったような音だ。声の押し出しが強くなり、エネルギー感が増す。声量にムラのある方は、これで補正される効果を狙うのも有りか。

なお、エンハンスを使うと、未使用時に比べSN比が若干悪化した。ピュアな録音をしたいときは、無効にするいいだろう。

今回の試用で実際に試すことはなかったが、AUX入力やBluetoothによる、リモート出演機能は今風だ。LINE電話や普通の通話、はたまたSkypeなど、スマートフォンで利用出来る音声通話サービスなら、ほとんど使用出来るはずだ。もちろん、ビデオ通話の音声だけをVocasterを通じてやり取りすることも可能だと思う。

試用中には、AUXやBluetoothを通じて、BGMの録音を試してみた。録音アプリがDAWなら、あとでBGMを重ねて編集する手もあるが、ラジオ局っぽく、音楽やSEを聞きながら録音すれば雰囲気が出てテンションも上がる。AUXやBluetooth入力は、ちゃんとマイクとは別のトラックとして録音アプリに立ち上がるので、あとから微妙なタイミングのずれとかレベルの微調整もできる。

AUXだとループバック1を選ぶ
AUXはループバック1にも立ち上がる
Bluetoothだとループバック2を選ぶ
Bluetoothはループバック1のメーターが振れる

BluetoothのコーデックはおそらくSBCだろう。SBCとaptXに対応したDAPと接続できたので、SBCと思われる。実際の音質は、背景に流れているBGM程度であれば、それほど大きな支障はないレベルだった。実際には、タブレットに“ポン出し用”のアプリKLANG等を入れて、タブレットとVocasterをBluetooth接続してBGMやSEを同録するという手法があると思う。AUXは、高い安定性が求められるリモート出演の回線として利用するのが好ましいだろう。

ちなみにOneのAUXはモノラルだが、Twoはステレオとなっており、機種によってAUXの仕様は異なる。

Twoはステレオ入力可能

カメラ用の出力は、よくそこをフォローしたな! と感心するほど、ユニークな機能。カメラ用のフィールドレコーダーには当たり前に付いているCAMERA OUTがオーディオインターフェースなのに付いているのだ。カメラの内蔵マイクより録音状態のよい音声を本機で作って、その音声をカメラの映像と一緒に録画する、簡単に言えばそういうことだ。

しかも、PCと接続しなくても本機単独で使えるのがすごい。5V DCのUSB電源アダプターで給電して本機を起動すると、PCマークが赤色になって電源が入る。この状態でマイクのゲイン調整は出来るし、ヘッドフォンから音も聞こえる。ピンマイクを使用すれば、スマート、かつ高音質に動画撮影することが出来るだろう。注意点として、Vocaster hubでHostとGuestのフェーダーをノミナル(てっぺん)まで上げておくようにする。PCの録音アプリで録音するときは、同フェーダーを絞りきる(一番下)ことで、二重に音声がヘッドフォンから聞こえないように出来るのだが、そのままのセッティングだとCAMERA OUTから音が出力されないので留意したい。

Twoのマイク録音におけるミキシング設定。録音アプリで録るときの設定で、この状態ではCAMERA OUTからマイク音が出ない
TwoとOneで共通となるが、マイクフェーダーを絞りきっても音は聞こえる、音が二重に被らないような設定がコレ

今回、マイクとヘッドフォン、マイクケーブルがセットになったstudio版を試用した。それぞれの音質についても触れておこう。まず、マイクケーブル。程よい長さで邪魔にならないのはグッド。音質は、筆者のリファレンスとしているMOGAMIの2534と比べても大きな遜色なく、フラットで素直なバランスだ。初めての人は、このケーブルをそのまま使って良いと思う。

マイクケーブルもセットになったstudio版

ヘッドフォンHP60vは、中低域が十分過ぎる量感で鳴っている個性派タイプ。音像の輪郭はボケ気味で、解像度はもう少しあればよかった。軽量で長時間の使用でもストレスは全くないだろう。側方のフィット感はしっかりしている。入門者の最初の一本にはセーフかもしれないが、ゆくゆくは然るべきモニターヘッドフォンを揃えて欲しいと思った。試用では基本、自分のモニターヘッドフォンでチェックしている。

ヘッドフォンHP60v

マイクDM14vは、むっくりとした存在感のあるボディが印象的。そこにあるだけで、「マイクに向かって喋りたくなる」デザインだ。音質は、至って普通のダイナミックマイクという音調だが、口元を近づけても中低域の膨らみが抑えめに感じた。家庭内で使用するマイクとして、使いやすい仕様といえよう。ただ、近づきすぎるとマイクへの吹きが音に現れてしまうから、バランスを取って使うようにしたい。

ダイナミックマイクは元々部屋の反響や環境音を拾いにくいが、マイクへ近付いたり、声量を大きくすれば、相対的にそれらの影響を小さく出来る。ちなみに、ウインドスクリーンは既に装着されているので、新たに追加する必要はない。

マイクDM14v(写真のスタンドは別売)

最後に生配信も少し試してみた。Windows 11とOBS最新版との組み合わせだ。OBSは、音声キャプチャデバイスとして本機を指定し、チャンネルはVideo Call L/Rを指定する。というか、録音アプリで出てくる他のチャンネルはOBSで使用出来なかった。また、ループバックの1と2はこのチャンネルにはミックスされない模様。あくまでマイクと、BluetoothやAUX経由での音声のみが入力されるようだ。もしPCからのループバックを使いたいときは、OBS側で「デスクトップ音声」を使うことになるだろう。AUX入力にDAP(携帯音楽プレーヤー)を繋いで、BGMとのミックスをしながらYouTube生配信を行なった。

OBSで生配信をテスト。マイクをあえてフレームに入れて撮影してみた
OBSで試しに配信してみた。フリートークにつき、お耳汚しはご容赦を

Vocasterのような単体の機材で、BGMなどの“ポン出し”やリモートゲスト出演など簡易ミキサーとしての機能も果たせるのは便利である。それもミキサー型オーディオインターフェースではなく、本機のようなコンパクトな機材で実現しているのは、多様な配信方法が選べるようになった証であり、新しい時代を感じる。音楽用のオーディオインターフェースなら、あくまで入力はマイクの本数分しかない。ステレオのライン入力がないことも珍しくないし、よしんばあったとしても、ステレオミックスがOBSに入力できないこともある。初めから、生配信での利用を想定した機能と、それを分かり易い表示で実現するVocaster hubアプリは強い組み合わせだと思う。

音声コンテンツの制作に特化したVocasterは、小型でスタイリッシュ、見た目や機能面でのハードルを徹底して下げた新世代のオーディオインターフェースだ。筆者が自宅での録音に目覚めた頃は、英語のマニュアルや意味不明なエラーと半泣きで格闘するほどハードルが高かったものだが、Vocasterなら、高いクオリティで自分の声を楽しくリスナーに届けることが出来るだろう。そう、作っている人間が楽しくなければ続かないのだ。ユーザーフレンドリーである事が、Vocasterの魅力だ。

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト