レビュー

月1,000円で聞き放題! 定額制音楽配信3サービス比較

Music Unlimited、KKBOX、レコチョク Bestの特徴は?

 一定の料金を支払えば聴き放題になる定額制音楽配信サービスが、世界的に活気を帯びてきている。海外ではすでに多数のサービスが提供されており、中でも「Spotify」や「Pandora」などのメジャーどころは数百万人から数千万人規模のユーザーを集めているほど。Googleも「Google Play Music All Access」として、アメリカやオーストラリアなどで同様のサービスを開始したばかりだ。

 一方、国内で現在利用できる主要な定額制音楽配信サービスには、ソニーの「Music Unlimited」、レコチョクの「レコチョク Best」、KDDIの「KKBOX」などがある。他にも多くのサービスがあるが、レコチョクが音源提供などでサービスに関わっているものが多い。例えば、NTTぷららの「ひかりTVミュージック」などは、「レコチョク Best」とほぼ同一の音源を使用しているようだ。

 いずれのサービスも収録楽曲数は膨大で、かつ料金も月額1,000円程度。サービス開始当初のように料金が割高に感じられたり、音質が良くない、といったような状況は改善されつつあるようだ。しかしながら、前述の「Spotify」の日本市場参入が噂されていることもあり、今後配信会社の間で激しい競争が繰り広げられることになるのは間違いないだろう。今回は、「Music Unlimited」、「レコチョク Best」、「KKBOX」という国内で楽しめる3つの定額制音楽配信サービスを使いながら、特徴や違いをまとめた。

圧倒的な曲数、対応機器の多彩さが魅力の「Music Unlimited」

 ソニーが提供する「Music Unlimited」は、1,500万曲以上という収録楽曲の多さが最大の魅力。対応機器・プラットフォームは、iOS端末、Androidスマートフォン・タブレット、Android搭載ウォークマン、Windows PCやMacOSのWebブラウザ、PlayStation 3、PlayStation Vitaのほか、ソニーのテレビ「BRAVIA」やBlu-ray Discプレーヤー、その他AV機器など多彩だ。

「Music Unlimited」のAndroid版アプリ
「Music Unlimited」のiOS版アプリ
PCのWebブラウザ上で楽曲を再生しているところ
PlayStation 3上でも利用できる

 キーワード検索でアーティストや曲を探すこともできるが、新着や人気の高い曲、“チャンネル”での特集など、「Music Unlimited」がおすすめするものを聴いていくのが基本的な使い方になる。洋楽のラインアップが中心ではあるものの、邦楽も徐々に増えてきているようで、ソニーミュージックからリリースされている楽曲については一部独占的に収録しているものもある。

ジャンルや年代、Music Unlimitedおすすめの特集などで分類された曲をランダムで聴いていける“チャンネル”
ジャンルごとの人気曲から探すこともできる

 ところが、ソニーミュージック所属アーティストであっても他レーベルからリリースされている曲の場合、「レコチョク Best」などの他のサービスでは聴けても「Music Unlimited」には収録されていないというパターンも多い。このあたりは一長一短といったところだろうか。いずれにしても、今のところコンテンツは邦楽よりも洋楽がメインであることを念頭に置いておいたほうがよさそうだ。

“高音質モード”では320kbpsでストリーミング再生可能

 ストリーミング再生時の配信フォーマットはHE-AAC 48kbpsの“通常モード”と、AAC 320kbpsの“高音質モード”から選択できる。2013年1月にPC向けから高音質対応が始まり、現在はiOSとAndroidでも高音質で聴けるようになった。無線LAN(Wi-Fi)に限らずモバイルネットワークでも“高音質モード”を利用可能だ。当然ながら通信量はその分増えるため、パケット通信の料金プランには注意しておきたい。

 モバイルアプリでは、通信できない場所でも曲を聴くことができる“オフラインモード”も用意されており、最大4,000曲まで保管しておける。ただし、探した曲をあらかじめオフライン用のプレイリストに手作業で登録しておく必要があること、再生ビットレートが必ず48kbpsになってしまうこと、オフライン再生が可能な機器が3台までに制限されること、といった点がデメリットと感じる人もいるだろう。

