レビュー
iPad/iPhoneで録画番組持ち出し対応! 「DiXiM DTV iOS 3.0」をチェック
チャプタスキップやバッファ選択など機能向上も
(2013/12/1 10:31)
デジオンは、iOS向けのDTCP-IP対応プレーヤーアプリケーション「DiXiM Digital TV for iOS」(DiXiM DTV)の最新版となるVer.3.0.0を11月29日に公開した。最大の特徴といえるのが、録画番組の持ち出しへの対応で、アプリ(1,000円)と追加のアドオン「宅外視聴プレミアム」(500円)をアプリ内課金で購入することで、iPadやiPhoneでデジタル放送の録画番組の持ち出しが可能になる。
DiXiM DTVの対応OSはiOS 5以上。機種はiPhone 4s以降、iPad 2以降(iPad Air含む)、iPad mini(Retinaモデル含む)、iPod touch 第5世代に対応する。今回はSCEのネットワークレコーダ「nasne」と、iPad Air、DiXiM DTVの組み合わせで番組持ち出しを中心にVer.3.0.0の新機能をテストする。
予告されていた番組持ち出しに対応。チャプタスキップなど新機能も
DiXiM Digital TV for iOS Ver.3.0.0最大のポイントは、録画番組の持ち出しへの対応。パケットビデオの「Twonky Beam」、アルファシステムズの「Media Link Player for DTV」など、他のDTCP-IP対応アプリではすでに対応している機能で、DiXiM DTVも今後の対応を明言していたが、ついに今回のバージョンで持ち出し機能が搭載された。
なお、本機能はVer.2.0.0で対応したDTCP+とともに、500円を追加して支払うことで利用できるアドオンとして提供される。すでにVer.2.0.0でDTCP+対応アドオンを追加している場合は、追加費用の必要なく持ち出し機能を利用可能。初めて利用する場合はアプリ価格1,000円に加えて500円を支払うことで、DTCP+と番組持ち出しの両方を利用できる。今回のバージョンアップに伴い、これまで「DiXiMリモートアクセスサービス」という名称だったアドオンは、持ち出しを含めた「宅外視聴プレミアム」に改称された。
持ち出し再生以外にも新機能としてチャプタスキップ機能、録画番組の削除機能、WOL(Wake On LAN)対応、バッファサイズの手動選択が搭載された。これら機能はアドオンを購入することなく利用可能だ。詳細は後述するが、バッファサイズ手動選択以外の機能は、接続するレコーダやDTCP-IPサーバーによって対応状況が異なり、機器によって利用できない場合もある。
Ver.3.00の新機能
- 録画番組持ち出し対応(要アドオン)
- チャプタスキップ対応
- 録画番組の削除対応
- WOL(Wake On LAN)対応
- バッファサイズの手動選択対応
番組持ち出しの操作はシンプル。ネット接続不要が魅力
まずは最大の特徴である持ち出し機能から見てみよう。
操作は非常にシンプルで、DiXiM DTVからレコーダ/サーバー(今回はnasne)を選択し、持ち出ししたい番組を選ぶ。ここで、番組名の横に「i」と表示されているボタンを選択すると、番組の再生に加えてダビング可能な回数が表示され、これをタップすることで録画番組のダウンロードが可能になる。また、一覧表示から番組名を横にスワイプすることでも同様の操作が可能だ。慣れればこちらのほうが操作しやすいだろう。
なお、番組の持ち出し機能を利用するためには、レコーダ側で持ち出し用の動画を用意しておく必要がある。nasneの場合、録画と同時に持ち出し用のファイルを作成するため事前準備は不要。その他の機器では、録画時に持ち出し番組作成を選択するなどの操作が必要なものもある。持ち出し番組の対応レコーダについては、デジオンのホームページで案内している。
なお、パナソニックのレコーダ「DIGA」2013年春モデル以降のDMR-BZT750/BWT650/BWT550とDMR-BZT9600/BZT860/BT760/BWT660/BWT560では、DiXiM DTVから持ち出し操作を行なうと、レコーダ側が持ち出し用の番組をトランスコードしながら転送する機能を備えているため、実時間の約2倍速で転送が可能としている。今後、番組持ち出しを前提とした、こうした機能を持つレコーダが増えてくることを期待したい。
ダウンロードした番組はメニュー画面下部の「持ち出し番組」からアクセス可能。再生インターフェイスはストリーミング時と変わらず、スキップ機能やブラウザの同時表示機能なども利用できる。
宅内でフレッツ光向けルータ「RV-A340NE」を経由し、DiXiM DTVで持ち出し機能を利用したところ、DRモードで録画した60分番組で6分30秒、3倍モードで録画した60分番組で4分13秒程度でダウンロードが完了した。DRモードのほうが時間はかかるものの、それでも実時間の1/10程度でダウンロードが可能だ。
レスポンスは本体に保存しただけあって非常に早い。nasneでDRモード録画した番組を再生した場合、ストリーミングは再生まで3秒程度、スキップに1秒程度かかるのに対し、持ち出し番組では、再生は番組を選択してから1秒程度、スキップはタッチした直後に反応する。何より通勤中などもパケット料金を気にすることなく安定した画質で番組を楽しめるのが嬉しいポイントだ。
番組ダウンロード中にダウンロード済みの番組やレコーダの録画番組をストリーミング再生することもできるほか、複数番組をまとめてダウンロードすることも可能。ダウンロードの操作は番組ごと行なう必要はあるが、選択した順に自動でダウンロードを行なうため、翌日に見たい番組を寝る前にまとめてダウンロードしておくこともできる。
