レビュー

小型で美しく、高音質。デスクトップやTVでも使えるDALI「MENUET/MENUET SE」

一番上がDALI「MENUET SE」、中段が「MENUET」のウォルナット下段左は2013年に発売された「MENTOR MENUET SE」。その右隣が「MENUET」のブラック、ロッソ

音楽配信サービスが活況の今、スマホ1つあれば自由自在に様々な楽曲が聴ける。最新ヒットチャートや青春時代の音楽を懐かしんでもいい。しかし、高音質な音楽が聴き放題なのに、デバイスをスマホやBluetoothスピーカーに限定するのは勿体無い。そう、音楽が定額で聴き放題のこんな時代だからこそ、オーディオを始めて欲しいと僕は思っている。

そんな“これからオーディオを始めよう”と思っている方にオススメのスピーカーは何か。いきなり100万円近いスピーカーや、置く場所に困るような巨大なスピーカーは現実的ではない。ただ、安価でも、すぐに満足できなくなって、上位機種が欲しくなるような製品ではトータルのコストはかえって高くなってしまう。

末永く楽しめる実力派で、コンパクトでどんな部屋にも置きやすい……そんな条件で考えてみると、DALIの「MENUET」(ペア22万円)と「MENUET SE」(ペア26万4,000円)が頭に浮かぶ。

「MENUET SE」

DALIは1983年に設立されたデンマークのスピーカーメーカー。海外のブランドらしくデザインセンスも良く、それでいて、価格が控えめに抑えられているのが魅力だ。それもそのはず、DALIの始まりは、デンマークのハイファイ・オーディオストアチェーン店が「オーディオ入門者がお小遣いで買えるスピーカー」を作ろうと、自社ブランドが設立したことがきっかけなのだから。

ブランド設立当初は、Hi-Fi Klubbenの創業者であるピーター・リンドルフ氏が自らの自宅地下室で製品設計を行なっていたという心温まるエピソードが残っている。しかし、その甲斐あってスピーカーは沢山売れ、2年後には正式にDALI(DanishAudiophileLoudspeaker Industries)を立ち上げ自社以外へのスピーカー供給を始めたという歴史がある。

そして現在、DALIはオーディオファンから音楽好きまで多くに愛されるヨーロッパを代表するメーカーとなった。ラインナップは多彩で、ピュアオーディオ&ビジュアル用途では最上位シリーズ「EPICON」から最エントリーモデル「SPEKTOR」まで6シリーズ、さらに小型Bluetoothスピーカーやヘッドフォンなど、ラインナップはパッシブスピーカー以外にも拡充している。

今回ご紹介する「MENUET」「MENUET SE」は、同社の中でエントリー~ミドルクラスに位置する2ウェイ・ブックシェルフスピーカー。MENUETは、1992年に、初代MENUET(DALI 150 MENUET)が登場してから幾度ものモデルチェンジを経て4世代目にあたる。SEはその“Special Edition”にあたる。

「MENUET」のウォルナット
「MENUET」のブラック
「MENUET」のロッソ

2つのスピーカーのキャビネットサイズは共通で、エンクロージャーのサイズは150×230×250mm(幅×高さ×奥行)、重量は4kg。つまり音質を担保しながらも、デスクトップやテレビの横まで設置しやすい、コンパクトなサイズと重量を実現している。前から見ると小さいけれど、奥行きがあってデスクに置けないというブックシェルフも多いので、奥行き230mmという短さもポイントだ。

ツイーターは28mmのソフトドーム、ミッドレンジ/ウーファーは115mmのウッド・ファイバーコーン振動板を採用。ウッド・ファイバーはその名の通り、木繊維(ウッドファイバー)と微粒子パルプを混ぜて振動板を作ったもの。2種類の素材を混合させる事で、軽量かつ剛性が高く、変形しにくいという特徴がある。DALIのトレードマークと言っても良いだろう。

バスレフポートは背面に設置されているので、背面の壁とスピーカーの間隔を変えることでより低域の量感をコントロールしやすい。能率(86dB)や周波数特性(59Hz~25kHz)もMENUETとMENUET SEで同一だ。

「MENUET SE」

それではMENUET/MENUET SEの違いは何かといえば、大きく3点ある。1点目はネットワーク周りに使われているパーツのグレードの違いで、MENUETの内部配線材は「CORDIAL I & CORDIAL II」、電解コンデンサーはBennic製(中国)BPコンデンサーを使用。これらのパーツを装着するボードは一般的な木材のハードボードを使用している。

一方のMENUET SEは、内部配線材に「DALI SILVER PLATED COPPER」を、電解コンデンサーには音質の高さで知られるドイツ・ムンドルフ社のM Cap(高域用) E Cap(低域用)を、ボードには高い電気絶縁性を持つベークライトを採用する。つまりは、実際のところスピーカーの音質を大きく左右する1つの要素であるネットワークの品質を大きく上げているのだ。

