レビュー

居間のテレビを7年ぶりに刷新。レグザ「43Z570L」のココに驚いた

TVS REGZA「43Z570L」。画面右側の「シーン」が気になった方は、ぜひ記事後半をご参照あれ

ミニLED、4K/120Hz駆動、チューナーレスなどなど、テレビに関するトレンドは目まぐるしいスピードで入れ替わっている。そんな中、筆者宅では居間用のテレビを約7年ぶりに買い替えた。TVS REGZA(旧・東芝)の43型「43Z570L」である。同社のラインナップで言えばエントリー級、表示方式は液晶という極めてオーソドックスな製品だが、それでも驚かされる部分が多かった。使い始めておよそ3カ月経っての感想をお伝えしたい。

なんやかんやで約13年使った「37Z9000」から買い替え

43Z570Lは、2022年7月に発売された。TVS REGZAのテレビラインナップは、有機EL方式の「X9900L」「X8900L」など複数存在するが、43Z570Lを含む「Z570L」シリーズは液晶方式テレビの中でも中位~エントリー級にあたるモデルといって良いだろう。本稿執筆時点(2023年1月上旬)時点だと、大手カメラ量販店販売価格はおよそ13万円。ここに10%ポイント還元が入ってくる。

ただ筆者が購入した2022年10月下旬頃は、ボーナスシーズンを意識してか、週ごとに価格が上下している状況だった。手が空くタイミングでこまめにサイトを訪問していたところ、ビックカメラでポイント還元なしという条件付きで、9万720円で販売している場面に遭遇。知りうる限りの最安値だったので注文した次第だ。

正面。狭額縁! 中央下部にはリモコン受光部
リモコン受光部。なお電源や音量ボタン類は、受光部底面にあるスティック状インターフェイス1つに集約

自宅には現在4台のテレビがあるが、43Z570Lは和室8畳の居間用だ。この部屋では東芝の「37Z9000」(37型・フルHD表示)を2015年末頃から使っていた。ただ、このモデルの発売時期は2009年末。筆者が私室で使うテレビを買い替えた際、余ったのでお下がりとして設置したのだ。そのため居間での利用歴は約7年ほどだが、実際には稼働約13年とかなり年季が入っていた。

そんな経緯もあって、さすがに2022年の夏頃からは、テレビ放送の音は出るが画面がおかしくなるといった表示不調が多発。「そろそろ買い替えようか」と時期を見計らっていたところで、前述の価格に出会った格好である。

以前使っていた「37Z9000」はこんな感じ。いや、もう額縁幅の違いといったら

私室では2015年発売のソニー製Android TV採用モデルを使っているものの、居間用のテレビの買い替えは7年ぶりというか13年ぶりというか、とにかく相当久しぶり。それだけに時の流れを否が応でも実感した。狭額縁、BS4Kチューナー内蔵、Wi-Fi(無線LAN)内蔵はもう当たり前で、改めて語るほどのことではないだろう。テレビをネット接続するためにWi-Fiコンバーターを探していた頃が懐かしい。ちなみにBS4K左旋の電波を受信するための工事はしていない。

再び43Z570Lの画像に戻る。こちらは背面
電源ケーブルは着脱可能
入出力端子類は背面と側面に分かれている
背面側端子類
側面側端子類。HDMIは合計4系統

日々触れる部分で便利さを実感するのが、番組表の精細感が大幅に向上している点だ。液晶パネルが4K対応になったからこそ、実現したのだろう。新聞のテレビ面のような、文字がぎっちり詰まった表示が実現している。文字サイズをワンボタンで調整できるのも有り難い。

表示パネルが4Kになった影響でしょう。番組表はグッと見やすくなった

そしてリモコンには、動画配信サービスの起動アイコンがズラッと並ぶ。かつてはアクトビラ、TSUTAYA TV、DMMくらいだったが、いまや主役はPrime Video、Netflix、Disney+、ABEMAといった具合。これが2020年代のテレビなのですね……。