ちなみに、オフライン用のプレイリストの使い方はAndroidとiOSとで異なる。こちらはAndroidアプリのメニュー
プレイリスト作成時にオフライン用のプレイリストにすることを指定しなければならない
オフラインで聴ける曲かどうかはアイコン右下の緑色のマークでわかるようになっている
iOS用のメニュー。オフライン用のプレイリストが設けられている
プレイリストへの追加時もボタンを選ぶだけ
オフライン用のプレイリストかどうかが大きくタイトル表示されていてわかりやすい

 利用料金は2012年のサービス開始当初は30日間1,480円だったが、2013年3月1日以降から980円に値下げされ、他のサービスと料金上の差はほとんどなくなった。加入後の30日間は無料で利用できるが、Sony Entertainment Network(SEN)への加入が必要で、さらにクレジットカードを登録しないと30秒間のみの視聴しかできないので要注意。支払いはSENの“ウォレット”から行ない、“ウォレット”に必要な金額がチャージされていない場合はクレジットカードから自動チャージされる。

 プレーヤーとしての機能はシンプルで、音質を調整するような機能はほとんどない。音楽を見つけて再生することのみに的を絞った内容になっており、未知の曲やアーティストに出会って純粋に音楽を楽しみたい、というユーザーに向いていると言える。多数の機器・プラットフォームに対応していることから、外出時はスマートフォンで、仕事中はPCで、帰宅した後はゲーム機で、といったように、シチュエーションに合わせてプレイリストを同期しながら利用できるのがうれしいところ。

 なお、モバイルアプリでも、PCでも、SNSとの連携機能は大きく打ち出してはいない。正確に言えば、Androidアプリのみ共有機能を用いて他のアプリと連携できるため、聴いている曲の情報をツイートしたりはできるが、他のユーザーにとってあまり意味のある投稿にならないのが残念なところだ。

Androidでは共有機能でSNSアプリと連携もできるが……
投稿されるリンクは「Music Unlimited」をインストールしているスマートフォンでしか閲覧できない仕様だ

好きなアーティストの曲を探したいなら「レコチョク Best」

 レコチョクは、1曲ごとの個別課金となる「音楽ダウンロードサイト レコチョク」というサービスを運営しているが、定額制サービスは「レコチョク Best」という名称で提供している。収録数は100万曲以上、対応機器・プラットフォームはAndroid端末とiOS端末のみで、スマートフォン・タブレット専用のサービスとなっている。

Androidアプリの「レコチョク Best」トップ画面と再生画面
iOSアプリの「レコチョク Best」トップ画面と再生画面

 Music Unlimitedと同様に曲はキーワード検索したり、“アーティストBest”、“テーマ別Best”といったレコチョクおすすめのものから探して聴くことができるほか、ジャンル別やアーティスト別の一覧から探していくこともできるので、お気に入りのアーティストがいるのであれば最もとっつきやすく使い勝手の良いサービスと思われる。おすすめしている曲も邦楽を中心に、洋楽やK-POP、季節の特集など幅広い。

ジャンルごとのアーティスト一覧、もしくはアーティスト50音順から曲を探せる、スタンダードな使い勝手がうれしい

 配信フォーマットはAAC 128kbpsと320kbps。320kbpsで聴くにはWi-Fi接続が必須となり、モバイルネットワーク下では128kbpsで受信することになる。とはいえ、外出時の喧騒の中で聴く分には、320kbpsと128kbpsの違いが気になることはほとんどないだろう。

 こちらも電波の届かない時などにオフラインで聴けるよう“キャッシュ”機能が備えられている。一度再生した曲は自動でキャッシュに蓄えられていく仕組みになっており、最大8GBまで端末のストレージやSDカードに保管できる。ユーザーが手動で曲をキャッシュすることもでき、その場合、1曲ずつはもちろんのこと、アルバムごとキャッシュさせることも可能。気に入ったアーティストのアルバムはとりあえず全部キャッシュしておいて後でゆっくり聴く、という使い方も簡単だ。オフラインでも320kbpsのまま聴けるのはありがたい。