チャプタスキップなどの新機能の多くは対応機種が限定的
番組持ち出し以外の新機能はレコーダの機種によって利用可否が異なり、チャプタ機能は、パナソニックのDIGA、ソニーのBDレコーダなど一部機種のみで利用できる機能だ。
nasneは非対応(nasneがチャプタ生成していない)だが、DIGA「DMR-BZT600」では対応していた。録画番組にチャプタが設定されている場合、番組再生中に表示される画面左上のチャプタアイコンが点灯し、チャプタが設定された時間へ移動できる。持ち出し番組であればレスポンスも早いためCMを飛ばして本編だけを視聴するなど、手軽にシーンの移動が可能だが、ホームネットワーク内でのストリーミング(DTCP-IP)でもチャプタスキップ/バックは利用できる。効率的に番組を消化するには非常に便利な機能だ。
【追記】
12月12日公開のnasneのシステムソフトウェアVer.2.10により、nasneがチャプタ生成に対応した(記事)。これにより、DiXiM Digital TV for iOS 3.0.0でもnasneのチャプタスキップが可能となった(デジオンの発表)(12月12日追記)
録画番組の削除は、アイ・オー・データ機器やバッファローなどのNASで、「Destroy Object」に対応した機器向けの機能。通常、DiXiM DTVから利用できるのは番組の視聴のみで、録画番組の削除はレコーダやブラウザなどから操作する必要があったが、Ver.3.0.0かつ対応NASであれば、DiXiM DTVから簡単に録画番組を削除できるようになった。
削除は同一ネットワークだけでなく、DTCP+を利用して外出先からリモートアクセスで削除することも可能。外出先で視聴し終わった番組の削除をいちいち家に戻ってから行なう必要が無いため、リモートアクセスのユーザーにとって視聴・未視聴の番組管理が便利になる。削除はバックグラウンドで行なわれるため、同じサーバーの録画番組を再生しながら同時に削除することも可能だ。
WOLは、nasneなど対応機種がスリープ状態にある場合にDiXiM DTVからスリープを解除して起動できる機能。対応機種であるnasneの場合、一定時間操作がないとスリープ状態に移行するモードが用意されているが、同一ネットワークに接続したDiXiM DTVからアクセスすることでスリープ状態のレコーダをリモートで起動することができる。
ただし、nasneの場合はスリープ機能をオンにするためには、最新バージョンのVer.2.00で搭載された「Anytime Access(エニタイムアクセス)」「nasneシェア」といった機能をオフにしなければならない。また、スリープ中はWebサイト「CHAN-TORU」を経由したリモート予約も受け付けなくなるため、これら機能を活用しているユーザーにはあまり利用するメリットがないかもしれない。
Ver.3.0.0ではバッファサイズの設定変更も可能になり、こちらはレコーダの機種を問わずDiXiM DTVのみで利用できる。バッファサイズは初期状態で最大(10秒)に設定されているが、このサイズを小さく(最小で3秒)することで、ストリーミング再生時のレスポンスを向上させられる。自宅などネットワーク環境が安定している場合はバッファを少なめに設定しておくことで再生までの時間を短くすることが可能だ。DIGAの「DMR-BZT600」では再生開始までの時間が半分以下になり、かなりのレスポンス改善が体感できた。
とはいえ、nasneで試した際は、大幅な時間短縮というほどまでではなく、iPad Airでアクセスする限りはバッファサイズが最大と最小でも1秒程度しか差は感じられなかった。nasneの場合、録画番組の配信はトランスコードを行なわず、SD解像度の番組を配信するため、3秒でも10秒でもバッファはすぐにたまるため、余り差が出ないようだ。
nasneでも、ライブチューナー(放送転送)の場合は、トランスコード処理が入るため、再生開始までの時間は大幅に削減される。ホームネットワークでのストリーミング再生のレスポンスに不満を感じたら、この設定を確認したい。
番組持ち出しの対応で死角無しの魅力的なDTCP-IPアプリに
細かな機能がいくつも追加されてはいるものの、やはり今回の注目は番組の持ち出し機能だろう。Twonky Beam、Media Link Player for DTVと比べて機能面で劣るところは無くなっただけでなく、DTCP+対応というDiXiM DTVならではの機能を持つことで非常に魅力度の高いアプリとなった。バッファサイズの変更や録画番組の削除、WOLなど細かな点で使い勝手も向上しており、元来の快適なレスポンスも合わせてとても魅力的なアプリに仕上がっている。
アドオンを含んだアプリ価格は1,500円と、Twonky Beamの700円、Media Link Player for DTVの850円と比べると値は張るが、レスポンスの良さや細かな機能向上、そして対応機種の多さは魅力的。アプリやアドオンは一度購入すれば他のiOS端末でも利用できるため汎用性も高く、価格なりのパフォーマンスは十分に実感できるだろう。
持ち出し機能の対応で予告していた機能はほぼ提供が終わり、実用上も十分ではあるが、今後期待したいのは持ち出し機能の自動ダウンロード機能。Android版DiXiMである「DiXiM for Android」の最新バージョン「Ver.4.1」では自動ダウンロードを搭載しており、指定した番組を寝ている間にダウンロードできる。持ち出しを愛用するユーザーにとっては毎回ダウンロードする手間を省く非常に便利な機能だけに、iOS版でも対応を期待したいところだ。