レビュー

「ティアックのVRDS」再び。あえて“固定しない”プレーヤー「VRDS-701」驚きの音

VRDS-701

ティアックから4月15日に発売されるREFERENCEシリーズのCDプレーヤー「VRDS-701」(382,800円)が凄い。このVRDS-701、1953年に東京テレビ音響として始まったティアックの、創業70周年を記念する力作で、再生ディスクはCDとCD-R/CD-RWに限られるが、「V.R.D.S.」メカニズムによる独自の新規開発ディスクドライブメカを搭載。DAC部分はエソテリックの流れを汲む「ティアックΔΣ(デルタシグマ)ディスクリートDAC回路」を採用するなど、見どころが多いのだ。

USB DACとしても使用可能で、その場合はPCM 384kHz/32bitまで、DSD 22.5MHz(DSD512)まで幅広く対応するではないか。しかも、MQA CDの再生にも対応していて、デジタル入力でもMQAのフルデコードが可能。加えて、BNC端子による10MHzマスタークロック入力も装備している。

詳しくは後述するが、VRDS-701からDAC回路部分を省いたCDトランスポート「VRDS-701T」(275,000円)も5月27日に発売される。VRDS-701もVRDS-701Tともに、シルバー・フィニッシュ(S)とブラック・フィニッシュ(B)が同額で用意されるというのも、黒好きの私にとって嬉しい。

上がCDトランスポート「VRDS-701T」のブラック、下がCDプレーヤー「VRDS-701」のシルバー

V.R.D.S.とは何か

V.R.D.S.とは、Vibration-Free Rigid Disc-Clamping Systemの略。光学ディスクを同じ口径のターンテーブルと密着させることで安定した回転をもたらすという仕組みだ。光学ディスク自体の回転振動や反りによる面ブレなども抑えることができるのがV.R.D.S.の大きなメリットであり、ディスクに刻まれた信号の凹凸(ピットとランド)と光学ピックアップの相対光軸精度が高まることにより、サーボ電流も軽減できる。結果として光学ディスクの情報読み取りエラーの減少など音質向上をもたらすのが、V.R.D.S.メカニズムなのである。

「VRDS-701」のディスクドライブ部分。上部に円盤のようなパーツが見えるが、これが光学ディスクを同じ口径のターンテーブルだ

私はかつてCDのプレスメーカーに在籍していたことがある。CDという光学ディスクは日本のソニーとオランダのフィリップスにより制定されたレッドブックという規格書に基づいて製造される。透明なポリカーボネート樹脂を射出成型(インジェクション・モールディング)して成形されるCDは基本的に高い精度で製造されるものだが、サイズ(直径と内径)や面ブレなどの物理的なスペックには許容誤差というものが存在する。ターンテーブルを光学ディスクに密着させるV.R.D.S.メカニズムは、特に面ブレを軽減するところに大きなメリットがあるのではと、私は個人的に思っている。

アナログのLPレコードとは逆に、CDなどの光学ディスクは内側から外側に向かって信号が刻まれている。光学ディスクに面ブレが発生していると、信号を捉える光学ピックアップは外側に向かうに従って動きが激しくなっていくのだ。

V.R.D.S.メカニズムはティアックが開発したもので、その第一号機は今から36年前の1987年に受注生産というかたちで発売された「エソテリック P1」だった。P1はCD再生専用のディスクトランスポートで、同じく受注生産の「エソテリック D1」というD/Aコンバーターとペアを組む高級システムだった。

エソテリック P1

当初のV.R.D.S.メカニズムはターンテーブルとディスク回転用モーターが直結した設計だったが、後にバリエーションとして下側にディスク回転用モーターがあってターンテーブル部分が独立したデザインも誕生した。ここで紹介するティアックのVRDS-701とトランスポートのVRDS-701Tは、後者の構造になっている。

V.R.D.S.メカニズムはティアックとエソテリックの高級機に採用されたほかに、米国のワディア・デジタルやドイツのブルメスターにも採用されて世界的に評価を高めていった。SACDディスクに対応しているVRDS-NEOメカニズムは本家エソテリックのほかに、英国dCSが採用。最新のVRDS-ATLASメカニズムは、いまのところエソテリックだけの独占的な搭載となっている。

音のために、あえてガッシリ固定“しない”