ビットレートは128kbpsと320kbpsの2種類。キャッシュは最大8GBまで
キャッシュしてオフラインで聴けるようになった楽曲は一覧で確認できる

 ユーザー登録後14日間は無料で体験でき、その後の利用料金は980円/月。無料体験期間中にクレジットカード、ドコモSPモード決済、auかんたん決済のいずれかで支払った場合は無料体験期間が1カ月に延長される。ただしiOSアプリのアプリ内課金で決済した場合は1,000円/月となり、1カ月間の無料体験期間が付与されない。また、Androidアプリのアプリ内課金(Google Wallet)で決済した場合は980円/月になるものの、こちらも1カ月間の無料体験期間は付与されない。

 SNSとの連携機能があり、アカウントを登録しておけば、Twitter、Facebook、mixiに現在聴いている曲の情報を投稿可能。再生中に曲の歌詞を表示できるだけでなく、作詞・作曲者までわかるのは意外にうれしいかもしれない。さらに、iOSであればiTunesで管理している曲、Androidであれば端末内に入っている曲も本アプリで再生でき、汎用的なメディアプレーヤーとしても活用できる。

TwitterやFacebookだけでなく、mixiとも連携できる
端末内の楽曲も同じアプリ内で再生可能

 絶対的な曲数はMusic Unlimitedに劣るものの、邦楽の収録数は感覚的には「レコチョク Best」の方が多く、ジャンルやアーティストの一覧から探せるという使い勝手からも、好きなアーティストの曲を集中的に聴きたい人にはぴったりのサービスと言えそうだ。

ソーシャル機能とC-POPが充実した「KKBOX」

 KDDIがauブランドのサービスの一つとして展開しているのが「KKBOX」だ。(訂正)アジア向けに音楽配信プラットフォームを提供している台湾の企業を買収し、「LISMO unlimited powered by レコチョク」という名称で日本でサービスインしたが、2013年6月1日に「KKBOX」へと改称。しかしながら音源自体は少なくとも一部はレコチョクからの提供を継続しているようで、収録楽曲数も100万曲以上と「レコチョク Best」と同等だ。auのスマートフォン以外にも対応しており、Android/iOSアプリと、Windows/Macの専用アプリケーションで利用できる。

Androidアプリのトップ画面と再生画面
iOSアプリのトップ画面と再生画面
こちらはMac用のアプリケーション

 楽曲は、新着とKKBOXがおすすめするテーマ別の特集、ジャンルの一覧から探すことができる。台湾発のアプリということもあり、C-POP(中国のポップミュージック)や香港POPといったジャンルが用意されているのも特徴だ。また、その時の気分に合う曲を自動で提案してくれる“クイック再生”機能も活用しがいがある。年代やジャンルで絞ることもでき、心に響く音楽と出会えるかもしれない。

 さらに、独自のソーシャル機能により、他のユーザーがリアルタイムに聴いている曲を“一緒に聴く”という使い方もできるようになっている。この時は再生位置が同期され、そのユーザーとテキストチャットもでき、お互いに感想を話し合ったり“友達”になったりしてコミュニケーションを楽しめる。曲の情報やアーティストの情報をSNSに投稿して共有できるうえ、KKBOXのアプリ内でアーティストを“フォロー”できるのも面白い。

“ミュージックチャンネル”ではC-POPカテゴリーが用意されている
その時の気分に合った曲を提案してくれる“クイック再生”
アーティスト自身が公式にKKBOXのアカウントを持っていなくても、フォローはできてしまう

 配信ビットレートは“標準音質(128kbps)”と“高音質(320kbps)”の2種類で「レコチョク Best」と同じだが、モバイルネットワーク下でも320kbpsで再生できる点が異なる。“キャッシュ”機能も備え、もちろん320kbpsで、再生した曲を自動でキャッシュしていくことが可能。最大2,000曲まで保管できることから、たとえばJ-POPに多い再生時間4分間程度の曲を想定した場合は、「レコチョク Best」よりも多くの楽曲をキャッシュしておけることになる。

最高音質はこちらも320kbps。キャッシュできる曲数は最大2,000曲となっている

 ジャンルごとに適した音質に変化させられるイコライザーのほか、低音強調やノーマライズの機能もあり、プレーヤーとしての機能が充実しているのも他のサービスと異なるところ。歌詞表示では再生箇所に合わせて強調表示したり、タップした歌詞の再生位置にシークすることも可能だ。せっかくならインストゥルメンタルバージョンでも同じように歌詞表示があると、カラオケ好きの人には便利だったと思うのだが……。

