日沼諭史の体当たりばったり!

第45回

Fire TV内蔵テレビを試す。リモコン操作が超便利で快適

フナイのブランドで展開するFire TV内蔵テレビ

3月5日から販売が開始された、日本初上陸となるFire TV内蔵テレビ。Amazonとヤマダホールディングスがフナイのブランドで展開するチューナー内蔵テレビだ。ユーザーとして気になるのは、普通のテレビにFire TVシリーズのデバイスを後付けしたのとどう違うのか、といったところではないだろうか。今回、4K液晶搭載モデルの43型「FL-43UF340」をお借りすることができたので、どんな使い勝手なのか見ていきたい。一番の肝となるのは、どうやらリモコンのようだ。

起動時に表示されるFUNAIのロゴ

4K HDR対応のダブルチューナーモデル。スマホアプリでセットアップは即完了

お借りした43型の「FL-43UF340」

Fire TV内蔵テレビとして今回登場したのは、32~55型までの4製品。詳細なラインナップについてはニュース記事をご覧いただきたいが、32型のみがHD液晶で、43型以上は4K液晶を搭載する。4Kモデルは地上デジタル、BS/110度CS、BS4K/CS4Kのチューナーをそれぞれ2基ずつ搭載し、4K HDRにも対応。ACASチップ内蔵となるため、B-CASカードは付属せず、電源とアンテナをつなぐだけで受信準備が整う。

日本初“Fire TV内蔵テレビ”約5.4万円から。Amazon×ヤマダ×FUNAI

本体左右に取り付けるスタンドは、それぞれ2本のねじで固定。タッピングねじのため、取り付け・取り外しを繰り返すようだと少し不安かも
背面側。300×200mmピッチのねじ穴があり壁掛け金具などに使える。本体重量はスタンド込み8.2kgと軽量で、移動させやすく、設置は楽だ

映像・音声入力などのインターフェース周りは、HDMI入力端子×3(うち1つがARC対応)、RCA映像入力、光デジタル音声出力、3.5mmヘッドフォン出力、最大100MbpsのLAN端子(10BASE-T/100BASE-TX)を装備する。USBポートは2個あり、うち1つ(下側)が録画用ポート。別途USB HDDなどをここに接続することでテレビ番組を録画可能だ(同時に1番組のみ録画でき、録画中の裏番組視聴が可能)。

背面のインターフェース。録画用USBポートは下側であることに注意

無線インターフェースは、Bluetooth 5.0と無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)に対応。Bluetoothでは外付けキーボードやスピーカーなどの外部機器の接続ができ、無線LANはWi-Fi 6にこそ対応しないものの、Wi-Fi 5による比較的高速な通信が可能だ。

最初のセットアップではテレビのチャンネルスキャンやネットワーク接続、Amazonアカウントの連携などを行なうが、スマートフォン用の「Fire TVアプリ」を利用すると、スマートフォン上で既存Amazonアカウントとの連携設定ができ、Wi-Fi設定は端末のものが引き継がれる。ほとんど設定の手間を感じることなく使い始められるだろう。

初期画面に表示されるQRコードを読み込んで「Fire TV」アプリをインストール
画面の指示に従ってAmazonアカウント連携。Wi-Fi設定はスマートフォンから引き継がれるようだ
テレビ上で文字入力する必要があるときは、スマートフォンからアプリを通じてキーボード入力することもできる

サクサク軽快動作で、ホーム画面での入力映像プレビューが便利

使って最初に驚くのが、動作の軽快さ。リモコンから電源をオンにすると、わずか2秒ほどで起動しホーム画面が表示される。これは、通常の挙動・使い方として電源はオフにならず、待機状態(スリープ)となっているため。とはいえ、2秒というのはほとんど一瞬のようなもので、待ち時間なくコンテンツを選べるのは実に快適だ。

2秒で現れるホーム画面

基本となるこのホーム画面は従来のFire TVシリーズに近いイメージ。Prime Videoのコンテンツやインストールしているアプリ、他の動画プラットフォームアプリのアイコン、利用履歴に応じたおすすめコンテンツなどが表示される。リモコンを使ってカーソル移動し、コンテンツを選択していくわけだが、操作に対する1つ1つのレスポンスは素早い。最近の世代のFire TVシリーズと同様のサクサクさだ。

最近見たものに応じたおすすめコンテンツなどが表示される

ただ、このホーム画面、従来のFire TVシリーズとは大きく異なるところがある。それは、テレビ放送の各チャンネルもアイコン化され、コンテンツの1つとして選べること。しかも、各チャンネルのアイコンにカーソルを合わせると、リアルタイムの番組映像を画面右上にプレビュー表示するようにもなっている。いちいち放送受信画面に完全に切り換えることなく、今流れている番組をチェックしていけるというわけ。

テレビチャンネルのアイコンにカーソルを合わせると、画面右上でリアルタイムの番組映像をプレビュー

これはHDMI入力についても同様で、ゲーム機などの電源がオンになっていれば、HDMI入力のアイコンにカーソルを合わせるだけでゲーム画面が見える。もちろんゲームコントローラーによるゲーム画面の操作も可能だ。放置プレーすることもあるゲームや、長いアップデート処理のときに、いちいち入力を切り換えて状況確認する必要がない、といった利点があるだろう。

HDMI接続しているゲーム機の画面もプレビューできる

全画面でテレビを見たくなったときは、完全に画面を切り換えることになるが、それにかかる時間は最大でも3秒程度。これは、ホーム画面などからテレビ放送に切り換えるときも、待機状態からテレビ放送を直接表示するときもほぼ変わらない。チャンネルの切り替えは2秒ほどで、これについてはめちゃくちゃ高速というわけではないが、十分にレスポンスの良さを感じられる。

テレビ番組表や各種メニューも、リモコン操作で気持ち良く操作していける。画面インターフェースはモノクロベースの簡素なもので、見栄えのする作りにはなっているとは言えないが、実用性の面では画面デザインが凝っているより素早く操作できた方がありがたいので、使い勝手のところにしっかりフォーカスして仕上げているであろうことが伺える。

番組表。黒背景に白文字をベースとした簡素な表示だが、その分レスポンスはいい

画質は、一般的な視聴用途であれば十分に満足できるもの。地上デジタル放送の映像については、人肌がのっぺりするようなこともなく、質感がしっかり出ている。きめ細かいノイズリダクション機能をもつハイエンド機に比べれば、テロップ部分などでノイズが目立ちやすく感じるときもあるが、全体的には素直で落ち着いた絵作りだ。

テロップ部分でややノイズが目立つような気がするが、全体的な画質としては十分満足いくもの

各種色調整・自動補正機能による画質のカスタマイズももちろん可能。放送波は「標準」「ダイナミック」「ナチュラル」「シネマ」「ドラマ」、HDMI入力ではさらに「ゲーム」という「映像モード」があり、それらを切り換えるだけで簡単にコンテンツや好みに合った画質に変更できる。入力信号ごとにこれらの設定は保存されるため、テレビ放送用の設定、DVD/Blu-ray映画用の設定、ゲーム用の設定など、いちいち切り替えることなく最適な見栄えにしておける。

リモコンの設定(歯車)ボタンを押すと……
メニューが表示
「画質」メニューで映像モードの切り替えや細かな画質設定が可能

サウンドについては、10W×2のステレオスピーカーを内蔵しており、テレビ番組の視聴なら不満を感じることはなさそう。全音域が明瞭な、カラッと乾いた感じの音質は好ましいが、低音は少し物足りない。迫力が欲しいのであれば外付けスピーカーを追加するのがおすすめだ。

「~して」でチャンネル・入力切替できる音声入力リモコンの魅力

快適な操作性やホーム画面の入力映像プレビューも面白いが、筆者が一番ポイントになると感じたのはリモコン。一般的な国内メーカーのテレビリモコンと比べるとコンパクトな、Fire TVシリーズらしいサイズ感だ。放送波の切り換えボタンや数字ボタンなど、テレビリモコンらしいボタンも追加されているが、それらはリモコンの下側にかなり小さく配置され、サブ的な扱いに見える。

付属リモコン

代わりに目立つのは、上部にあるダイヤル風のキーと、戻る・ホーム・メニューおよび早戻し・再生・早送りのボタン。コンテンツの選択や再生時に頻繁に使うボタンであり、従来のFire TVシリーズのリモコンと同じような配置だ。リモコン下部では、ロゴがプリントされたPrime VideoとNetflixボタンが自己主張している。

上部は従来のFire TVシリーズのリモコンに似た配置
下部は一般的なテレビリモコンっぽい数字ボタンなどもある

Fire TVシリーズにしては、ボタンが一気に多くなってしまったが、それでも一般的なテレビリモコンから省かれているものがある。たとえば映像入力切り替えのボタンはないし、USB HDDに番組録画できるにもかかわらず、録画一覧を表示するボタンもない。それらの操作をするには、ホーム画面をいったん表示してから入力選択ボタンを選び、切り換えたいHDMI入力を選んだり、「録画一覧」を選択したりする必要がある。もしくは、リモコン左下にある設定ボタン(歯車ボタン)を押し、表示されるサブメニューからたどっていくことになる。これはちょっと面倒だ。