さて、VRDS-701(VRDS-701T)のV.R.D.S.ドライブメカを見てみよう。ここで使われているトラバース(光学ピックアップのメカとディスク回転モーターを組み合わせた部分)は、ティアックが海外で製造しているもの。TASCAMブランドの放送局用として開発されて長年に渡る実績を誇る自社開発トラバースをベースにしており、それにV.R.D.S.のターンテーブルを組み合わせている。ティアックブランドとしては2003年の「VRDS-15」以来となる、新開発のV.R.D.S.メカだ。

VRDS-701(VRDS-701T)のV.R.D.S.ドライブメカ

ターンテーブルは高精度のキャスト製法で造られたアルミニウム製で過度のイナーシャ(慣性)がかからないように軽量化されたデザイン。エソテリックの新製品「K-05XD」のVRDS-NEOドライブメカのターンテーブル部分と似ているが、VRDS-701のほうはポリカーボネート樹脂と組み合わせてはおらず、シンプルなアルミニウムだけのターンテーブルになっている。

ターンテーブル部分を保持するブリッジ部分はトラス構造になっている樹脂製。軽量かつ剛性が高く、共振の発生が少ないという特徴がある素材だという。ディスクトレイを含むローダー部分も同じ樹脂製であるが、その組み合わせかたが巧妙だ。

ブリッジ部分はローダー・メカニズムの両側にネジ留めされているのだが、片側はリジッドにネジ留めされていて、もう片側はあえて緩めに留められている。これはメカニズム(トラバース)で発生する振動がブリッジを経由して反対側に伝わることを防ぐため。なんでもガッシリと固定すればいいというわけではないのだ。

V.R.D.S.ドライブメカを指で触ってみると……動く!

ちなみに、光学ディスクをターンテーブルでクランプすると、ブリッジとターンテーブルは非接触状態になる。興味深いのはローダー部分を含むV.R.D.S.メカニズム全体も筐体シャーシにリジッドに固定するのではなく、サブシャーシを使ってそれをセミフローティング状態にしてマウントしていること。たとえば筐体側から伝わる振動を物量で抑え込むというのもひとつの対処法だが、ここではドライブメカ自体をセミフローティングマウントで巧妙に遮断するという手法を採用しているのだ。ここまで凝っている内容は、すべて音質検討を重ねた結果の決定だという。オヤッと思ったのは、ディスクトレイがフラット形状になっていること。VRDS-701(VRDS-701T)は、昔にあった8cmCDへの対応をしていない。

もうひとつ興味深いのは、トラバース部分のマウント方法である。ここで使われているトラバースは基本的に4基の弾性ダンパーを使ってフローティング保持されるデザインなのだが、ここではあえて1基を省略した奇数の3基でフローティング保持している。この状態でもじゅうぶん安定しているそうで、やはり音質検討から導き出されたというから面白い。

フローティング保持されているので、ドライブメカを触ると、メカ全体が少し動く

ディスクリートDAC搭載

REFERENCEシリーズの「VRDS-701」と、USB DAC兼ネットワークプレーヤー「UD-701N」が搭載している「TEAC ΔΣディスクリートDAC」は、汎用DAC素子によるものとは異なるハイクオリティな音世界を目指したものだ。

ザイリンクス製スパルタンFPGAと高精度な円筒形のMELF抵抗器を組み合わせており、エソテリックのSACDプレーヤー「K-05XD」や、ネットワークDAC/プリ「N-05XD」が搭載している「Master Sound Discrete DAC」と似ている。ティアックとエソテリックの設計チームは社屋の同じフロアにあるし密接な協力関係にあるのは当然のことなので、私は音質の指針や回路上のコンセプトは共通しているのではと思っている。

画像で見る限り、TEAC ΔΣディスクリートDAC回路ではチャンネルあたりMELF抵抗器が各8個(HOTとCOLDで合計16個)ならんだ8エレメントなので、エソテリックのK-05XDと個数は同じ。やはり、きわめて似通っているのだ。

青くて小さなパーツがMELF抵抗器

ディスクリートDACの動作については各社とも非公表な部分が少なからずあって、例外的なのは技術的な情報をあらかた公表している英国dCSのリングDAC(特許取得済み)くらいである。

