レビュー
わくわくするキュートさ。小さなGoPro「HERO4 Session」
大胆に四角く、扱いやすくなった新アクションカム
(2015/7/17 10:00)
世界中のスポーツ愛好家に親しまれ、テレビ番組でも使用シーンを頻繁に見かけるようになった小型カメラ「GoPro」、その最新版となる「GoPro HERO4 Session」が7月16日に発売された。初代GoProから頑なに守り通してきたオフセットさせたレンズを備える長方形から、キューブ状にデザインを一新し、「GoPro史上最小・最軽量」をうたう。価格は強気の52,000円だ。
形が大きく変化したことで、撮影時の使い勝手が変わる部分はあるのか、また性能面ではどう進化しているのか。実際に触れてみると、キューブになっただけで、こうも製品に対する印象が変わるものなのか、と驚くと同時に、このキューブ型が今後のGoProやアクションカム市場に与える影響は小さくないだろうと感じる製品だった。
プロ向けからエントリー向け拡大へ
しばらく前までのGoProは、可能な限り歴代のハウジングやアクセサリーの互換性を維持しながら、その中でとことん高性能を追求する方向性で進化を続けてきた。フルHD、2.7K、4Kといった高解像度やハイフレームレート、暗い場所でも明るく撮れるAuto Low Light/Night Lapseなどの画質向上機能を詰め込んで、プロユースを意識したスペックとプライスで価値を高めた。
その流れに変化が訪れたのは2014年9月。ハイエンド向けのGoPro HERO4 Blackの発表と同時に、エントリー向けの低価格な「GoPro HERO」が登場した。それまでもSilverやWhiteという性能と価格を抑えたエディションをラインアップしていたものの、完全にエントリーユーザーを狙った分かりやすい見た目でリリースしたのはそれが初めてのこと。明らかに、これまで「アクションカム」に関心の薄かった広い層をターゲットにし始めている。
その延長線上に今回のHERO4 Sessionのキューブ形状があるはずだ。従来のカメラ然としたスタイルを捨て去り、キュートでちょっとばかりのおしゃれさを持ち合わせた四角いHERO4 Sessionは、今までで最もクールで万人受けしそうなGoProと言えるかもしれない。
「史上最小・最軽量」の看板に偽りあり?
気になるサイズは、実測で縦横38mm×奥行36mm、重さはmicroSDカード込みで73gだった(スペックシート上は74g)。従来型のGoProと並べてみると、正面から見たサイズはぐっと縮小されたが、奥行きはかなり増している。重さもHERO3+ Blackが74gだったので、全く変わらない(HERO4 Blackは83g)。本体だけを比べると、HERO4 Sessionの「史上最小・最軽量」といううたい文句は大げさだ。
ただ、「防水性能をもち、マウントに取り付け可能な状態」という条件で比べてみると、話は変わってくる。HERO4 SessionはGoProとして初めて単体で10m防水に対応し、付属のハウジングは骨組みだけの軽量なスケルトンフレーム。従来型のGoProを標準ハウジングに格納した状態と比べれば、奥行きはほぼ同等で、重さについてもHERO4 Session+付属スケルトンフレームが89gであるのに対し、HERO3++防水ハウジングは136g。間違いなくHERO4 Sessionは「最小・最軽量」だ。
その他ハードウェア面の変更点としては、交換できない内蔵バッテリになり、充電端子がmicroUSBになったのが目立つ部分。充電しながらの撮影に正式対応したのは、人によっては大きな改善点と言えそうだ。インターフェースはmicroSDカードスロットと充電/データ転送用のmicroUSBしかなく、これまでのようにHDMI出力できなくなった。また、外部マイク用の変換プラグも今のところ用意されていない点には注意したい。
バッテリー容量は1,160mAhということで、容量だけ見ればこれまでで最も大容量。バッテリ持続時間は下記の通りとなり、HERO4やHERO3+よりも少しだけ長時間撮影できる。
HERO4 Session | HERO4 Black | HERO3+ Black | |
---|---|---|---|
1080 60p | 1:45 | 1:20 | 1:30 |
1080 30p | 2:05 | 1:30 | 2:00 |
性能面では、6月に発表され、発売はHERO4 Sessionと似たタイミングになったエントリー向け「HERO+ LCD」とほぼ同等。4Kには対応しないものの、1080p 60fpsまでの動画撮影と、800万画素までの静止画撮影、連写、タイムラプス撮影が可能。ステータス表示のために用意された小さな液晶ディスプレイを備え、プレビューや設定変更など大部分の操作はスマートフォンのGoProアプリと連携して行なうことになる。最初からHERO4 Session単体だけで使えなくもないが、基本的にはスマートフォンを組み合わせることが必須だ。
解像度 | フレームレート | 画角 |
---|---|---|
1440p | 30 | Wide |
1080p SuperView | 30/48 | Wide |
1080p | 30/60 | Wide/Medium |
960p | 30/60 | Wide |
720p SuperView | 30/60 | Wide |
720p | 30/60/100 | Wide/Medium |
WVGA | 120 | Wide |