ホーム画面でHDMI入力に切り替えたいときは、人アイコンの右にある矢印アイコンを選べばいい
テレビ番組閲覧中などに入力を切り替えたいときは、リモコンの設定ボタンを押す
メニューが表示
「録画一覧」で録画済み番組の一覧画面へ
「入力」を押すと入力切り替えメニューが表示される

しかし、思い出してほしい。これはFire TVであり、Alexaによる音声入力機能が搭載されているということを。リモコン上部の一番押しやすそうな位置にAlexaボタンがあり、これを押しながらリモコンに話しかけることで、音声入力によるテレビ操作が可能なのだ。

Alexaボタンを押しながらリモコンに話しかけて音声操作できる

従来のFire TVシリーズであれば、コンテンツの検索や再生コントロール、情報検索と、あとはせいぜいスマートホームデバイスの操作ができる程度のものだった。が、Fire TV内蔵テレビはそれに加えてテレビ自体の操作コマンドもふんだんに盛り込まれている。言ってみれば、Google アシスタント搭載のテレビに近い音声操作ができるわけだけれど、それよりもうちょっと細かいことができそうだ。

たとえば「HDMI 1にして」と話しかければHDMI入力に切り替わるし、「録画を見せて」と話せば録画一覧画面が即座に表示される。「地上デジタルにして」「BSに切り替えて」「BS4Kに切り替えて」でそれぞれの放送波に切り替わり、「NHKにして」「テレビ朝日にして」「テレ東にして」「41チャンネルにして」というような言い方で、テレビのチャンネルも変えていける。省略した言い方でもきちんと認識されるのはうれしい。

さらに「HDMI 1」~「HDMI 3」などの外部映像入力の名前については、いくつかある他の候補のなかから選択して呼び方を変えることもできる。たとえば「HDMI 1」を「PlayStation」や「Blu-ray」のような名前に変更し、変更後の名前で呼びかけて切り替えられる。つまり、「PlayStationに切り替えて」と話しかけると、「HDMI 1」に入力が切り替わってゲーム画面が表示される(ゲーム機の電源が入っていれば)のだ。

ホーム画面の設定ボタンにフォーカスし、下に表示される項目から「入力」を選ぶ
HDMI1など名前を変えたい入力にフォーカスした状態でオプションキーを押し「デバイス名を変更」
あらかじめ用意されている名前から選ぶことができる
代わりの名前が設定された。以降はこの呼び名で入力切り替えが可能になる

この音声操作は画面オフの待機状態でも有効。というか、リモコンの何らかのボタンを押した瞬間にテレビはスリープから復帰するので、いきなりAlexaボタンを押し「PlayStationに切り替えて」と言えば、テレビがオンになった直後に「HDMI1」に入力が切り替わる。リモコン操作で機能を選んでいくより、声で指示した方が簡単で早い。そして、使い続けていくうちに音声操作がなんだか楽しくなってくる。ここまで音声入力が実用的なのであれば、リモコンのボタンをもっと大胆に減らしても良かったのでは、とすら思うほど。

「今日の天気は」と話しかけたとき。天気予報がテレビ番組の映像に重なって表示される

ちなみに、これはFire TVだけの話ではないのでおまけみたいなものだが、HDMI経由で機器の制御を行なえるようにするHDMI-CEC対応機器をテレビに接続していると、Fire TVのリモコンで操作できる。たとえばPlayStation 4などがそう。ゲーム機側の設定で「HDMI機器制御」をオンにしておくと、Fire TVのリモコンでPlayStation 4を操作できるようになる。ゲームタイトルを遊ぶのはつらいが、メニュー操作程度なら楽ちんだ。

PlayStation 4の設定画面で「HDMI機器制御」をオンにすると、リモコンでPS4を操作できる

Google アシスタント搭載機種と並ぶ個性的なテレビが欲しいあなたに

ダブルチューナーの4K放送対応液晶テレビとして見ると、実売価格10万9,780円(43型)というのは、今どきはやや割高に感じる値段設定ではある。しかしながら、レスポンスの良好な操作性に加えて、応用幅の広いAlexaによる音声操作機能を備えていることで、ユニークな使い勝手かつ実用性の高いテレビ製品に仕上がっていると感じる。

そういう意味では、付加価値の高い個性あるテレビの1つとして、画質・音質を追求した既存メーカーのプレミアムモデルなどとは異なる層にリーチするような存在になるのかもしれない。Google アシスタント搭載テレビにするか、このAlexa搭載テレビにするか、というのは、自宅のスマートホームデバイスによって決まってくるとは思うが、取り扱いはAmazonまたはヤマダ電機ということなので、店頭で展示品を見つけたら、ぜひ音声操作や軽快な動作を試して、楽しさを実感してほしい。

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。