レビュー

目指せ快眠。ASMRにハマるイヤフォン/ヘッドフォンを探した

目指せ、眠れない夜撲滅

ASMRを聴いてたら眠れるようになった話(※個人の感想です)

VTuberの配信を視聴するようになって、初めて知ったことの中に「睡眠導入系のASMR配信」がある。ASMR配信はバイノーラルマイクで収録することで、ヘッドフォン/イヤフォンで聴いた際に、まるで目の前に人が居るかのようなリアルな距離感で音声を楽しめるコンテンツ。ボイスドラマの様なシチュエーション系や、リスナーから募集したセリフを読み上げる配信、ただの雑談をASMRでやるなど様々あるが、睡眠導入系は、道具を使ったりささやき声で、眠気を誘うような音を作るような内容になっている。

眠れない夜、何かしていることはあるだろうか。開き直って起きて過ごす、ホットミルクを飲む、リラックスできる音楽を聴く、「寝る方法」でググる……などまあ色々あるだろう。筆者はほぼ毎日寝付きが悪いタイプで、一時通院もしていたのだが、そこで色々試した結果、わかったことは睡眠導入剤系や緊張を和らげる薬が身体に合わないこと。

それでも一応寝なければ生命活動そのものが難しい。そこで、眠れない日は横になって目をつむり、そのまま5時間から6時間過ごすという、慣れても辛い“虚無の苦行”、翌日の14時~17時は、ひたすら眠いのに横になるとその間だけ目が覚めるという“魔の3時間”のオマケ付きという状況を高校生の頃から10年ちょい過ごしていた。

そんな眠れないある日、ノエル団長(白銀ノエル)のASMR配信を聴きながら横になったら、なんと普通に寝た。

【ASMR/KU100】寒い日はポカポカお耳のリラクゼーション💊Ear Cleaning/Ear Massage/Sleep Whispering✨【白銀ノエル/ホロライブ】

眠れないときは大体、「ああもう今日は無理なやつ」というのがなんとなくわかるのだが、団長のASMR配信を聴いていたときは、いつの間にか意識が遠のいて「今日はとりあえず横になってれば眠れそうだなぁ」という日に近い感覚になって眠れた。

「まじか、10年来の悩みがこれで消えるぞ」と、連日聴きながら横になっていたのだが、そんな上手い話があるわけもなく、3日目程度で眠気が来なくなった。だが、いわゆるリラックスサウンドなども一切効かなかったのに、ASMRが効いたことが自分の中で衝撃的な出来事だったので、何がトリガーになっていたのが気になった。

そこで、次は様々な人の睡眠導入系ASMR配信を探して聴いて、眠れる要因と、聴き続けたら眠れなくなった要因を分析してみた。

“慣れ”が天敵。不規則な聴こえ方と声質が(筆者には)重要っぽい

一応、注意喚起を。個人差がある話なので、この先の内容についてはあくまでも自分の場合の話。不眠症にも原因や症状の違いなど色々あるので、必ず眠れる方法というわけではない。「そんなこともあるのか」程度に軽く捉えてほしい。挑戦する場合は自己責任で。

まず、自分の場合は、どうやら意識が遠のきやすいのが、「耳を塞いだりしたときの圧迫するような音」「トントントンという指で叩く不規則な音(タッピング)」、あとは意外にも「ささやき声」。

眠れなくなった要因もわかった。これは“音に慣れてしまうこと”だ。つまり、ノエル団長のASMR配信を連日聴いたら寝付けなくなったのは、その配信の音やパターンに慣れてしまったからのようだ。

なので、同じ配信の中でも左右で違う音が聴こえることと、同じ音が長時間続かないことといった“音に慣れにくい”要素を持った配信が、自分が寝付ける要素であることがわかった。

これらの条件が揃っていないとASMR配信を聴いていても2時間程度寝付けなかったり、ループ再生の2週目あたりまで意識が残り続けることがある。それでも音を聴いているので“虚無の苦行”はだいぶマシになるほか、なんやかんや最終的には眠れはするので、6時間横になっていれば3時間程度の睡眠が確保できる。それだけでも非常にありがたい。

「ささやき声」は声質も重要だった。学生時代、「この先生の声聞いてるとめちゃくちゃ眠くなる」というのを経験した人であるばわかると思うが、“アレ”だ(授業中の耐えられない眠気はどっちかというと気絶に近いらしいけど)。

睡眠導入系のASMR配信者は、眠くなるように工夫しながらささやいている人が多いので、その分当てはまる声質の人は見つけやすかった。「あ、眠れそうだな」というときにささやき声が聴こえても「何か言ってるなぁ~」と思いながら意識が遠のいていく声がちょうどいいイメージ。