取材時にいただいたティアックの資料に基づくと、TEAC ΔΣディスクリートDACでは1bitのΔΣ変調であるDSD信号については、そのままディスクリートDACでアナログ変換処理を行なっているという。一方、CD再生やデジタル入力によるPCMではΔΣモジュレーター(変調回路)を経て1bit信号にしてアナログ変換処理しているとある。

しかしながら、取扱説明書を見ると、もっと細かな選択が可能という驚愕の事実が。PCMではΔΣ変調について512×Fs/256×Fs/128×Fsが選択できるし(Fsとは44.1kHzもしくは48kHzを意味する)、PCMではΔΣ変調の出力をマルチレベル(おおむね3~6bit程度を意味するが正確なbit数は非公表)、もしくは1bitを選択できるではないか! ちなみに、デフォルトでの設定はΔΣ変調の周波数は512×Fsになっていて、PCMのΔΣ変調出力はマルチレベルである。

では、DSDの1bitはどうなのか? ここでも興味深い設定が可能。DSDとPCMでΔΣ変調出力を1bitに設定しているときには、デジタル領域でのローパスフィルターを使わないOFFとローパスフィルターのタイプ1 (FIR 1)、そしてローパスフィルターのタイプ2 (FIR 2)の合計3つから選択できるのだ。デフォルト設定はFIR 1である。1bitの場合はディスクリート回路の各エレメントのタイミングをずらすことでフィルター回路を付加せずに移動平均フィルターを構成できるが(おそらくFIR1とFIR2がそれ)、VRDS-701やUD-701Nでは移動平均フィルターのON/OFFも設定できるというわけだ。デフォルトの設定はFIR 1になっている。

CD再生を含むPCMに関しては、デジタルデータを滑らかに補間する「RDOT-NEO」(Refined Digital Output Technology NEO)によるアップコンバート機能も用意されている。これはOFF/2×Fs (2倍アップサンプル)/4×Fs(4倍)/8×Fs(8倍)の選択で、44.1kHz系列では最高で352.8kHz、48kHz系列では最高384kHzまでアップコンバートされる。RDOTとはフルエンシー理論(懐かしい!)による類推補間技術の応用。逆のダウンコンバートはできないようになっている。

MQAのフルデコードも可能

MQAのフルデコードも大きなセールスポイントだ。MQA-CDの再生はもちろんのこと、USB接続でのMQAエンコード・デジタルファイルの再生に対してもフルデコードできるのがVRDS-701の特徴であるが、MQAではないCDやデジタルファイルでは、MQAデコーダーが内蔵しているデジタルフィルター回路は使われないという。オーディオメーカーによってはPCMでは常にMQAのデジタルフィルターを使っている場合もあるのだが、VRDS-701は違うようだ。

高精度の44.1kHz系統と48kHz系統の低位相雑音クロックを搭載していることも特徴。そして、BNC(50Ω端子)による10MHz正弦波マスタークロックの接続にも対応しているのが個人的にとても嬉しい。これで10MHzに加えてサンプリング周波数と同じワードクロック(TTLレベルの矩形波)にも対応していただけるとパーフェクトなのだが、デジタルファイルでは44.1kHz系と48kHz系が混在しているので10MHzマスタークロックの一本化というのは納得できる。

BNCの10MHz正弦波マスタークロック入力も備えている

VRDS-701は電源部もかなり充実しており、なんと3基のトロイダル型電源トランスを搭載した。内訳としてはV.R.D.S.ドライブメカ+復調回路基板の電源とコントロール系の電源、そしてデジタルインターフェースとD/A変換回路のオーディオ電源なのだろう。オーディオ電源のトロイダル型電源トランスが最も大きく、2次側の出力は左右独立の巻き線になっているようだ。

3基のトロイダル型電源トランスを搭載している

上記のオーディオ電源にも関係するところだが、回路基板のパターン・レイアウトを見ていくと、ディスクリートDAC回路から上段のアナログ出力回路はバランス伝送になっていて、しかも左右チャンネルが対称的に配置されていることがわかる。

このフルバランス構成のアナログ回路はエソテリックの流れを汲む電流伝送強化型出力バッファー回路になっていて、しかもTEAC-QVCSという独立4回路のアナログ方式(デジタル・コントロール)アッテネーター(ボリュームIC)が組み込まれた。この回路はパワーアンプを直接ドライブできる強力な内容である。VRDS-701では左右のレベル偏差がない状態で-95dBから+24dBまで0.5デシベル・ステップの細やかな音量調整を可能にしている。