ジャンルごとに適切な音質を実現するイコライザーや、低音強調の設定がある
再生位置に合わせて歌詞を強調表示してくれるカラオケ的な演出も

 Facebookアカウントでユーザー登録すると7日間無料体験でき、その後は980円/月と2,940円/90日間の2パターンの料金プランから選んで利用する。前者はクレジットカード、auかんたん決済、ドコモケータイ払いに加え、PayPalを利用して支払える。このうちauかんたん決済を使った場合は1カ月間無料で利用可能。後者の90日間払いはクレジットカード、PayPal、WebMoneyのみとなっており、無料利用期間はない。

 TwitterとFacebookに聴いている曲の情報を投稿できるほか、中国独自のSNSであるWeiboとも連携できる。Weiboを国内ユーザーが積極的に使うとは思えないが、独自のソーシャル機能とも合わせ、他のサービスにはない新しい音楽とのふれ合い方を楽しめるのが一番のポイント。スマートフォン時代ならではの機能を活かして音楽を新鮮な気持ちで体験してみたいならおすすめだ。

“一緒に聴く”機能で、他のユーザーと同じ曲を聴ける。中国、台湾と思われるユーザーが多いようだ
ただし、他のユーザーと国が違う場合は曲を聴けない場合もある
KKBOX
Google Play(Android)KKBOX
iTunes Store(iOS)KKBOX

定額制サービスは“いかにして音楽に出会うか”がキモ

 以上、各サービスについて簡単に紹介してきた。これらサービスの内容を比較しやすいよう表にまとめてみたので参考にしていただきたい。

Music Unlimitedレコチョク BestKKBOX
収録楽曲数1,500万曲以上100万曲以上100万曲以上
対応機器iOS
Android
Windows/Mac-
その他○(PS3、AV機器など)--
配信
フォーマット
HE-AAC 48kbps
/AAC 320kbps
AAC 128、
320kbps
AAC 128
320kbps
最大ビットレート
(非Wi-Fi時)
320kbps128kbps320kbps
最大ビットレート
(オフライン時)
48kbps320kbps320kbps
保管可能
オフライン楽曲数
4,000曲8GB2,000曲
歌詞表示-
SNS連携
端末内
楽曲再生
--
無料期間最大30日間最大1カ月間最大1カ月間
料金980円/30日間980~1,000円/月980円/月、
2,940円/90日間
支払い方法クレジットカードクレジットカード
ドコモSPモード決済
auかんたん決済
クレジットカード
auかんたん決済
ドコモケータイ払い
PayPal
Webmoney
その他特徴洋楽中心
多彩な対応機器
ジャンル別、アーティスト別検索
端末内の楽曲も再生可能
C-POPを収録
独自SNS
イコライザー等音質改善機能

 Music Unlimitedの1,500万曲に比べれば、他の100万曲は少なく感じるかもしれないが、どちらにしても全て残さず聴けるような数ではない。したがって、どのサービスも“いかにして音楽と出会ってもらうか”にこだわっているように見受けられる。個人的には「レコチョク Best」のようにオーソドックスにジャンルやアーティストの一覧から選べる方が使い勝手が良く感じるものの、お気に入りのアーティストの曲がすべて網羅されているわけではないことを頭に入れておく必要がある。“出会う”という意味では、洋楽が豊富な「Music Unlimited」や、ソーシャル機能が充実した「KKBOX」も魅力的だ。

 今後も新たな定額制音楽配信サービスが登場するものと思われるが、収録曲数がサービスの善し悪しを決める要素になり得ないのは明らか。音質は(オフライン時の差はあるとしても)どのサービスも十分なクオリティで、料金も月額1,000円未満に落ち着きつつある。邦楽と洋楽のどちらを中心に聴きたいのか、ソーシャル機能を活用して新しい楽しみ方を追求したいか、といったあたりがサービスを選ぶ際の判断基準になるかもしれない。

 ただ、あらゆる音楽を無制限に聴ける定額制サービスを利用することによって、音楽との付き合い方がこれまでと大きく変わってくることは間違いない。好きなアーティストのCDを買ったり、個別課金のサービスで入手してじっくり聴き込むようなスタイルから離れ、全く知らなかった音楽に触れる面白さを一度体験してみてはいかがだろう。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。