この全ての条件を満たしている配信が多いのがノエル団長だった。たまたま初っぱなから自分にとっての大当たりを引いていたということらしい。基本的に両耳から別の音が聴こえている状態が続くほか、上記の意識の遠のきやすい音が多めで、ささやき声もやってきた眠気を邪魔しないという、救世主的な存在なのだった。

だが、ノエル団長はホロライブ内でのASMR配信数は多いものの、全体数的には少なかったり、機材の新調で新しい方の音が良すぎて(しかもこの前またパワーアップした)、過去のASMR配信を遡って聴き直すとちょっと物足りなく感じたりという難点が浮上。音への慣れが天敵である以上、同じ配信を連日聴き続けることはできない……。これは自分の中で結構大きな問題に。

定期的に睡眠導入系ASMR配信をしているVTuber

そこで、次は毎週ASMR配信をしている人の中で自分が眠れる要素を持つ人たちをピックアップ。おそらく睡眠導入系ASMRでは知名度が一番高いであろう774inc. ハニーストラップの「周防パトラ」、同グループの「西園寺メアリ」、さらに同じく774inc.の別グループ シュガーリリックの新メンバーとして12月17日にデビューした「蛇宵ティア」、最後に、元AXEL-V所属(事務所が解散してしまった)で現在個人で活動している「来音こくり」。

この4人のASMR配信が寝付きやすい条件に当てはまったので、ローテーションさせるようにして聴いている。

周防パトラは機材と配信環境への投資額と、音のバリエーションがほかとは桁違いに凄まじいので、「ASMR気になってるんだよね」という人に、とりあえず聴いてみなと気軽にオススメできる存在だと思う。

【ASMR】本気でしんどい人へ。優しく眠れます。寝落ち推奨の睡眠誘導。両耳吐息/耳かき/マッサージ/吐息/Sleep Fast Tonight Intense Relaxation【周防パトラ 】

西園寺メアリと蛇宵ティアの2人は声質が柔らかく、おだやかなトーンで話してくれるので、ASMRだけでなく、何かの作業中に雑談配信を流しておくだけでもけっこうリラックスして聴ける。なので、見逃した配信のアーカイブを作業時に聴いているとけっこう捗る。しっかりしているようでどこか抜けていて、それでもある程度常識をわきまえているので、雑談の内容がリラックス状態で軽く笑いながら聴けるのも魅力だ。

【ASMR/耳かき】ぐっすり眠れる癒しの耳かき EarCleaning/Fluffy Earpick/Oil Massage【西園寺メアリ / ハニスト】
【ASMR / KU100】今日は囁き多めで癒します💙Deep sleep with me【蛇宵ティア / シュガリリ】

こだわりと熱意が強く、様々な音を研究しながらほぼ2日に1回ペースでASMR配信をしているのが来音こくり。声色もおだやかで、ASMR以外では「Phasmophobia」というホラーゲームの配信が比較的多いのだが、あまり大きな声を出すことなく淡々とこなしていく様子が面白い。見つけた当初は登録者数が2万人いくかいかないか、くらいだったと思うのだが、現在は7万人近くまで来ていて、所属していた事務所が解散してしまうというハプニングを乗り越えながら個人VTuberとして頑張って活動している姿から、応援したくなった人も多いのだろう。

【ASMR】きつねのメイドが疲れたあなたに耳かきご奉仕します♡/Cotton swab/ear cleaning/ear blowing【来音こくり/Vtuber】

聴く側も重要。コスパ最強のCOTSUBU、“自然度”桁違いの開放型ヘッドフォン

ASMRにこだわりを持って配信してくれるVTuber達が居るので、音源は良いとして、聴く側の装備も重要。有名どころはfinalのイヤフォン「E500」とagブランドのTWS「COTSUBU for ASMR」。この2機種の何がいいかと言うと、コスパだ。

E500は2,000円程度、COTSUBU for ASMRは7,500円程度と、それぞれ有線イヤフォン、TWSの中では安価な部類で、ASMR…… バイノーラル音源のリアルな距離感をしっかりと感じられるというのがすごいところ。

E500とCOTSUBU for ASMR

さらにCOTSUBU for ASMRは、このサイズ感が寝るときに使うのにぴったりだ。ケーブルはないし、筐体が小さくて、寝返りを打っても、耳が痛くなったり、何かに引っかかって抜けるということがないので快適だ。

コスパ最強な「COTSUBU for ASMR」
耳に収まるこのサイズ感もちょうどいい

一応だが、通常のCOTSUBUと間違えないようにだけ注意が必要。音の聴こえ方が全く違うので、購入する際はパープルなカラーリングが特徴の“for ASMR”であることを確認してほしい。