付属のリモコン
動画配信サービスの起動用ボタンがこんなに沢山

そしてBluetoothに対応しているのにも意外だった。手持ちの完全ワイヤレスイヤフォンをペアリングして、一般的なテレビ番組の音声を聴取できた。A2DPプロファイルも対応しているとのことで、音質もバッチリだ。Bluetoothは一部高級グレードだけの機能かと思い込んでいたが、それも過去の話のようだ。

Bluetoothでワイヤレスイヤフォンを接続すれば、番組の音声も聞ける

買い替えの条件は「非Android TV」&「ワイヤーシェルフに置けること」

買い替えにあたっては、価格以外にもいくつかの前提条件があった。まず「43型のテレビである事」。50型超のテレビが売れ筋とも言われるが、筆者宅の居間は和室で、しかも隣室・廊下・押し入れに繋がる扉(正確には襖だが)だらけ。テレビを置くスペース的余裕がなく、テレビを置くための台も使い回したかった。となると、横幅1m未満で収まる43型は絶対だった。なお43Z570Lの外見寸法は横幅96.2cm、高さ56.3cm、重量はスタンド込みで10.0kgである。

テレビを置いている棚板部分の横幅は90cmなので、左右に3.1cmずつはみ出る計算。とはいえ、我が家の環境では実用上の問題はほとんどなし

ちなみに筆者は、テレビの外形寸法や重量を意外と気にしてしまう。掃除や模様替えのため、テレビを(ごくわずかな距離ではあるが)持ち運んだりズラしたりする機会が年に2~3回はあるからだ。43型で10kg前後の製品ならば、ギックリ腰が怖い40代中年(筆者のことです)1人でも無理なく作業できるが、これが55型となってくると取り回しがかなり大変になってしまう。

テレビのカタログをよくよく読んでみると、有機EL方式のテレビは、同じ画面サイズの液晶テレビと比べて数kg重い傾向にある。近年は48型の有機ELテレビが増えているが、個人的にはその重量が、買い替えを躊躇する要因の1つだ。このあたり、テレビの壁掛けを前提とした家にお住まいであったり、同居人が多くて家具移動の心配がない世帯となれば、まるっきり話は異なってくるかとは思う。

また「Android TV(Google TV)機ではない事」も重要な要件だった。Android TV採用のテレビであれば、アプリの追加によって新しい映像配信サービスに対応できたり、OSのアップデートで操作性が高まったりと、さまざまなメリットが期待できる。ただ、あくまで個人的な意見だが、安定性にはやや疑念がある。

特に我が家は、80歳代の老親が同居しているため、そうした性質はむしろ混乱の引き金になってしまう。「アプリの挙動がおかしかったら電源を再起動したり再インストールして」と言うのも、酷な話だ。

設定メニュー画面。37Z9000の路線をほぼ踏襲する、シンプルな外見が特徴です

その点43Z570Lは、レグザ専用Linux OSを採用していて、安心感がある。操作系も以前使っていた37Z9000と共通する要素が多い。まだ3カ月ほどの利用だが、少なくとも地上波放送の視聴でトラブったことはない。親には「困ったらとにかくリモコンの『地デジ』ボタンを押して」とだけ念押ししてあるが、とりあえずそれで操作につまずくことないようだ。例えばYouTubeの視聴画面が表示されてしまっていても、「地デジ」ボタン操作だけでほぼ確実にテレビ放送画面に戻ってもらえる。

リモコンの「地デジ」ボタンさえ押してくれれば、どの画面からもほぼ間違いなくテレビ放送に戻れる。こう説明できることがいかに重要か、シニアのいる世帯ならきっとわかってくれるはず?!