これにより、同じ「701」シリーズのパワーアンプ「AP-701」と組み合わせると、別途プリアンプを使わずに、VRDS-701とAP-701だけでCD再生環境が構築できる。

細やかな音量調整が可能
VRDS-701(上)とAP-701(下)だけでCD再生環境が構築できる

アナログ出力の電流伝送強化型出力バッファー回路は、内蔵するヘッドフォンアンプにも音質的な恩恵を与えているようだ。S/N比に優れた1000V/μsのハイ・スルーレートを誇る高出力ヘッドフォンアンプを搭載しているのだ。

細やかな音量調整が可能。ヘッドフォンアンプも搭載している

USB接続DACとしても使うことのできるVRDS-701であるが、背面にあるUSB端子は多くのオーディオ機器で採用されている一般的なUSB-B端子ではなくUSB-C端子である。CDトランスポートのVRDS-701Tではファームウェアのアップデート用としてUSB-C端子を搭載しているので、おそらくVRDS-701でもその用途が考えられているのだろう。

USB接続では、インターフェース株式会社による、安定したデータ転送が可能な「Bulk Pet」にも対応。一定のデータ量をコンスタントに転送することで、送信側と受信側にかかる処理の負荷を平均化するという技術である。4種類の転送モードから選択できるようになっている。Windows/Macに対応している無償提供の再生アプリ「TEAC HR Audio Player」を使うことで、PCM 384kHz/32bitやDSD 22.5MHz(DSD512)のハイレゾ音源再生も容易に行なえる。

筐体設計と構造について述べておこう。前述した合計3基のトロイダル型電源トランスであるが、そのマウントは底板部分から浮かせたフローティング構造を採用している。また、放熱を兼ねている押し出し材アルミニウムの側板にあるフィン(合計17)は共振の発生を防ぐためにひとつずつ長さが微妙に異なるという凝ったデザインになっている。脚部はスチール削り出しのピンポイントフットによる独自構造の3点接地。アルミニウム製の天板は、独特の形状をしたスチール材を介してフローティングするように留められている。最近のエソテリック製品も天板部分をリジッドに固定しない手法に改められているが、これも音質検討の結果だという。

横から見ると、押し出し材アルミニウムの側板にあるフィンが、共振を防ぐためにひとつずつ長さが微妙に異なっているのがわかる
脚部はスチール削り出しのピンポイントフット
天板は、独特の形状をしたスチール材を介してフローティングするように留められている

音の素晴らしさと、設定の多彩さ

短時間ではあるが、VRDS-701の音を聴くことができた。まだ発売前の取材なので最終的な音質ではないが、機能を含めてあらかた完成したという状態である。場所はティアック本社にある広大な空間の試聴室。エソテリック製品の試聴も行なわれる場所で、エソテリックがオーディオショップ向けに販売するハイブリッド盤SACDのマスタリング作業もこの試聴室で行なわれている。

意外に思われるかも知れないが、私にとってティアック製品を聴くのはとても久しぶりのこと。おそらく数年ぶりではないだろうか。一方で、エソテリックについてはすべての製品をこの試聴室で聴いている。そのため試聴室の音空間にも慣れており、音を把握するのに時間を要することはなかった。

最初に聴いたのは女性ジャズボーカルのソフィー・ミルマン「テイク・ラヴ・イージー」からの「ビューティフル・ラヴ」である。しっとりと艶のある彼女の歌声にウッドベースの弾みがあるリズムが乗り、ジャズギターとワイヤーブラシで操るドラムとピアノが加わっていく楽曲だ。一聴して感じたのは、やはりエソテリックのMaster Sound Discrete DACと一脈通じる音の上質な雰囲気。声色の自然さと表情の細やかな変化はもとより、音像描写に濃密さを感じさせる音である。演奏自体も躍動的で楽器の質感も好ましく再現された魅力的な音の語り口に、私はすぐに惹かれてしまった。

この状態では「RDOT-NEO」のアップコンバートはOFFになっていて、ΔΣ変調出力は512×Fs(22.5MHz)のマルチレベルというデフォルト値。これをΔΣ変調出力だけ1bitにしてもらうと、微妙ながらも雰囲気が変わる。何度も比較検証できたわけではないが、音場空間の深みは1bitよりもデフォルトのマルチレベルのほうが良さそうに感じたし、1bitでは音場空間の左右の拡がりが良さそうな……。即断は避けなければならないけれども、いずれにしても音の変化はあるしユーザーが設定を選べるというのがありがたい!