2点目の要素はスピーカーターミナルの違いで、両モデルのターミナルはシングルエンドを採用するが、MENUETは「RUBICONグレード」、MENUET SEはより上位モデルの「EPICONグレード」のターミナル端子を採用している。

MENUETは「RUBICONグレード」のスピーカーターミナルを採用
MENUET SEは上位モデル「EPICONグレード」のターミナル

そして最後に、キャビネットのカラーや仕上げも違う。MENUETは、ウォルナット、グロスブラック、ロッソの3種類。MENUET SEは光沢があり、木目が美しいワイルド・ウォルナット・ハイグロスフィニッシュとなっている。スピーカーは室内でも目につきやすい存在と考えると、SEの美しい仕上がりは魅力的だ。

MENUETを書斎で聴く

“コンパクトで見た目の質感が良いスピーカー”ということで、まずは書斎をイメージしたデスクトップ環境にウォルナットカラーのMENUETを設置した。

ウォルナットカラーのMENUETをデスクに設置

デスク上の場所を節約するため、可能な限り機材の数を少なくしたシンプルな構成を心がける。まずは、惜しくもディスコンになってしまったが、コンパクトさが売りであったDENONのデザインシリーズに属するプリメインアンプ「PMA-60」を設置。D/Aコンバーターを内蔵してBluetooth接続もあるので、パソコンとUSBケーブルで接続して高音質な再生環境を構築しても良いし、スマホとBluetooth接続してApple MusicやAmazon Musicを手軽に楽しむこともできる。

スピーカーのキャビネットやユニットのデザインが野暮ったくないおかげで、デスクトップ上の視覚的な風景が明るく、そして音楽に寄り添うようになる気もして高揚感が高まる。「どんな音楽を聴こうか」と取材を忘れてワクワクとした気持ちになった。

今回はMacBookとBluetooth接続して、まずはApple MusicからYOASOBIの「祝福」を再生した。明るくて艶やかなサウンド、思わず歌詞を一緒に歌いたくなるようなグルーブの高いサウンドが聴こえてくる。これぞDALIのスピーカーのストロングポイントだ。

続いてAmazon Musicからジャズの名盤、マイルス・デイヴィス 「Kind of Blue」を再生した。一変してジャズらしい雰囲気の良い音場が目の前に現れる。メロディアスで色艶の良い音は共通している。音量を絞っても高域から低域までのバランスが崩れづらいのが良い。

筆者のデスクの天板サイズが170×80cmと若干大きいこともあるが、MENUETはデスクトップに上手に収まりやすいのが嬉しい。デスクトップ上に音の良いオーディオシステムが構築できると、手軽に音楽を楽しむのはもちろん、テレワークなどの作業をしながら音楽を流したりYouTubeを再生したり、音の良いBGMのおかげで作業もはかどりそうだ。

それに、MENUETはキャビネットカラーも豊富だから天板と合わせてカラーを選びたいところ。例えばホワイトアッシュやパイン、ホワイトオークなど白系天板を使用したデスクではウォルナットやワイルド・ウォルナット、ブラックチェリーの天板だったらグロスブラックカラーのモデルなどと組み合わせてカッコ良い風景が作り出せると思う。

PCディスプレイと組み合せるとこんなイメージに

MENUET SEテレビがあるなどリビングをイメージした部屋で聴く

続いて、スピーカーをリビング環境に導入してみた。この場合は必然的にテレビとの組み合わせになるだろう。

リビングにも設置してみる

リビングは家族も使用するスペースだから、スピーカーのインテリア性にはより拘りたい。その点、キャビネットの質感が良いDALIのスピーカーは抜群のフィット感を見せる。ということで、ここでは映画館のように部屋を暗くした時にも目立たないMENUETのブラックを選択。コンパクトなキャビネットはテレビの横に置いても圧迫感が少ない。

システム構成としては、クワドラスパイア社のラックとLG社の55インチテレビを組み合わせ、プリメインアンプ PMA-60とテレビを光TOSのデジタルケーブルで接続した。

Apple TV 4Kから映画『トップガン マーヴェリック』を再生。まずテレビのスピーカーで音を出した後で、MENUETに切り替えた。当然、音質は比べ物にならないほど音質は上がる。まず低音域を中心にして迫力が全く別の次元になる。トム・クルーズが演じるマーヴェリックが乗るF/A-18戦闘機のジェットエンジンの音が迫力満点だ。セリフもはっきりと聞こえる。

また、テレビの左右にスピーカーを設置したことで音場も広がり、映画館のセンターの席で聞いたようなバランスの良い立体的なサウンドステージが眼前に現れる。音の迫力やセリフの明瞭度が上がることで、映画館に一歩近づいたような本格的なサウンドになった。