それともう1つ「ワイヤーシェルフにおける事」も絶対条件。最近のテレビの標準スタンドは、接地面が非常に少ないタイプのものがある。カメラの三脚状、とでも言えばよいだろうか。見た目はスッキリしていて格好いいのだが、我が家のテレビ台は接地面が網状のワイヤーシェルフのため、どうしても上手く設置できないのだ。

43Z570Lのスタンドは、長方形のプレートが左右に1つずつある方式。実際、我が家のスタンドに設置した限り、特に問題は発生していないので一安心している。テレビのモデルによってスタンド形状は本当に違うので、もしワイヤーシェルフをお使いの方はご注意のほどを。

スタンドはこんな感じ。ワイヤーシェルフの上にもなんとか置けました

こんな地味な名前でいいのか?!「シーン/出演者」機能の凄まじさ

しかしまぁ、テレビの楽しみ方もハードウェア進化によって本当に変わったと実感する。43Z570Lの場合、その象徴が「ざんまいスマートアクセス」と呼ばれる一連の機能だ。

市販のハードディスク(HDD)を接続すれば、録画機不要で番組を録画できる。これはもう10年前のテレビでも当たり前にできていた。しかし「ざんまいスマートアクセス」はインターネット接続をフル活用。録画番組の選定であったり、番組情報の閲覧がより充実したものになる。

録画番組の一覧。これはまぁ、普通ですよね

録画番組の再生中、リモコンの「シーン/出演者」ボタンを押してみる。これだけで「シーン」情報が表示されるのだが、これがもう“番組の概要”のレベルをはるかに超えていて、例えば「00:00:15~00:03:30 本編1 出演者○○が新年の挨拶」といった具合に、本当に事細かな番組の内容が記載されている。お気に入りの出演者が出ている場面だけをいきなり頭出ししたり、SNSで話題になっていたくだりだけを見るといったことが、この一覧画面からできてしまう。

この機能、製品情報のページには「シーン/出演者」(機能)とサラっと紹介されているだけなのだが、使い込めば使い込むほど潜在能力の高い機能だと気付く。説明によれば、NHKや関東の民放キー局で放送された番組の大半に、シーン情報は付加される。とにかく網羅量がハンパないのだ。そして当然、付加された説明情報を対象のする検索ができる。よって、お気に入りのタレントが番組のいちコーナーに数十秒、コメント映像で出演しているようなケースが発見できる。

番組再生中に「シーン/出演者」ボタンをプッシュ。すると、何やら細かく書かれた説明が
そう、こんな細かな番組解説が書かれているのです

このシーン情報を串刺し検索するには、リモコンで「ざんまい」ボタンを押そう。お気に入りのタレント名や番組ジャンルをあらかじめ登録しておくことで、該当する番組が自動でリストアップされる。また指定ワードにひっかかった番組を自動で「おまかせ録画」することも可能だ。

リモコンの「ざんまい」ボタンを押すとこの画面に。タレント名を指定して、関連する番組を自動録画する「おまかせ録画」の一覧などが表示されます

43Z570Lの「おまかせ録画」は非常に実用的な機能で、接続したHDDの容量の何%を専用領域に割り当てるか、10%・25%・50%・75%・90%の5段階から選択できる。ユーザーが番組表から手動で予約する番組とはあくまで別枠扱いになっていて、古い「おまかせ録画」は自動削除されていく。気付かないうちに録画容量が一杯になってしまう心配は、ほぼないはずだ。

「おまかせ録画」用の領域をどれだけ割り当てるかの設定画面

なおシーン情報の付加タイミングは、通常だと番組の放送終了から2~3時間後とのこと。そして情報取得にはインターネット接続が必須のため、自宅にWi-Fi環境がないと使いこなしは難しいかもしれない。

「タイムシフトマシン」の追加で、もっと便利に

そしてもう1つ、「タイムシフトリンク」機能についても是非触れておきたい。レグザの、いわゆる“全録”型録画機に保存されている番組を43Z570Lのインターフェイスで視聴するための機能だ。

リモコンの「タイムシフトリンク」ボタンを押すと、この画面がポップアップ。筆者が使用しているのは「DBR-M4010」というモデル。これを使って、地上波テレビ局6チャンネル分をほぼ24時間体制で録画、約1週間分の番組を遡っていつでも視聴できる体制を構築している。このあたりについては、以前原稿でまとめているので、ぜひご覧頂きたい
こちらが「DBR-M4010」
DBR-M4010本来の「過去番組表」はこう表示される