これもデフォルト設定で聴いたが、イーグルスのライヴ音源「ヘル・フリーゼス・オーヴァー」からの「ホテル・カリフォルニア」の音にも感激した。V.R.D.S.ドライブメカの恩恵は音の重心が低い安定感に顕れているようだし、ガット弦を張ったギターの音色がリアルな感じで、オーディエンスの拍手や口笛の音数が多くて密度も高い。エソテリックとティアックは異なる音の方向性かと思っていた自分を恥じてしまうが、VRDS-701の音を聴く限りはエソテリックとティアックの音傾向がシームレスに繋がっているように思えた。

クラシック音楽はステレオサウンドからリリースされている山中敬三氏の構成・解説による「ドイツ・グラモフォン・ベスト・レコーディング」から、オペラ「アルジェのイタリア女」を聴いた。ステージのやや左寄りから歌うバスとメッゾソプラノの朗々とした歌声は生々しく堂々と響き、アバド指揮ウィーンフィルの演奏も旋律が細部まで美しく表現されてダイナミックさも申し分ない。言いわすれてしまったが、試聴機材はVRDS-701と同じティアックのREFERENCEシリーズにあるステレオパワーアンプAP-701(Hypex製N-CoreのクラスDパワーアンプ・モジュールを搭載)を組み合わせたダイレクト接続で、B&Wの800D3を鳴らすという環境だった。

この組み合わせに10MHzマスタークロックのCG-10M(REFERENCEシリーズ)とクロック接続できたなら、一段と解像感の高い音が得られたことだろう。久しぶりにティアック製品を聴いた私だが、VRDS-701が聴かせた音質の素晴らしさとユーザー設定の多彩さに惚れ込んだ次第である。

なお、現状でTEAC ΔΣディスクリートDACを搭載しているのはVRDS-701と、USB DAC兼ネットワークプレーヤー「UD-701N」の2機種だけ。UD-701Nを既に持っている場合は、DACを搭載していないCDトランスポートのVRDS-701Tと組み合わせるといいだろう。

VRDS-701Tは、VRDS-701からディスクリートDACやUSB-Cなどのデジタル入力部分を省いた内容だが、MQAのコアデコーダーは搭載しており、MQA-CDを88.2kHzサンプリングでデジタル出力できる。VRDS-701と同様に10MHzマスタークロック入力も備えているので、「CG-10M」があればVRDS-701TとUD-701Nの両方にマスタークロックを送った同期運転が可能になるというのも大きな魅力だ。

ちなみに、VRDS-701とVRDS-701Tのフロントパネルを見比べるとボリューム用のノブやヘッドフォン端子がないけれども、トラック送り/戻しのノブの位置関係が微妙に違っているのがわかる。CDトランスポートのVRDS-701Tには専用のデザインレイアウトが施されているのだ。

デジタル出力は同軸とトスリンク光の2種類である。SACDは再生できないけれどもハイブリッド盤SACDのCD層は再生できるので、それでオーケーというならVRDS-701TをハイエンドクラスのDACと組み合わせるというのも妙案だろう。CDトランスポートの分野は製品数が少なくなっているので、新製品のVRDS-701Tは狙い目といえよう。

上からVRDS-701T、VRDS-701。ノブの位置が微妙に違うのがわかる

ティアックのREFERENCEシリーズのなかでも、VRDS-701はUD-701Nと共にティアック ΔΣディスクリートDACを搭載するトップエンド機だ。この音は是非とも聴いておくべき価値があると思う。お気に入りのCDと愛用ヘッドフォンを持参して、オーディオショップを訪ねてみるというのはどうだろう。

手掛けた4人にお話を伺った。左下から時計回りに開発・企画本部 開発グループの村田龍哉部長、機構設計グループ藤村信彦氏、電気設計グループ 岡田千里氏、開発・企画本部 吉田穣氏

(協力:ティアック)

三浦 孝仁

中学時分からオーディオに目覚めて以来のピュアオーディオマニア。1980年代から季刊ステレオサウンド誌を中心にオーディオ評論を行なっている。