最近のテレビはデザイン性を上げるために、ベゼルの幅が細く、より薄型になっている。(というかほとんどベゼルがないものも増えている)これはこれでデザインの品質が上がるのだが、そうなってくると今までの前面に設置できたスピーカーが背面に回ってしまい、以前のテレビと比べても音質は下がっているモデルが多い。だからこそ、本格的なスピーカーを組み合わせることが、視聴時の満足度を高める重要な要素となるのだ。

昨今ではサウンドバーが人気だが、それ以上の音質を狙うなら、依然としてテレビを挟む形で2本のスピーカーを置く方がベターだ。また、このようなシステムを構築しておくと、テレビを使わない時にも音楽を楽しむこともできる。リビングへの本格的なスピーカーの導入は、テレビライフと音楽ライフ両方を豊かにしてくれる一石二鳥の選択だ。

MENUET/MENUET SEの違いも耳でチェック

2機種とも、サウンドについては様々なシーンで活躍が期待できそうなものだったが、気になるのはMENUETとMENUET SE同士の音質的な違いだろう。そこで、筆者自宅1Fの試聴ルームでガチ比較してみた。

価格差がどこまで音質の違いに現れるのだろうか? と興味は尽きない。ここでの再生システムは、ソース機器にハイレゾ楽曲ファイルやストリーミングサービスの再生に強いiFi Audio社のネットワークプレーヤー「NEO Stream」、アンプにはファーストワット社の「F-7」を用いた。国で言うとイギリス、アメリカ、デンマークの組み合わせである。こんなシステムを組めるのだからやっぱりオーディオって面白い。

NEO Stream

試聴ソースはハイレゾ楽曲ファイルを使った。女性ボーカル・アデルのアルバム「30」より「To Be Loved Easy on me」(44.1kHz/24bit) 、ポップスはエド・シーランのアルバム「=(イコールズ)」から「Bad Habits」(48kHz/24bit flac)、クラシックはTime For Threeのアルバム「Letters for the Future」から「Puts: Contact - II. Codes. Scherzo」(96kHz/24bit flac)である。

MENUET

MENUETとMENUET SEの違いだが、まず基本的な音色や音調は同一傾向だ。色彩がある中高域と弾力的な低音域は共通している。複数の弦楽器で構成されたTime For Threeの楽曲はヴァイオリンの艶やかな質感表現が気持ち良い。アデルのボーカルも血の通ったようなリアルな表現で聴かせてくれる。

一方、違いは絶対的な分解能と音の立ち上がり、音の色艶にある。ひらたく言えば、MENUET SEは、Time For Threeでは音の粒子が細かくなり、アデルの声に色気が出てくる。またエド・シーランのエレクトリックシンセサイザーの音の立ち上がりも若干だがSEの方が優れている印象だった。

結論をいうと、お金に余裕があればMENUET SEを選んでも良いだろう。また、キャビネットの質感についても写真の見た目以上にMENUET SEは美しい。

MENUET SE

ちなみに、先述の通り現在のMENUETは第4世代にあたる。長い歴史があるシリーズなので、市場には中古もあるだろう、そこで2013年に発売された「MENTOR MENUET SE」と現行のMENUETも比較してみた。

キャビネットサイズは同一、デザインについてもほぼ一緒だが、音質については結構違った。前モデルも悪くはないのだが、絶対的な分解能は現行モデルが上回っている。前モデルの良い部分を受け継ぎながらも、音の鮮度感や艶の出方も、筆者の好みは現行MENUETだ。結論からいえば、せっかく買うなら現行品の方が良さそうである。

MENTOR MENUET SE

コストパフォーマンスと満足度の高いスピーカー

フラッグシップスピーカー「KORE」

余談だが、2022年に東京有楽町で開催された「東京インターナショナルオーディオショー」では、DALIが大きな注目を集めた。ペア1,500万円というド級のフラッグシップスピーカー「KORE」をお披露目したからだ。

最上位として超ハイエンドなスピーカーも手掛けているDALIだが、それと同時に、コストパフォーマンスの高い小型スピーカーにも注力し、創業当初の「良いものを安価で」というポリシーを持ち続けているのが、一人のオーディオファンとして本当に嬉しい。

“買いやすさ”で言えば、MENUET/MENUET SEよりも安価なスピーカーは存在する。ただ、スピーカーは“投入したコストに対する音質変化が最も大きいオーディオジャンル”。1つ上の質感と音質を求めるなら、MENUETとMENUET SEはより魅力的だ。

それでいて、ちょっと頑張れば手が届く価格帯であることが嬉しい。評論家としては、一応弱点もあるなら把握しておかなくてはいけないので必死に考えたが、この円安の影響で価格が少し上がってしまったことくらいだ。ただ、現在価格でも依然としてコストパフォーマンスは高いのは間違いない。今年も数多くのスピーカーをテストしてきたが、その中でもMENUETとMENUET SEの満足度が高い事は筆者が保証する。買った人を幸せにしてくれる魅力が2つのスピーカーからは感じられた。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

土方久明