「タイムシフトリンク」を有効化すると、43Z570LはLANネットワーク(有線LANないしWi-Fi)経由でDBR-M4010にアクセス(HDMIケーブル経由ではない)。そして、43Z570Lのユーザーインターフェイスを使って、DBR-M4010内の番組を視聴・再生できる。

しかし「タイムシフトリンク」から過去番組表にアクセスすると、43Z570Lのインターフェイスで番組を表示できる。精細感の違いは明らか

どういうことかというと、録画番組を選ぶための番組表(過去番組表)は4K対応の高精細版になり、さらには前述の「シーン/出演者」「ざんまい」の情報も参照できる。驚異の番組検索機能が、タイムシフトマシンに保存されている番組にも反映される訳だ。

未体験の方でも察しはつくと思うが、保存番組数が多ければ多いほど、「シーン/出演者」「ざんまい」での対象が増えるので、威力はより高まる。例えばこういうケースがあった。筆者はお笑いコンビのトータルテンボスが好きなので、「ざんまい」経由で時折、出演番組を見ていた。

画面中央に小さく表示されている、時計マーク(オレンジ色)に注目。これは、43Z570Lの録画用HDDではなく、タイムシフトマシンに保存されている番組を意味する。つまり、外付け録画機に保存されている番組も、串刺し検索できている

しかし、ある時発見した番組は、番組概要欄を幾らみてもトータルテンボスの記述がない。何故だろう? と思って番組を実際に再生してみると、なんと別のお笑い芸人が「トータルテンボスの宣材写真の物真似」を披露している場面があり、それが引っかかって「ざんまい」の一覧に掲載されていたのだ。

ある意味、紛らわしいというか誤検知というか、本来意図されている用途ではないかもしれない。しかし“番組内で話題になった”ことすらタイムシフトマシンが発見してくれるというまさかの体験に、本気で震え上がってしまった。この「タイムシフトリンク」、機材を揃えないといけない分、発動条件は厳しい。ただ、それでも是非一度は試していただきたい機能だ。

この画像の例だと、鬼越トマホークが次回予告のわずか8秒に出演していたことを確認できる。恐るべきカバー力……

まとめ~細かな改良がテレビ体験を変えていた~あとは2画面表示さえあれば……

正直43Z570Lを買う前までは「37型からのインチアップだから、画面の迫力がちょっとくらいは増すかな」程度の期待度だったが、実際使ってみると、とにかく細かい部分に手が入っていたことに驚かされた。それが積み上がって、結果的にテレビ視聴体験が大きく変わっており、なるほどコレが10年の進化なのだと改めて納得するばかりだ。

例えば、スマートスピーカー連携もその1つ。43Z570LではGoogleアシスタント、Amazon Alexaに対応。電源のオンオフ、チャンネルの切り替えなどが音声コントロールできる。Echo Dotなど安価なスピーカー1台追加するだけで、かなり便利になる。

さすがに10年前のテレビではスマートスピーカー対応は無理だろう。これぞ新型モデルの特権

ただ、レグザお得意の2画面表示(ダブルウィンドウ機能)に未対応である点だけは、心の底から残念。37Z9000では2チャンネル同時表示も可能で、ニュースとスポーツを小画面で同時に視聴することができた。チップの処理能力だったり、色々な制限あってのことだろうが、いつか復活してほしいと切に願う。

2011年の地デジ移行期に買ったテレビを、今もそのまま使い続けているご家庭は多いだろう。ただ、やはり10年の進化は大きい。高級モデルでなくとも、買い替えによってきっと新しい体験ができるはずなので、ぜひ各社の新型モデルに注目してみてほしい。

やはり新型テレビには新型テレビの良さがある。今回はレグザをご紹介したが、今使っているメーカーの後継モデル等、気になる製品を一度チェックしてみては?
森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。