ちなみにCOTSUBU for ASMRは、先ほど紹介した周防パトラとのコラボモデルも登場する。パトラ監修の新機能もあるとかで、気になるところ。

ちなみにこの2機種、音の特徴は低域が控えめになっていること。この特徴をヒントに、TWSの試聴時などに一緒にASMRも聴いて試してみたのだが、低域の迫力が控えめでタイトに聴こえ、解像感が高くて音がクリアに聞こえるものほど臨場感があり、心地良く聴こえることが分かってきた。

具体的にfinal「ZE3000」やソニー「WF-1000XM4」などがそうだ。「AirPods Pro」は第2世代だと若干低域の強さが邪魔に感じられるかもしれない。ちなみにANC搭載機種の場合、静かな状況でANCをオンにしてしまうと、ANCの作動音が非常にノイジーに聴こえたため、機能をオフにできたり、そもそもANCを搭載していないものが良いと感じた。

WF-1000XM4(左)とZE3000(右)。この2機種も良い感じに聴こえる。寝るにはちょっと筐体が大きいけども、作業中にリラックスして聴くとかにはいいかも

なおTWSで一般的に多い、低域が強調されてボワボワと聴こえるタイプのもので聴いてしまうと、ASMRの音が破綻する。ささやき声が不自然に聴こえるほか、ほとんどの音が単調なノイズにしか聴こえなくなってしまい、「何これ?」となる。まあ、音は好みなので「それが好き」という場合もあるかもしれないけれども、ちょっとオススメできない。

と、便利なTWSを取り上げたものの、イヤフォンを着けて寝てみるとある問題に気づく。

寝付けない人あるあるだと思うが「自分の心音が気になって寝られない」。アナログ時計の針の音、外の物音などと並び、寝付けないときに気になりはじめて余計眠れなくなる要素が自分の心音だと思っている。「心臓、止まってくれねぇかな」と何度思ったことか。イヤフォン、とくにカナル型を付けてしまうと自分の体内の反響音が増して聴こえるので、この心音がより気になってしまう。

そこで行き着いたのが開放型ヘッドフォン。キッカケはノエル団長の「ゼンハイザーのHD800SをASMR用に購入した」という話。たしかにイヤフォンよりもヘッドフォンの方が聴こえ方が自然で好みではあったのだが、「ASMR用に“開放型”?、それって良いの?」と、とりあえず試聴しまくって、ASMR向きな音が出つつ、そのときのお財布事情的に問題のない範囲ということでオーディオテクニカ「ATH-AD900X」を購入した。

ATH-AD900X

実際に家で聴いてみると、開放型で外の音が聞こえながら、解像感のあるクリアな音でリアルな距離感のある音が聴こえるので、臨場感が爆上がりに。配信者側が物を倒した音で思わずそちらの方向を見て何か倒れていないか確認するレベル。聴こえ方の”自然”度は、イヤフォンや密閉型のヘッドフォンとは別格だった。

おまけにATH-AD900Xは非常に軽くて側圧も弱めなので、何かに気を取られずにぼーっとリラックスして聴きたいという状況にもぴったりハマった。一度この環境を知ってしまうともうイヤフォンや密閉型ヘッドフォンには戻れない。実際、ATH-AD900Xを使うようになってから眠れない日がほぼなくなった。

見た目はデカいけど265gでとても軽い付け心地

ヘッドフォンを着けたら寝返りうてないんじゃないか、と思うだろう。その通りだ。背に腹は代えられぬということで、眠れない日は寝返りを犠牲に睡眠時間を確保している。おかげで虚無の苦痛とはもう半年弱くらい無縁になった。とりあえず横になる時間を6時間程度設ければ最低4時間は寝られる。本当に寝られるだけマシなのだ。

そして、有線になったのでスマホにUSB DACをつないで再生していたのだが、ふと「せっかくだからウォークマン使ってみるか」とウォークマン(NW-A100)でYouTubeを開いて再生してみたところ、ウォークマンの解像感の良さがASMRと相性が良く、さらに快適に。ASMR用に上位機種の「ZX707」に買い替えようかな……と思ったほど。

今寝床の近くでできる最強の環境。ウォークマンの音は睡眠導入系ASMRと相性が良かった

しかもここ最近は寝付いたタイミングで勝手にヘッドフォンを外して隣に置いておく技を身につけ、寝返りもうちながらしっかり5時間程度寝られる日も増えている。テレワークで純粋に布団に入っていられる時間も増えたので、その影響もあるが、週に2、3日あった深夜の虚無の苦痛が消えたのは本当に大きい。まさかVTuberにハマった影響が長年の悩みの解消に繋がるとは思いもしなかった。

あくまで筆者にとって効き目があった要素をまとめたので、全く参考にはならないと思うが、自分にあった視聴環境を作って気軽に楽しんでみてはいかがだろう。

野澤佳悟