また、前面と背面の2箇所にマイクを設けた「デュアルマイク」となっているのも面白い。こちらについては後ほどサンプル動画で確認していただきたいが、この2つのマイクを内部的に連携させて録音することで、例えば風切り音のような不快なノイズを軽減できるようにもなっているという。
ワンボタンで使える手軽さ、新型バックルの使い勝手も良好
次に実際の使用感を見ていこう。
HERO4 Sessionは操作方法がさらにシンプルになった。電源とシャッターの兼用ボタンが本体上面に1つだけ配置されている。これを1回押すだけで電源が入ってすぐに録画がスタートし、再度ボタンを押せば、ストップした後電源も切れる、という仕組みだ。
ボタンのクリック感ははっきりしたものになり、グローブ越しでも押したかどうかの感触が分かりやすい。これまでのように撮影時にまずカメラの前に回って「電源が入っているか」を確認する必要がなくなるだけでもありがたいし、とりあえず押すだけで確実に録画できるのは安心感が高い。ただし、押した瞬間に録画スタートというわけではなく、実際には起動にだいたい3秒程度かかるので、タイミングを合わせて使い始める、というよりも、少し前もってスタートしておいた方が良い。
背面にも小さなボタンがあるが、これはスマートフォンやリモコン「Wi-Fi Remote」との連携を開始・終了するためのもの。いったん必要な設定をしてしまえば、普段の撮影シーンでは意識する必要はほとんどないはずで、実質的にはワンボタンで使えるわけだ。
HERO4 Sessionに付属している新しい「ボールジョイントバックル」も使い勝手がいい。これまでは微妙な角度で固定したい時、アームを複数の組み合わせたりして細かく調整しなければならず、目立たないように取り付けたいのに結果的に大がかりなオブジェになってしまうことがあった。ボールジョイントバックルは、単体で微妙な向きに変えることができ、いくつかのアームは不要になってスタイリッシュに取り付けられる。
実際にヘルメットや自転車、バイクなどに取り付けてみると、これまでのような“明らかなカメラ感”が薄まったように思える。これは偶然かもしれないが、HERO4 Sessionで撮影している時は誰からも指摘されなかったのに、HERO3+で撮影していると興味深げに話しかけてくる、というパターンが何度かあって、HERO4 Sessionの“目立たなさ”を少なからず実感した次第だ。
風切り音は確かに低減。画質もHERO4 Black並み
今回用意したサンプルは、HERO3+との画質の差を比較できるようにしたカートでの走行シーンと、デュアルマイクによる風切り音の差を比較できるようにしたオートバイでの走行シーンの2つ。
画質については、どちらかというとわずかに赤みのあるGoPro HERO4 Blackに近い雰囲気の色味だろうか。
音質は、やはりオートバイの走行シーンで違いが分かりやすい。HERO3+は風も、その他の音もおしなべて“騒々しい”というのが率直な印象だが、HERO4 Sessionは余計な雑音が抑えられた上品なサウンドに聞こえる。風切り音は完全にゼロにはなっていないが、そのおかげで風を受けていることがほどよく感じられ、臨場感を損なっていない。デュアルマイクの効果が十分に発揮されていると言えそうだ。
1つ気になったのは、時折“プチノイズ”が紛れ込むことがあった点。手持ちで撮影していた時はなく、主にオートバイでの走行時に頻繁に発生していたことから、スパークプラグ由来のノイズと考えられなくもないが、HERO3+ではそういったノイズが一切なかったので、個体差や未調整の部分、あるいはノイズ耐性が従来よりもやや低いのか、といった理由が考えられる。が、少し気になるポイントだ。
面白く使えそうな魅力が詰まったキューブ型
小型のキューブ状でかわいらしい見た目になった新しいGoPro HERO4 Session。シンプルな操作性と抑え気味ながら必要十分な機能を備えたことで、エントリー向けのような印象を受けるかもしれないが、これがHERO4 Black/Silverなどをメインストリームとしたうえでの、コストパフォーマンス重視のスピンオフ的な製品に終わるのかというと、筆者はそうは思わない。むしろこのキューブ形状が今後のGoProの基本的なスタイリングになるのではないか、という予感をもっている。
HERO4 Sessionのキューブ形状は、小型化そのものよりも、前面投影面積が縮小したことの方が重要だ。目立ちにくいだけでなく、高速走行のようなシーンで問題になる空力的な面でもメリットが多い。前面にカメラレンズのみを設けるデザインとしたことで、センターポジションからの撮影がしやすく、今後のレンズやセンサーのサイズ変更にも対応しやすいと思われる。それに、筆者の感想では、なにより今までで一番クールな形だ。
直前に「Polaroid Cube+」というキューブ型カメラが発表されていたりもして、HERO4 Sessionのデザインが取り立てて斬新でユニークというわけでもない。しかし、これまでにいくつかの「GoProコピー」が作られてきたことを考えると、このキューブ型が少なくともアクションカメラの今後のトレンドとなる可能性は大いにありうる。個人的には、先鋭化されすぎてしまったGoPro HERO4 Blackには、それまでのGoProにあったような魅力を感じられなかったのだけれど、HERO4 Sessionではさらに面白く使えそうなわくわく感が戻ってきた。問題点は唯一、52,000円という強気の価格だ。
HERO4 Session | HERO + LCD |
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